Kでつながる僕ときみ ◆2lsK9hNTNE
白く細い糸が闇夜の中に刻まれる。建物と岩礁の間、岩礁と岸の間、糸と糸の間。
海上に引かれた無数の糸の上を鬼が走り、飛ぶ。瞬く間に海を超え陸地へと到達し、片腕に持っていた人間を投げ落とした。
海上に引かれた無数の糸の上を鬼が走り、飛ぶ。瞬く間に海を超え陸地へと到達し、片腕に持っていた人間を投げ落とした。
「着いたよ」
クロオはその声を芝生の上に転がりながら聞いた。
本島に行こう。そう提案したのはクロオだ。クロオと累の目的は人探しだ。無名街とかいう寂れた街しかない小島にいたって誰もやって来ない。移動するのは当然の選択だった。
予想外だったのは移動の仕方だ。「どっちの橋を渡る?」と尋ねるクロオに累は「必要ない」と答えた。襟を掴んでクロオを持ち上げると、そのまま本当に橋を渡らずに強引に海を超えてしまった。
本島に行こう。そう提案したのはクロオだ。クロオと累の目的は人探しだ。無名街とかいう寂れた街しかない小島にいたって誰もやって来ない。移動するのは当然の選択だった。
予想外だったのは移動の仕方だ。「どっちの橋を渡る?」と尋ねるクロオに累は「必要ない」と答えた。襟を掴んでクロオを持ち上げると、そのまま本当に橋を渡らずに強引に海を超えてしまった。
(まさか鬼の力とやらがこれほどとはね)
身体中の痛みに耐えながら上半身を起こす。
鬼。”あの方”とやらによって作り変えられた、人を喰らい、陽の光を避け、闇に棲む生き物。説明は受けていたがここまで人間離れしているとは。
鬼。”あの方”とやらによって作り変えられた、人を喰らい、陽の光を避け、闇に棲む生き物。説明は受けていたがここまで人間離れしているとは。
「参加者の中にあの方もいた。お前は僕の家族だ。僕の家族なら僕と同じようにあの方に鬼にしてもらえ」
彼はそうも言っていた。鬼になることに特に抵抗はない。
人食いを忌避するようなまともな倫理観は持ち合わせていないし、せっかくの二度目の生を得たのだから別の生物になってみるのも悪くない。
してもらう、ではなく、してもらえ、という言い方には、『鬼にしてもらえるかどうかはあの方しだい』、というニュアンスは感じたが。
とにかく、あの方と、それから”家族“、この二つを探すためにクロオと累は本島にやってきたわけだ。が、
人食いを忌避するようなまともな倫理観は持ち合わせていないし、せっかくの二度目の生を得たのだから別の生物になってみるのも悪くない。
してもらう、ではなく、してもらえ、という言い方には、『鬼にしてもらえるかどうかはあの方しだい』、というニュアンスは感じたが。
とにかく、あの方と、それから”家族“、この二つを探すためにクロオと累は本島にやってきたわけだ。が、
「ねえ、行動に移る前にまずは食事にしないかい?」
早々と行こうとする累をクロオは呼び止めた。先程投げられた時に足を痛めたようなのだ。重症ではないが、少し休む時間が欲しい。
食事をしたいというのも本心だ。実のところクロオはさっきからずっと腹が減っていた。何せ一度死んで生き返った身だ。腹の中も空っぽになっているのだろう。
振り向いた累の顔には怒りが浮かんでいたが、何かしてくる前にクロオは重ねて言った。
食事をしたいというのも本心だ。実のところクロオはさっきからずっと腹が減っていた。何せ一度死んで生き返った身だ。腹の中も空っぽになっているのだろう。
振り向いた累の顔には怒りが浮かんでいたが、何かしてくる前にクロオは重ねて言った。
「一緒に食事を取るのは”家族”の絆を深めるためにも大事なことだと思うよ?」
「……わかった。食事にしよう」
「……わかった。食事にしよう」
そう言ってクロオの前に腰を下ろした。
月明かりを頼りにリュックから食料を取り出す。主催者が用意した食料、何の変哲もない食パンだ。一口齧るが、パサパサとして、味も上手くない。
大勢の参加者の最後の食事になるかもしれない物としては、お粗末も良いところだった。
一方、対面に座る弟が取り出したのはパンではなく肉だった。人肉なのだろうが、一見しただけでは牛や豚の肉と区別はつかなかった。
人間なら一旦切り分けるサイズだが、累は歯でガジガジと噛んで口に入れていく。
月明かりを頼りにリュックから食料を取り出す。主催者が用意した食料、何の変哲もない食パンだ。一口齧るが、パサパサとして、味も上手くない。
大勢の参加者の最後の食事になるかもしれない物としては、お粗末も良いところだった。
一方、対面に座る弟が取り出したのはパンではなく肉だった。人肉なのだろうが、一見しただけでは牛や豚の肉と区別はつかなかった。
人間なら一旦切り分けるサイズだが、累は歯でガジガジと噛んで口に入れていく。
「人の肉って美味しいのかい?」
なんとなく尋ねると、よほど意外な質問だったようで累は目を丸くしたが、すぐにいつもと虚無と苛立ちの宿った目に戻った。
「味なんて気にしたことはない。人間なんて食えればそれでいい」
「そうかな、食事の美味しさは生きる上で大事な潤いの一つだと思うけれど」
「違う。食事は単なる栄養を取るための手段だ。味なんて気にする必要はない。弟の僕がそう言ってるんだ。お前もそう思え」
「わかった。そう思うことにするよ」
「そうかな、食事の美味しさは生きる上で大事な潤いの一つだと思うけれど」
「違う。食事は単なる栄養を取るための手段だ。味なんて気にする必要はない。弟の僕がそう言ってるんだ。お前もそう思え」
「わかった。そう思うことにするよ」
どうやら食べ物の話はお気に召さないらしい。
まずは当たり障りのない会話から少し内面を探っていくつもりだったが、これでは埒が明かなそうだ。別のやり方にしよう。
まずは当たり障りのない会話から少し内面を探っていくつもりだったが、これでは埒が明かなそうだ。別のやり方にしよう。
「ねえ、僕たちもっとお互いのことを知るべきだと思わないかい?」
また糸が飛んだ。クロオの身体に傷が増える。
「僕たちは兄弟だ。互いのことは何でも知っている。新たに知らなきゃいけないことなんて何もない」
「そんなことはないさ。後から生まれる弟と違って、兄には弟がいない年月がある。僕は可愛い弟に君と出逢う前の話をしてあげたいんだよ」
「……」
「そんなことはないさ。後から生まれる弟と違って、兄には弟がいない年月がある。僕は可愛い弟に君と出逢う前の話をしてあげたいんだよ」
「……」
その言い分には理があると思ったのか、累は沈黙した。クロオをそれを了承と受け取った。
「実は僕は昔、僕らの両親とは別の人に育てられていたことがあってね……」
それはクロオの本物の母親と本物ではない父親の話だ。
それは現在のクロオを形作る根幹のひとつであり、以前はこんなに簡単には人に話せなかった。
だが一度死ぬことで吹っ切れたのか、あるいは死ぬ前に起こった出来事で吹っ切れたのか。不思議と言葉は軽かった。
累の”家族”へのこだわりから本物の家族と何かあったことは間違いない。
彼の方が何も語らずとも、こちらが家族の話を語ればその反応で彼の内面を探れるだろう。
累は黙って話を聞いているが、心がざわついているのをクロオは感じた。
特にざわつきが大きくなったのは、クロオが父親に耳を切られて殺した話。
同情、共感、あるいは労りだろうか。ほんのわずかにだがこちらに理解を示すような感情が覗いていた。彼が”家族”にこだわる理由がおおよそ察しがついた。
それは現在のクロオを形作る根幹のひとつであり、以前はこんなに簡単には人に話せなかった。
だが一度死ぬことで吹っ切れたのか、あるいは死ぬ前に起こった出来事で吹っ切れたのか。不思議と言葉は軽かった。
累の”家族”へのこだわりから本物の家族と何かあったことは間違いない。
彼の方が何も語らずとも、こちらが家族の話を語ればその反応で彼の内面を探れるだろう。
累は黙って話を聞いているが、心がざわついているのをクロオは感じた。
特にざわつきが大きくなったのは、クロオが父親に耳を切られて殺した話。
同情、共感、あるいは労りだろうか。ほんのわずかにだがこちらに理解を示すような感情が覗いていた。彼が”家族”にこだわる理由がおおよそ察しがついた。
◇
話が終わると、累は「そろそろ行くよ」とだけ言って、立ち上がった。
足は十分に回復している。クロオも立ち上がって言う。
足は十分に回復している。クロオも立ち上がって言う。
「当面の目的は”家族”とあの方を探すことでいいんだよね」
「そうだ」
「探すあては何かあるの?」
「無い。お前も方法を考えろ」
「わかった」
「そうだ」
「探すあては何かあるの?」
「無い。お前も方法を考えろ」
「わかった」
といってもあの方については何の情報も貰っていないので、考えられるのは家族の方だけだが。
手当たり次第に会った参加者を家族にしていくという手もあるが、それでは無策と同じだ。
クロオはいちど目を通して覚えた参加者名簿の内容を頭に浮かべた。この中で良き家族になりそうな者。
浮かんだのは愛月しのの顔だった。
愛月しのはクロオと同じラブデスター実験の被験者だ。クロオは彼女のに対して好意を持っている演技をして接していた。
あくまでも演技だ。耳の形は好みだったが(クロオは耳フェチだ)、それ以上の特別な感情は持っていない。近づいたのも彼女の幼馴染の若殿ミクニと皇城ジウを揺さぶるためだ。
だが彼女は、嘘を見破ったわけでもないのに、クロオの語る愛の言葉が心からのものではないと見抜いた。
それどころか、あの時点ではクロオ自身すら気づいていなかったクロオの本当の想いさえ指摘して見せた。
彼女は聡く、そして強い。クロオが思っているよりも。そして彼女の幼馴染の二人が思っているよりも。
彼女が”家族”になったならきっと、子供や兄弟を思いやる良き母か姉になるだろう。
手当たり次第に会った参加者を家族にしていくという手もあるが、それでは無策と同じだ。
クロオはいちど目を通して覚えた参加者名簿の内容を頭に浮かべた。この中で良き家族になりそうな者。
浮かんだのは愛月しのの顔だった。
愛月しのはクロオと同じラブデスター実験の被験者だ。クロオは彼女のに対して好意を持っている演技をして接していた。
あくまでも演技だ。耳の形は好みだったが(クロオは耳フェチだ)、それ以上の特別な感情は持っていない。近づいたのも彼女の幼馴染の若殿ミクニと皇城ジウを揺さぶるためだ。
だが彼女は、嘘を見破ったわけでもないのに、クロオの語る愛の言葉が心からのものではないと見抜いた。
それどころか、あの時点ではクロオ自身すら気づいていなかったクロオの本当の想いさえ指摘して見せた。
彼女は聡く、そして強い。クロオが思っているよりも。そして彼女の幼馴染の二人が思っているよりも。
彼女が”家族”になったならきっと、子供や兄弟を思いやる良き母か姉になるだろう。
(……無意味な仮定だな)
彼女が家族になったら? 自分の妄想のありえなさに笑ってしまう。
彼女のような暖かな日の当たる世界を生きる人間は”家族”になどならない。愛してくれる家族がすでにいるのだから。
”家族”を求めるのは家族の愛を知らない者だけだ。知らない者だけが愛を求めて身を寄せ合う。
だが愛の記憶を持たない者がいくら集まったところでそこに愛は生まれない。なぜなら誰も愛がわからないのだから。
もしくは単に暴力に屈して”家族”になる者も場合もあるが――どのみち真実の愛で結ばれた”家族”とは程遠い。でも……
彼女のような暖かな日の当たる世界を生きる人間は”家族”になどならない。愛してくれる家族がすでにいるのだから。
”家族”を求めるのは家族の愛を知らない者だけだ。知らない者だけが愛を求めて身を寄せ合う。
だが愛の記憶を持たない者がいくら集まったところでそこに愛は生まれない。なぜなら誰も愛がわからないのだから。
もしくは単に暴力に屈して”家族”になる者も場合もあるが――どのみち真実の愛で結ばれた”家族”とは程遠い。でも……
『好きよ。クロウ』
あの時クロオの中に確かにあった感情。
家族が愛された記憶がなくても。
側に愛してくれる人がいなくても。
一度でも誰かに愛されたという記憶があるのなら、他の誰かに愛を注ぐこともできるのではないだろうか。
家族が愛された記憶がなくても。
側に愛してくれる人がいなくても。
一度でも誰かに愛されたという記憶があるのなら、他の誰かに愛を注ぐこともできるのではないだろうか。
(ミクニくん、君は今どうしているのだろう)
家族に愛されずとも親友と共に生きようとした彼は、その親友に殺されてクロオのように生き返った彼は。
今も愛を信じているのだろうか。
今も愛を信じているのだろうか。
【F-3・岸辺/1日目・深夜】
【累@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:家族を、作ろう
1:父と母と姉と無惨様を探す
2:家族にならなそうな人間は殺害
[備考]
※参戦時期は首を切られたその瞬間ぐらい
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:家族を、作ろう
1:父と母と姉と無惨様を探す
2:家族にならなそうな人間は殺害
[備考]
※参戦時期は首を切られたその瞬間ぐらい
【神居クロオ@ラブデスター】
[状態]:全身に裂傷、打傷。学生服ズタボロ
[装備]:悪刀『鐚』@刀語
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:家族を、作ろう
1:父と母と姉とあの方を探す
2:ミクニに会いたい
[備考]
※参戦時期は死亡後
[状態]:全身に裂傷、打傷。学生服ズタボロ
[装備]:悪刀『鐚』@刀語
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:家族を、作ろう
1:父と母と姉とあの方を探す
2:ミクニに会いたい
[備考]
※参戦時期は死亡後
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 廻るピングドラム | 累 | 母さんを拉致しよう/姉、ちゃんとしようよ |
| 神居クロオ |