―199X 夏 鎌倉市のとあるアパート
今日も暑くてダレるわ。ローセツは魚釣りに出かけてるけどよく外出れるわね、ホント。
ステーシーだって外に出かける気はあるんだけど。日本の夏は湿度が高すぎよ……って言っても、アメリカの暑さがどうだったかなんてとっくに忘却の彼方なんだけどさ。
働きに出ないのか?合衆国は太っ腹だからステーシーにも最低限の恩給が出てるから良いのよ。いつまで出るかわかんないけど。退役艦じゃなくて戦没艦だもんねステーシー……。
ローセツはそういうのが出てるのかどうかは知らないけど、あいつは魚を釣ることで稼いでる。結構良い買値で買い続けてくれるヤツが居るらしい。
もう40年にもなるけど、ステーシーは未だに顔を見たことがないんだよね。会ってみたいって言い出さないからだろうけど、そろそろ言ってみるべきかしら。
でもまぁ、それはまた今度ね。今日は……そうね……ローセツがブックカバーかけて夢中で読み耽ってる本の正体を暴こうと思うわ。
駆逐艦寮の生活の頃からあんまりセンスの変わってないモノトーン調のお部屋のベッドサイドのテーブルの……みんなとの写真を飾ってる写真立ての後ろに置いてる……この本!
さて、わざわざカバーなんかつけちゃって、一体どんな本なのかしら。外してみましょ~っと。
……え、何、このえっちな表紙。半裸の……お姉さんの絵……?タイトルは「しおん」?待って、ローセツそういうシュミなの?
中……開いてみましょうか……ごくり……。
ってうわっ、ローセツいつの間に帰ってたの!?ただいまくらい言いなさいよ!って言えなかったわごめん!あっいやこれは……その………いや、ステーシーが恐縮してどうするのよ。
ステーシーだって外に出かける気はあるんだけど。日本の夏は湿度が高すぎよ……って言っても、アメリカの暑さがどうだったかなんてとっくに忘却の彼方なんだけどさ。
働きに出ないのか?合衆国は太っ腹だからステーシーにも最低限の恩給が出てるから良いのよ。いつまで出るかわかんないけど。退役艦じゃなくて戦没艦だもんねステーシー……。
ローセツはそういうのが出てるのかどうかは知らないけど、あいつは魚を釣ることで稼いでる。結構良い買値で買い続けてくれるヤツが居るらしい。
もう40年にもなるけど、ステーシーは未だに顔を見たことがないんだよね。会ってみたいって言い出さないからだろうけど、そろそろ言ってみるべきかしら。
でもまぁ、それはまた今度ね。今日は……そうね……ローセツがブックカバーかけて夢中で読み耽ってる本の正体を暴こうと思うわ。
駆逐艦寮の生活の頃からあんまりセンスの変わってないモノトーン調のお部屋のベッドサイドのテーブルの……みんなとの写真を飾ってる写真立ての後ろに置いてる……この本!
さて、わざわざカバーなんかつけちゃって、一体どんな本なのかしら。外してみましょ~っと。
……え、何、このえっちな表紙。半裸の……お姉さんの絵……?タイトルは「しおん」?待って、ローセツそういうシュミなの?
中……開いてみましょうか……ごくり……。
ってうわっ、ローセツいつの間に帰ってたの!?ただいまくらい言いなさいよ!って言えなかったわごめん!あっいやこれは……その………いや、ステーシーが恐縮してどうするのよ。
「で、この本何なのよ。こんなえっちな表紙の本をステーシーに隠してずっと読んでたの?」
ローセツの真っ白な顔が赤面してる。珍し。
何やらゴソゴソすると、本の帯を取り出してきた。
「ん?この本の帯?"戦争の実話をもとにした大ヒット・悲恋・アダルト・ゲームの史実ルートを完全小説化!"?なにそれすごい嘘くさい……」
ローセツは何やら興奮気味で首を横に振る。そんなことない、って?そして、巻末の資料ページみたいなところを見せてくる。
「大西洋のお話なのね。ステーシーは行ったこと無いから知らないけど……あぁ、このウンシュトルトってのがヒロインで表紙のえっちな絵のフネなんだ?」
他にも登場艦の史実資料が紹介されている。そういえば、なんか、英海軍からヘンな噂が流れてきてたような気も?もう忘れちゃった。
ローセツは両手で本を突き出してくる。……え、ステーシーも読め?ま、いいわ。元からそのつもりだったし。
何々、プロローグは日本から始まるのね。1938年、多くの人々に祝福されながら進水した貨客船"しおん丸"…これタイトルなのね。
で、就役して初めての出航が、まさか最後になるとは……えっ、いきなりそういう話なの?どうなっちゃうの?
…
「えぇ、いくらそれでも……そんな……どうなのよそれ……」
……
「あぁ、僚艦に恵まれてるって救いよね………」
………
「潜水母艦の気持ちをこう描かれると……ちょっと沈むわね……」
…………
「うわ……えっち……すけべ……」
……………
「ズビッ…ヒグッ…エグッ……」
………………
「……ありがと。悪かったわ。ヘンな本読んでると思って」
ローセツは何やらご満悦顔だ。ちょっと悔しい。
そして再びゴソゴソすると、今度は何やらチラシを見せてきた。
「えーと……"「しおん」著者の虻素龍人先生のサイン会を開催します"……へぇ?良いじゃん。行こうよ」
この本を書いたのがどんなヤツなのか、興味あるしね。
ローセツの真っ白な顔が赤面してる。珍し。
何やらゴソゴソすると、本の帯を取り出してきた。
「ん?この本の帯?"戦争の実話をもとにした大ヒット・悲恋・アダルト・ゲームの史実ルートを完全小説化!"?なにそれすごい嘘くさい……」
ローセツは何やら興奮気味で首を横に振る。そんなことない、って?そして、巻末の資料ページみたいなところを見せてくる。
「大西洋のお話なのね。ステーシーは行ったこと無いから知らないけど……あぁ、このウンシュトルトってのがヒロインで表紙のえっちな絵のフネなんだ?」
他にも登場艦の史実資料が紹介されている。そういえば、なんか、英海軍からヘンな噂が流れてきてたような気も?もう忘れちゃった。
ローセツは両手で本を突き出してくる。……え、ステーシーも読め?ま、いいわ。元からそのつもりだったし。
何々、プロローグは日本から始まるのね。1938年、多くの人々に祝福されながら進水した貨客船"しおん丸"…これタイトルなのね。
で、就役して初めての出航が、まさか最後になるとは……えっ、いきなりそういう話なの?どうなっちゃうの?
…
「えぇ、いくらそれでも……そんな……どうなのよそれ……」
……
「あぁ、僚艦に恵まれてるって救いよね………」
………
「潜水母艦の気持ちをこう描かれると……ちょっと沈むわね……」
…………
「うわ……えっち……すけべ……」
……………
「ズビッ…ヒグッ…エグッ……」
………………
「……ありがと。悪かったわ。ヘンな本読んでると思って」
ローセツは何やらご満悦顔だ。ちょっと悔しい。
そして再びゴソゴソすると、今度は何やらチラシを見せてきた。
「えーと……"「しおん」著者の虻素龍人先生のサイン会を開催します"……へぇ?良いじゃん。行こうよ」
この本を書いたのがどんなヤツなのか、興味あるしね。
東京都内のこじんまりとした書店にやってきた。
大ヒットって言ってもマニアックなPCゲーム、それもアダルトゲームの小説だからそんな大々的にはできないよね。
既に列はできている。……列に、ちょっと見覚えのあるのが居るような。重雷装艦のジンドとニウスだっけ?そうよね、あいつらはこういうの買いそうよね。
ローセツに気付いたらそれはそれで大騒ぎしそうだけど。
しばらくして列が動き出した。例の二人の番になるとやっぱり…こう…すごい……感激が漏れてたわ。控えめに言うとね。
そうこうしてやってきたステーシーたちの番。"先生"の席には、サングラスをした赤っぽく短い癖っ毛の……女性?ペンネームからてっきり男性だと思ってたんだけど。
そして隣には銀髪黒ゴスロリの小さな女の子。えっ誰?何?
「あらあら、この本はお嬢ちゃんみたいな子が読めるような内容だったかしら?」
「失礼しちゃうわ。ステーシーは元駆逐艦なのよ」
「うふ。そうでしょうね。お姉さんも駆逐艦?」
ローセツは声をかけられて何やら感極まっているみたい。この日のためにしたためたファンレターを本と一緒に先生に渡す。
「ふんふん……なるほどね、あなたが生まれるギリギリ少し前の出来事なのね。それでこの本でこの話を知ることができてよかった……ありがとう」
先生はスラスラとサインを書いて、渡す。
「ステーシーも、プロローグよりちょっと後の生まれなのよ」
「あらあら、そうなのね。見た目によらないものだわ」
「……ちょっと待って。アブソリュウト……って……登場人物に…アブソルートって潜水艦居たよね……」
「……勘の良いお嬢ちゃんだこと」
先生……いや、アブソルートはサングラスを外して素顔を見せた。
やっぱり。資料ページに載ってる顔だ。本は白黒だから髪色ではわからなかったけど。
「ばれちゃったならしかたないです」
隣の女の子も喋る。こっちはほんとうに誰?何者?
「ま、隠してるつもりも別に無かったけどね。当時の知り合いにも配って回ってるし……」
「ステーシーは全然接点が無かったからあなたのことぜーんぜん知らなかったわ」
「そうね。私は幻海灘までは行ったこと無いし……貴艦とは活動域が被ることは無かったわね、ステーシー・テオドール・ガードナーちゃん?」
「へっ!?」
「ふふ。おばさんはなんでも知ってるのよ。知ってることだけね」
「しらないことはしらないのです」
「臘雪ちゃんもわざわざありがとう。あ、そうだ。元艦船限定なんだけどね……」
アブソルートは名刺を差し出してきた。ローセツの受け取る手が震えている。
「これも何かの縁よ。このあたりに住んでるから、機会があったらもっとたくさんお話しましょう?…ひゃっ、あらら?」
ローセツが感極まりすぎてアブソルートにハグしちゃった。わーお。
「うん、うん……ありがとうね、そんなに好きになってくれて嬉しいわ。次の人待たせ過ぎちゃうのよくないから、そろそろ」
「ほ、ほらローセツ、行くよ!じゃーまたね、"先生"!」
大ヒットって言ってもマニアックなPCゲーム、それもアダルトゲームの小説だからそんな大々的にはできないよね。
既に列はできている。……列に、ちょっと見覚えのあるのが居るような。重雷装艦のジンドとニウスだっけ?そうよね、あいつらはこういうの買いそうよね。
ローセツに気付いたらそれはそれで大騒ぎしそうだけど。
しばらくして列が動き出した。例の二人の番になるとやっぱり…こう…すごい……感激が漏れてたわ。控えめに言うとね。
そうこうしてやってきたステーシーたちの番。"先生"の席には、サングラスをした赤っぽく短い癖っ毛の……女性?ペンネームからてっきり男性だと思ってたんだけど。
そして隣には銀髪黒ゴスロリの小さな女の子。えっ誰?何?
「あらあら、この本はお嬢ちゃんみたいな子が読めるような内容だったかしら?」
「失礼しちゃうわ。ステーシーは元駆逐艦なのよ」
「うふ。そうでしょうね。お姉さんも駆逐艦?」
ローセツは声をかけられて何やら感極まっているみたい。この日のためにしたためたファンレターを本と一緒に先生に渡す。
「ふんふん……なるほどね、あなたが生まれるギリギリ少し前の出来事なのね。それでこの本でこの話を知ることができてよかった……ありがとう」
先生はスラスラとサインを書いて、渡す。
「ステーシーも、プロローグよりちょっと後の生まれなのよ」
「あらあら、そうなのね。見た目によらないものだわ」
「……ちょっと待って。アブソリュウト……って……登場人物に…アブソルートって潜水艦居たよね……」
「……勘の良いお嬢ちゃんだこと」
先生……いや、アブソルートはサングラスを外して素顔を見せた。
やっぱり。資料ページに載ってる顔だ。本は白黒だから髪色ではわからなかったけど。
「ばれちゃったならしかたないです」
隣の女の子も喋る。こっちはほんとうに誰?何者?
「ま、隠してるつもりも別に無かったけどね。当時の知り合いにも配って回ってるし……」
「ステーシーは全然接点が無かったからあなたのことぜーんぜん知らなかったわ」
「そうね。私は幻海灘までは行ったこと無いし……貴艦とは活動域が被ることは無かったわね、ステーシー・テオドール・ガードナーちゃん?」
「へっ!?」
「ふふ。おばさんはなんでも知ってるのよ。知ってることだけね」
「しらないことはしらないのです」
「臘雪ちゃんもわざわざありがとう。あ、そうだ。元艦船限定なんだけどね……」
アブソルートは名刺を差し出してきた。ローセツの受け取る手が震えている。
「これも何かの縁よ。このあたりに住んでるから、機会があったらもっとたくさんお話しましょう?…ひゃっ、あらら?」
ローセツが感極まりすぎてアブソルートにハグしちゃった。わーお。
「うん、うん……ありがとうね、そんなに好きになってくれて嬉しいわ。次の人待たせ過ぎちゃうのよくないから、そろそろ」
「ほ、ほらローセツ、行くよ!じゃーまたね、"先生"!」
ステーシーたちはおうちに帰るべく駅に向かっていたのだけど、ローセツはパソコンショップに吸い込まれてしまった。
しょうがないからステーシーもついていくと、やっぱりパソコンの展示棚の前で、「しおん」のソフトを片手に悩んでいた。
ローセツ、それは衝動買いするには高すぎると思うんだけど……。
まだしばらく、この熱は続きそうだわ……。
(おわり)
しょうがないからステーシーもついていくと、やっぱりパソコンの展示棚の前で、「しおん」のソフトを片手に悩んでいた。
ローセツ、それは衝動買いするには高すぎると思うんだけど……。
まだしばらく、この熱は続きそうだわ……。
(おわり)