悪魔の事件 序
時計塔の地下深く。誰もが寄り付かない場所。
噂では地下ダンジョンが広がっているとか、巨大な研究所が埋められているとか。
……まあ、強ち間違いではない。
その場所に入り口はない。それもそうだろう、此処は「秘匿されるべき場所」なのだから。
「なァ、
オスカーの旦那。旦那は少女趣味なんだって?」
顔に酷い火傷跡が刻まれた女性。コードネーム
XYZが、そう、何の突拍子もなく言いだした。
天井ではカラカラと古びたファンが回り、切れ掛けのライトが彼らを照らしている。
「……うん?」
白髪の男性、
オスカーが手に付けていた書類から顔を上げた。
それを見て、ニヤと笑い、こう続ける。
「だってよォ、私知ってるんだぜ?旦那が職務外で明らかに無害そうな少女を監視してるのを、サ」
「…………」
無言を肯定と、彼の弱点だと受け取った彼女は、そのまま流れる様に捲し立てる。
「それに私物の管理が甘いよなァ、旦那は」
「引き出しの中に何枚かその少女らしき写真が入ってんの、気付かれてないとでも思ってたのかい?」
____ああ、名前はそう、"マリア"って言ったか。
オスカーの眉がピクリと動いた。
今まで沈黙を決め込んでいたコードネーム、
午後の死も不快そうに舌打ちした。
本棚に手を伸ばしていたコードネーム、
ブラックホークはその手を止めた。
「(……?)」
何故か彼以外が反応した事に疑問を浮かべながら、なおも続ける。
「随分とご執心みたいで。いやァ、旦那にそんな趣味があるとはなァ?」
「早速、風俗にでも行って一杯引っ掛けてきても_____
『やめろ、エックス』
強く、刺す様な調子で彼女の続く言葉を牽制する。
それは……圧。普段の温厚さを知っていた彼からは考えられない程の圧だった。
「……おォ、あー……、 ……悪かった」
暫しの沈黙が流れる。
親に叱られた少女の様に仕方なく、先程まで手を付けていた書類に目を落とす___のと、同時。
「そうだね、今居るメンバーの中なら君と……
オーヴェルニュには未だ話していなかった」
「……
オスカー、私から話しておこうか?それが生き残ってしまった私の罪なのだから」
「いいんだ、
ブラックホーク。貴方は悪くない、……あれは、誰も悪くない」
「これは現在のリーダーである僕が、彼女達に話すべき事だ」
「……そうか」
「この裏講師という部門が作られたのはもう二十数年も前になる」
「確かに危険な場所だ。死と隣り合わせな場所だ。……彼らも、それは理解していた」
「もう一度話しておくべきだ。此処に所属している事の危うさを、今一度知るべきだ」
最終更新:2018年04月29日 01:14