FILE01「一大実験! 人喰い鬼 撃滅作戦」 ◆7ediZa7/Ag
鬼。
それは日本に古くから伝わる妖怪だと考えられている。
それは日本に古くから伝わる妖怪だと考えられている。
(女性ナレーション・ゆっくり、落ち着いたトーンで)
(鬼のイラストを表示。おどろおどろしいタッチの大男の鬼)
※1
※1
頭には一本あるいは二本の角。
赤や青の皮膚。
口に生えた鋭い牙。
手には突起のある棍棒を持っている。
赤や青の皮膚。
口に生えた鋭い牙。
手には突起のある棍棒を持っている。
ただし定まった姿は持っていないとされ、美男美女の姿で描かれることもある。
(イラスト切り替え。
今度はイケメン風の鬼のイラスト)
※1
今度はイケメン風の鬼のイラスト)
※1
悪い物・恐ろしい物の代名詞として、
各地に伝承が残る山も少なくない。
また地獄にて死者を責める獄卒として描かれることもある。
各地に伝承が残る山も少なくない。
また地獄にて死者を責める獄卒として描かれることもある。
(山の写真をフラッシュバック)
※2
※2
特に平安時代に描かれる鬼の多くは
恐ろしい化け物として描かれる。
京都につたわる酒呑童子や茨城童子といった妖怪が特に有名な鬼だ。
恐ろしい化け物として描かれる。
京都につたわる酒呑童子や茨城童子といった妖怪が特に有名な鬼だ。
(イラスト切り替え。
恐ろしい大男が京都の街を荒らしているイラスト)
※1
恐ろしい大男が京都の街を荒らしているイラスト)
※1
その正体は
北方の異民族を妖怪になぞらえたもの
金属に携わる事業の人々の俗称
海賊して上陸した白人のこと
異星人
北方の異民族を妖怪になぞらえたもの
金属に携わる事業の人々の俗称
海賊して上陸した白人のこと
異星人
と多種にわたるが、
やはり「人を喰らう恐ろしい化け物」というイメージは根強い……
やはり「人を喰らう恐ろしい化け物」というイメージは根強い……
──投稿映像──
それは民家にて、和やかな食事を写した動画のようだった。
「禰豆子ちゃんは可愛いねぇ」
(隠し撮りされたかのような構図の、質の悪い映像。
ところどころノイズが走っている上、変な角度でカメラが置かれているためか、詳しい状況が掴みづらい)
ところどころノイズが走っている上、変な角度でカメラが置かれているためか、詳しい状況が掴みづらい)
「ハハッ、愛月さんは禰豆子ちゃんに夢中ですね」
「だって、可愛いですから。前園さんもそう思わないですか?」
「────」
「だって、可愛いですから。前園さんもそう思わないですか?」
「────」
落ち着いた男性の声と、楽しげに声を弾ませる少女の声が記録されている。
さらにそこにもう一人、いたいけな女児の言葉にならない声が紛れており、どうやら三人で食卓を囲んでいるらしかった。
明るいリビングにて行われる食事の雰囲気は穏やかなもので、ともすればホームビデオにさえ見えるものであった。
さらにそこにもう一人、いたいけな女児の言葉にならない声が紛れており、どうやら三人で食卓を囲んでいるらしかった。
明るいリビングにて行われる食事の雰囲気は穏やかなもので、ともすればホームビデオにさえ見えるものであった。
(ザザッとノイズが走り、一瞬映像が飛んでしまう。
撮影の構図自体は変わっていない)
撮影の構図自体は変わっていない)
「いっぱい食べなさい、私も愛月さんも叱りはしない。 ハンバーグ、ごちそうだよ?」
「こうするんだよ、禰豆子ちゃん。 はい、いただきます」
「こうするんだよ、禰豆子ちゃん。 はい、いただきます」
変わらない雰囲気のまま、三人で手を合わせハンバーグを食べようとしている。
男性も、少女も、そして女児もまた険悪な雰囲気は一切ない。
そしていくつかの言葉を交わしたのち、少女と、そして女児がハンバーグを咀嚼した。
男性も、少女も、そして女児もまた険悪な雰囲気は一切ない。
そしていくつかの言葉を交わしたのち、少女と、そして女児がハンバーグを咀嚼した。
(再びノイズ)
「GrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrRRR!!」
その瞬間、耳をつんざくような獣の咆哮が映像の中を走る。
それまでの和やかな雰囲気を根本から破壊するような、獰猛かつ異様な叫び声であった。
それまでの和やかな雰囲気を根本から破壊するような、獰猛かつ異様な叫び声であった。
「なにが、起こっている……?」
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」
困惑する男性の声と、画面内を飛び跳ねる異様な影。
「この化け物め!」という声に重なるように二発の銃声が響き渡る。
だが画面の影はなおも健在であった。
「この化け物め!」という声に重なるように二発の銃声が響き渡る。
だが画面の影はなおも健在であった。
「GaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」
およその人の理性を感じさせない獣の咆哮が世界を震わせる。
男性の困惑の声がが入り、そして次の瞬間、カメラが持ち上げられたのか、画面が、ぐい、と引っ張り上げられる。
そしてブチリ、と映像は途切れるのだった。
男性の困惑の声がが入り、そして次の瞬間、カメラが持ち上げられたのか、画面が、ぐい、と引っ張り上げられる。
そしてブチリ、と映像は途切れるのだった。
──REPLAY──
(動画が巻き戻しされ、再び食卓が破壊されるその瞬間の映像が開始される)
「GrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrRRR!!」
獣の咆哮をあげる異様な影。
画面がそこで静止し、ゆっくりとアップになっていく。
画面がそこで静止し、ゆっくりとアップになっていく。
(怪奇的なBGM)
※2
※2
そこには血走った瞳で睨みつける異形の女性の映像が確かに映っていた。
映像が荒いためわかりづらいが、どうやらその見た目は先ほどの女児に酷似している。
映像が荒いためわかりづらいが、どうやらその見た目は先ほどの女児に酷似している。
(テロップ「平和な食卓のなか、突如として豹変を遂げた子ども」)
(テロップ「果たしてこの未確認生物の正体とは…」?)
※1 要イラストレーター発注
※2 ここはフリー素材を使用
※2 ここはフリー素材を使用
◇
(タイトル演出)
真・戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE01「一大実験! 人喰い鬼 撃滅作戦」
◇
「……どうでしょうか?」
映像を一通り見せたのち、動画投稿者である男、前園甲士は神妙な面持ちで問いかけてきた
それに対し、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」のスタッフである工藤仁は口を開く。
それに対し、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」のスタッフである工藤仁は口を開く。
「ええと、前園さん。この映像がアンタがついさっき遭遇したっていう」
「はい。私が先ほど遭遇した化け物です。
拉致された私は、状況に困惑しつつも子供を保護するべく彼らと食事を取っていました」
「はい。私が先ほど遭遇した化け物です。
拉致された私は、状況に困惑しつつも子供を保護するべく彼らと食事を取っていました」
前園という男は、怜悧な雰囲気を醸し出す人間であった。
整えられたスーツや七三に分けられた頭髪は官公庁に務める役人と言われても通じそうだ。
その話し方も明晰でわかりやすく、多くの者に良い第一印象を与えるに違いない。
整えられたスーツや七三に分けられた頭髪は官公庁に務める役人と言われても通じそうだ。
その話し方も明晰でわかりやすく、多くの者に良い第一印象を与えるに違いない。
ただそんな彼の表情には、それでもなお隠せない恐怖が残っているように工藤には見えた。
そしてそのスーツの肩には不自然なシワがあり、そのシワは異様な力で掴まれたようにも見えた。
そしてそのスーツの肩には不自然なシワがあり、そのシワは異様な力で掴まれたようにも見えた。
前園はシワがついた肩に触れ、今しがたの場面を思い出すように語り始める。
「映像にもあったように、途中までは、その、和やかな雰囲気だったんです。
ただそれが……ハンバーグを食べた途端、突然女の子が、こう……」
ただそれが……ハンバーグを食べた途端、突然女の子が、こう……」
それまでの明瞭な口調から一変し、口を濁す前園に対し工藤はその機微を察する。
自分が遭遇した場面に対して、自分自身信じることができないのだろう。
「コワすぎ!」の取材にて、多くの投稿者が恐怖と困惑がない混ぜになった態度を見せていた。
工藤は当然、そうした投稿者と多く関わってきた。
自分が遭遇した場面に対して、自分自身信じることができないのだろう。
「コワすぎ!」の取材にて、多くの投稿者が恐怖と困惑がない混ぜになった態度を見せていた。
工藤は当然、そうした投稿者と多く関わってきた。
「女の子が突然、キ■■■になってアンタを襲ったってことか」
「ええ! ですが、本物の映像なんです。加工など、していませんし」
「ええ! ですが、本物の映像なんです。加工など、していませんし」
前園はパッと顔を上げて言う。
今しがた見た映像は確かに衝撃なものであった。
最後の少女の豹変ぶりなど、それこそ加工を疑ってしまうようなものだ。
このまま世に出したところで多くのものは前園を信じはしないだろう。
最後の少女の豹変ぶりなど、それこそ加工を疑ってしまうようなものだ。
このまま世に出したところで多くのものは前園を信じはしないだろう。
だが、工藤は違った。
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」。
視聴者からの投稿映像を基に、怪奇現象を調査するホラービデオであり、彼はそのディレクターだった。
これまでも口裂け女、スカイツリーの幽霊、河童、トイレの花子さん、お岩と様々な怪異に文字通りその 拳で立ち回っていた彼にしてみれば、今しがた見せられた映像は全く別の意味合いを持つ。
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」。
視聴者からの投稿映像を基に、怪奇現象を調査するホラービデオであり、彼はそのディレクターだった。
これまでも口裂け女、スカイツリーの幽霊、河童、トイレの花子さん、お岩と様々な怪異に文字通りその 拳で立ち回っていた彼にしてみれば、今しがた見せられた映像は全く別の意味合いを持つ。
──これは売れるぞ。
と。
彼は前園からの投稿映像に対し、考えていた。
すでに彼の頭の中ではどういった映像の構成にするか、イラストの発注やテロップの作成といった事柄まで自然と思考が伸びている。
長年何かに取り憑かれるように「コワすぎ!」を作ってきた男は、殺し合いという異様な局面においてさえ、そんな考えをしてしまう。
否、しなくてはならないとさえ考えている節が、彼にはあった。
彼は前園からの投稿映像に対し、考えていた。
すでに彼の頭の中ではどういった映像の構成にするか、イラストの発注やテロップの作成といった事柄まで自然と思考が伸びている。
長年何かに取り憑かれるように「コワすぎ!」を作ってきた男は、殺し合いという異様な局面においてさえ、そんな考えをしてしまう。
否、しなくてはならないとさえ考えている節が、彼にはあった。
「でもよ前園さん、この映像はどうやって撮ってたんだ?」
「はい。実は、さっき映っていた女の子がこんなものを支給されていまして」
「はい。実は、さっき映っていた女の子がこんなものを支給されていまして」
そう言って前園はバッグから何か大きな機械を取り出した。
バスケットボールほどの大きさの機械で、その中心にはレンズがはめ込まれている。
バスケットボールほどの大きさの機械で、その中心にはレンズがはめ込まれている。
「これは?」
「ドローンです。ステルスドローンと言って、私の職場でも使われていました。
支給されていた女の子が、よく分からずに触って起動させてしまっていたようです」
「ドローンです。ステルスドローンと言って、私の職場でも使われていました。
支給されていた女の子が、よく分からずに触って起動させてしまっていたようです」
どうやらそれは高性能なカメラであるようだった。
ドローンとして単独稼働し、一度起動すればこちらを自動で追尾しつつ映像を撮ってくれるらしかった。
実際の額面はわからないが、カメラマンを雇う人件費より安いだろうか、と概要を聞いた工藤は思わず頭で試算していた。
ドローンとして単独稼働し、一度起動すればこちらを自動で追尾しつつ映像を撮ってくれるらしかった。
実際の額面はわからないが、カメラマンを雇う人件費より安いだろうか、と概要を聞いた工藤は思わず頭で試算していた。
「なるほどね。それで、アンタが回収したら、こんな映像が撮れてたって訳か」
「はい、私も半狂乱になってはなんとかバッグだけでも持ってきたんです。
そして……」
「おい、アンタ」
「はい、私も半狂乱になってはなんとかバッグだけでも持ってきたんです。
そして……」
「おい、アンタ」
その言葉は工藤のものではなかった。
映像を見て声を失っていたもう一人の人間が、前園に対して口を開いていた。
彼女は前園に詰め寄り、その襟元を掴んで叫びをあげた。
映像を見て声を失っていたもう一人の人間が、前園に対して口を開いていた。
彼女は前園に詰め寄り、その襟元を掴んで叫びをあげた。
「おいアンタ。愛月をどうしやがった!」
工藤の同行者であった少女、姐切ななせはキッと前園を睨みつけた。
彼女は──動画に写っていた少女の一人、愛月しのの友人であった。
彼女は──動画に写っていた少女の一人、愛月しのの友人であった。
◇
(全く、危ないところだったな。
こんなに近くにあの女の知り合いがいるとは)
こんなに近くにあの女の知り合いがいるとは)
襟元を掴まれながらも、前園は冷徹に思考を回転させる。
愛月しのを殺害し、禰豆子から逃走を計っていた前園は、すぐに別の人間と出会うことができた。
愛月しのを殺害し、禰豆子から逃走を計っていた前園は、すぐに別の人間と出会うことができた。
工藤仁と姐切ななせというらしい二人もまたこの異様な殺し合いに巻き込まれ、ひとまず行動を共にしていたらしかった。
工藤は髭をたたえた中年男性であり、そのギラついた眼差しは人を威圧することに慣れているにも見える。
もしかすると本当にそうした暴力関係の人間かと思ったが、(その言を信じるのならば)映像制作のディレクターだという。
工藤は髭をたたえた中年男性であり、そのギラついた眼差しは人を威圧することに慣れているにも見える。
もしかすると本当にそうした暴力関係の人間かと思ったが、(その言を信じるのならば)映像制作のディレクターだという。
「おい、姐切ィ! 何してんだ」
「うるさいよ工藤! なんだこの映像は! コイツは愛月を見捨てて逃げてきたんだよ」
「んなこと言って首掴んでたら、この人もなんも喋れねえだろうが!」
「アンタは引っ込んでろクソ中年親父。さっきから手つきが下品なんだよ」
「あん? てめえこそ、こんな場所で女子供一人でやってけると思うのかよ?
俺はな? お前を仕方ねえから守ってんだぞ? 大人としてな?」
「うるさいよ工藤! なんだこの映像は! コイツは愛月を見捨てて逃げてきたんだよ」
「んなこと言って首掴んでたら、この人もなんも喋れねえだろうが!」
「アンタは引っ込んでろクソ中年親父。さっきから手つきが下品なんだよ」
「あん? てめえこそ、こんな場所で女子供一人でやってけると思うのかよ?
俺はな? お前を仕方ねえから守ってんだぞ? 大人としてな?」
一方の姐切の方も顔立ちこそ整った少女であったが、口や態度の悪さでは工藤にも引けを取らない。
お互いこのぐらいはジャブと言わんばかりに罵倒を投げつている。
お互いこのぐらいはジャブと言わんばかりに罵倒を投げつている。
(まぁ工藤はまだしも、姐切の方は動画を見て感情的になってるんだろうが)
前園は冷静に考えつつ、今しがた見せた映像のことを考えた。
先ほど映像が撮れたのは、実のところ本当に偶然であった。
禰豆子に支給されていたステルスドローンが、彼女が適当に触ったことで起動してしまっていたらしい。
先ほど映像が撮れたのは、実のところ本当に偶然であった。
禰豆子に支給されていたステルスドローンが、彼女が適当に触ったことで起動してしまっていたらしい。
奪い取った支給品を確認した前園は、己の殺人の証拠にもなりうるこの映像を真っ先に消去しようとしたが、ふと思い立った。
(禰豆子とかいうあの化け物と「超人」をぶつけるために、この映像は使える)
ひどく不鮮明な映像であったことが幸いした。
彼は犯行の決定的な場面のみカットすることで「化け物に襲われた被害者」としての映像となった。
動画は勝手知ったるステルスドローンである。複雑な編集ならいざ知らず、動画の部分的な消去程度であればすぐにできた。
彼は犯行の決定的な場面のみカットすることで「化け物に襲われた被害者」としての映像となった。
動画は勝手知ったるステルスドローンである。複雑な編集ならいざ知らず、動画の部分的な消去程度であればすぐにできた。
(姐切が愛月の知り合いだったことには驚いたが、この程度は切り抜けられる)
「……姐切さん、申し訳ございませんでした。確かに私は逃げ出してしまった……」
「御託はいいんだ。愛月はどうしたんだ?」
「御託はいいんだ。愛月はどうしたんだ?」
詰め寄る姐切に対して、前園はあえて何も口にはせず、視線をわずかに下げた。
力なくうな垂れるように、罪悪感に打ちひしがれるように、殊勝という概念を煮詰めたかのような態度を前園は出す。
そんな前園に対し、掴みかかってきた姐切の手の力がわずかに緩んだのがわかった。
力なくうな垂れるように、罪悪感に打ちひしがれるように、殊勝という概念を煮詰めたかのような態度を前園は出す。
そんな前園に対し、掴みかかってきた姐切の手の力がわずかに緩んだのがわかった。
(まったく簡単なものだ)
思わずニッコリと笑いたくなるのをこらえながら、前園は「申し訳ございません」と再度謝罪の言葉を口にする。
多くを語る必要はない。
その態度によって、化け物を前に愛月しのを救おうとしつつもどうしようもなかった無力感、を言外に示すことができる。
多くを語る必要はない。
その態度によって、化け物を前に愛月しのを救おうとしつつもどうしようもなかった無力感、を言外に示すことができる。
しばらくの沈黙ののち、姐切は舌打ちをし、前園の襟元を離した。
「……アンタを責めてもしょうがないってことぐらい、アタイにだってわかるよ」
ぐっと拳を震わせながら姐切は言った。
ぶつけようのない己の感情を必死に整理している様子を、前園は無感動に眺めた。
ぶつけようのない己の感情を必死に整理している様子を、前園は無感動に眺めた。
「でもな、さっきの映像だと、まだ愛月が本当に死んだのかわからなかった。
だから……」
「わかっています。愛月さんを助けられないか、戻ってみるつもりです」
だから……」
「わかっています。愛月さんを助けられないか、戻ってみるつもりです」
前園はそこでもう一度顔をうつむかせたのち、
「ただ……情けない話ですが、私には化け物をどうすることもできません。
銃を持っていても、まったく聞かなかった。
本当にあれは──化け物だった」
銃を持っていても、まったく聞かなかった。
本当にあれは──化け物だった」
恐怖をにじませた態度で前園はいう。
その言葉自体は実のところ、全くの真実である。
真実であるがゆえに、一定の説得力を持ったに違いない。
まぁあの化け物の存在はあまりにも非現実すぎて、受け入れられない可能性もあったが──
その言葉自体は実のところ、全くの真実である。
真実であるがゆえに、一定の説得力を持ったに違いない。
まぁあの化け物の存在はあまりにも非現実すぎて、受け入れられない可能性もあったが──
「前園さん、俺はアンタ、信じるよ」
そこで工藤は、前園の肩を叩き、そう言った。
その口調は、意外にも──こちらのことを慮るような、重みと共感に似た何かが滲んでいた。
その口調は、意外にも──こちらのことを慮るような、重みと共感に似た何かが滲んでいた。
「あの化け物? 鬼? あれを倒さないと救えないんだろ? あの女の子を」
「……はい。ですが、我々には」
「俺たちには化け物は倒せない。だからよう、こう考えんだよ」
「……はい。ですが、我々には」
「俺たちには化け物は倒せない。だからよう、こう考えんだよ」
工藤は言った。
「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」
と。
「はぁ? 工藤、アンタ何言って」
「わっかんねえのか?姐切。
この殺し合いにはな! さっきのビデオみてえなやべえバケモンがいっぱいいるんだよ」
「どこにその保証があんだよ、あん?」
「俺の勘がそう言ってんだ。
俺のな? こういう勘はまず当たんだよ。
だからこの会場にいる別のバケモンを捕獲して、さっきの鬼とマッチアップすんだよ。
そいつらが勝手に潰しあってる間に、その愛月って女を助けりゃそれでいいだろうが」
「わっかんねえのか?姐切。
この殺し合いにはな! さっきのビデオみてえなやべえバケモンがいっぱいいるんだよ」
「どこにその保証があんだよ、あん?」
「俺の勘がそう言ってんだ。
俺のな? こういう勘はまず当たんだよ。
だからこの会場にいる別のバケモンを捕獲して、さっきの鬼とマッチアップすんだよ。
そいつらが勝手に潰しあってる間に、その愛月って女を助けりゃそれでいいだろうが」
工藤はそこで、いつの間にか勝手に起動していたステルスドローンに向かって言う。
「すごくない? バケモンとバケモン、驚異の異種格闘技戦だよ?
これ見てるみんなも楽しみだろ?
コワすぎ・プロレス篇の開幕だ。どっちが勝つのか!いっちょ盛り上げてやろうじゃねえか!」
「これ見てるみんなって、アンタ撮ってんのか?」
「うるせえ、姐切ィ! こんな状況に巻き込まれたんだ、撮れるもんは撮っとかねえとやられ損だろオイ」
これ見てるみんなも楽しみだろ?
コワすぎ・プロレス篇の開幕だ。どっちが勝つのか!いっちょ盛り上げてやろうじゃねえか!」
「これ見てるみんなって、アンタ撮ってんのか?」
「うるせえ、姐切ィ! こんな状況に巻き込まれたんだ、撮れるもんは撮っとかねえとやられ損だろオイ」
口論を始め出す二人を前に、前園は黙っていた。
黙って、ほくそ笑んでいた。
すでに前園自身への関心は薄れつつあり、黙っていれば先ほどの彼の言動が既成事実になるだろう。
そして、愛月しのを救うため、未確認生物・禰豆子にぶつける別の怪物を見つける流れになりそうだ。
黙って、ほくそ笑んでいた。
すでに前園自身への関心は薄れつつあり、黙っていれば先ほどの彼の言動が既成事実になるだろう。
そして、愛月しのを救うため、未確認生物・禰豆子にぶつける別の怪物を見つける流れになりそうだ。
(人間よりも強い『超人』をアレにぶつける作戦に、こいつらも付き合ってもらおうか)
前園はそのメガネの奥で、一人、冷徹な感情を宿していた。
【C-1・民家/1日目・黎明】
【工藤仁@戦慄怪奇ファイル コワすぎ!】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、ステルスドローン@ナノハザード、口裂け女の髪(強化後)@戦慄怪奇ファイル コワすぎ!
[思考・状況]
基本方針:脱出はするが、「コワすぎ」も撮るに決まってんだろ
1:化け物(禰豆子)にマッチアップする別の化け物を探す
2:ステルスドローンを回して撮影する
[備考]
※参戦時期は「コワすぎ! 史上最恐の劇場版」開始前。タタリ村へ乗り込む準備中
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、ステルスドローン@ナノハザード、口裂け女の髪(強化後)@戦慄怪奇ファイル コワすぎ!
[思考・状況]
基本方針:脱出はするが、「コワすぎ」も撮るに決まってんだろ
1:化け物(禰豆子)にマッチアップする別の化け物を探す
2:ステルスドローンを回して撮影する
[備考]
※参戦時期は「コワすぎ! 史上最恐の劇場版」開始前。タタリ村へ乗り込む準備中
【前園甲士@ナノハザード】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~4、ベレッタM92F@現実、青酸カリ@現実、
人肉ハンバーグ@仮面ライダーアマゾンズ、藤の花の毒付きの苦無@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:人を殺してでも生き残る。
1:この場から離れる。
2:人間よりも強い『超人』を利用して禰豆子と殺し合わせる。
3:工藤・姐切を利用する
[備考]
※参戦時期、未定。後続に任せます。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~4、ベレッタM92F@現実、青酸カリ@現実、
人肉ハンバーグ@仮面ライダーアマゾンズ、藤の花の毒付きの苦無@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:人を殺してでも生き残る。
1:この場から離れる。
2:人間よりも強い『超人』を利用して禰豆子と殺し合わせる。
3:工藤・姐切を利用する
[備考]
※参戦時期、未定。後続に任せます。
【姐切ななせ@ラブデスター】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:脱出する
1:とりあえずは工藤・前園と行動する
[備考]
※参戦時期は少なくともキスデスター編より後
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:脱出する
1:とりあえずは工藤・前園と行動する
[備考]
※参戦時期は少なくともキスデスター編より後
そうして合流した三人であったが、前園甲士が彼らにもたらしたものはそれだけではなかった。
回収した支給品のなかに、工藤もよく知る品があったのだ。
前園としてはさして価値があるものとは思えなかったため、それは工藤の手に渡ることとなった。
前園としてはさして価値があるものとは思えなかったため、それは工藤の手に渡ることとなった。
それは──かつて工藤が出会った、口裂け女の髪であった。
その髪こそ、工藤仁がこれまで幾多もの怪異と渡り合ってきた必殺の呪具である。
偶然禰豆子に支給されていたそれを、前園がたまたま漏らさず拾い、運良くであった工藤のもとに渡ってきた。
ある種の必然──否、運命さえも感じさせる出来事であったのだが、前園も、工藤も、その因果をさして重要視はしていなかった。
ある種の必然──否、運命さえも感じさせる出来事であったのだが、前園も、工藤も、その因果をさして重要視はしていなかった。
だが──少しずつ事態は前に進んでいた。
【口裂け女の髪(強化後)@戦慄怪奇ファイル コワすぎ!】
「コワすぎ!」スタッフが最初に遭遇した怪異「口裂け女」の頭髪と思しきもの。
「口裂け女」を捕獲しようとするも失敗したスタッフは、代わりに部屋に残されたこの髪を入手。
以来工藤はこの髪を拳に巻きつけ「幽霊」や「河童」を殴りつけることで、それらを撃退しようとしてきた。
(口裂け女の呪いが勝つのか、他の怪異が勝つのか、実験的な対処法である)
「コワすぎ!」スタッフが最初に遭遇した怪異「口裂け女」の頭髪と思しきもの。
「口裂け女」を捕獲しようとするも失敗したスタッフは、代わりに部屋に残されたこの髪を入手。
以来工藤はこの髪を拳に巻きつけ「幽霊」や「河童」を殴りつけることで、それらを撃退しようとしてきた。
(口裂け女の呪いが勝つのか、他の怪異が勝つのか、実験的な対処法である)
この髪は「劇場版:序章」にて登場した強化後のもの。
呪術師犬井の自殺による儀式の結果、口裂け女の呪術がさらに増大。
それまでビニール袋に入れていた髪を、犬井が作った袋に入れることでより強力なものとなったのである。
呪術師犬井の自殺による儀式の結果、口裂け女の呪術がさらに増大。
それまでビニール袋に入れていた髪を、犬井が作った袋に入れることでより強力なものとなったのである。
袋の中には犬井の遺書も含まれており、内容としては以下になる。
一、これは「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」というビデオのディレクターである工藤に送ること
二、「コワすぎ! ファイル04」を見てこの世界に起こりつつあることを悟った。工藤に希望を託す
三、遺した袋には私の命と引き換えにある呪術を施した。
この袋に口裂けの女の髪を入れると呪術が増大し、必殺の呪具となる。
袋の中にあるうちは、口裂けの女の呪いが外に漏れることもない。
二、「コワすぎ! ファイル04」を見てこの世界に起こりつつあることを悟った。工藤に希望を託す
三、遺した袋には私の命と引き換えにある呪術を施した。
この袋に口裂けの女の髪を入れると呪術が増大し、必殺の呪具となる。
袋の中にあるうちは、口裂けの女の呪いが外に漏れることもない。
四、工藤よ、やるべきことをやれ、救うべきものを救え
| 前話 | お名前 | 次話 |
| Debut | 工藤仁 | FILE02「海面観測!巨大な人影」 |
| 獣が嗤うこの街で | 前園甲士 | |
| Debut | 姐切ななせ |