輝くトラペゾユージロー



一目惚れしたユージローだったが、彼はそんな浅ましい恋愛感情を顔に出すつもりは無かった。
思えば、彼は感情を表すとかリアクションを取るとか、そういった行為とは無縁の生活を送ってきた。
どんなに辛い料理を食べたところで決して辛いとは言わないし、寧ろ周囲に気取られないようにした。
子供の頃にはロシアンシュークリームルーレットで二度も連続で大当たりを引いたが涙ひとつ流さず完食し、「誰が食べたの…?」と場を白けさせた思い出だってある。

「ちょっと聞いてんの?どこ見てんのよ!って言ってるんだけど」

だからユージローは事を荒げようとは思わなかったし、告白する気も無かった。
「す、すい…ま……デュ、すいデュデュフ、デュ」
とだけ答えて、早々にその場を立ち去ろうと足を進めた。

はずだったのだが。
その美しい、ひどく美しい少女はユージローの後をつけてきて。
「…………」
と、ユージローは思う。

するとユージローの視線を受け、少女が
「その制服、UCA高校の制服でしょ?」
と、話しかけてくる。
そりゃそうだ、UCA高校に通ってるんだから。しかもこの辺に高校はそこしか無いじゃないか。地元の馬鹿ばっかが集まる底辺高校だぞ、悪いか。と、ユージローは心の中で悪態を吐く。
「私もそこの生徒なのよね。まぁ、今日からだけど」

「え……?」
それにユージローは『まずい』と思った。
このままいけば、二人で登校する事になる。
そんな事になれば、次の日にはもう2人は付き合ってるらしいだの、同じ屋根の下仲良く暮らしてるらしいだの、色々ともう大人だのと噂が広まり、あー君たち、後で職員室に来なさいってな感じで生活指導のヘボンさんに呼び出されるに決まってるのだ。
実際、そんな風になったカップルをユージローは何度も見ていた。

しかし、ユージローは思い直す。
いや、逆にここで流れに身を任せてみるのも面白いんじゃないか…?と、少ない脳みそで思う。
このまま退屈に生きてみるより、波瀾万丈な物語が待っているんじゃないか…?と、小さな脳みそで思う。

思い立ったら行動が早いのが彼の強みだった。
「手、繋ごっか」
そう言ってユージローは、噴き出した色んな体液にまみれたままの右手を差し出す。右手は、どこから分泌されたのか、蛍光緑の液体に塗れて光り輝いていた。

突然の反応に驚いた朱音だったが、
「う、うん………///」
と恥ずかしげに俯きユージローの手を取り、
二人は夏の熱気に歪む道を歩き始める。

そして朱音もまた、ユージローには見えないように口元を歪めて、凄絶な笑みを浮かべた。
計画通り……!と。


2人の異なる思惑を乗せ、真夏の物語は進み出す。
時刻は既に八時二十八分……とても始業に間に合う時間ではなくなっていた。


→ #03
→ #01


  • 一話のコメントの兎角ちゃんは偽物 -- 兎角 (2012-07-03 03:24:53)
  • 三話はよ -- 朱音さん (2012-07-03 03:29:00)
  • (ノ)・ω・(ヾ)ぷー -- さいたま (2012-07-03 03:35:34)
  • 一話のネーム描いちゃった………。 -- りん (2012-07-03 03:47:48)
  • あたしってほんとバカ…… ! -- りん (2012-07-03 03:48:40)
  • まさかの漫画化wwww -- 朱音さん (2012-07-03 03:52:11)
  • じゃあ俺が三話書くよ -- さいたま (2012-07-03 03:55:41)
  • まさかの漫画化wwwww -- 兎角 (2012-07-03 08:32:33)
  • ゆくゆくは実写化だな -- 能島 (2012-07-03 11:48:59)
  • どうしてこうなった。 -- 荒廃者 (2012-07-03 14:44:53)
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最終更新:2012年07月07日 16:19