メルティ・スイートハートとビターステップ◆PxtkrnEdFo
ぺたぺた。
ちょんちょん。
もちもち。
ぐにーーーー!
ちょんちょん。
もちもち。
ぐにーーーー!
「うぅ……痛い、です……」
ぐにぐにと自分の体を手を伸ばしてこねくり回す。
中野四葉はそれだけの所作を一度では足りないと言わんばかりにしきりに繰り返していた。
悪い夢なら覚めてほしいと願いを込めて、それに比例するだけ力も籠めて。
体中に手を伸ばして、そこにあるのを確かめて。
さっきまで右を見ても左を見ても、胴体を見てもスカートをはためかせても、そこにあるのは訳の分からないスタジオだった。
目を閉じても耳を塞いでも景色は変わらなかった。そして景色の切り替わった今でも最後の惨劇は目と耳にこびりついている。
花火のようなボン、という爆発音に、女の子なら定期的に見る赤黒い液体。どちらか単独ならまだ馴染んだものでも組み合わさると恐怖をもたらす非日常になる。
非現実的な出来事に足元が崩されたように感じて、今ここにいる自分も怪しく思えて。
体はホントにここにある?首と胴は繋がってる?心臓は動いてる?夢?現実?
……体はある。首もある。よかった、私はここで生きている。
……頬が痛い。首輪がある。ああ、夢じゃあないんだ。
中野四葉はそれだけの所作を一度では足りないと言わんばかりにしきりに繰り返していた。
悪い夢なら覚めてほしいと願いを込めて、それに比例するだけ力も籠めて。
体中に手を伸ばして、そこにあるのを確かめて。
さっきまで右を見ても左を見ても、胴体を見てもスカートをはためかせても、そこにあるのは訳の分からないスタジオだった。
目を閉じても耳を塞いでも景色は変わらなかった。そして景色の切り替わった今でも最後の惨劇は目と耳にこびりついている。
花火のようなボン、という爆発音に、女の子なら定期的に見る赤黒い液体。どちらか単独ならまだ馴染んだものでも組み合わさると恐怖をもたらす非日常になる。
非現実的な出来事に足元が崩されたように感じて、今ここにいる自分も怪しく思えて。
体はホントにここにある?首と胴は繋がってる?心臓は動いてる?夢?現実?
……体はある。首もある。よかった、私はここで生きている。
……頬が痛い。首輪がある。ああ、夢じゃあないんだ。
それを確かめるためだけに、どれだけの時間が経ったのだろう。
早鐘を打つ心臓はまだ自分が生きていることに加えて時間が刻一刻と過ぎていることも教えてくれる。
まるでテストのタイムリミットのよう。
テストの、リミット。
だったら。
一分一秒も惜しまなきゃいけないということは先生に散々教わっている。
早鐘を打つ心臓はまだ自分が生きていることに加えて時間が刻一刻と過ぎていることも教えてくれる。
まるでテストのタイムリミットのよう。
テストの、リミット。
だったら。
一分一秒も惜しまなきゃいけないということは先生に散々教わっている。
頭が良くはないと自他ともに認める中野四葉ではあるが、さすがにこれ以上不毛な現実逃避はしていられないと頬の痛みに目を白黒させながらも周りに目をやり始めた。
「ここ……どこでしょう?」
暗くてぼんやりとしか見えないが室内だということは分かる。
「えーとスマホ、スマホ」
ポケットを漁って探し出したそれの画面をつけて視界を照らすが、目に入るのは知らない天井ばかり。
アプリで地図を見られないかと試みても圏外で。
アプリで地図を見られないかと試みても圏外で。
地図はディパックの中にあるとあの女の子が言っていたっけ、と思い出しそこから続けて名簿やルールブックなどの存在にも続けて思い至る。
見たくないなぁ、という気持ちが半分……いやそれ以上。赤点覚悟の答案を初めて受け取った時以上に目を背けたい気持ちでいっぱいだ。
でもそこには知らないといけないことがたくさん書いてあるはずで、見ないという選択をするほどバカにはなれなかった。
見たくないなぁ、という気持ちが半分……いやそれ以上。赤点覚悟の答案を初めて受け取った時以上に目を背けたい気持ちでいっぱいだ。
でもそこには知らないといけないことがたくさん書いてあるはずで、見ないという選択をするほどバカにはなれなかった。
スマホの明かりを頼りに近くに置かれたディパックを探し、仄暗い視界でごそごそと中を漁る。
それらしいものを見つけることはできたが、やはりスマホの明かりだけでは見づらくてかなわない。
光源もありそうなものだが、そもそもこのままではそれを見つけるのにも一苦労しそうだ。
それらしいものを見つけることはできたが、やはりスマホの明かりだけでは見づらくてかなわない。
光源もありそうなものだが、そもそもこのままではそれを見つけるのにも一苦労しそうだ。
(明かり……ありますよね)
大概は部屋を入ってすぐの壁にあるものだし、スマホ程度の光源でも何となくの手探りでたどり着けるだろう。
明かりをつけていいものか、と悩みはする。
でも足はそちらに伸びていた。
心細さ、から来たものだろうか。もしかして、という期待と、こんなところにいないでほしいという願い。
暗い部屋の明かりに手を伸ばしたらひょっとしたらまたみんなと会えるんじゃないか、会えてしまうんじゃいかと足を運ぶ。
明かりをつけていいものか、と悩みはする。
でも足はそちらに伸びていた。
心細さ、から来たものだろうか。もしかして、という期待と、こんなところにいないでほしいという願い。
暗い部屋の明かりに手を伸ばしたらひょっとしたらまたみんなと会えるんじゃないか、会えてしまうんじゃいかと足を運ぶ。
ガチャリ、とドアの開く音。
気配も足音もなく入り込んでくる影。
そこにいたのは姉妹ではなくて、明かりに手は届かなかったけども。
暗闇の中で人と会うのは林間学校の時と同じだ、と懐かしく目の前の光景を冷静に見ている自分がどこかにはいた。
気配も足音もなく入り込んでくる影。
そこにいたのは姉妹ではなくて、明かりに手は届かなかったけども。
暗闇の中で人と会うのは林間学校の時と同じだ、と懐かしく目の前の光景を冷静に見ている自分がどこかにはいた。
◇ ◇ ◇
「それじゃあ皇城さんはこういうの初めてじゃないんですかー」
「うん、まあ。複雑な気分だけど奇妙な出来事に巻き込まれるのには慣れてきてしまったかな」
「うん、まあ。複雑な気分だけど奇妙な出来事に巻き込まれるのには慣れてきてしまったかな」
皇城ジウと中野四葉の二人は、今は部屋の中央でランタンの火を囲って話している。
こうなるまでにも些かの時間は要したが。
まず遭遇時に慌てた四葉をなだめるのに数分。
明かりを点けようとする四葉を制して、外に光が漏れないようにしたのちにランタンに灯をともすのにまた数分。
明かりがついたからまだ名簿などを見ていないという四葉がそれらに目を通すの待ってみれば、家族と友達がいることを見て平静を失ってまたしばらく。
吐き出すものを吐き出して、ようやく落ち着いたのが現状だ。
こうなるまでにも些かの時間は要したが。
まず遭遇時に慌てた四葉をなだめるのに数分。
明かりを点けようとする四葉を制して、外に光が漏れないようにしたのちにランタンに灯をともすのにまた数分。
明かりがついたからまだ名簿などを見ていないという四葉がそれらに目を通すの待ってみれば、家族と友達がいることを見て平静を失ってまたしばらく。
吐き出すものを吐き出して、ようやく落ち着いたのが現状だ。
「懐中電灯とかじゃなくてランタンの火というのは助かったかもね。火を眺めていると落ち着くのは元来狩猟民族である僕たちの本能のようなものだったはずだから」
そんなことを言いながら笑顔で話を聞いてくれたジウには感謝しかない。
それで表層的には静かになったが内心は当然荒れ狂ったままだ。
自分のせいで、みんなが巻き込まれたなんて考えまで浮かんでしまう。
姉妹のみんなは自分だけが落第したのについて来てくれた。その先で上杉さんと出会って、親しくなった。それはとても嬉しいことだけども。
皆が着いてこなければここにいるのは私だけだったのでは。私たちと出会ってなければ上杉さんはここにいずに済んだのでは。
そんなネガティブになろうと思えばどこまでも沈んでいけそうな思考になっている四葉の視界に、ふと自分のバッグを漁っているジウが入る。
それで表層的には静かになったが内心は当然荒れ狂ったままだ。
自分のせいで、みんなが巻き込まれたなんて考えまで浮かんでしまう。
姉妹のみんなは自分だけが落第したのについて来てくれた。その先で上杉さんと出会って、親しくなった。それはとても嬉しいことだけども。
皆が着いてこなければここにいるのは私だけだったのでは。私たちと出会ってなければ上杉さんはここにいずに済んだのでは。
そんなネガティブになろうと思えばどこまでも沈んでいけそうな思考になっている四葉の視界に、ふと自分のバッグを漁っているジウが入る。
「これ、僕の支給品だ。食べるといい、少しは落ち着くはずだ」
そう言ってジウが取り出したのは、なんと救急用のキットが入ったバッグだった。
中の鎮静剤でも服用しろということだろうか。それにしては食べるという表現は奇妙だと四葉が反応に困っていると、ジウがその支給品の説明書らしいものを確かめ渡してくる。
中の鎮静剤でも服用しろということだろうか。それにしては食べるという表現は奇妙だと四葉が反応に困っていると、ジウがその支給品の説明書らしいものを確かめ渡してくる。
「どこまで本気なのかは分からないけれども、フローレンス・ナイチンゲールが用意した救急キットと、非常食用のチョコレートらしいよ」
「ナイチンゲール、って……」
「ナイチンゲール、って……」
学のない四葉でも知っている。看護婦さんだ。それもなんか歴史上有名な。
受け取った説明書に軽く目を通すとたしかにナイチンゲールと書いてある。
え、冗談じゃないんですか?
受け取った説明書に軽く目を通すとたしかにナイチンゲールと書いてある。
え、冗談じゃないんですか?
「名簿にフローレンス・ナイチンゲールという名前は書いてあったし、他にも宮本武蔵だとか気になるのはあるけれど……それは置いておこう。物の効能は古今東西変わりない。
チョコレートというのは栄養価が高く、携帯性や保存性にも優れている。薬効成分も多く含んでいるから鎮静作用もあって体にいい。軍用レーションに採用されたこともあるんだ」
チョコレートというのは栄養価が高く、携帯性や保存性にも優れている。薬効成分も多く含んでいるから鎮静作用もあって体にいい。軍用レーションに採用されたこともあるんだ」
続けてそんな蘊蓄を披露しながらキットとは明らかに別個に用意されていた包みを手に取って、これもまた四葉へと渡す。
ラッピングの外からでもわかる甘い香りに流されるように包みを丁寧に解くと
ラッピングの外からでもわかる甘い香りに流されるように包みを丁寧に解くと
「わ。凄いですねこれ」
中から現れたのはきらきらと水晶のように輝くチョコレートだった。
ひんやりと冷たい感触と仄かに香る蜂蜜に食欲をつんつんと刺激されて、知らず口内に湧き上がるつばを飲み込む。
危うく涎になる直前で慌てたせいでごくんと思った以上に大きな音がした気がして、はしたなさに少し頬の赤みを増してジウの様子をこっそりうかがう。
ジウはというと特に気付いた様子もなく救急キットの中身を確かめていた。
ひんやりと冷たい感触と仄かに香る蜂蜜に食欲をつんつんと刺激されて、知らず口内に湧き上がるつばを飲み込む。
危うく涎になる直前で慌てたせいでごくんと思った以上に大きな音がした気がして、はしたなさに少し頬の赤みを増してジウの様子をこっそりうかがう。
ジウはというと特に気付いた様子もなく救急キットの中身を確かめていた。
「ナイチンゲール……19世紀の看護師が選んだものじゃないな。抗生物質は彼女の時代には未発見のはず。観光地でよくやる有名人にあやかった土産の類かな」
などなど独りごちているのが四葉の耳にも届く。
(もー。女の子といるのにそれは減点ものですよ)
と考えはするもののおいしそうなチョコレートに喉を鳴らしていたなんて気付いてほしくはないのだから今回は許してあげよう、と結論付けて。
小さく笑いが漏れて、自分が落ち着きを取り戻しつつあるのを自覚する。
甘い匂いに食欲を刺激されて日常を思い出した……それもあるだろう。
じつのところそれ以上に目の前の男性、皇城ジウの態度が大きい気がしている。
初対面なのにこちらを警戒とかしないで道具に夢中だし。
直接気遣う言葉よりも難しいマメ知識を語って聞かせてくれるような、頭がいいんだけど女の子への気遣いが一歩足りないところとか、見た目は全然違うけどなんとなく上杉さんみたいだなって。あの人が傍にいてくれるみたいで、こんな状況なのに何だか嬉しくて。
そんなことを考えながら手にしたチョコレートを齧る。
冷たいアイスウエハースの層を超え、チョコに歯が食い込むと、とろりと奥から甘い蜜が溢れ出る。
今まで食べたことのないような甘味に思わず叫んでしまいそうになる。
声は抑えたが四葉の息は荒く全身で喜びを表現していた。
小さく笑いが漏れて、自分が落ち着きを取り戻しつつあるのを自覚する。
甘い匂いに食欲を刺激されて日常を思い出した……それもあるだろう。
じつのところそれ以上に目の前の男性、皇城ジウの態度が大きい気がしている。
初対面なのにこちらを警戒とかしないで道具に夢中だし。
直接気遣う言葉よりも難しいマメ知識を語って聞かせてくれるような、頭がいいんだけど女の子への気遣いが一歩足りないところとか、見た目は全然違うけどなんとなく上杉さんみたいだなって。あの人が傍にいてくれるみたいで、こんな状況なのに何だか嬉しくて。
そんなことを考えながら手にしたチョコレートを齧る。
冷たいアイスウエハースの層を超え、チョコに歯が食い込むと、とろりと奥から甘い蜜が溢れ出る。
今まで食べたことのないような甘味に思わず叫んでしまいそうになる。
声は抑えたが四葉の息は荒く全身で喜びを表現していた。
『ほっぺたが落ちちゃうんじゃないかってくらい美味しいですよー。中の蜂蜜、これはレモンとよくセットになってる、疲労回復にいいというあれですね!だから救急キットに!』
そんな風にこんどはこちらがマメ知識と感想を伝えよう、とするが。
ひゅーひゅーと口笛を鳴らすような音が響くばかりで言葉が意味を結ばない。
おかしいな、と疑問に思ってさらにもう一つ。
さんざん引っ張ったせいでまだ僅かにだが痛んでいた頬の痛みが消えている。
それもまた何だかおかしいな、と思って口元に手を伸ばす。
だが、その手が空振る……頬や顎のあるべき場所に何も、ない。
疑問の声を呟こうと四葉の体は活動したが、今度もまた声にならない吐息未満のものが喉元から吐き出される。
おかしいな、と疑問に思ってさらにもう一つ。
さんざん引っ張ったせいでまだ僅かにだが痛んでいた頬の痛みが消えている。
それもまた何だかおかしいな、と思って口元に手を伸ばす。
だが、その手が空振る……頬や顎のあるべき場所に何も、ない。
疑問の声を呟こうと四葉の体は活動したが、今度もまた声にならない吐息未満のものが喉元から吐き出される。
皇城ジウは、それを冷め切った眼で見つめていた。
「メルトウイルスなんて聞いたことなかったから半信半疑だったけれども。なるほど、どこまで本気かは分からないが少なくともこれは本物らしいね」
そして口にした言葉もまた、四葉の食べたチョコなど及ばないほどに冷たかった。
たしかな殺意と無関心がそこにあった。
たしかな殺意と無関心がそこにあった。
けれどももう、四葉にそれを気にするような余裕はない。
痺れるような、甘い甘い感覚が蜜のように口から躰へと広がっていく。
恋のような痛みに、愛のような甘さに、犯され、溶かされていく。
まさしくこの世のものとは思えぬほどの甘美な快楽……それが中野四葉が最期に噛みしめた『死』の味だった。
恋のような痛みに、愛のような甘さに、犯され、溶かされていく。
まさしくこの世のものとは思えぬほどの甘美な快楽……それが中野四葉が最期に噛みしめた『死』の味だった。
【中野四葉@五等分の花嫁 死亡】
あおむけに倒れた四葉の亡骸をジウは軽く観察する。
チョコを齧った口腔部分、頬や顎にかけては完全に溶けてなくなり、美しかったかんばせの下半分は欠損して二目と見れたものではない。身元の判別にも苦労しそうだ。
そして蜜を飲み下した喉から胃の腑にかけても無事ではない。
首が内側から溶けて、四葉であった液体がつけられた首輪を汚している。
さらにチョコを飲み下し、滞留したであろう食道から胃にかけて……女性的魅力に満ちていた胸の峰も溶融し、中にあった肺や心臓の溶けた液の溜まる湖へ転じていた。間違いなく致命的だ。
チョコを齧った口腔部分、頬や顎にかけては完全に溶けてなくなり、美しかったかんばせの下半分は欠損して二目と見れたものではない。身元の判別にも苦労しそうだ。
そして蜜を飲み下した喉から胃の腑にかけても無事ではない。
首が内側から溶けて、四葉であった液体がつけられた首輪を汚している。
さらにチョコを飲み下し、滞留したであろう食道から胃にかけて……女性的魅力に満ちていた胸の峰も溶融し、中にあった肺や心臓の溶けた液の溜まる湖へ転じていた。間違いなく致命的だ。
それだけ即座に確かめると救急キットから取り出した三角巾で口と鼻を覆い、キットの説明書やランタンなどを四葉のディパックに放り込む。
そうして自分のものと合わせて二つのディパックを手に急いでジウはその場を離れるべく動いた。
扉を乱暴に開けて閉めて、駆け足で距離をとり事前に位置を確かめていたトイレに駆け込んでさらに扉を隔てる。
そうして自分のものと合わせて二つのディパックを手に急いでジウはその場を離れるべく動いた。
扉を乱暴に開けて閉めて、駆け足で距離をとり事前に位置を確かめていたトイレに駆け込んでさらに扉を隔てる。
(紙のラッピングとチョコで包んだだけだったんだし、飛沫感染ということはないだろうけど警戒に越したことはない。なにせ未知のウイルスだ)
とはいえもしメルトウイルスというのがエボラのような感染力ならマズいが、そんな自滅の可能性が高いものを粗雑に支給はしないだろう。
氷で包んでいたのももしかしたらウイルスの活動・保存のためだったのかもしれない。
ともあれこれ以上の警戒は無用だろう、と口元を覆う布を外し一息つく。
その布は改めてキットの中へ。こっそりと手の内に忍ばせていたシリンジの大きな針も同様にしてしまう。
そして懐――誰にも見られないよう忍ばせていた――にしまっていたカードを三枚、改めて取り出す。
それは救急キットに付属していたものと合わせて四つの説明書……バレンタインのメッセージカードだった。
氷で包んでいたのももしかしたらウイルスの活動・保存のためだったのかもしれない。
ともあれこれ以上の警戒は無用だろう、と口元を覆う布を外し一息つく。
その布は改めてキットの中へ。こっそりと手の内に忍ばせていたシリンジの大きな針も同様にしてしまう。
そして懐――誰にも見られないよう忍ばせていた――にしまっていたカードを三枚、改めて取り出す。
それは救急キットに付属していたものと合わせて四つの説明書……バレンタインのメッセージカードだった。
🌸 🌸 🌸
月代中学校で一番のモテモテボーイ、主人公力334の皇城さんにはヒロイン力53万のBBちゃんからチョコレートのプレゼント♡
これを使いこなせば主人公力416までアップ間違いなし!ご賞味あ~れ♡
これを使いこなせば主人公力416までアップ間違いなし!ご賞味あ~れ♡
🌸 🌸 🌸
一枚はこのバトルロワイアルの主催を自称するBBという女からの役に立たないメッセージ。支給品の内容と意図を悪意たっぷりに説明したもの。
残りの三枚は名簿に名前の書かれた、本来の送り主に当てたであろうメッセージにBBが注釈を加えたもの。
製作者の名前は三分の二は知っていて、三つ全てが名簿に載っているものだった。
フローレンス・ナイチンゲールの救急キット。キットの中身についての説明が付属していた。
メルトリリスのメルティ・ハート。本来の制作者が知るしたであろうチョコレートの解説に加えて、メルトウイルスという人を溶かす毒が混入していることがBBに注釈されていた。
そして最後の一つ。
残りの三枚は名簿に名前の書かれた、本来の送り主に当てたであろうメッセージにBBが注釈を加えたもの。
製作者の名前は三分の二は知っていて、三つ全てが名簿に載っているものだった。
フローレンス・ナイチンゲールの救急キット。キットの中身についての説明が付属していた。
メルトリリスのメルティ・ハート。本来の制作者が知るしたであろうチョコレートの解説に加えて、メルトウイルスという人を溶かす毒が混入していることがBBに注釈されていた。
そして最後の一つ。
(酒呑童子の、ネクタール・ボンボン……)
神便鬼毒酒が入ったボンボンだと書かれている。
あまりにもふざけていてどこから指摘すればいいのかジウには分からない。
あまりにもふざけていてどこから指摘すればいいのかジウには分からない。
(だが、根も葉もないただの菓子ということは恐らくないだろう)
メルトウイルスとやらが本当に効果を発揮するのか……救急キット付属のチョコと見せかけて試してみれば、人を殺すには十二分な性能を発揮して見せた。
名簿に描かれたいくつかの名前……酒呑童子やナイチンゲールに加えて源頼光、宮本武蔵、沖田総司、エドモン・ダンテスや清姫など歴史や物語で聞いた名前がいくつかある。
そして猛田トシオという、見知った故人の名前も。さらに皇城ジウはレイディという死んだはずの人物(?)が蘇ったのを目の当たりにしている。
……BBも言っていた、死者の蘇生はあながち夢物語ではない。
清姫や酒呑童子が実在したかはともかく、沖田総司や宮本武蔵を蘇らせたと言われればジウはそれを大いにあり得ることだと考える。
名簿に描かれたいくつかの名前……酒呑童子やナイチンゲールに加えて源頼光、宮本武蔵、沖田総司、エドモン・ダンテスや清姫など歴史や物語で聞いた名前がいくつかある。
そして猛田トシオという、見知った故人の名前も。さらに皇城ジウはレイディという死んだはずの人物(?)が蘇ったのを目の当たりにしている。
……BBも言っていた、死者の蘇生はあながち夢物語ではない。
清姫や酒呑童子が実在したかはともかく、沖田総司や宮本武蔵を蘇らせたと言われればジウはそれを大いにあり得ることだと考える。
(死者の蘇生という非現実的な可能性の実例を名簿を通して知らしめている、というところだろうか。なら名簿の酒呑童子も、それを殺した神便鬼毒酒にも真実味は出てくる)
非常食ではない、何らかの鬼札にはなるだろうとジウはそれを武器として認識することに決めた。
そう決めたら、手札は伏せておくに越したことはない。
救急キットの説明書を除くすべてのメッセージカードをビリビリと破り捨ててトイレに流す。
あとはラッピングされたネクタール・ボンボンを救急キットのセットに見えるように括りつけて
そう決めたら、手札は伏せておくに越したことはない。
救急キットの説明書を除くすべてのメッセージカードをビリビリと破り捨ててトイレに流す。
あとはラッピングされたネクタール・ボンボンを救急キットのセットに見えるように括りつけて
(よし。これで一つの支給品に見えるはずだ)
いささかミスマッチだが元からこうだったと強弁できなくはない。
というか実際元からこんなものだと、本来付属していたチョコを尻目に考える。
それから続けて四葉のディパックを漁り、支給品を取り出――――
というか実際元からこんなものだと、本来付属していたチョコを尻目に考える。
それから続けて四葉のディパックを漁り、支給品を取り出――――
「うわっと……!」
表れたのは大量の刀だった。
それもなぜ地図などを漁っていたのにこれに気付かないのか、というほどに大量の。
それもなぜ地図などを漁っていたのにこれに気付かないのか、というほどに大量の。
その刀、銘を千刀・『鎩』という。
千本で一本と称される、全く同性能の刀が千本存在する多さに主眼を置いた刀だ。
千本で一本と称される、全く同性能の刀が千本存在する多さに主眼を置いた刀だ。
(さすがに本当に千本は入ってない……よな?)
数えている余裕はないし、今はその必要もないだろうと一つを腰に下げて他はしまう。
(だがこれも助かるな)
どこまでが千刀なのか、知っていなければ区別はできない。
木を隠すなら森の中、支給品を隠すなら支給品の中だ。
これなら手持ちの支給品が誰かを殺して奪ったようには見えないだろう、とほくそ笑み。
支給品を奪ったディパックは彼女の死体のある部屋の前にぶちまけておくことにする。
もしメルトウイルスに感染性があれば、中の死体に気付いて首輪を気にかける者がいれば――犬童のように――トラップになってくれるかもしれない。契機は増やしておいた方がいいだろうから。
木を隠すなら森の中、支給品を隠すなら支給品の中だ。
これなら手持ちの支給品が誰かを殺して奪ったようには見えないだろう、とほくそ笑み。
支給品を奪ったディパックは彼女の死体のある部屋の前にぶちまけておくことにする。
もしメルトウイルスに感染性があれば、中の死体に気付いて首輪を気にかける者がいれば――犬童のように――トラップになってくれるかもしれない。契機は増やしておいた方がいいだろうから。
(さて、これでここにもう用はない)
最後に証拠隠滅のために救急キットについていたチョコレートを片づけることにする。
まあ食べてしまうのが無難だろう。
まあ食べてしまうのが無難だろう。
(ん……)
こうしてチョコレートを齧るとファウストの企画したイベントをいやでも思い出す。
それほどまでにラブデスター試験が脳内で占める割合は大きい。
細川ひさこの仮想空間で体感で数年過ごしたせいで思い出補正でもかかっているのか。
あの時とは周りの環境も、心理状態が全く違うからか。
実際にそうなのかは分からないが
それほどまでにラブデスター試験が脳内で占める割合は大きい。
細川ひさこの仮想空間で体感で数年過ごしたせいで思い出補正でもかかっているのか。
あの時とは周りの環境も、心理状態が全く違うからか。
実際にそうなのかは分からないが
(姐切にもらったチョコの方が美味しかった気がするな)
口にしたチョコの味はなんだかとても苦々しく思えた。
【E-6 民家/一日目・深夜】
【皇城ジウ@ラブデスター】
[状態]:健康
[装備]:千刀・『鎩』@刀語
[道具]:基本支給品一式、救急キット@Fate/Grand Order、ネクタール・ボンボン@Fate/Grand Order、ランダム支給品0~2(前述のものと合わせて支給品が合計3つ以下に見える状態)
[思考・状況]
基本方針:しのを生き残らせる
0:(ガツガツガツガツとチョコを食べている)
1:しのを優勝させるために皆殺す
[備考]
※参戦時期は細川ひさこの仮想空間(新選組のやつ)から帰還してミクニを殺害するまでの間です。
※中野四葉から彼女の知り合いについて話を聞きました。少なくとも林間学校以降の時系列のものです。
[状態]:健康
[装備]:千刀・『鎩』@刀語
[道具]:基本支給品一式、救急キット@Fate/Grand Order、ネクタール・ボンボン@Fate/Grand Order、ランダム支給品0~2(前述のものと合わせて支給品が合計3つ以下に見える状態)
[思考・状況]
基本方針:しのを生き残らせる
0:(ガツガツガツガツとチョコを食べている)
1:しのを優勝させるために皆殺す
[備考]
※参戦時期は細川ひさこの仮想空間(新選組のやつ)から帰還してミクニを殺害するまでの間です。
※中野四葉から彼女の知り合いについて話を聞きました。少なくとも林間学校以降の時系列のものです。
【全体備考】
※E-6民家内に中野四葉の死体(メルトウイルスで損壊)があります。その部屋の前にディパックの中の基本支給品一式がぶちまけられています。
※E-6民家内に中野四葉の死体(メルトウイルスで損壊)があります。その部屋の前にディパックの中の基本支給品一式がぶちまけられています。
【支給品紹介】
メルティ・ハート@Fate/Grand Order
メルトリリスからのバレンタインチョコ。
きらきらと水晶のように輝くチョコ。
硬いチョコ岩盤を切り裂いて作ったもの。
深夜の厨房では
「いくわよ、いくわよ、いくわよ・・・・・・!」
妙に興奮した体でチョコ岩盤に踵を振うメルトリリスの姿があったとか。
口にいれるととても冷たく、注意して噛まないと口の中を傷つける。
チョコの中の蜂蜜は身も心も溶かすメルトの毒、メルトウイルス。
メルティ・ハート@Fate/Grand Order
メルトリリスからのバレンタインチョコ。
きらきらと水晶のように輝くチョコ。
硬いチョコ岩盤を切り裂いて作ったもの。
深夜の厨房では
「いくわよ、いくわよ、いくわよ・・・・・・!」
妙に興奮した体でチョコ岩盤に踵を振うメルトリリスの姿があったとか。
口にいれるととても冷たく、注意して噛まないと口の中を傷つける。
チョコの中の蜂蜜は身も心も溶かすメルトの毒、メルトウイルス。
救急キット@Fate/Grand Order
ナイチンゲールからのバレンタインの救急キット。
救急キットの常備は必須です。
常日頃より携帯しておくように。
チョコレート?
ああ、そうですね。確かに。
非常用食料も添えておきましたがそれがなにか。
ナイチンゲールからのバレンタインの救急キット。
救急キットの常備は必須です。
常日頃より携帯しておくように。
チョコレート?
ああ、そうですね。確かに。
非常用食料も添えておきましたがそれがなにか。
ネクタール・ボンボン@Fate/Grand Order
酒呑童子からのバレンタインチョコ。
きつぅい酒が入っとるさかい、気ぃつけてや?
酔い潰れるくらいならまだいい方。
猛り狂っておかしゅうなってしまうかもやけど、まぁ、堪忍え。ふふ。
中身は彼女の宝具、神便器毒酒。
酒呑童子からのバレンタインチョコ。
きつぅい酒が入っとるさかい、気ぃつけてや?
酔い潰れるくらいならまだいい方。
猛り狂っておかしゅうなってしまうかもやけど、まぁ、堪忍え。ふふ。
中身は彼女の宝具、神便器毒酒。
千刀・『鎩』(セントウ・ツルギ)@刀語
「いくらでも替えが利く、恐るべき消耗品としての刀」
多さに主眼を置いた刀。
「千本で一本」と称されていて、全く同じ性能の刀が千本存在する。
その実態は一本のオリジナルさえ残っていれば無限に生産が可能というもの。
刀としては十二本の中で一番「普通の名刀」。
「いくらでも替えが利く、恐るべき消耗品としての刀」
多さに主眼を置いた刀。
「千本で一本」と称されていて、全く同じ性能の刀が千本存在する。
その実態は一本のオリジナルさえ残っていれば無限に生産が可能というもの。
刀としては十二本の中で一番「普通の名刀」。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| Debut | 皇城ジウ | どうにもならない事があっても幸福な君を守ってあげる |
| Debut | 中野四葉 | Eliminated |