夜……と言っても、そんなにまだ遅い時間じゃない。学校図書館はギリギリまだ利用できるみたいだし、職員室も灯りがついている。
肝試しというには微妙に早い時間帯。集合場所は図書館の入口だったかな。まだ明るい入り口へ向かっていくと、中にはまだ人が。
よく見てみると、ブレザーの女の子だ。他校の生徒かな?ちょっと声をかけてみよう……。
「あ、あの~……」
「あっ、すみません、利用時間、もうそろそろでしたか?」
「んぇ、まぁ、そう、だけど……」
「ですよね、ご迷惑おかけしないうちに失礼しますね」
ブレザーの女の子はそそくさと出ていく。うーん。記憶を漁る限り、見かけない制服。
肝試しというには微妙に早い時間帯。集合場所は図書館の入口だったかな。まだ明るい入り口へ向かっていくと、中にはまだ人が。
よく見てみると、ブレザーの女の子だ。他校の生徒かな?ちょっと声をかけてみよう……。
「あ、あの~……」
「あっ、すみません、利用時間、もうそろそろでしたか?」
「んぇ、まぁ、そう、だけど……」
「ですよね、ご迷惑おかけしないうちに失礼しますね」
ブレザーの女の子はそそくさと出ていく。うーん。記憶を漁る限り、見かけない制服。
入り口の灯りの下で待っていると、留萌が背後からヌッと出てきた。
「やぁ、来てくれたんだね。うれしいよ」
「そりゃーまぁ、約束だし」
何を話したら良いかよくわからなくて、しばし沈黙。
すると、一人やってきた。
「やっほ~もいもい~あたしだよ!」
「や、キサちゃん。待ってたよ」
「隣のはダレ?ナニモン?」
「ああ、この子は今日転校してきたピオニーさんだよ」
「あぁ~もしかして本読んでたらもいもいに声かけられたクチ?」
「も、もいもい?」
「留萌センパイのことっすよ~」
「あー……まぁ、そうなるかな」
「ところでキサちゃん、ヒサちゃんは?」
「ひさひさ今夜バイトなんだってさ」
「そっか、なら仕方ない」
「ハクちゃんは習い事」
「あの子は相変わらず忙しいね」
当然ながら知らない名前がどんどん出てくる。それなりに所属してる人が居るんだね……。
「やぁ、来てくれたんだね。うれしいよ」
「そりゃーまぁ、約束だし」
何を話したら良いかよくわからなくて、しばし沈黙。
すると、一人やってきた。
「やっほ~もいもい~あたしだよ!」
「や、キサちゃん。待ってたよ」
「隣のはダレ?ナニモン?」
「ああ、この子は今日転校してきたピオニーさんだよ」
「あぁ~もしかして本読んでたらもいもいに声かけられたクチ?」
「も、もいもい?」
「留萌センパイのことっすよ~」
「あー……まぁ、そうなるかな」
「ところでキサちゃん、ヒサちゃんは?」
「ひさひさ今夜バイトなんだってさ」
「そっか、なら仕方ない」
「ハクちゃんは習い事」
「あの子は相変わらず忙しいね」
当然ながら知らない名前がどんどん出てくる。それなりに所属してる人が居るんだね……。
もう少し待ってると、三人ほどやってきた。
「お待たせしました、遅れてすみません……」
「俺のせいじゃねーかんな」
「何言ってるのよ、あなたが余計なもの持ってこようとするからでしょう」
「余計ってこたないだろ!ヤベーやつと出くわすかもしれないんだからさ」
紫髪の長めのツインテールの女子と、バットを持ったツートンな紫癖っ毛の男子。
「着くなり喧嘩とか……めんどくせーやつら」
なんだか気だるげな狐面の男子。
「留萌さん、この子たちみんな後輩?」
「そうだね、みんな2年の子。ユタちゃんドクちゃんボタゆきくん」
「そういや先輩、なんで俺ちゃん付けなんですか」
「うん?あぁ、そうだな、この間の化学部の……」
「あーあーあー!わかった、わかりましたから!知らねーヤツが居るのにその話はやめろ!いややめてください!」
「何言ってるのよ、結構楽しんでた癖に」
「あ、あのー、留萌さん?」
「別に教えたって良いだろう。化学部との共同活動であちらが作った妙な薬を彼が飲んだら女の子になってな」
「っ~~~~~!!」
「可愛かったな、ドクちゃん」
「うっせ~~~!!」
「そんなこと言って。今でも時々化学部にこっそり薬貰って楽しんでるじゃない」
「あっ姉貴なんでバラ……!!」
「良いこと聞いちゃったぁ~また今度あたしも見たいな~?」
「あわわわ……」
「くだらねー…」
なんかサラッととんでもないことを聞いてしまった気がする。というかこの二人は姉弟なのか……二卵性双生児?
「お待たせしました、遅れてすみません……」
「俺のせいじゃねーかんな」
「何言ってるのよ、あなたが余計なもの持ってこようとするからでしょう」
「余計ってこたないだろ!ヤベーやつと出くわすかもしれないんだからさ」
紫髪の長めのツインテールの女子と、バットを持ったツートンな紫癖っ毛の男子。
「着くなり喧嘩とか……めんどくせーやつら」
なんだか気だるげな狐面の男子。
「留萌さん、この子たちみんな後輩?」
「そうだね、みんな2年の子。ユタちゃんドクちゃんボタゆきくん」
「そういや先輩、なんで俺ちゃん付けなんですか」
「うん?あぁ、そうだな、この間の化学部の……」
「あーあーあー!わかった、わかりましたから!知らねーヤツが居るのにその話はやめろ!いややめてください!」
「何言ってるのよ、結構楽しんでた癖に」
「あ、あのー、留萌さん?」
「別に教えたって良いだろう。化学部との共同活動であちらが作った妙な薬を彼が飲んだら女の子になってな」
「っ~~~~~!!」
「可愛かったな、ドクちゃん」
「うっせ~~~!!」
「そんなこと言って。今でも時々化学部にこっそり薬貰って楽しんでるじゃない」
「あっ姉貴なんでバラ……!!」
「良いこと聞いちゃったぁ~また今度あたしも見たいな~?」
「あわわわ……」
「くだらねー…」
なんかサラッととんでもないことを聞いてしまった気がする。というかこの二人は姉弟なのか……二卵性双生児?
「みなさ~んおくれてすみませ~ん!」
遠くから声がする。
「おっ、ちふりんじゃ~ん?一人ってことはお姉ちゃんは今日用事でもあんの?」
「お姉ちゃんはあんまり夜に来たがらなくって~すみません」
そもそも普通は夜に学校には来ない。それにしてもなんかちっちゃい子。中等部か初等部の子かな……?
「ああ、いいよいいよ。……うん、来るって連絡受けてる組はこれで全員。改めて、自己紹介お願いできるかな?」
「あ~えっと。高等部三年、ピオニー…です。今日、転校してきたばっかりで、留萌さんに勧誘されて、とりあえず今日は見学ってコトで…」
「そういうわけだから、みんなよろしく」
「で、もいもい。ピオニーちゃんの挨拶のために集めたワケじゃないよね?」
「もちろんだ。今日みんなに集まってもらったのは、この学校の噂の解明のためなんだ」
ですよねー。やっぱりそういうノリですよねー。
「とは言っても、七不思議とかそういうのではなくてね。最近流れ始めた噂のことだ」
留萌は話を続ける。どうやら、この時間まで残ってる生徒が、妙なものを目撃するのだという。
頭に大きなリボンをつけた、フリルのついたドレスの女。おおよそ学校に似つかわしくない、そんな人物が校内をうろついている、と。
「幽霊話なのか単なる不審者なのかわかりませんね、それ」
「不審者だったときはコイツの出番よ」
「馬鹿馬鹿しい」
狐面の子、さっきからこんな調子だけど帰らないってことはまぁ……好きでここに居るのかな。
「いくつかのチームに分かれて校内を探索しようと思う。何か見つけたら連絡をしてくれ」
チームの割り振りは、ユタちゃんドクちゃんボタゆきくんのAチーム、留萌さんとちふりちゃんのBチーム、そしてキサちゃんと私のCチーム。
遠くから声がする。
「おっ、ちふりんじゃ~ん?一人ってことはお姉ちゃんは今日用事でもあんの?」
「お姉ちゃんはあんまり夜に来たがらなくって~すみません」
そもそも普通は夜に学校には来ない。それにしてもなんかちっちゃい子。中等部か初等部の子かな……?
「ああ、いいよいいよ。……うん、来るって連絡受けてる組はこれで全員。改めて、自己紹介お願いできるかな?」
「あ~えっと。高等部三年、ピオニー…です。今日、転校してきたばっかりで、留萌さんに勧誘されて、とりあえず今日は見学ってコトで…」
「そういうわけだから、みんなよろしく」
「で、もいもい。ピオニーちゃんの挨拶のために集めたワケじゃないよね?」
「もちろんだ。今日みんなに集まってもらったのは、この学校の噂の解明のためなんだ」
ですよねー。やっぱりそういうノリですよねー。
「とは言っても、七不思議とかそういうのではなくてね。最近流れ始めた噂のことだ」
留萌は話を続ける。どうやら、この時間まで残ってる生徒が、妙なものを目撃するのだという。
頭に大きなリボンをつけた、フリルのついたドレスの女。おおよそ学校に似つかわしくない、そんな人物が校内をうろついている、と。
「幽霊話なのか単なる不審者なのかわかりませんね、それ」
「不審者だったときはコイツの出番よ」
「馬鹿馬鹿しい」
狐面の子、さっきからこんな調子だけど帰らないってことはまぁ……好きでここに居るのかな。
「いくつかのチームに分かれて校内を探索しようと思う。何か見つけたら連絡をしてくれ」
チームの割り振りは、ユタちゃんドクちゃんボタゆきくんのAチーム、留萌さんとちふりちゃんのBチーム、そしてキサちゃんと私のCチーム。
懐中電灯を渡され、探索開始。何か見つかるとは思えないけど……あんまり無いかもしれない下級生と話す機会だと思うことにする。
「ねぇ、キサちゃん…って呼ばれてるけど」
「あ~あたしの名前?樹雨だよキサメ。でもキサちゃんで構わないっすよピオニーセンパイ」
「そ、そっか……わ、私も好きに呼んで良いから」
「素直にピオニーちゃんで!」
「う、うん……いい、けど」
樹雨と他愛もない話をしていると、どこかから聞こえてくる声。
「あたくし、よくわかりませんの、今のところ……少なくとも今朝起きたときにはだれだったかわかってたのに、それからあたくし、どうも何度か変わってしまったみたいで」
演技がかった口調の甲高い声。私はこの声を、聞いたことがある……。
「だからはっきりしませんの、あいにく!あたくしがあたくしじゃないの、わかって?」
誰かと話をしているのか、それとも。明かりのついている部屋を見つけ、近づく。
「あいにく、これ以上何とも言えませんの」
どうしたって聞いたことがある、忘れられない声。そ~っと扉を開けてみる。
「こ、こんばんは~……」
そこには、私も見覚えのあるヤツの姿があった。
「あら、こんばんは。こんな時間にアリスのところへやってくるなんて、何かご用事かしら?」
やっぱり。アリス級軽巡のアリス……に見える。
「アリスセンパイ何してたんすか?」
「今度の劇の練習だよ」
何か思わせぶりなことを言っていたけど、なんだ、ただの劇のセリフか……。
「は、初めまして。今日転校してきたピオニーって言います……」
「ふふ。こんばんは。きっとアリスの声に釣られてやってきたのね」
「センパイ良い声してますもんねー」
正直言ってあまりいい思い出がなく、ただただ不気味な声に聞こえちゃうけど。
ここでは不気味な経歴を持つ軍艦なんかじゃなく、ただの一人の女の子……のハズ。
「そういえばセンパイ、この時間まで残ってる生徒が目撃するっていう、ドレスの女見たことありますか?」
「アリスは知らないなぁ。わざわざ衣装着て練習したりはしないから、他の演劇部の子ってワケでもなさそうだしね」
軽巡のアリスよりは真っ当な会話をしている……気がする。当たり前だけど。
「ところでピオニーちゃん。あなたきっと、その様子だと、オカルト研究会の見学だよね?」
「えっまぁ…そうですけど」
「オカルト研究会は正式な部活動じゃないから、部活動と兼ねることができるんだよ」
「やっぱりこれ正式じゃないんだ……」
「だから、もし興味があったら、演劇部、どうかしら?あなた、とっても可愛らしいし」
「へ!?あ、か、考えておきます……ね」
「うふふ。よろしくね」
……あのアリスからそんなこと言われるなんて。無駄に心臓がバクバクしてる。
いや、あのアリスとは別人、別人……。自分に言い聞かせながら、探索を再開した。
「ねぇ、キサちゃん…って呼ばれてるけど」
「あ~あたしの名前?樹雨だよキサメ。でもキサちゃんで構わないっすよピオニーセンパイ」
「そ、そっか……わ、私も好きに呼んで良いから」
「素直にピオニーちゃんで!」
「う、うん……いい、けど」
樹雨と他愛もない話をしていると、どこかから聞こえてくる声。
「あたくし、よくわかりませんの、今のところ……少なくとも今朝起きたときにはだれだったかわかってたのに、それからあたくし、どうも何度か変わってしまったみたいで」
演技がかった口調の甲高い声。私はこの声を、聞いたことがある……。
「だからはっきりしませんの、あいにく!あたくしがあたくしじゃないの、わかって?」
誰かと話をしているのか、それとも。明かりのついている部屋を見つけ、近づく。
「あいにく、これ以上何とも言えませんの」
どうしたって聞いたことがある、忘れられない声。そ~っと扉を開けてみる。
「こ、こんばんは~……」
そこには、私も見覚えのあるヤツの姿があった。
「あら、こんばんは。こんな時間にアリスのところへやってくるなんて、何かご用事かしら?」
やっぱり。アリス級軽巡のアリス……に見える。
「アリスセンパイ何してたんすか?」
「今度の劇の練習だよ」
何か思わせぶりなことを言っていたけど、なんだ、ただの劇のセリフか……。
「は、初めまして。今日転校してきたピオニーって言います……」
「ふふ。こんばんは。きっとアリスの声に釣られてやってきたのね」
「センパイ良い声してますもんねー」
正直言ってあまりいい思い出がなく、ただただ不気味な声に聞こえちゃうけど。
ここでは不気味な経歴を持つ軍艦なんかじゃなく、ただの一人の女の子……のハズ。
「そういえばセンパイ、この時間まで残ってる生徒が目撃するっていう、ドレスの女見たことありますか?」
「アリスは知らないなぁ。わざわざ衣装着て練習したりはしないから、他の演劇部の子ってワケでもなさそうだしね」
軽巡のアリスよりは真っ当な会話をしている……気がする。当たり前だけど。
「ところでピオニーちゃん。あなたきっと、その様子だと、オカルト研究会の見学だよね?」
「えっまぁ…そうですけど」
「オカルト研究会は正式な部活動じゃないから、部活動と兼ねることができるんだよ」
「やっぱりこれ正式じゃないんだ……」
「だから、もし興味があったら、演劇部、どうかしら?あなた、とっても可愛らしいし」
「へ!?あ、か、考えておきます……ね」
「うふふ。よろしくね」
……あのアリスからそんなこと言われるなんて。無駄に心臓がバクバクしてる。
いや、あのアリスとは別人、別人……。自分に言い聞かせながら、探索を再開した。
廊下を歩いていると、T字のところで別の懐中電灯の光と出くわす。
「ん?あぁ、2年の樹雨と…3年の転校生か?はーん、さてはオカルト研究会だな」
「キサちゃん、この人は」
「体育の因幡センセー」
「そうだな、今日転校生んトコは体育無かったもんな。アタイが体育教師の因幡だ、よろしくな」
「体育教師がなんでこんな時間に」
「アタイはフツーに校内の見回りしてんだよ。お前らがこんな時間に居るほうがヘンだぞ」
「ド正論パンチじゃん」
「ん~……因幡先生は校内でドレスの女を見ましたか?」
「ドレスの女ぁ?なんだそれ」
「このくらいの時間に出るって噂なんです」
「なるほどね、ソイツを探してるわけだ。アタイは見てないなぁ」
先生の立場にある人が見てたらもっと騒ぎになっているだろう。
「お前らあんまり遅くまで残ってんじゃねーぞ、ほどほどにな!」
「ん?あぁ、2年の樹雨と…3年の転校生か?はーん、さてはオカルト研究会だな」
「キサちゃん、この人は」
「体育の因幡センセー」
「そうだな、今日転校生んトコは体育無かったもんな。アタイが体育教師の因幡だ、よろしくな」
「体育教師がなんでこんな時間に」
「アタイはフツーに校内の見回りしてんだよ。お前らがこんな時間に居るほうがヘンだぞ」
「ド正論パンチじゃん」
「ん~……因幡先生は校内でドレスの女を見ましたか?」
「ドレスの女ぁ?なんだそれ」
「このくらいの時間に出るって噂なんです」
「なるほどね、ソイツを探してるわけだ。アタイは見てないなぁ」
先生の立場にある人が見てたらもっと騒ぎになっているだろう。
「お前らあんまり遅くまで残ってんじゃねーぞ、ほどほどにな!」
「やっぱ居ないね~」
「先生が見回りしてて見てないならただの噂なんじゃないかな……」
曲がり角を超えると、その先のT字でチラッと何かが見えた。
「……見た?」
「見た見た、追っかけましょーセンパイ」
足音を抑えながら、早足に歩くいて追いかける。
T字を曲がると、ハッキリと、大きなリボンと、フリルのついたドレスの女が―――
『で、出たー!』
突然、別の階から、たぶんAチームの大きな声が。
「ピオニーちゃん、行きましょう!」
「えっでも眼の前のは」
「友達が悲鳴上げてるのにほっとけるわけないでしょ!」
さっきまでちょっと浮ついた雰囲気だった樹雨の真面目な顔。気迫に押されてしまう私。
後ろ髪を引かれながら、私たちは悲鳴の元へ向かう。
到着すると、腰を抜かしてへたり込んでいるAチームの三人と……何か困惑している様子の、大きなリボンとフリルまみれのドレスの女。
少しして、Bチームの二人もやってきた。
「え~っと……なんだか、随分、驚かせてしまったみたい……?」
ドレスの女が話す。少なくとも、幽霊とかではなさそう。
「先生が見回りしてて見てないならただの噂なんじゃないかな……」
曲がり角を超えると、その先のT字でチラッと何かが見えた。
「……見た?」
「見た見た、追っかけましょーセンパイ」
足音を抑えながら、早足に歩くいて追いかける。
T字を曲がると、ハッキリと、大きなリボンと、フリルのついたドレスの女が―――
『で、出たー!』
突然、別の階から、たぶんAチームの大きな声が。
「ピオニーちゃん、行きましょう!」
「えっでも眼の前のは」
「友達が悲鳴上げてるのにほっとけるわけないでしょ!」
さっきまでちょっと浮ついた雰囲気だった樹雨の真面目な顔。気迫に押されてしまう私。
後ろ髪を引かれながら、私たちは悲鳴の元へ向かう。
到着すると、腰を抜かしてへたり込んでいるAチームの三人と……何か困惑している様子の、大きなリボンとフリルまみれのドレスの女。
少しして、Bチームの二人もやってきた。
「え~っと……なんだか、随分、驚かせてしまったみたい……?」
ドレスの女が話す。少なくとも、幽霊とかではなさそう。
学校の正面玄関前。校内は薄暗いけど、前はまだ照明がついていて明るい。
「なるほど、学園旅行の打ち合わせでここ最近学校に来てて、そのまま仕事着から着替えて出てたら……知らないうちに噂になっていたというわけですね」
留萌がまとめる。このドレスの女性は、ルルイエ観光という観光会社の人のようだ。
「ええ、私もびっくりしてしまって。でもあなた達の方がきっと驚いたわよね……」
ブンブンと首を縦に振るAチームの面々。腰抜かしてたもんね……。
「それにしたって、凄いドレスですね」
ちふりちゃんはドレスを眺める。大量のフリルがついているし、頭のリボンも印象的……だけど。私たちが見たのとは違う。
「なんだってこんなカッコしてんだよ?」
「う~ん……私服なのよ、これ……こういうの趣味で……ごめんなさいね」
「そういう人も居るわよ。目くじら立てることじゃないわ」
「ちぇ~」
「はぁ、くだらないオチだった」
「はぁ?ビビりちらしてただろお前もヨォ!」
「まぁまぁ、噂というのはそういうものだ。ハッキリ解明できたんだから良いだろう?今夜はこれで終わりだ、みんなおつかれ」
「皆さん、気をつけて帰ってくださいね。……お騒がせしました」
「ピオニーにはまた明日以降次の活動予定を伝えるから、よろしくね」
「あ、はーい」
すっかり解散ムードになってしまった。
樹雨とは途中まで道が一緒らしいので、一緒に帰ることにした。
「なるほど、学園旅行の打ち合わせでここ最近学校に来てて、そのまま仕事着から着替えて出てたら……知らないうちに噂になっていたというわけですね」
留萌がまとめる。このドレスの女性は、ルルイエ観光という観光会社の人のようだ。
「ええ、私もびっくりしてしまって。でもあなた達の方がきっと驚いたわよね……」
ブンブンと首を縦に振るAチームの面々。腰抜かしてたもんね……。
「それにしたって、凄いドレスですね」
ちふりちゃんはドレスを眺める。大量のフリルがついているし、頭のリボンも印象的……だけど。私たちが見たのとは違う。
「なんだってこんなカッコしてんだよ?」
「う~ん……私服なのよ、これ……こういうの趣味で……ごめんなさいね」
「そういう人も居るわよ。目くじら立てることじゃないわ」
「ちぇ~」
「はぁ、くだらないオチだった」
「はぁ?ビビりちらしてただろお前もヨォ!」
「まぁまぁ、噂というのはそういうものだ。ハッキリ解明できたんだから良いだろう?今夜はこれで終わりだ、みんなおつかれ」
「皆さん、気をつけて帰ってくださいね。……お騒がせしました」
「ピオニーにはまた明日以降次の活動予定を伝えるから、よろしくね」
「あ、はーい」
すっかり解散ムードになってしまった。
樹雨とは途中まで道が一緒らしいので、一緒に帰ることにした。
「あたし、ピオニーちゃんとは初めましてだったけど随分仲良くなれた気がするっすよ~」
「あはは……そう思ってくれたなら嬉しい、かな」
談笑しながら、校舎で見たものを思い返す。見間違えなんかじゃない。
「ねぇ、結局私たちが見たものってさ……」
「心のなかに仕舞っときましょーよ、センパイ」
「…………」
「きっと、見るべきじゃないものを見てしまった。なら、もう触れるべきじゃない。センパイもそう思いませんか」
「……そう、だね」
「……っと。ここであたしはあっちだから、お別れです。また今度、よろしくねーっ!」
「あはは、うん、よろしくね」
きっと、この世界にはそういうものもあるんだろう。
そうでもないと、きっと、すべてを理解することはできない。
そもそも、私がそういう存在になってしまっているのだから。
この謎だって解けるとは限らないし、今が幸せなら解かなくてもいいんじゃないか。
そう思いながら、私は闇の深くなっていく家路を急いだ。
(おわり)
「あはは……そう思ってくれたなら嬉しい、かな」
談笑しながら、校舎で見たものを思い返す。見間違えなんかじゃない。
「ねぇ、結局私たちが見たものってさ……」
「心のなかに仕舞っときましょーよ、センパイ」
「…………」
「きっと、見るべきじゃないものを見てしまった。なら、もう触れるべきじゃない。センパイもそう思いませんか」
「……そう、だね」
「……っと。ここであたしはあっちだから、お別れです。また今度、よろしくねーっ!」
「あはは、うん、よろしくね」
きっと、この世界にはそういうものもあるんだろう。
そうでもないと、きっと、すべてを理解することはできない。
そもそも、私がそういう存在になってしまっているのだから。
この謎だって解けるとは限らないし、今が幸せなら解かなくてもいいんじゃないか。
そう思いながら、私は闇の深くなっていく家路を急いだ。
(おわり)