悲しみは仮面の下に(前編) ◆FTrPA9Zlak
PENTAGONから出た一花と炭治郎は、道中でちょっとした雑談に花を咲かせていた。
「それにしても、姉妹で五つ子ってすごいと思いますよ」
「うん、まあ、みんな驚くよ。珍しいって。
私が一番上だけど、同じ日に生まれるとそんなに気にしないから」
「早く、見つけてあげないといけませんね」
「炭治郎くんは、禰豆子ちゃんだっけ。妹がいるんだよね?」
「ええ、はい。たった一人の、大切な妹です」
「うん、まあ、みんな驚くよ。珍しいって。
私が一番上だけど、同じ日に生まれるとそんなに気にしないから」
「早く、見つけてあげないといけませんね」
「炭治郎くんは、禰豆子ちゃんだっけ。妹がいるんだよね?」
「ええ、はい。たった一人の、大切な妹です」
その言葉を言った炭治郎の瞳が少し遠くを見ているような気がした。
少し訳ありだったのかなと迂闊に触れたことを反省する一花。
少し訳ありだったのかなと迂闊に触れたことを反省する一花。
「どんな方たちなんですか。その妹さん達って」
そんな一花の心中を他所に、会話は進む。
「私達五人って、同じ顔をしてるんだけどね。
最近は結構髪型変えたりしてるけど、ちょっと前は髪型も好みもおんなじで、見間違えられてばっかりだったし」
最近は結構髪型変えたりしてるけど、ちょっと前は髪型も好みもおんなじで、見間違えられてばっかりだったし」
ちょっと心の中に感じた罪悪感から、少し口が回ってしまっていた。
ただまあ、目の前の少年は悪い子ではないだろうし大丈夫だろう。
ただまあ、目の前の少年は悪い子ではないだろうし大丈夫だろう。
「だいぶ好みも変わってきたかなぁなんて思ってたら、好きな男の子の好みとか最近被ってたりしてさ。
血は争えないっていうか、ねぇ」
「あははは。仲がいいんですね、一花さん達姉妹は」
「うん」
血は争えないっていうか、ねぇ」
「あははは。仲がいいんですね、一花さん達姉妹は」
「うん」
「みんな、大事な家族だよ」
◇
振り下ろされた刃を、慌てて横に転がって避ける五月。
地面を斬りつけたアマゾンネオの刃は、コンクリート製の地面に深々と突き刺さっていた。
(千翼君……本気で…)
納得もできていない。
言いたいこともいっぱいあった。
言いたいこともいっぱいあった。
目を覚まさせたい、そんな気持ちは心の中に燻っている。
だけど、今の自分にはできない。
言葉が届く前に、殺される。
言葉が届く前に、殺される。
五月は、アマゾンネオが刃を引き抜くまでの間を見てアマゾンネオに背を向け一気に走り出した。
空腹であることも忘れ、おそらくこれまでの人生になかったくらいの力を足に込めて。
アマゾンネオはそんな五月を追う。
アマゾン生命体とただの人間、それも運動はそう得意でない者の脚力。
全力で走っていてもその差は歴然であり、刻一刻と距離が詰められている。
アマゾン生命体とただの人間、それも運動はそう得意でない者の脚力。
全力で走っていてもその差は歴然であり、刻一刻と距離が詰められている。
全力で走り続けたことで足がもつれて転がってしまう。
振り返ったところで、すぐ目の前で手の剣を振りかざすアマゾンネオの姿。
「千翼君っ!!」
名前を呼びかけるが止まる気配はない。
思わず目を閉じた。
思わず目を閉じた。
キィン
振り下ろされた剣が体に触れると思った瞬間に、金属音が響いた。
まるで剣と剣がぶつかり合うかのような。
まるで剣と剣がぶつかり合うかのような。
目を開ける。
闇夜の月光の下で、一人の少年が立っていた。
闇夜の月光の下で、一人の少年が立っていた。
黒い詰襟を着て、黒と緑の市松文様の上着を羽織っている。
その手には黒い刀が携えられており、アマゾンネオの刃を受け止めている。
その手には黒い刀が携えられており、アマゾンネオの刃を受け止めている。
「大丈夫ですか?!」
「俺は竈門炭治郎!向こうに中野一花さんが居ます!早く逃げてください!」
「…!一花が…!」
「俺は大丈夫だから!早く!!」
「俺は竈門炭治郎!向こうに中野一花さんが居ます!早く逃げてください!」
「…!一花が…!」
「俺は大丈夫だから!早く!!」
その刀を構えた小さな体が、先程まで共に行動していた少年の姿と被って。
同時にその名前が、彼が語っていた仲間のものだと気付く。
同時にその名前が、彼が語っていた仲間のものだと気付く。
だが、今の五月には説明することができない。それに説明している場合でもない。
立ち上がった五月は、炭治郎が示した方に向けて走り出した。
五月が遠ざかったのを見て、剣を弾く炭治郎。
残ったその場所で二人は睨み合った。
残ったその場所で二人は睨み合った。
(不思議な匂いだ、鬼じゃないけど、人間でもない。
血の匂いはするけど、鬼のように彼が殺したって感じでもなさそうだ)
血の匂いはするけど、鬼のように彼が殺したって感じでもなさそうだ)
相手の動きを伺いつつ、目の前の相手から感じる匂いを分析する炭治郎。
(それに、この匂いは…)
「炭治郎…、善逸の仲間か」
「善逸…!やっぱりあいつが。今どこにいるんだ?!」
「あいつは、死んだよ」
「…っ!」
「炭治郎…、善逸の仲間か」
「善逸…!やっぱりあいつが。今どこにいるんだ?!」
「あいつは、死んだよ」
「…っ!」
その言葉に動揺する炭治郎。
そこへ隙をつくかのように一気に距離を詰めるアマゾンネオ。
そこへ隙をつくかのように一気に距離を詰めるアマゾンネオ。
思考より先に体が動き、突き付けられた剣を受ける。
善逸は死んだのか。君は何者なのか。
聞きたいことはたくさんあった。だが、この相手の放つ殺意はこれ以上の会話を拒絶している。
聞きたいことはたくさんあった。だが、この相手の放つ殺意はこれ以上の会話を拒絶している。
(やらないと…、今この後ろには、一花さん達が…!!)
思考を引き締め、炭治郎は刀を振るった。
◇
「炭治郎君、どうしたんだろう…?」
PENTAGONを出て少し歩いた辺りで一人佇んでいる一花。
今から数分前のこと。
隣を歩いていた炭治郎の顔が突如険しくなった。
隣を歩いていた炭治郎の顔が突如険しくなった。
「炭治郎君?」
「一花さん、刀を渡してください」
「えっ、どうして?」
「誰かが近づいています。
一人は、一花さんの部屋に住んでいた、たぶん妹さんの誰かです。
それともう一人。人間じゃない何かがその人に近付いています」
「ちょっと待って、どうしてそんなことが分かるの―――」
「早く!これ以上は危険だ!」
「一花さん、刀を渡してください」
「えっ、どうして?」
「誰かが近づいています。
一人は、一花さんの部屋に住んでいた、たぶん妹さんの誰かです。
それともう一人。人間じゃない何かがその人に近付いています」
「ちょっと待って、どうしてそんなことが分かるの―――」
「早く!これ以上は危険だ!」
言ってることが突然すぎて信じられなかったが、鬼気迫る表情が嘘を言っているようにも見えなかった。
バッグから出した刀を渡すと、目にも留まらぬ速さで走り出した。
四葉よりも遥かに速そうだと感じるほどの速度で。
バッグから出した刀を渡すと、目にも留まらぬ速さで走り出した。
四葉よりも遥かに速そうだと感じるほどの速度で。
「もし妹さんと合流したら来た道を戻って、さっきの建物まで引き返してください!」
一瞬振り向いてそう叫び、炭治郎の姿が見えなくなった。
困惑し続ける一花の元に、やがて一つの影が見えてくる。
困惑し続ける一花の元に、やがて一つの影が見えてくる。
長い髪に星型の髪留めをつけているその少女は。
「五月ちゃん!?」
「い、一花…」
「い、一花…」
息を切らせながら走る五月に駆け寄り、その体を抱きとめる一花。
「どうしたの、大丈夫?!」
「はぁ、はぁ……、千翼くんが、炭治郎くんで、善逸くんが…」
「よし、まず落ち着こう!そうだ、これ」
「はぁ、はぁ……、千翼くんが、炭治郎くんで、善逸くんが…」
「よし、まず落ち着こう!そうだ、これ」
言っていることが途切れ途切れで容量を得ない。
と、一花のバッグから差し出されたパンの包み。食料品として入っていたものだ。
と、一花のバッグから差し出されたパンの包み。食料品として入っていたものだ。
それを見た五月は、ひったくるように袋を奪い、開いてガツガツと貪った。
10秒後、空になった袋を一花に渡しながら、焦る気持ちはそのままに口を開く。
10秒後、空になった袋を一花に渡しながら、焦る気持ちはそのままに口を開く。
「ち、千翼君が私を殺すって襲いかかってきて…、そしたら、炭治郎君が来て…」
「そっか…。怖かったよね…」
「そっか…。怖かったよね…」
背中をトントンと叩き落ち着くように宥める一花。
「違うんです…、千翼君は殺人鬼とかじゃなくて、好きな人が死んで、悲しんでて、だから生き返らせるためにって…」
「その、まずPENTAGONに一旦戻ろ。そこならたぶん落ち着くだろうし、話はそこで聞くから」
「その、まずPENTAGONに一旦戻ろ。そこならたぶん落ち着くだろうし、話はそこで聞くから」
少なくとも来た道を戻るのであればまだ危険な可能性は低いだろう。
震える体を支えながら、一花は来た道を引き返し始めた。
◇
「なあ蓮、PENTAGONってどういう意味だっけ」
「確かアメリカの国防省のことだったとかな気がするな。
あとは意味だけなら五角形だ。それぐらいは知っておけ、記者だろ」
「ちげーよ!それくらい知ってるよ!
ただ何か特徴的な名前なのにこうやって来てみたら、ただのでっかいマンションだからさ」
「マンションの名前ならそんな深い意味はないんだろ」
「そっかー」
「確かアメリカの国防省のことだったとかな気がするな。
あとは意味だけなら五角形だ。それぐらいは知っておけ、記者だろ」
「ちげーよ!それくらい知ってるよ!
ただ何か特徴的な名前なのにこうやって来てみたら、ただのでっかいマンションだからさ」
「マンションの名前ならそんな深い意味はないんだろ」
「そっかー」
などという会話をしながら、PENTAGONにやってきた真司と蓮。
最初の場所から近い位置にあった施設はふれあい動物パークとPENTAGON。
そのうち名前だけだとその実態がつかみにくいPENTAGONへと進路を取っていた。
そのうち名前だけだとその実態がつかみにくいPENTAGONへと進路を取っていた。
入ったマンションのロビーは大理石で作られた広い空間。
「うわ、広っ。ホテルみたいだな。
やっぱこういうところに住むのも憧れるよなぁ」
「言ってる場合か」
やっぱこういうところに住むのも憧れるよなぁ」
「言ってる場合か」
無論、軽口を叩きながらも真司も周囲に気を配っている。
誰かがいる気配はない。
誰かがいる気配はない。
「これやっぱ上に上がらないと分かんないんじゃないかって思うんだけどな」
「さっき外から見たが、俺が見た限りだと部屋の明かりは見えなかったぞ」
「でも夜だし、寝てるってこともあるんじゃないの?」
「こんな場所に連れてこられてか?」
「…だよなぁ」
「さっき外から見たが、俺が見た限りだと部屋の明かりは見えなかったぞ」
「でも夜だし、寝てるってこともあるんじゃないの?」
「こんな場所に連れてこられてか?」
「…だよなぁ」
ここに人はいないと見た二人は、PENTAGONを出て別の場所に移動しようと歩を進めようとして。
その時、外からこのマンションに向けて歩を進めてくる者の存在に気が付いた。
「誰かくるぞ蓮」
「しっ、静かにしろ。安全なやつだとは限らないだろ」
「しっ、静かにしろ。安全なやつだとは限らないだろ」
声を潜めてマンションの植え込み付近に身を隠す真司と蓮。
迫る気配が視界に入る位置まで迫った。
少女が二人。
息を切らせて服に泥をつけた髪の長い子を、もう一方の短めの髪の子が支えながら早足気味に歩いている。
迫る気配が視界に入る位置まで迫った。
少女が二人。
息を切らせて服に泥をつけた髪の長い子を、もう一方の短めの髪の子が支えながら早足気味に歩いている。
蓮から見ても周囲に気を配っている様子もない。自分達のことで精一杯という風に見える。
少なくともライダーのような存在には見えなかった。
少なくともライダーのような存在には見えなかった。
そう冷静に分析する蓮の横で、真司は二人を見た瞬間、飛び出していた。
「二人共、大丈夫!?」
(そうだな、こいつはそういうやつだったな…)
(そうだな、こいつはそういうやつだったな…)
いろいろ考えて警戒していた自分が馬鹿らしく感じるほどバカ正直に走り寄っていく真司に続いて後を追う蓮。
突如現れた男に驚く少女二人。
怯えの表情も見え、やはり戦いに慣れた存在にも見えない。
おそらくこのゲームに巻き込まれたただの一般人だろうと見て、蓮は警戒を解いた。
怯えの表情も見え、やはり戦いに慣れた存在にも見えない。
おそらくこのゲームに巻き込まれたただの一般人だろうと見て、蓮は警戒を解いた。
「あ、大丈夫大丈夫。俺たちは君たちの味方だから。
ほら、別に危ないものなんて持ってないし」
「ほ、本当ですか…?」
ほら、別に危ないものなんて持ってないし」
「ほ、本当ですか…?」
安心するように座り込む髪の長い方の少女。
「俺は城戸真司、こっちは秋山蓮。
何があったんだ。もしかして誰かに襲われて?」
「その、五月ちゃん…妹が襲われたらしくて…、今炭治郎君って子が行ったんだけど、まだ帰ってきてなくて…」
何があったんだ。もしかして誰かに襲われて?」
「その、五月ちゃん…妹が襲われたらしくて…、今炭治郎君って子が行ったんだけど、まだ帰ってきてなくて…」
まだ落ち着いている様子ではない襲われた少女に代わり、付き添っていた子が説明する。
よく耳を澄ますと、金属音のぶつかる音が夜闇の静寂に混じって聞こえ、しかも少しずつこちらに迫ってきている。
「城戸、お前はこの子達の様子を見てろ。俺はあっちの様子を見てくる」
「ああ、分かった。気を付けろよ、蓮」
「ああ、分かった。気を付けろよ、蓮」
と、蓮はマンションの入り口のガラスにカードデッキをかざす。
どこからともなく現れたベルトがその腰に装着される。
どこからともなく現れたベルトがその腰に装着される。
「変身!」
掛け声と共にカードデッキを挿入。
その姿が西洋の騎士を思わせる銀の装甲と黒いスーツを纏った姿へと変わる。
その姿が西洋の騎士を思わせる銀の装甲と黒いスーツを纏った姿へと変わる。
「あっ…」
それを見て、短髪の少女が呟き声を漏らす。
そのまま二人の来た道を駆けていく蓮、仮面ライダーナイト。
「あいつは大丈夫だから。
何があったのか、教えてくれないか?」
何があったのか、教えてくれないか?」
残った真司は、少女へと優しく呼びかけながらマンションの玄関ホールへと足を進めていく。
「…ちょっと、その、水と食べ物を…」
「え、あ、うん。はい、これ」
「え、あ、うん。はい、これ」
と真司の出すパンと水をガツガツと口にする五月。
すると少しは気分が落ち着いたのか、荒れていた呼吸が整ってきた。
すると少しは気分が落ち着いたのか、荒れていた呼吸が整ってきた。
「その、聞いてほしいんです…。千翼くんに何があったのか…」
そうして、五月はそれまでに何があったのかをポツポツと話し始めた。
◇
アマゾンネオと戦う炭治郎だったが、その戦況は芳しいものではなかった。
相手の技術は精錬されたものではない。これまで戦ってきた数々の鬼たちのそれと比べれば大したものではない。
しかし、その力はかなりのもの。幾つか打撃を受けたが、それは中位クラスの鬼の攻撃であれば防ぐほどの防御力を持つ隊服を着ていて尚も体に強い衝撃を与えている。
体の表皮も硬く、日輪刀で斬りつけたものの大きなダメージが届いているようにも見えない。
しかし、その力はかなりのもの。幾つか打撃を受けたが、それは中位クラスの鬼の攻撃であれば防ぐほどの防御力を持つ隊服を着ていて尚も体に強い衝撃を与えている。
体の表皮も硬く、日輪刀で斬りつけたものの大きなダメージが届いているようにも見えない。
だが、それでも決して戦えない相手ではなかった。
この相手以上に力の強い鬼はいた。
刃の通らぬ硬い皮膚を持った鬼とも戦った。
そして、柱の人でも苦戦するような高い技量を持った鬼との戦いにも生き残ってきた。
刃の通らぬ硬い皮膚を持った鬼とも戦った。
そして、柱の人でも苦戦するような高い技量を持った鬼との戦いにも生き残ってきた。
だというのに、この相手の動きに対応しきれていない。
鬼のようにも思う身体能力を持っていながら、一切の慢心を感じず。
むしろこちらに食らいつく獣のごとく攻め立ててくる。
むしろこちらに食らいつく獣のごとく攻め立ててくる。
血鬼術のような能力を持っていれば、逆にその攻撃の隙を見極め突くことができただろうが。
―――いや、全ては言い訳だろう。
刃を弾き体を斬りつける。脇腹に切り傷がつき血が吹き出すが、数秒の後傷は再生し。
その再生する間にも痛みなど感じていないかのように右の剣と左腕の鰭のような刃を振り向けてくる。
その再生する間にも痛みなど感じていないかのように右の剣と左腕の鰭のような刃を振り向けてくる。
炭治郎の心には戸惑いがあった。
『善逸は、死んだ』
鬼殺隊となって長い間、伊之助も交えて共に行動してきた仲間。
それが死んだという事実。
それが死んだという事実。
動揺で呼吸が乱れ、いつもの調子が出せていない。加えてこの獣のような連撃。
刃は鋭く危険だが、それだけが武器ではない。間合いが詰まれば膝蹴りや肘打ちなどの打撃が襲いかかる。
致命打ではないが、体に与える衝撃は小さくない。
刃は鋭く危険だが、それだけが武器ではない。間合いが詰まれば膝蹴りや肘打ちなどの打撃が襲いかかる。
致命打ではないが、体に与える衝撃は小さくない。
だがここで引くわけにもいかない。
目の前の敵は、攻め立てながら確実に一歩ずつ前進してきている。
目の前の敵は、攻め立てながら確実に一歩ずつ前進してきている。
ただ少しだけ、呼吸を整える隙がほしかった。
炭治郎の力量であればいずれその隙を作ることは叶っただろうが、その時はそれよりも早く来た。
炭治郎の力量であればいずれその隙を作ることは叶っただろうが、その時はそれよりも早く来た。
突如窓ガラスから飛び出した黒い影。
それまで全く匂いを感じなかったこともあり突然の襲来者に意識を割かれる炭治郎。
だが黒い影に襲いかかられたアマゾンネオは驚きだけではすまず、体を弾き飛ばされる。
それまで全く匂いを感じなかったこともあり突然の襲来者に意識を割かれる炭治郎。
だが黒い影に襲いかかられたアマゾンネオは驚きだけではすまず、体を弾き飛ばされる。
そこには、コウモリを思わせる巨大な翼を持った異形の獣がいた。
そして、それを追って背後から迫る者の気配も感じた。
「炭治郎という名は、お前でいいのか?」
自分の前に現れた、特徴的な甲冑を纏った男。
手には剣を構え、今しがたコウモリが吹き飛ばしたアマゾンネオを牽制している。
手には剣を構え、今しがたコウモリが吹き飛ばしたアマゾンネオを牽制している。
「ああ、俺が炭治郎だ」
「そうか。少し手を貸しにきた。
五月という女の子を追う殺人者というのはアレで合っているか?」
「五月さん…、そうか、よかった。
少しだけ手こずっていたんだ、手を貸してくれるなら助かります」
「そうか。少し手を貸しにきた。
五月という女の子を追う殺人者というのはアレで合っているか?」
「五月さん…、そうか、よかった。
少しだけ手こずっていたんだ、手を貸してくれるなら助かります」
起き上がるアマゾンネオ。
その姿を見て、一瞬仮面の下で蓮の目が細まった。
(この姿、デッキは持っていないようだが、ライダーにそっくりだな)
カードデッキこそないが腰に巻かれたベルト。
胴体や腕を覆う鎧。
その姿が自分が戦ってきた者たちに酷似しているようにも感じられていた。
胴体や腕を覆う鎧。
その姿が自分が戦ってきた者たちに酷似しているようにも感じられていた。
だが。
「だからこそ、やりやすいか」
迫るアマゾンネオの剣を弾き、その胸をダークバイザーで突く。
火花が散りうめき声を上げるアマゾンネオ。しかし体は引くことなく、左手の鰭をこちらの首めがけて振り付ける。
咄嗟に剣を引きその腕を受け止めるナイト。
火花が散りうめき声を上げるアマゾンネオ。しかし体は引くことなく、左手の鰭をこちらの首めがけて振り付ける。
咄嗟に剣を引きその腕を受け止めるナイト。
(…っ、こいつの力、強い…!)
思った以上の腕力に押し負けそうになるナイト。
そこへ炭治郎の声が響く。
そこへ炭治郎の声が響く。
「退けて!」
「!」
「!」
言葉に合わせて腕と体から力を抜く蓮。
体はアマゾンネオの力に押されて倒れ込み。
体はアマゾンネオの力に押されて倒れ込み。
「――水の呼吸、漆ノ型・雫波紋突き!!」
がら空きになったアマゾンネオの体に、炭治郎の突き出した刀が突き付けられた。
不意の衝撃に後退するアマゾンネオの体。
しかし下がりながらもその体は迫った炭治郎の体を蹴り上げんと脚を振りかざす。
それを交わしながら、足運びを攻撃に転じて一気にアマゾンネオの体に迫り。
しかし下がりながらもその体は迫った炭治郎の体を蹴り上げんと脚を振りかざす。
それを交わしながら、足運びを攻撃に転じて一気にアマゾンネオの体に迫り。
「参ノ型・流流舞い!!」
流れるように体を斬りつける。
腹部が鋭く斬り裂かれ、後退するアマゾンネオ。
そこに追撃をするように迫ったナイトの剣が体を突いた。
そこに追撃をするように迫ったナイトの剣が体を突いた。
しかし。
「何?!」
アマゾンネオはその剣を握り締めていた。
腹の傷もあり動けるはずがないと踏んでの追撃だったが、まるで痛みを意に介していないかのようにその手の力は揺るがない。
腹の傷もあり動けるはずがないと踏んでの追撃だったが、まるで痛みを意に介していないかのようにその手の力は揺るがない。
剣を手放し後退しようとする蓮より早く、アマゾンネオはナイトの首を掴み上げた。
体を蹴り飛ばし抵抗しようとするが、手の力はびくともしない。
体を蹴り飛ばし抵抗しようとするが、手の力はびくともしない。
もう一方の手の刃がナイトの体を斬り裂かんと振るわれ。
「漆ノ型・雫波紋突き!!」
横から高速で放たれた突きが、腕を弾き軌道を変えた。
(く、やっぱりこれじゃあ力が…)
腕を貫くつもりで放った一撃だったが、力が足りず弾くのみに終わってしまう。
しかし軌道を変えることには成功。
更に振り返り再度攻撃に転じようとした炭治郎に、ナイトの体が放られた。
しかし軌道を変えることには成功。
更に振り返り再度攻撃に転じようとした炭治郎に、ナイトの体が放られた。
二つの体がぶつかり、地面を転がる。
「ぐっ、大丈夫か?」
「ええ、俺は問題ありません。それより彼は」
「ええ、俺は問題ありません。それより彼は」
と、周囲に目をやる二人。
しかしアマゾンネオの姿はどこにもない。
しかしアマゾンネオの姿はどこにもない。
「…!まさか…!」
炭治郎は慌てて駆け出す。
同時に蓮もその後を追って走り出した。
同時に蓮もその後を追って走り出した。
その匂いの行き先は、蓮が来た方向、PENTAGONがある方に続いていた。
◇
体の痛みを無視して走る千翼。
ただ真っ直ぐに、あの少女の元へと駆け抜けていった。
ただ真っ直ぐに、あの少女の元へと駆け抜けていった。
理由は一つ。
中野五月。
彼女だけはこの手で殺さなければならないと。
彼女だけはこの手で殺さなければならないと。
さっき思わず炭治郎の前で善逸の名を呟いた時、胸に鋭い痛みが走った。
まるでまだ人を殺すことに罪悪感を持っているかのような感覚。
まるでまだ人を殺すことに罪悪感を持っているかのような感覚。
ギリギリのところでまだ何かが残っている。
だから、その思いを切り払うために彼女を殺さなければならない。
この胸の痛みだけは消すために。
一瞬でも母を求めたあの姿に自分を重ねたあの子を殺すことで、これ以上この痛みが感じなくなるように。
あの二人は、きっとそれから戦った方が、勝てそうな気がしたから。
◇
「…そんなことが…」
PENTAGONで五月の話を聞いた真司。
それまでにあったこと。
謎の女や父親に命を狙われる千翼という少年。
自分と千翼を守って命を落とした善逸という少年。
そして、千翼が好きだった相手の死体を発見し、彼女を蘇らせるために皆を殺す決意をしたこと。
謎の女や父親に命を狙われる千翼という少年。
自分と千翼を守って命を落とした善逸という少年。
そして、千翼が好きだった相手の死体を発見し、彼女を蘇らせるために皆を殺す決意をしたこと。
「その子のこと、他に何か分かるかな?」
「えっと、命が狙われるのは、”アマゾン”だからだって、そう言ってました。
人を食べなければいけないって」
「人を食べるって、そんなスプラッタ映画みたいな…、あ、ごめん」
「えっと、命が狙われるのは、”アマゾン”だからだって、そう言ってました。
人を食べなければいけないって」
「人を食べるって、そんなスプラッタ映画みたいな…、あ、ごめん」
思わず呟いた一花の一言に、鋭く睨む五月。
「彼、たぶん苦しんでるんです…。
会ったばかりで彼の事情は断片的にしか分からないですけど、だけどきっと…」
「分かった。話してくれてありがとう。
とにかく、今は蓮達を待ってからここを離れよう。
あいつなら大丈夫だ、きっと帰ってくるから」
会ったばかりで彼の事情は断片的にしか分からないですけど、だけどきっと…」
「分かった。話してくれてありがとう。
とにかく、今は蓮達を待ってからここを離れよう。
あいつなら大丈夫だ、きっと帰ってくるから」
よし、と立ち上がってマンションの入り口に近寄る城戸。
仲間の帰還を信じるように様子を伺っている。
仲間の帰還を信じるように様子を伺っている。
「ねえ、五月ちゃん。話聞いてて思ったんだけど。
もしかして五月ちゃん、その子にちょっと入れ込んでない?」
「え…、どうしてそう思うんですか?」
「だって、その子、お父さんに殺されそうって、酷い目に合わされそうなんだって…。
それってもしかして、私達の―――」
「そ、そんなことはないですよ!千翼君と私達だと事情が全然違いますし」
「そっか、そうだよね…。五月ちゃん、あの頃からずっとその辺に敏感になってる気がしたから。
うん、分かってるならお姉さん安心だ!」
もしかして五月ちゃん、その子にちょっと入れ込んでない?」
「え…、どうしてそう思うんですか?」
「だって、その子、お父さんに殺されそうって、酷い目に合わされそうなんだって…。
それってもしかして、私達の―――」
「そ、そんなことはないですよ!千翼君と私達だと事情が全然違いますし」
「そっか、そうだよね…。五月ちゃん、あの頃からずっとその辺に敏感になってる気がしたから。
うん、分かってるならお姉さん安心だ!」
言いながらも、五月の声色に嘘が混じっているのを見逃していない。
やはり五月は、未だに母親と、ずっと昔にいなくなった父親のことを引きずっている。
やはり五月は、未だに母親と、ずっと昔にいなくなった父親のことを引きずっている。
そして、もしもの時にその心の取っ掛かりに火がついてしまったら。
ましてや今は殺人鬼に狙われている状況なのだ。
ましてや今は殺人鬼に狙われている状況なのだ。
一花は、上着のカードデッキに触れる。
「ちょっと、城戸さんと話をしてくるから、ここで待ってて」
そうして外の様子を伺い続ける城戸に近寄った一花が話しかける。
「あの、ちょっといいですか?」
呼びかけながら、一花は上着のポケットから四角いカードケースを取り出した。
「これ…ライダーのデッキじゃないか?!」
「私の支給品に入っていたんですけど、もしかしてこれっておもちゃじゃなくて本物なんですか?」
「私の支給品に入っていたんですけど、もしかしてこれっておもちゃじゃなくて本物なんですか?」
似た形のものを使っていた蓮の姿を見て、これもそうなのではないかと気付いた一花。
「やっぱり他にもライダーのデッキ他の人に配られてるのか…。
それは確かに使えばライダーに変身できる。だけど、君は使っちゃダメだ。
そいつはとても危険なんだ。俺たちはそれを使って、互いにずっと最後の一人になるまで殺し合う戦いをやらされていたんだ」
「……」
「何なら、俺が預かろうか?」
「…いえ、もしもの時、私が五月ちゃんを守らないといけないかもしれないですし、私が持ってます」
それは確かに使えばライダーに変身できる。だけど、君は使っちゃダメだ。
そいつはとても危険なんだ。俺たちはそれを使って、互いにずっと最後の一人になるまで殺し合う戦いをやらされていたんだ」
「……」
「何なら、俺が預かろうか?」
「…いえ、もしもの時、私が五月ちゃんを守らないといけないかもしれないですし、私が持ってます」
今は実際に五月が追われているところだ。
もしもの時は自分が守らなければならない。
もしもの時は自分が守らなければならない。
そんな想いを語る一花からデッキを取り上げるのは、真司にも躊躇われた。
その時、マンション前の通路に足音が響いた。
近寄る速さは人間のものとは思えず、真司からすると蓮の足音とも違うように聞こえた。
近寄る速さは人間のものとは思えず、真司からすると蓮の足音とも違うように聞こえた。
「下がってて一花ちゃん、五月ちゃんの近くにいて」
入り口から離れつつ一花を後ろに下がらせる真司。
やがて足音がマンションの前までたどり着いた時、その入り口が鋭い音と共に切り刻まれる。
扉が蹴り飛ばされる音を聞き、三人が視線を向けた先にいたのは、青を基調とした体に鼠色の鎧を纏った異形。
「千翼君…っ」
呼びかける五月。
真司は二人の体を後ろに下げ前に進み出る。
真司は二人の体を後ろに下げ前に進み出る。
五月の姿を見たアマゾンネオ、千翼は手の剣を翳して三人の元に襲いかかり。
GAAAAAAAAAAAAAAAAAA
ロビーに備え付けられた鏡から、赤い龍が咆哮を上げながら飛び出し突撃、その進行を阻んだ。
「君、千翼っていうんだよな」
「―――」
「―――」
話すことはないと言わんばかりにそのうめきながら起き上がって。
しかしその後ろから迫る二つの足音が迫ってくる気配に振り返って剣を構えた。
炭治郎とナイトの斬撃を受け止めた千翼。
二人はそのまま、二人の姉妹を守るように真司の横に並ぶ。
「…悪い、止めきれなかった」
「まあ、いいよ。俺もこの子と話がしてみたかったから」
「まあ、いいよ。俺もこの子と話がしてみたかったから」
と、真司は千翼に向かい合う。
生身を晒す真司に不安を覚えた蓮が前に出ようとするのを制する蓮。
「聞いたよ、五月ちゃんから。君は好きな子を生き返らせるためにみんなを殺そうとしたんだって」
「……」
「……」
真司の言葉に沈黙で返す千翼。
「まあ、正直人は生き返らない、なんてことは言えないわな、俺たち。
何かこうして生き返っちゃってるわけだし」
「フン」
何かこうして生き返っちゃってるわけだし」
「フン」
蓮と顔を見合わせる真司。
その言葉に千翼が顔を上げる。
その言葉に千翼が顔を上げる。
「炭治郎君だっけ。君の友達のことは聞いてるよ。だけどその子を殺したのは」
「分かってます。彼からは善逸の匂いはあったけど血の匂いは感じなかったですから」
「分かってます。彼からは善逸の匂いはあったけど血の匂いは感じなかったですから」
彼が殺し合いに乗ったのは今の話からするについさっきのことだという。
ならば、善逸はどうして死んだのか。おおよその予想は付く。きっと彼を守って死んだのだろう。
ならば、善逸はどうして死んだのか。おおよその予想は付く。きっと彼を守って死んだのだろう。
そんな彼に人殺しをしてほしくはなかった。
「俺たちは人を食う鬼と戦ってきた。
彼らは人から鬼へと変えられて人を食い、多くの罪を重ねて人の心を失っていった。
君ももそんな風になりたいのか?!」
「違う!俺は、生きたいんだ!イユと一緒に!」
彼らは人から鬼へと変えられて人を食い、多くの罪を重ねて人の心を失っていった。
君ももそんな風になりたいのか?!」
「違う!俺は、生きたいんだ!イユと一緒に!」
炭治郎の言葉に慟哭の叫びを上げる千翼。
「ずっと、人が食べたくて仕方なかった…。でも、ずっと我慢してきた…。
だけどイユは、俺が初めて食べたいと思わなかった子だったんだ…」
だけどイユは、俺が初めて食べたいと思わなかった子だったんだ…」
「俺が、世界で一人、人間らしくいられる場所を作ってくれたのが、イユだったんだ…!
だから、俺はイユと一緒にまた歩みたいんだ!」
だから、俺はイユと一緒にまた歩みたいんだ!」
その言葉に、蓮は思わず視線を下げる。
かつて恋人のために戦いを決意した男にとって、その姿はある点では己に被っても見えた。
かつて恋人のために戦いを決意した男にとって、その姿はある点では己に被っても見えた。
そして、炭治郎もまたその言葉に思うところがあった。
もし禰豆子が鬼になってしまったあの日富岡に会わなければ。
禰豆子は彼と同じような立場にあったかもしれない。
もし禰豆子が鬼になってしまったあの日富岡に会わなければ。
禰豆子は彼と同じような立場にあったかもしれない。
「そっか、やっぱり君も”ライダー”だったんだな」
その時ポツリ、と真司が言った。
「ライダー…?」
「ああ、時には何かを犠牲にしてでも自分の願いを叶えたいって思う、それが俺たち人間で。
そんなことに命がかけられちゃう俺たちみたいなバカが、ライダーっていうんだ」
「人間…?俺が…?」
「ああ、時には何かを犠牲にしてでも自分の願いを叶えたいって思う、それが俺たち人間で。
そんなことに命がかけられちゃう俺たちみたいなバカが、ライダーっていうんだ」
「人間…?俺が…?」
驚いたように真司を見る千翼。
「ああ、俺もライダーだ。
君の願いで犠牲になる人を減らしたいって願いで戦う、傲慢な願いで人の願いを踏みつけようとしてる、人間だ。
君と何も変わらない」
君の願いで犠牲になる人を減らしたいって願いで戦う、傲慢な願いで人の願いを踏みつけようとしてる、人間だ。
君と何も変わらない」
かつてライダーバトルを戦い、その果てに答えを導き出した真司。
その言葉の中には、かつてのような迷いはなかった。
その言葉の中には、かつてのような迷いはなかった。
「…は、ははははははははは!!」
千翼は、あまりにもおかしくて笑い出す。
あまりにも今更すぎた言葉、だけどそれがどうしようもなく嬉しくて。
あまりにも今更すぎた言葉、だけどそれがどうしようもなく嬉しくて。
「初めてだよ…。俺を、人間扱いしてくれた人は」
4Cも、父も、友達だった長瀬でさえも自分のことはアマゾンとして見ていた。
それでも長瀬はマシとはいえ、4Cではどれだけ声高に人間だと叫んでも、実験動物のような扱いは止まらなかった。
それでも長瀬はマシとはいえ、4Cではどれだけ声高に人間だと叫んでも、実験動物のような扱いは止まらなかった。
「もっと早く、あんたみたいな人に会いたかったな」
だが、千翼はもう止まれない。
あまりにも今更だったから。もしイユが生きている時に会えたなら、また違う道が進めたかもしれない言葉だった。
決意は揺らがない。
刃を構える。
刃を構える。
「ああ、なら、俺も全力で君のことを止めるよ」
真司はガラスにデッキを翳し。
「変身!」
腰のベルトにそれを挿入。
その体を己の戦うための姿へと変えた。
その体を己の戦うための姿へと変えた。
仮面ライダー龍騎。
赤いスーツと銀の装甲を纏った、戦士の姿へと。
赤いスーツと銀の装甲を纏った、戦士の姿へと。
「炭治郎君、君は大丈夫か?」
ライダーでもない生身に刀を持った少年に気遣って声をかける。
「ええ、善逸のこともありますし、彼を止めたいって思う気持ちは同じです」
龍騎の隣に並んだナイト、炭治郎。
その正面に立つアマゾンネオ。
その正面に立つアマゾンネオ。
アマゾンネオはバッグから巨大な剣を取り出し、右手の備え付けの剣と合わせて二刀として構える。
勢いよく走り出すアマゾンネオ。
龍騎は右手の剣をかわしつつその体に拳を叩きつけアマゾンネオの体を退かせる。
龍騎は右手の剣をかわしつつその体に拳を叩きつけアマゾンネオの体を退かせる。
しかし一歩下がりながらも左手の剣を振るい龍騎に叩きつける。
大きく装甲が火花を上げ吹き飛ばされる龍騎の体。
大きく装甲が火花を上げ吹き飛ばされる龍騎の体。
「…っ!」
そんな龍騎を庇うようにナイトが前に出て、炭治郎もまた刀を振るう。
起き上がった龍騎が体を見ると、装甲が大きく斬り裂かれている。
かつてのライダーバトルでもここまで大きくやられたことなどなかった。
かつてのライダーバトルでもここまで大きくやられたことなどなかった。
左手の剣の威力に驚きながらも、ナイトは牽制する。しかしその剣を受け止めた炭治郎は疑問を持つ。
自分が受け止めた一撃は同じくらいの力が入ったもの、だがそこまで高い斬撃を放っていそうではなかった。
自分が受け止めた一撃は同じくらいの力が入ったもの、だがそこまで高い斬撃を放っていそうではなかった。
左手の剣の名を、魔剣グラム。
それは悪竜ファフニールを討った伝説の英雄、シグルドの持つ竜殺しの剣。
その竜殺しの特性は、無双龍ドラグレッダーの力を宿した龍騎に対して高い威力を発揮するものだった。
それは悪竜ファフニールを討った伝説の英雄、シグルドの持つ竜殺しの剣。
その竜殺しの特性は、無双龍ドラグレッダーの力を宿した龍騎に対して高い威力を発揮するものだった。
やがて三人への攻撃の中で龍騎だけに特に高い威力を見せると悟った四人は、動きが変わり始めた。
ナイトと炭治郎は龍騎への決定打を避けるように庇う動きとなり、逆にアマゾンネオは龍騎を優先して狙い始めた。
ナイトと炭治郎は龍騎への決定打を避けるように庇う動きとなり、逆にアマゾンネオは龍騎を優先して狙い始めた。
数の上では有利な状態でありながら、三人は攻めきれない状態に陥る。
だが、それでも龍騎は決して退くことなく果敢に攻め続ける。
GUARD VENT
SWORD VENT
SWORD VENT
両肩に装着された盾が、切り落とされる運命にありながらも一瞬だけグラムの軌道を受け止める。
その間にその手の剣、ドラグセイバーを斬りつける。
その間にその手の剣、ドラグセイバーを斬りつける。
右腕の剣で受け止め競り合いになるが、二刀の片腕ずつで武器を持つアマゾンネオは押し切ることができない。
後ろに下がったアマゾンネオは、咄嗟にインジェクターを操作。
――クロー・ローディング
追うように斬りかかる龍騎の前で、腕をフック状に切り替え、その腕を天井に伸ばして飛び上がる。
そのまま天井を蹴って地の龍騎に向けて魔剣グラムを振り下ろし。
そのまま天井を蹴って地の龍騎に向けて魔剣グラムを振り下ろし。
ADVENT
咄嗟にカードをバイザーに挿入、直後に龍騎の周囲を守るように鏡から赤き龍、ドラグレッダーが姿を現す。
アマゾンネオの背後からその体を弾きバランスを崩させる。
アマゾンネオの背後からその体を弾きバランスを崩させる。
「!――すみません、その体ちょっとお借りします!」
弾かれ宙を舞うアマゾンネオ。
そこへ、炭治郎がドラグレッダーの体を足場に駆け上がり。
アマゾンネオの頭上から刀を振り上げて迫り。
そこへ、炭治郎がドラグレッダーの体を足場に駆け上がり。
アマゾンネオの頭上から刀を振り上げて迫り。
「ヒノカミ神楽・火車!!」
そのまま上段から炎を纏わせ振り下ろした。
アマゾンネオは崩した態勢のまま魔剣グラムを構えて受け止める。
しかし重力の勢いも合わさった振り下ろしを受けきれず、グラムに亀裂を走らせながら、アマゾンネオの体は地面に叩きつけられた。
アマゾンネオは崩した態勢のまま魔剣グラムを構えて受け止める。
しかし重力の勢いも合わさった振り下ろしを受けきれず、グラムに亀裂を走らせながら、アマゾンネオの体は地面に叩きつけられた。
炭治郎は着地し、千翼も割れた地面の上で立ち上がる。
「フゥッ、フウゥ…!」
その仮面は亀裂が入り、黒い血のような液体が流れている。
魔剣グラムは砕け散って地面に散らばっており、その手には右腕のクローのみ。
魔剣グラムは砕け散って地面に散らばっており、その手には右腕のクローのみ。
「ウゥッ!!」
呻くようにそのクローを再度射出。
今度はクローそのものを攻撃に使うように打ち出す。
今度はクローそのものを攻撃に使うように打ち出す。
狙われた龍騎はそれを剣で弾き飛ばす。
しかし弾いたクローは勢いをそのままに龍騎達のずっと背後まで飛び、その壁に突き刺さる。
「――!!」
その位置に気付いた三人が駆け寄る。
最も近かった龍騎、高速の足運びで迫った炭治郎がその進行を阻止しようと動く。
しかしアマゾンネオは脚を振るい迫った二人の体を逆に弾き返した。
最も近かった龍騎、高速の足運びで迫った炭治郎がその進行を阻止しようと動く。
しかしアマゾンネオは脚を振るい迫った二人の体を逆に弾き返した。
「二人とも、危ない!!」
転がりながら叫ぶ城戸。
そのアマゾンネオの進行先は、一花と五月が身を隠している場所だった。
◇
ロビーの物陰に身を隠す一花と五月。
一花が五月の体を抱くようにしながら身を潜めている。
一花が五月の体を抱くようにしながら身を潜めている。
近くでは、自分達を守ろうとする三人が、五月の命を狙っていた異形と戦っている。
「五月、大丈夫だから。絶対に」
「………」
「………」
五月を抱き締める一花。
だが、この場で体が、手が震えているのは自分だという自覚もあった。
だが、この場で体が、手が震えているのは自分だという自覚もあった。
自分が守ると言ったはずだった。
なのに、目の前の戦いを見たら体が動かなくなってしまった。
すぐそばでは行われている、自分でも想像の及ばないまるで映画の中のような戦いを目の当たりにすると。
なのに、目の前の戦いを見たら体が動かなくなってしまった。
すぐそばでは行われている、自分でも想像の及ばないまるで映画の中のような戦いを目の当たりにすると。
「…一花、怖いんですか…?」
「……あはは、誤魔化したかったんだけど、無理だねこれ。
何で怖がりのはずの五月ちゃんより私の方が怖がってんだろう…」
「……あはは、誤魔化したかったんだけど、無理だねこれ。
何で怖がりのはずの五月ちゃんより私の方が怖がってんだろう…」
一花の胸の中で震えを感じ取った五月の問いかけに、作り笑いをしながら答える一花。
そんな一花の手をぎゅっと握る五月。
そんな一花の手をぎゅっと握る五月。
「五月は、怖くないの?」
「怖いですよ当然…。だけど…」
「怖いですよ当然…。だけど…」
五月の目が龍騎やナイトに拳を振るい続ける青い影を映す。
「彼、泣いているように見えるから…」
「五月ちゃん…」
「五月ちゃん…」
一花は五月を諌める意味も込めて、強く抱き締める。
今この手を離すと、どこか遠くに行ってしまうような気がしたから。
今この手を離すと、どこか遠くに行ってしまうような気がしたから。
まるで、あの日の母のように。
自分が変わり始めたきっかけとなったあの日のように。
自分が変わり始めたきっかけとなったあの日のように。
後ろでキン、と何かを弾く音が聞こえ。
「――!二人共、危ない!」
伸びたロープ状の先端が二人の潜んだ付近の壁に刺さった。
狙いをつけたクローを弾き飛ばしたが、その軌道が変わった先が二人のすぐ傍に着弾してしまった。
狙いをつけたクローを弾き飛ばしたが、その軌道が変わった先が二人のすぐ傍に着弾してしまった。
それが千翼が狙ってのものだったのか偶然だったのかは他の皆には判断できなかったが。
ロープが巻き取られアマゾンネオの体が二人の眼前に現れる。
全身がボロボロで傷だらけになりながらもその体は再生を繰り返し続け。
ひび割れた仮面はまるで生身の体が傷ついたように血のような液体を流している。
ひび割れた仮面はまるで生身の体が傷ついたように血のような液体を流している。
怯えている場合ではないとカードデッキを取り出そうとする一花。しかし間に合わない。距離が近すぎた。
腕の鰭を構えて迫るアマゾンネオ。
走る炭治郎達三人だが、間に合わない。
「一花っ!」
自分を抱きしめていた姉の体を押し飛ばす五月。
刃を振りかざす千翼の前に、押し出した一花を守るかのように両手を広げて立つ五月。
振り下ろされた刃は真っ直ぐにその首へと向かい。
「い、五月ちゃんっ!!」
首の皮にわずかに刺さった位置で、その刃は止まっていた。
震える手は、あと少しでも動けば五月の首を切り裂くだろう。
震える手は、あと少しでも動けば五月の首を切り裂くだろう。
「…千翼君、もう、止めましょう?」
その手に感じる迷いに掛けて、目の前の少年の凶行を止めようと呼びかける五月。
アマゾンネオの頬に触れる五月の手。
アマゾンネオの頬に触れる五月の手。
ダメだと叫びたかった。
その子は、私達とは違う。似ているかもしれないけど違う。
その子は、私達とは違う。似ているかもしれないけど違う。
逃げてと叫びたかった。
五月にとってその子が放っておけない子だったとしても、自分にとっても五月はたった一人の、五つ子の姉妹の一人なのだから。
五月にとってその子が放っておけない子だったとしても、自分にとっても五月はたった一人の、五つ子の姉妹の一人なのだから。
しかし、そんな声が出るより早く、その時は訪れてしまった。
千翼の体から蒸気が発生し。
その、割れた仮面の下の顔が赤い瞳と鋭い牙、青い肌を持つより異形の姿へと形を変えたのは。
その、割れた仮面の下の顔が赤い瞳と鋭い牙、青い肌を持つより異形の姿へと形を変えたのは。
そして。
炭治郎の高速の突きが千翼の体を弾き飛ばすより早く。
その腕の刃は、五月の肩から胸にかけてを深く切り裂いていた。
その腕の刃は、五月の肩から胸にかけてを深く切り裂いていた。
吹き出した鮮血が、傍にいた炭治郎と一花の顔を濡らす。
突き飛ばされ壁に叩きつけられるアマゾンネオ。
「蓮!」
真司は蓮を呼びかけながらカードをベントインする。
NASTY VENT
STRIKE VENT
STRIKE VENT
龍騎の右手に龍頭の手甲・ドラグクローが装着され。
千翼の元に鏡から姿を表したダークウィングが接近。
その体から放たれた超音波が千翼の動きを止め。
更にそこへ龍騎の構えたドラグクローとその背後から現れたドラグレッダーの口から放たれた火炎が着弾。
千翼の元に鏡から姿を表したダークウィングが接近。
その体から放たれた超音波が千翼の動きを止め。
更にそこへ龍騎の構えたドラグクローとその背後から現れたドラグレッダーの口から放たれた火炎が着弾。
壁を破壊しながらその体を吹き飛ばした。
◇
「五月ちゃんっ!しっかりして!五月ちゃんっ!」
声が聞こえた。
体を動かそうとするが、力が入らない。
呼吸するのも辛かった。
呼吸するのも辛かった。
目を開くと、顔を血に汚した一花と炭治郎の顔が映る。
「わ…たし……」
口から血が漏れる。
言葉を発することすら辛かった。
だけど、どうしても言わなければいけないことがあった。
言葉を発することすら辛かった。
だけど、どうしても言わなければいけないことがあった。
あの時、どうして自分が斬られたのか。
まだ千翼は引き返すことができると思っていた。
だけど、あの時、割れた仮面の奥で顔が変わった時。
その顔を見て、怖い、と思ってしまった。
それが、顔に出てしまった。
その顔を見て、怖い、と思ってしまった。
それが、顔に出てしまった。
(千翼君の、…こと、怖いって……、止めたいって思ったのに、怖いって思っちゃって…)
自分が、彼が引き返す最後の道を奪ってしまった。
「ごめん…、なさい……!」
最後の引き金を引かせてしまったことを千翼。
守ってくれようとしたのにこうして命を落としてしまったことを善逸や守ろうとしてくれた三人。
そして目の前でこんな姿を見せてしまった一花。
守ってくれようとしたのにこうして命を落としてしまったことを善逸や守ろうとしてくれた三人。
そして目の前でこんな姿を見せてしまった一花。
その全てに謝るように呟き、五月の体は動かなくなっていった。
【中野五月@五等分の花嫁 死亡】
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 最初に生まれてくるということ | 中野一花 | 悲しみは仮面の下に(後編) |
| 竈門炭治郎 | ||
| 第五十一話 | 城戸真司 | |
| 秋山蓮 | ||
| 慟哭で本能もそう喰らい尽くせよ | 千翼 | |
| 中野五月 | Eliminated |