始まりの季節
という夢を見た。
世界樹とか、冒険とか、そういうのはまったくなかった。
ここはファンタジーからかけ離れた現実世界。UCA高校、二年生の
ユージローはそんないつも通りの平凡で、ある意味では面白みに欠ける世界で目を覚ました。
キジバトの声が聞こえてくる。カーテン越しにもやわらかな日差しが差していて、朝の訪れを感じさせる。そんなゆったりとした時間……。
「また、一日が始まる……」
ユージローはケータイのバックディスプレイで時間を確認する。いつもの癖だ。
「なん……だと……」
時刻は八時ジャスト。朝礼が始まるのは八時三十分。ちなみにユージローの家から高校まで、走って二十八分かかる。貧乏なので自転車は持ってない。
まったくゆったりとしてられなかった。
ユージローは高速で朝の支度を終え、顔も洗わず家を飛び出した。
「フッ……フヒィ……フヒィ……!」
ユージローはびしょ濡れになりながら走る。汗だけじゃなく、涙とか諸々の体液を撒き散らしながら走る。既に全身が筋肉痛に苛まれていて、あらゆる場所が悲鳴をあげている。
そして曲がり角にさしかかった時ーー
「きゃ!!」
何かとぶつかった。反動でユージローは尻餅をつく。
「ちょっと!どこ見て走ってんのよ!!」
食パンをくわえた女子高生が地べたに座り込んでユージローを睨みつけていた。
ひどく美しい少女だ。亜麻色の長い髪に、切れ長で怜悧な目。彫刻のように整った顔立ち。ユージローが今まで見てきた人間の中で間違いなく一番美しい。ユージローは目の前の少女に一目惚れした。もっとも彼は十七年の人生の中で、一年に三回は一目惚れしてきた、気の多い男だったのだが。全身の痛みも忘れて、ユージローは少女に見入る。
その少女の名は朱音さんといったが、それをユージローが知るのはもう少しあとの話である。
とにかく言えることはこのなんでもない朝の交差点で、運命の歯車が動き出したということである……。
- どうしてこうなった。 -- 荒廃者 (2012-07-02 21:24:19)
- 二話はよ -- 朱音さん (2012-07-02 22:12:37)
- じゃあ俺が二話書くよ -- 兎角 (2012-07-02 23:27:57)
- 各話サブタイトルあるとわかりやすいかもね。 -- りん (2012-07-03 00:05:49)
- #01とかの方がカッコいい気もする -- 能島 (2012-07-03 00:57:03)
最終更新:2012年07月13日 22:41