鬼殺しの戦い ◆2lsK9hNTNE
『 『うるせえ バァカ!!』 』
『なにそのヘッタクソな嘘!小学生でも見破れるわ!』
『身体は大人なのに頭脳は幼稚園児なんですかぁ!?頭んなかまで筋肉ミッチリですかぁ!?』
『てか、ぞいってなに!?なにその語尾!?キャラクター立ててますアピール!?』
『さっぶ!!!うわ、さっぶ!!!!藤原先輩でもそこまではしませんよ!!!!』
『あ、言いすぎましたねぞい!!!ごめんなさいぞい!!!ぞいぞいぞぞい!!!!』
『工藤さん』
『逃げろ』
『………………』
『…………』
『……』
もう石上の叫び声は聞こえなかった。
煽りも罵りも嘲りも、二度と聞くことは出来なかった。
それは、彼が既に物言わぬ骸になり果てている何よりの証明だった。
永井圭は思った。
煽りも罵りも嘲りも、二度と聞くことは出来なかった。
それは、彼が既に物言わぬ骸になり果てている何よりの証明だった。
永井圭は思った。
(死んじゃったんじゃあどうしようもないな)
強がりでも自分への慰めでも何でもなく、普通にそう思った。
これがもし、圭を誘き出すために拷問でもされて悲鳴をあげているとかなら、助けに戻る選択肢もないではないが、死んでしまったのなら助けようもない。
これがもし、圭を誘き出すために拷問でもされて悲鳴をあげているとかなら、助けに戻る選択肢もないではないが、死んでしまったのなら助けようもない。
(たぶん拡声器かなにか使ったんだろうけど、音の感じからするとそんなに遠くじゃなさそうだな。急いで離れないと)
圭は振り返るさえせず、歩みを再開した。
◇
『 『うるせえ バァカ!!』 』
『なにそのヘッタクソな嘘!小学生でも見破れるわ!』
『身体は大人なのに頭脳は幼稚園児なんですかぁ!?頭んなかまで筋肉ミッチリですかぁ!?』
『てか、ぞいってなに!?なにその語尾!?キャラクター立ててますアピール!?』
『さっぶ!!!うわ、さっぶ!!!!藤原先輩でもそこまではしませんよ!!!!』
『あ、言いすぎましたねぞい!!!ごめんなさいぞい!!!ぞいぞいぞぞい!!!!』
『工藤さん』
『逃げろ』
『………………』
『…………』
『……』
男にはなぜそんな声が響いてきたのかわからない。
誰が言ったのかも知らないし、意味すらわからない単語も多かった。
それでも、声の主がどのような想いでその言葉は発したのかは感じ取った。
男は思った。
誰が言ったのかも知らないし、意味すらわからない単語も多かった。
それでも、声の主がどのような想いでその言葉は発したのかは感じ取った。
男は思った。
「見事」
◇
「このクソガキがぁ! わしの頭脳が幼稚園児だとぉ! 語尾がさぶいだとぉ!」
石上優の頭を潰しても、権三の怒りは全く収まらなかった。
「わしは年長者なんだぞぉ! たんまり税金を払っとるんじゃぞぉ! お前のような社会に何の貢献もしてない若者は、わしのために日本目のジュースを用意するのが当然じゃろがい!」
湧き上がる衝動に任せて権三は死体を踏みつけたる。人間離れした力で踏まれ、死体は潰れ、千切れるが、それでも収まらず権三は何度も何度も踏み続けた。
もはや死体にとも呼べないグチャグチャの肉の塊を見て、権三はやっと冷静さを取り戻した。
もはや死体にとも呼べないグチャグチャの肉の塊を見て、権三はやっと冷静さを取り戻した。
「ハァ……ハァ……クソッ。しまったぞい」
権三がこのガキを殺したそもそもの目的はエネルギーとなる鉄分――血を頂くためだったが、これだけグチャグチャにしてしまったら血なんて全部地面に撒き散らされている。
「このわしに地面についたジュースを舐めろとッ……」
耐え難い屈辱だ。しかしあの千年男のような強大な力を持つ者の存在を考えると、できる限り補給はしておきたい。権三はしばしの葛藤する。
その時、権三は自分に向けられる強烈な殺気を感じた。
その時、権三は自分に向けられる強烈な殺気を感じた。
「!?」
振り向く。男がいた。着物に袴、左右の手に一刀ずつ刀を持った侍のような出で立ちの男。
いつもの権三は時代錯誤の格好をコスプレか何かかと思い、笑いものにしただろう。だが男から醸し出される威圧感はこの男は本当の侍であると権三に訴えてきていた。
いつもの権三は時代錯誤の格好をコスプレか何かかと思い、笑いものにしただろう。だが男から醸し出される威圧感はこの男は本当の侍であると権三に訴えてきていた。
「……誰ぞい、お前は」
問いかける。男は答えた。
「宮本武蔵」
「あ? 武蔵?」
「二つと無き尊き花を散らす鬼を斬りに来た」
「あ? 武蔵?」
「二つと無き尊き花を散らす鬼を斬りに来た」
男は構える。こちらを向いた二つの刀が、斬るべき鬼とは権三のことであると言葉よりも雄弁に語っていた。
「フン」
権三は鼻で笑う。
「可笑しことを言うぞい。二つと無き尊き花とはわしそのもの。わしがわしを……」
刹那、権三は駆けた。
「散らすわけがないぞい!」
正面から突っ込む権三、対する男は迎撃の構え、名乗りは宮本武蔵。
自分という蘇りがいる以上、この男が生き返ったあの宮本武蔵である可能性もゼロではない。歴史にその名を残す剣豪だ。実力は想像に難くない。
だが所詮は時代遅れの刀なぞの武器にする男。銃弾さえ跳ね返す権三の敵ではない。
自分という蘇りがいる以上、この男が生き返ったあの宮本武蔵である可能性もゼロではない。歴史にその名を残す剣豪だ。実力は想像に難くない。
だが所詮は時代遅れの刀なぞの武器にする男。銃弾さえ跳ね返す権三の敵ではない。
「死ねえ!」
権三の鍛え抜かれた(鍛えたわけではないが)左手が拳の形を作り繰り出される。
武蔵は滑るように横にまわり、腕を切断すべく一本の太刀を二の腕目掛け振り下ろす。が、腰の下まで落とすつもりだった武蔵のイメージに反し、刀は二の腕表面を僅かに傷をつけただけで動きを止めた。
武蔵の顔が驚愕に染まる。そしてそれは権三も同じだった。
武蔵は滑るように横にまわり、腕を切断すべく一本の太刀を二の腕目掛け振り下ろす。が、腰の下まで落とすつもりだった武蔵のイメージに反し、刀は二の腕表面を僅かに傷をつけただけで動きを止めた。
武蔵の顔が驚愕に染まる。そしてそれは権三も同じだった。
(わしの身体に刀を傷をつけただと!)
権三の肉体は材質こそ鉄だがダイヤモンドすら超える硬度を持つ。刀で斬りかかったならそちらの方が折れるのが自然なのだ。
にも関わらず刀は折れるどころか、皮一枚に満たないほどだが権三の身体に傷を刻んでいる。
互いにありえない現象にほんの一時動きが止まる。先に動いたのは百戦錬磨の宮本武蔵。
権三も一歩遅れて後ろに引こうとするが、遅い。武蔵の二の太刀が閃いて、権三の左腕を肘関節から両断した。
にも関わらず刀は折れるどころか、皮一枚に満たないほどだが権三の身体に傷を刻んでいる。
互いにありえない現象にほんの一時動きが止まる。先に動いたのは百戦錬磨の宮本武蔵。
権三も一歩遅れて後ろに引こうとするが、遅い。武蔵の二の太刀が閃いて、権三の左腕を肘関節から両断した。
「があああああああああああ!」
悲鳴をあげる権三。体内のナノロボが断面を止血する。武蔵は追い打ちを掛けるべく踏み込んだ。
しかしここでおとなしく追撃を喰らうほど権三も甘くはない。右腕の人差し指を武蔵に向ける。指先を鉄と変え発射。
咄嗟に撃ったろくに狙いも定まってない一撃だ。まともに当たる筈もない。しかし鉄砲もない場での突然の銃撃に、武蔵、弾道を見切るため、攻撃の手を一瞬止める。権三はすかさず後ろに飛び退いた。
ナノロボで強化された権三の身体能力は人体の限界を軽く凌駕している。一度の跳躍で二人の間には常人なら数十歩は係る距離が空いた。
しかしここでおとなしく追撃を喰らうほど権三も甘くはない。右腕の人差し指を武蔵に向ける。指先を鉄と変え発射。
咄嗟に撃ったろくに狙いも定まってない一撃だ。まともに当たる筈もない。しかし鉄砲もない場での突然の銃撃に、武蔵、弾道を見切るため、攻撃の手を一瞬止める。権三はすかさず後ろに飛び退いた。
ナノロボで強化された権三の身体能力は人体の限界を軽く凌駕している。一度の跳躍で二人の間には常人なら数十歩は係る距離が空いた。
(こいつ、あの一瞬でわしの弱点を見抜いてくるとは……恐ろしく戦いなれてるぞい)
どれだけ身体を頑強にできようとも関節だけは動かすために硬くできない。甲冑と同じ理屈だ。
弱点を見抜かれたのは初めてではないが、身体を頑丈さを知った直後についてきたのはこの男だけだった。
武蔵は先程見せた骨銃(ボーン・ガン)を警戒してか寄ってこない。しかし権三の方もこの距離では攻撃できなかった。
ボーン・ガンには指の数という弾数制限がある。ナノロボの力ならば簡単に回復できることではあるが、エネルギーとするためのジュースをここに来てから未だ一度も摂取できていない。
なのより権三は御歳七十四歳。肉体こそは若返ったが難聴や老眼は治っていない。いくら飛び道具があろうとも遠くにいる相手を狙うのは難しい。
弱点を見抜かれたのは初めてではないが、身体を頑丈さを知った直後についてきたのはこの男だけだった。
武蔵は先程見せた骨銃(ボーン・ガン)を警戒してか寄ってこない。しかし権三の方もこの距離では攻撃できなかった。
ボーン・ガンには指の数という弾数制限がある。ナノロボの力ならば簡単に回復できることではあるが、エネルギーとするためのジュースをここに来てから未だ一度も摂取できていない。
なのより権三は御歳七十四歳。肉体こそは若返ったが難聴や老眼は治っていない。いくら飛び道具があろうとも遠くにいる相手を狙うのは難しい。
(ここは逃げるか?)
それもありだ。権三は己を絶対的存在であると確信しているが、己の能力を実情以上に過信はしない。
目の前の男はナノロボ感染者のような特殊能力こそ見せないが、身体能力や戦闘技術は人間の域ではない。まともに戦って無事で済む保証はない。
一度退いて、先程のガキたちのような弱い者からジュースを補給するべきか。
権三がそう考え始めた時、またしても武蔵は権三よりも先に動いた。右手に持った刀をリュックにしまい、側に落ちている権三左腕の手首を掴んで持ち上げたのだ。
目の前の男はナノロボ感染者のような特殊能力こそ見せないが、身体能力や戦闘技術は人間の域ではない。まともに戦って無事で済む保証はない。
一度退いて、先程のガキたちのような弱い者からジュースを補給するべきか。
権三がそう考え始めた時、またしても武蔵は権三よりも先に動いた。右手に持った刀をリュックにしまい、側に落ちている権三左腕の手首を掴んで持ち上げたのだ。
(まさか……)
そのまさかである。武蔵は権三の左腕を盾として正面から突っ込んきた。
腕は切り離された時と同じ最高硬度の状態だ。ボーン・ガンを撃っても貫くことはできない。
それだけではない。身体と同じ硬さのあれを武器として使われてたら、いくら鉄の肉体でも砕かれうる。
普通に撃っても防がれるだけ。権三は右足を地面につけたまま、親指だけを武蔵に向け、そこからボーン・ガンを撃った。
足元に向かって飛ぶ弾丸を武蔵は防ぐことすらせず、宙へ跳んだ。
権三の頭上へと舞い上がった武蔵は、その手に持った左腕を脳天目掛けて振り落ろす。同等の硬度に落下の勢いと武蔵の怪力まで乗った一撃。
それを権三は頭に受けた。
グニャリと――権三の頭が鉄の腕を受け止めた。
腕は切り離された時と同じ最高硬度の状態だ。ボーン・ガンを撃っても貫くことはできない。
それだけではない。身体と同じ硬さのあれを武器として使われてたら、いくら鉄の肉体でも砕かれうる。
普通に撃っても防がれるだけ。権三は右足を地面につけたまま、親指だけを武蔵に向け、そこからボーン・ガンを撃った。
足元に向かって飛ぶ弾丸を武蔵は防ぐことすらせず、宙へ跳んだ。
権三の頭上へと舞い上がった武蔵は、その手に持った左腕を脳天目掛けて振り落ろす。同等の硬度に落下の勢いと武蔵の怪力まで乗った一撃。
それを権三は頭に受けた。
グニャリと――権三の頭が鉄の腕を受け止めた。
「!」
武蔵は予想外の感触に瞠目し。権三はニヤリと笑う。
これぞ権三の新たな技。その名もラバーモード。
ナノロボは宿主の強い想いによって新たな力を発言させる。鉄の身体も円城周兎に傷つけられた際の強い感情によって芽生えたものだ。
しかしいくら身体を丈夫にしようと、千年男や円城周兎の上腕骨ボーン・ガンのようにそれを上回る攻撃は存在する。
そこで編み出したのがこのラバーモードだ。皮膚を強い弾性を持つゴムに変えることで衝撃を無力化する。
前に権三が死ぬ原因の一つであったラバー銃にヒントを得て作った技だ。
これぞ権三の新たな技。その名もラバーモード。
ナノロボは宿主の強い想いによって新たな力を発言させる。鉄の身体も円城周兎に傷つけられた際の強い感情によって芽生えたものだ。
しかしいくら身体を丈夫にしようと、千年男や円城周兎の上腕骨ボーン・ガンのようにそれを上回る攻撃は存在する。
そこで編み出したのがこのラバーモードだ。皮膚を強い弾性を持つゴムに変えることで衝撃を無力化する。
前に権三が死ぬ原因の一つであったラバー銃にヒントを得て作った技だ。
(あの千年男との再戦用に考えた技だったが、こんなところで役に立つとはな)
空中で自由に動けない武蔵に、権三は拳を繰り出す。
もし権三の頭が硬いままであったら、たとえダメージを与えられなかったとしても、武蔵は頭を起点にして翻り、拳をかわせただろう。
しかし弾力のあるゴムではまるで起点にできず、やむなく武蔵は左の刀で受けるが、それでもなお受けきれず吹っ飛んで、民家の塀を破壊した。
もし権三の頭が硬いままであったら、たとえダメージを与えられなかったとしても、武蔵は頭を起点にして翻り、拳をかわせただろう。
しかし弾力のあるゴムではまるで起点にできず、やむなく武蔵は左の刀で受けるが、それでもなお受けきれず吹っ飛んで、民家の塀を破壊した。
「ぬう……」
起き上がった武蔵が手に持つ刀は刃が根本より折れていた。
(いける!)
権三は確信する。いま奴が持っているのは権三の左腕だけ。このまま刀を取り出す暇を与えず攻め続ければ勝てる。
権三は武蔵に向かって駆け出す。その時、武蔵が謎の行動に出た。権三の左腕を地面に落とし、両手で耳を塞いだのだ。
まさか諦めたのか? 訝しむ権三、刹那。
権三は武蔵に向かって駆け出す。その時、武蔵が謎の行動に出た。権三の左腕を地面に落とし、両手で耳を塞いだのだ。
まさか諦めたのか? 訝しむ権三、刹那。
「”止まれ“!」
”声“が響いた。
権三の身体が動きを止めた。
権三の身体が動きを止めた。
◇
それは石上優の最後の叫びを気にせず、圭を進んで少しした時のことだった。
「があああああああああああ!」
悲鳴が聞こえた。さっきの大男の声だ。石上が使った拡声器が大男の声を拾ったのだろう。
それは明らかに自分に降り掛かった痛みに対する悲鳴だった。恐怖とかショックとかそういうものに対する声じゃない。
石上の声が殺し合いに積極的な者や、正義感の強い者を引き寄せるのは予想していたことだった。大男がその場からすぐに動かなかったなら、遭遇して戦闘になることは十分にありえる。圭はそうなったとしても大男に呆気なく殺される可能性が高いと思っていたのだが。
それは明らかに自分に降り掛かった痛みに対する悲鳴だった。恐怖とかショックとかそういうものに対する声じゃない。
石上の声が殺し合いに積極的な者や、正義感の強い者を引き寄せるのは予想していたことだった。大男がその場からすぐに動かなかったなら、遭遇して戦闘になることは十分にありえる。圭はそうなったとしても大男に呆気なく殺される可能性が高いと思っていたのだが。
(戦えてるのか、あいつと)
だとしたらそれはどの程度のレベルなのか。互角なのか、圧倒しているのか、辛うじてやりあえているだけなのか。
圧倒しているなら良いが、そうでないならこのまま放っておいても大男は死なない可能性がある。
圧倒しているなら良いが、そうでないならこのまま放っておいても大男は死なない可能性がある。
(戻るか)
死んだ石上のために戻ることには意味がない。あの男を殺すためなら意味がある。殺せるのならあいつはここで殺す。
大男がどの程度のダメージを受けているのかはわからないし、相手の参加者がどんな人物かもわからない。だがどのみちどこかでリスクは冒さなければならない。ならいま冒す。
決断するやいなや、圭はすぐさま引き返した。
戻ってきた圭が見たのは大男に侍風の男が殴られたところだった。
大男がどの程度のダメージを受けているのかはわからないし、相手の参加者がどんな人物かもわからない。だがどのみちどこかでリスクは冒さなければならない。ならいま冒す。
決断するやいなや、圭はすぐさま引き返した。
戻ってきた圭が見たのは大男に侍風の男が殴られたところだった。
「”止まれ”!」
大男に向かって叫ぶ。亜人には蘇生とIBMの他にもうひとつ能力がある。特殊な声を発することで、相手の動きを蛇に睨まえれ蛙のように止めることができるのだ。
同じ亜人には通じないが、大男の能力は亜人とは別物だ。物は試しで圭は叫んだ。が、大男は止まらずに走り出す。
やはり通じないのか、そう思った圭の目に落ちている拡声器が目に入った。
ちょうど塀を突っ込んだタイミングで叫んだので、侍風の男の身体も止まった様子はない。圭は彼に耳を塞ぐようにジェスチャーする。
拡声器を手に取り、もう一度叫んだ。
同じ亜人には通じないが、大男の能力は亜人とは別物だ。物は試しで圭は叫んだ。が、大男は止まらずに走り出す。
やはり通じないのか、そう思った圭の目に落ちている拡声器が目に入った。
ちょうど塀を突っ込んだタイミングで叫んだので、侍風の男の身体も止まった様子はない。圭は彼に耳を塞ぐようにジェスチャーする。
拡声器を手に取り、もう一度叫んだ。
◇
圭は知らないことだが、権三はかつて砂村という男の、声で催眠術をかける能力を難聴によって防いだことがあった。
砂村の声に含まれる人を催眠状態にする特殊な周波数が、権三の耳には拾えなかったのだ。
一度目の亜人の声が効かなかったのも難聴ゆえ、耳に入らなかったからだ。しかしいくら難聴でも拡声器で増幅された声までは防ぐことはできない。
亜人の声を聞いた権三は今度こそ動きを止めた。
砂村の声に含まれる人を催眠状態にする特殊な周波数が、権三の耳には拾えなかったのだ。
一度目の亜人の声が効かなかったのも難聴ゆえ、耳に入らなかったからだ。しかしいくら難聴でも拡声器で増幅された声までは防ぐことはできない。
亜人の声を聞いた権三は今度こそ動きを止めた。
(なんじゃっ、これはぁ!)
権三の脳内で叫けんだ。好機で訪れた謎の現象、混乱の極みだった。
動かない身体を無理やり動かそうとするが、全身が金縛りにでもあったかのようにいうことをきかない。
それでもナノロボで強化された肉体の力か、首だけを辛うじて動かし、権三は声のした方を見た。そこにあったのは先程取り逃がしたガキが拡声器らしき物を持って立っている姿だった。
動かない身体を無理やり動かそうとするが、全身が金縛りにでもあったかのようにいうことをきかない。
それでもナノロボで強化された肉体の力か、首だけを辛うじて動かし、権三は声のした方を見た。そこにあったのは先程取り逃がしたガキが拡声器らしき物を持って立っている姿だった。
(どうしてあのガキがここに。それにこの力は。わしから逃げることしかできない無力なガギじゃなかったのか!?)
いや、それよりも武蔵の方はどうなった。あいつの動きも止まったのか?
首を戻した権三が見たのは、すで刀を出し終え目前にまで迫った武蔵の姿だった。刀が右腕の付け根へ疾る。
権三は関節を含めた全身を鉄へと変える。動かせない身体でも鉄に変えることはできた。どのみち動かない関鉄なら鉄にしない理由はない。
刃を弾き、直後に身体が動くようになった。もう一度あの声を喰らうとやばい。右腕をガキに向ける。遠い、まともに狙える距離ではない。権三五本の指先全てを一斉に放った。
四発は掠りもせずに飛んでいく。だが残った一発が拡声器に直撃した。
首を戻した権三が見たのは、すで刀を出し終え目前にまで迫った武蔵の姿だった。刀が右腕の付け根へ疾る。
権三は関節を含めた全身を鉄へと変える。動かせない身体でも鉄に変えることはできた。どのみち動かない関鉄なら鉄にしない理由はない。
刃を弾き、直後に身体が動くようになった。もう一度あの声を喰らうとやばい。右腕をガキに向ける。遠い、まともに狙える距離ではない。権三五本の指先全てを一斉に放った。
四発は掠りもせずに飛んでいく。だが残った一発が拡声器に直撃した。
「ぐっ!」
ガキの目の前で拡声器が砕ける。しかし権三はそれを見ていなかった。目の前では脇腹を狙って鉄の腕を振るう。
脇腹をラバー化して防御。即座に右腕で左腕を掴む。指先が無いので力は弱いが指を鉄化して固定。お返しとばかりに武蔵の腹を蹴った。浅い。直撃の前に自分で後ろに飛んでいたのだろう。大したダメージは受けていないようだった。だが距離は空けられた。
突然の乱入者にも動じた様子はなく真っ直ぐにこちらだけを睨んでいる。つまり二対一の状況だ。
逃げるべきだと思った。
敵は能力の全容が知れないガキと、特殊な力こそないがナノロボ感染者と渡り合える身体能力の侍。このまま戦うのは危険だ。
だが下手に背中を見せようものならその隙を突かれる。逃げるためにも何か一手必要だ。
脇腹をラバー化して防御。即座に右腕で左腕を掴む。指先が無いので力は弱いが指を鉄化して固定。お返しとばかりに武蔵の腹を蹴った。浅い。直撃の前に自分で後ろに飛んでいたのだろう。大したダメージは受けていないようだった。だが距離は空けられた。
突然の乱入者にも動じた様子はなく真っ直ぐにこちらだけを睨んでいる。つまり二対一の状況だ。
逃げるべきだと思った。
敵は能力の全容が知れないガキと、特殊な力こそないがナノロボ感染者と渡り合える身体能力の侍。このまま戦うのは危険だ。
だが下手に背中を見せようものならその隙を突かれる。逃げるためにも何か一手必要だ。
(……どうやって逃げる?)
圭はこいつはここで仕留めたいと思っていた。
だが拡声器は破壊されてもう声は通じず、おまけにその時の破片で右目を負傷した。見えているのは左目だけだ。いつもなら死んで治すが今はそれができるのかもわからない。
IBMもあるが、あれはコントロールが効かない。迂闊に使えば最悪、侍風の男に攻撃して向こうにまで敵と認識されるかもしれない。
だが拡声器は破壊されてもう声は通じず、おまけにその時の破片で右目を負傷した。見えているのは左目だけだ。いつもなら死んで治すが今はそれができるのかもわからない。
IBMもあるが、あれはコントロールが効かない。迂闊に使えば最悪、侍風の男に攻撃して向こうにまで敵と認識されるかもしれない。
(……どうやって仕留める?)
武蔵は最初からずっとこの鬼を斬りたいと思っている。
されど鉄の腕で殴りかかれど柔く受けられ、さらの奪い返され。弱点と思っていた関節への斬撃も弾かれた。
かつて戦った鬼やレジイナとも違う不可思議な技。この鬼を斬る方法を武蔵は未だつかめずにいた
されど鉄の腕で殴りかかれど柔く受けられ、さらの奪い返され。弱点と思っていた関節への斬撃も弾かれた。
かつて戦った鬼やレジイナとも違う不可思議な技。この鬼を斬る方法を武蔵は未だつかめずにいた
(……いかにして斬る?)
三者三様に動きが止まる。最初に動いたのは。
――今之川権三だった。
――今之川権三だった。
「フンッ!」
権三は斜め前方の地面を鉄の右足で突き刺した。足は貫通した地面の下に埋まる。普通に考えれば無意味な行動――どころか自分の動きを阻害するだけの行動だ。
「体銃(ボディ・ガン)」
叫ぶ。次の瞬間、権三の右足首から上が勢いよく射出された。
右足を地面に固定し、指先を撃つ技の応用しての全身の発射。これが権三が考え出した逃げの一手だ。
鉄の肉体で途中の建物を貫きながら権三は飛んでいく。やがて落下し、鉄の固まりに降ってこられた地面が割れた。
右足を地面に固定し、指先を撃つ技の応用しての全身の発射。これが権三が考え出した逃げの一手だ。
鉄の肉体で途中の建物を貫きながら権三は飛んでいく。やがて落下し、鉄の固まりに降ってこられた地面が割れた。
(左腕や指は今はいい。右足の再生を最優先)
権三は全再生力を右足に集中。足首から先を即座に修復した。両足で全速力で走りその場から離脱した。
◇
地面の割れで、ここが落下地点であることはすぐにわかった。しかし圭たちが駆けつけた時にはすでに大男の姿は無かった。
右足を無くしたはずなのに血の跡すら続いていない。完全に見失った。
右足を無くしたはずなのに血の跡すら続いていない。完全に見失った。
(クソッ、結局取り逃した)
確実に息の根を止めるためにわざわざ引き返したのにとんだ失敗だ。
だがいつまでも悔しがってもいられない。取り組まなくてはいけない次の問題がある。
圭は一緒にここまで来た侍風の男を見た。成り行き上共闘していたこの男。まだどのような人間かは不明だ。ことここに至っても襲ってこないということは乗り気な参加者ではなさそうだ。
圭の声の力を目の当たりにしても恐れる様子もない。それは大男と渡り合う力を持っていることから予測はしていたが。
だがいつまでも悔しがってもいられない。取り組まなくてはいけない次の問題がある。
圭は一緒にここまで来た侍風の男を見た。成り行き上共闘していたこの男。まだどのような人間かは不明だ。ことここに至っても襲ってこないということは乗り気な参加者ではなさそうだ。
圭の声の力を目の当たりにしても恐れる様子もない。それは大男と渡り合う力を持っていることから予測はしていたが。
「さっきの僕、もしかしてお邪魔だったりしました?」
男はあまりにも侍っぽすぎて、「男の決闘に横槍など無用」、とか言い出しそうだったなので先んじて尋ねる。
「鬼退治は決闘ではない。退治さえできれば武蔵、手段など問わん」
武蔵という名を聞いて圭は『出たよ!』と思った。
名簿にやたらと載っていた歴史上の人物たち、いくつか推測はしていた。
1、偽名として偉人の名を使うグループ参加している。
2、死者の蘇生という言葉に説得力を与えるための偽情報。
3、本人。
名簿にやたらと載っていた歴史上の人物たち、いくつか推測はしていた。
1、偽名として偉人の名を使うグループ参加している。
2、死者の蘇生という言葉に説得力を与えるための偽情報。
3、本人。
彼を見る限り一番ありえないと思っていた3が正しいと考えて良さそうだった。
げんなりする圭に今度は武蔵のほうが尋ねる。
げんなりする圭に今度は武蔵のほうが尋ねる。
「お主はもしや先程の声が言っていた工藤なる者か?」
「いえ違います。僕はたまたまさっきの声を聞いてやって来た永井圭です」
「いえ違います。僕はたまたまさっきの声を聞いてやって来た永井圭です」
いつの時代の人間が参加しているわからないような状況なら、自分の名前が知られている可能性のリスクよりも、偽名の名乗るリスクの方が高いと圭は判断した。
「色々と話したいことはあるんですが、とりあえず場所を変えませんか?」
ここに居てはまた石上の聞いた誰かがやって来て面倒が起きるかもしれない。
「いいだろう」
同意を得られたので圭はすぐに移動を開始した。
◇
周囲に誰もいないことを確認し、権三はリュックの中に入っているありったけの水と食料を飲み込んだ。
身体にエネルギーが得たことにより指が再生する。左腕を断面に合わせるとそちらもすぐに繋がった。
身体にエネルギーが得たことにより指が再生する。左腕を断面に合わせるとそちらもすぐに繋がった。
「どうにかダメージは回復しきれたぞい」
だが水と食料が完全になくなってしまった。他の参加者の支給品を奪わないと、これから先権三は食う物にすら困ることになる。
あのクソガキの血をさっさと飲んでいれば。そうすればここまでしなくても傷は回復できた。
いやそもそもクソガキの死体蹴りなどしなければ、先程の戦闘自体せずに済んだはずだ。
クソガキの権三の堪忍袋を一瞬で切らせた言葉の数々、あれのせいで歯車が狂ってしまった。
だが今の権三は全ての責任をあの言葉に押し付けない。権三自身の浅慮も原因の一つだ。
自分や千年男のような人知を超えた力を持つ者はごく一部の例外で、大抵の参加者が補給用のジュースに過ぎないと思っていた。
だがそうではなかったのだ。この島には常人の域を外れた力を持つ者たちがおそらく大勢いる。
慎重さが必要だ。あの女王たちと会った時のように、衝動に任せて力を振るうのではない慎重が必要だ。
そのことを権三は強く理解した。
あのクソガキの血をさっさと飲んでいれば。そうすればここまでしなくても傷は回復できた。
いやそもそもクソガキの死体蹴りなどしなければ、先程の戦闘自体せずに済んだはずだ。
クソガキの権三の堪忍袋を一瞬で切らせた言葉の数々、あれのせいで歯車が狂ってしまった。
だが今の権三は全ての責任をあの言葉に押し付けない。権三自身の浅慮も原因の一つだ。
自分や千年男のような人知を超えた力を持つ者はごく一部の例外で、大抵の参加者が補給用のジュースに過ぎないと思っていた。
だがそうではなかったのだ。この島には常人の域を外れた力を持つ者たちがおそらく大勢いる。
慎重さが必要だ。あの女王たちと会った時のように、衝動に任せて力を振るうのではない慎重が必要だ。
そのことを権三は強く理解した。
【C-4・市街地/1日目・黎明】
【永井圭@亜人】
[状態]: 健康 、右目負傷
[装備]: なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:佐藤を倒す
1.移動して武蔵と話す。
2.自衛隊入間基地に向かう
3:使える武器や人員の確保
[備考]
※File:48(10巻最終話)終了後からの参戦
※亜人の蘇生能力になんらかの制限があるのではないかと考えています
[状態]: 健康 、右目負傷
[装備]: なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:佐藤を倒す
1.移動して武蔵と話す。
2.自衛隊入間基地に向かう
3:使える武器や人員の確保
[備考]
※File:48(10巻最終話)終了後からの参戦
※亜人の蘇生能力になんらかの制限があるのではないかと考えています
【宮本武蔵@衛府の七忍】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~3、嘴平伊之助の日輪刀×1、折れた嘴平伊之助の日輪刀×1@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:この世にまたとない命を散らせる――鬼を討つ。
1:移動のこの永井圭と話す
2:事情通の者に出会う
[備考]
※参戦時期、明石全登を滅したのち。
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~3、嘴平伊之助の日輪刀×1、折れた嘴平伊之助の日輪刀×1@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:この世にまたとない命を散らせる――鬼を討つ。
1:移動のこの永井圭と話す
2:事情通の者に出会う
[備考]
※参戦時期、明石全登を滅したのち。
【D-5・那田蜘蛛山/1日目・黎明】
【今之川権三@ナノハザード】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:飲食物を除いだ基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:全員ブチ殺してZOI帝国を作るぞい!
1.慎重に立ち回って全員ブチ殺すぞい。
2.しかしあの千年男はヤバイぞい。一旦逃げて作戦を練らなければ……
3.他にもヤバイ奴が大勢いそうだぞい。
[備考]
※本編で死亡した直後からの参戦です。
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:飲食物を除いだ基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:全員ブチ殺してZOI帝国を作るぞい!
1.慎重に立ち回って全員ブチ殺すぞい。
2.しかしあの千年男はヤバイぞい。一旦逃げて作戦を練らなければ……
3.他にもヤバイ奴が大勢いそうだぞい。
[備考]
※本編で死亡した直後からの参戦です。
※C-4・市街地に石上優の支給品(ランダム支給品1~2)及びグチャグチャの石上優の死体が残っています。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 石上優は叫びたい | 永井圭 | あけないたたかい |
| 今之川権三 | WORLD IS MINE(前編) | |
| 武蔵、出逢う! | 宮本武蔵 | あけないたたかい |