PHANTOM PAIN ◆0zvBiGoI0k
……
…………
………………
『……お前の願いが愚かだとは思わない。
大切な人を救う。その為に他人を殺す。それを否定なんかはしない』
大切な人を救う。その為に他人を殺す。それを否定なんかはしない』
大昔の朽ちた鎧甲冑にも見える姿で、それはそう言った。
『俺も、かつてはお前と同じような願いを持っていて、そしてそれを叶えた。
あいつの言った通り、お前もライダーの一人だ。その願いを叶える資格がある』
あいつの言った通り、お前もライダーの一人だ。その願いを叶える資格がある』
鎧の全身が罅割れ、誰が見ても満身創痍。
息も絶え絶えになり風前の灯の命でありながら、声だけは明瞭だった。
思考が働かなくても言うべき事が淀み無く出てくる、実感からくる言葉だった。
息も絶え絶えになり風前の灯の命でありながら、声だけは明瞭だった。
思考が働かなくても言うべき事が淀み無く出てくる、実感からくる言葉だった。
『だから、ひとつだけ覚えておけ。
俺と同じで、もう決定的に違ってしまったお前に言っておく』
俺と同じで、もう決定的に違ってしまったお前に言っておく』
砕けた仮面から生身の瞳が覗く。
その眼に怒りはなく、憎悪もなく、羨むように、哀れむようにこちらを見ていた。
その眼に怒りはなく、憎悪もなく、羨むように、哀れむようにこちらを見ていた。
『ひとつでも命を奪ったら……お前はもう、後戻り出来なくなる』
………………
………
……
「ハァッ……ハッ…………」
獣のような荒い息遣いが耳に入る。
肩が揺れて姿勢が項垂れる。
正体不明の痛みが、歩みを止まらせる。
肩が揺れて姿勢が項垂れる。
正体不明の痛みが、歩みを止まらせる。
傷は治癒に向かっている。
受けた傷に重大なものはなく、通常の再生速度で十分間に合う程度だ。
けれど、千翼の息は上がっていた。体の痛みは治まらなかった。
受けた傷に重大なものはなく、通常の再生速度で十分間に合う程度だ。
けれど、千翼の息は上がっていた。体の痛みは治まらなかった。
「……ぐっ」
耐えかねて壁に身を寄せる。
そあれからどこまで歩いたのか振り返って、さっきまでいたマンションの高く伸びた全高を見上げる。
そうしてまだマンションを出てから、大して離れてもいないのに気づく。遅々として禄に進んじゃいなかった。
そあれからどこまで歩いたのか振り返って、さっきまでいたマンションの高く伸びた全高を見上げる。
そうしてまだマンションを出てから、大して離れてもいないのに気づく。遅々として禄に進んじゃいなかった。
「変だ、どうして……」
こんなにも体が重いのか。
縛られてもいないのに、中身の神経が混線してるみたいに自由が利かない。
正体がなんなのか見当もつかない千翼は理由を捻り出そうとして、自分が戦い殺した、黒い騎士を思い浮かべる。
縛られてもいないのに、中身の神経が混線してるみたいに自由が利かない。
正体がなんなのか見当もつかない千翼は理由を捻り出そうとして、自分が戦い殺した、黒い騎士を思い浮かべる。
強い相手だった。
苦戦したわけじゃない。一対一なら負けない相手だった。
ただその対価に支払ったのは、三人の行方を見失ってしまった事だ。
アマゾンでもない黒い蝙蝠は、マンションを突き抜けたきり立ち止まる事無く夜の闇に飛翔していった。
追いかけるにも、鎧を着た姿で空を飛ぶ相手に追いつくだけの機動力は千翼にはない。さらに前には騎士も立ち塞がっていた。
苦戦したわけじゃない。一対一なら負けない相手だった。
ただその対価に支払ったのは、三人の行方を見失ってしまった事だ。
アマゾンでもない黒い蝙蝠は、マンションを突き抜けたきり立ち止まる事無く夜の闇に飛翔していった。
追いかけるにも、鎧を着た姿で空を飛ぶ相手に追いつくだけの機動力は千翼にはない。さらに前には騎士も立ち塞がっていた。
この先を通さない。
命に換えても守り抜く。
命に換えても守り抜く。
C4に追われる立場になり、イユに殺されそうになった時。実の父に殺されそうになった時。
二度も身を挺して庇ってくれた長瀬裕樹の姿が脳裏に浮かぶ。
かつて千翼を救ってくれた思いに、千翼の動きも阻まれた。
二度も身を挺して庇ってくれた長瀬裕樹の姿が脳裏に浮かぶ。
かつて千翼を救ってくれた思いに、千翼の動きも阻まれた。
「…………ああ、そうか」
裕樹との記憶を思い出して、千翼はようやくわかった。この痛みが何なのか。
体の何処にも見えない、千翼だけにある場所より生じる傷。
体の何処にも見えない、千翼だけにある場所より生じる傷。
千翼を守ってくれた人への裏切りだ。
千翼に手を差し伸ばそうとしてくれた人への裏切りだ。
千翼に手を差し伸ばそうとしてくれた人への裏切りだ。
善逸の思いを踏み躙って、五月を殺した事で軋み上げる人格(こころ)の痛みだった。
チームXで、C4の命令で、多くのアマゾンを狩ってきた。
自分が生きる為に、襲い来る父とも戦った。
イユの為になら―――彼女を生かす為になら、ただの人であっても殺す事に抵抗はなかっただろう。
自分が生きる為に、襲い来る父とも戦った。
イユの為になら―――彼女を生かす為になら、ただの人であっても殺す事に抵抗はなかっただろう。
五月に刃を向けた時から感じていた痛み。
彼女を殺せばその痛みを振り切れると思っていた。人を殺す躊躇を捨てられると思っていた。
なのに五月をこの手にかけた今も痛みが離れず、それが始めから勘違いなのだと気づいた。
彼女を殺せばその痛みを振り切れると思っていた。人を殺す躊躇を捨てられると思っていた。
なのに五月をこの手にかけた今も痛みが離れず、それが始めから勘違いなのだと気づいた。
仮面に触れた震える手。
涙に濡れた懇願する瞳。
恐怖で溺れそうになりながら、必死に繕ってみせた笑顔。
涙に濡れた懇願する瞳。
恐怖で溺れそうになりながら、必死に繕ってみせた笑顔。
痛みを無くしたいのならあの手は振り払うべきではなく。
殺すと決めたなら、どんな痛みを負うものと了解してなければいけなかった。
殺すと決めたなら、どんな痛みを負うものと了解してなければいけなかった。
アマゾンの自分の顔なんてわざわざ鏡で見もしないが、悍ましい形相だったに違いない。
心からの慈悲で優しく受け止めてくれれば止まっていたなんて、虫のいい事は言わない。
怖がって当たり前だ。イユの時のように悲鳴を上げたくて仕方なかったはずだ。
なのに彼女は必死で耐えて、堪えて、千翼に寄り添おうとしてくれた。
善逸が心を奮い立たせて戦ったように、五月も自分の心と戦っていた。
心からの慈悲で優しく受け止めてくれれば止まっていたなんて、虫のいい事は言わない。
怖がって当たり前だ。イユの時のように悲鳴を上げたくて仕方なかったはずだ。
なのに彼女は必死で耐えて、堪えて、千翼に寄り添おうとしてくれた。
善逸が心を奮い立たせて戦ったように、五月も自分の心と戦っていた。
どうして、二人共、そんなに自分を庇ってくれたのだろう。
見ず知らずで会ったばかりなのに、人喰いだと知った上で。
怖がられた理由はわかるけど、逆にその理由は終にわからないままだった。
母からの愛、裕樹との不思議な情を感じてはいても、乏しい経験の中からでは探る事もできない。
知っていたら―――あんな顔で別れてしまう事も、なかったのか。
見ず知らずで会ったばかりなのに、人喰いだと知った上で。
怖がられた理由はわかるけど、逆にその理由は終にわからないままだった。
母からの愛、裕樹との不思議な情を感じてはいても、乏しい経験の中からでは探る事もできない。
知っていたら―――あんな顔で別れてしまう事も、なかったのか。
……例えば。
この殺し合いに裕樹がいたとして、自分は同じようにイユを生き返らそうと裕樹を殺す事が出来ただろうか?
ありもしない仮定だ。裕樹はここにおらず、二人は裕樹のような関係にはなれなかった。
けど、時間があれば……場所が違っていれば……そうなれたかもしれない。
この殺し合いに裕樹がいたとして、自分は同じようにイユを生き返らそうと裕樹を殺す事が出来ただろうか?
ありもしない仮定だ。裕樹はここにおらず、二人は裕樹のような関係にはなれなかった。
けど、時間があれば……場所が違っていれば……そうなれたかもしれない。
夢を見る。
イユがいて、裕樹がいて、善逸と五月がいて、みんなの家族が一緒に揃っていて。
その環の中に、千翼もちゃんと入っている。
千翼が生まれてきた事は、無意味なんかじゃなく、災いなんかじゃなくて。
好きな人と、生きたいように生きられる。
そんな、幸せな夢を。
イユがいて、裕樹がいて、善逸と五月がいて、みんなの家族が一緒に揃っていて。
その環の中に、千翼もちゃんと入っている。
千翼が生まれてきた事は、無意味なんかじゃなく、災いなんかじゃなくて。
好きな人と、生きたいように生きられる。
そんな、幸せな夢を。
「でも……これは、俺の痛みだから」
それは千翼に人の心が残っている証だけれど。
千翼の心を救ってくれるものではなかった。
千翼の心を救ってくれるものではなかった。
瞼を開け、身を起こす。
立ち止まってる内に痛みは和らいでいた。
一度自覚してしまえば苦しくはなかった。見える痛みは、ただの傷だから。
立ち止まってる内に痛みは和らいでいた。
一度自覚してしまえば苦しくはなかった。見える痛みは、ただの傷だから。
あの時取り逃がしたうちの二人。
善逸の友達である、炭治郎。その仲間。
五月の家族である、一花。その姉妹。
善逸の友達である、炭治郎。その仲間。
五月の家族である、一花。その姉妹。
もう一度彼らと殺す時、同じ痛みが走ったとしても、もう自分は躊躇わないだろう。
痛みが感じられなくなった時、千翼はただの怪物(アマゾン)に堕ちる。殺すだけの鬼になる。
痛みが感じられなくなった時、千翼はただの怪物(アマゾン)に堕ちる。殺すだけの鬼になる。
だから忘れるな、この痛みを。
消すものか、この思いを。
消すものか、この思いを。
『ひとつでも命を奪ったら、お前はもう後戻り出来なくなる』
ついさっき、投げかけられた台詞が胸中に木霊する。
「戻るところなんて、はじめからない。
ここから……始めるんだよ、俺達は」
ここから……始めるんだよ、俺達は」
星も降らない空の下で、再び歩き始める。
この先出会う誰彼を、この手で引き裂く事を胸に秘め。
ただ存在するだけの生ではない、人として活きていける生を手に入れる為に。
この先出会う誰彼を、この手で引き裂く事を胸に秘め。
ただ存在するだけの生ではない、人として活きていける生を手に入れる為に。
それはこの世に生まれた事こそが罪と断じられた少年が、自らの意志で罪を重ねて刻み付ける。
……慟哭と痛みが生み出した、物語の始点。
……慟哭と痛みが生み出した、物語の始点。
【E-7/PENTAGON付近/1日目・黎明】
【千翼@仮面ライダーアマゾンズ】
[状態]:ひどい空腹、全身に軽傷、心身ともに疲労(中)、ダメージ(中)、体に打撲、イユへの強い想いと人を食べない鋼の決意、自己嫌悪 、痛み
[道具]:基本支給品一式、万能布ハッサン@Fate/Grand Order(※イユの亡骸内包済)、ネオアマゾンズレジスター(イユ)@仮面ライダーアマゾンズ、賊刀・鎧@刀語
[思考・状況]
基本方針:イユの痛みになって、一緒に生きる明日を目指す。
1:イユを生き返らせるために優勝する。そのために全員殺す。
2:イユと一緒に生きられる自分であり続けるために、絶対に人は食べない。
3:…………善逸、五月。ごめん。
4:アマゾン態になる時はできるかぎり鎧を纏うことで人を食う可能性を減らす。
[備考]
※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」
※人肉を食すことで、自分の人格が変わり願いに影響が出てしまうことを強く忌避・警戒しています。
※賊刀・鎧をアマゾン態で装着時は若干サイズが小さくフィットしませんが、隙間を触手で埋めることで補っています。
※魔剣グラムは破壊されました。
※ダークウィングが蓮の仇として鏡の中から追跡しています。
【千翼@仮面ライダーアマゾンズ】
[状態]:ひどい空腹、全身に軽傷、心身ともに疲労(中)、ダメージ(中)、体に打撲、イユへの強い想いと人を食べない鋼の決意、自己嫌悪 、痛み
[道具]:基本支給品一式、万能布ハッサン@Fate/Grand Order(※イユの亡骸内包済)、ネオアマゾンズレジスター(イユ)@仮面ライダーアマゾンズ、賊刀・鎧@刀語
[思考・状況]
基本方針:イユの痛みになって、一緒に生きる明日を目指す。
1:イユを生き返らせるために優勝する。そのために全員殺す。
2:イユと一緒に生きられる自分であり続けるために、絶対に人は食べない。
3:…………善逸、五月。ごめん。
4:アマゾン態になる時はできるかぎり鎧を纏うことで人を食う可能性を減らす。
[備考]
※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」
※人肉を食すことで、自分の人格が変わり願いに影響が出てしまうことを強く忌避・警戒しています。
※賊刀・鎧をアマゾン態で装着時は若干サイズが小さくフィットしませんが、隙間を触手で埋めることで補っています。
※魔剣グラムは破壊されました。
※ダークウィングが蓮の仇として鏡の中から追跡しています。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 悲しみは仮面の下に | 千翼 | それを知らず |