―1945年8月15日 正午すこし前
この日。私はこの"夢の中"で"起き続け"ていた。
私がこの夢を見るようになってからずっと続いてる、夢の中の戦争。
私は、私の知る限りこの戦争がおおまかに"第二次世界大戦"をなぞっていることをわかっていた。
もちろん、同級生や知ってる人が、奇妙な形で、そして私の知ってる歴史上には存在しない名前の艦船として出てきているのはわかっている。
けど。それはもちろんこれが私の見ている夢だからに違いない。第二次世界大戦を歴史として知っていても、私が体験した記憶ではないのだから。
起き続けていた理由。第二次世界大戦は、この日に、一区切りがつくことを知っているから。
この間も、クラスメイトの姿をした艦が沈んだ。もう、こんなのはたくさんだ。
もう少ししたら、ラジオから、玉音放送が流れて、日本国民に降伏を伝えるはず。その瞬間を、待っていた。
私がこの夢を見るようになってからずっと続いてる、夢の中の戦争。
私は、私の知る限りこの戦争がおおまかに"第二次世界大戦"をなぞっていることをわかっていた。
もちろん、同級生や知ってる人が、奇妙な形で、そして私の知ってる歴史上には存在しない名前の艦船として出てきているのはわかっている。
けど。それはもちろんこれが私の見ている夢だからに違いない。第二次世界大戦を歴史として知っていても、私が体験した記憶ではないのだから。
起き続けていた理由。第二次世界大戦は、この日に、一区切りがつくことを知っているから。
この間も、クラスメイトの姿をした艦が沈んだ。もう、こんなのはたくさんだ。
もう少ししたら、ラジオから、玉音放送が流れて、日本国民に降伏を伝えるはず。その瞬間を、待っていた。
正午。ラジオに齧りつく私。
「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます」
来た。けど、なにかおかしい。玉音放送はこんな始まり方だっただろうか。
「大本営陸海軍部、8月15日午前11時発表」
…………。
「帝国陸軍は、15日未明、アメリカ本土軍需施設への航空爆撃を実施」
………えっ?
「これにより、先日広島・長崎へ投下されたとおぼしき新型爆弾の生産施設の壊滅に成功せり」
待って。どういうこと?
「先程、大本営陸海軍部からこのように発表されました」
………終わり?
待って。ねぇ。待ってよ。
……終わってくれないの?
「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます」
来た。けど、なにかおかしい。玉音放送はこんな始まり方だっただろうか。
「大本営陸海軍部、8月15日午前11時発表」
…………。
「帝国陸軍は、15日未明、アメリカ本土軍需施設への航空爆撃を実施」
………えっ?
「これにより、先日広島・長崎へ投下されたとおぼしき新型爆弾の生産施設の壊滅に成功せり」
待って。どういうこと?
「先程、大本営陸海軍部からこのように発表されました」
………終わり?
待って。ねぇ。待ってよ。
……終わってくれないの?
私は途方に暮れてしまった。
こんな夢、認められない。
でも、確かに、最初から様子はおかしかった。
私の知る限り、玉音放送の前に、重要な放送があるといってラジオの前に集められた、というような話を聞いたことがあった。
この夢の中では、それが無かった。ラジオの前に居たのは、私だけだった。
こんな夢、認められない。
でも、確かに、最初から様子はおかしかった。
私の知る限り、玉音放送の前に、重要な放送があるといってラジオの前に集められた、というような話を聞いたことがあった。
この夢の中では、それが無かった。ラジオの前に居たのは、私だけだった。
あてもなく港をフラフラしてしまう私。
早く寝てしまえば良いのだけど。そんな気分になれなかった。
静かな港だ。ほとんどの艦船が出払っているみたい。
夢の中で、更に夢でも見ているような気分になっていると、私は視線を感じた。
いつもならこっくりさんがお茶を啜っている庵の縁側。
そこにその姿はなかった。
代わりに、おおよそこの場に似つかわしくない、ドレスとリボンの女性が座って、こちらを見つめていた。
早く寝てしまえば良いのだけど。そんな気分になれなかった。
静かな港だ。ほとんどの艦船が出払っているみたい。
夢の中で、更に夢でも見ているような気分になっていると、私は視線を感じた。
いつもならこっくりさんがお茶を啜っている庵の縁側。
そこにその姿はなかった。
代わりに、おおよそこの場に似つかわしくない、ドレスとリボンの女性が座って、こちらを見つめていた。
引き寄せられるように、縁側に座ってしまった私。
慈しむような目で見つめてくる女性。耐えられず、声をかける。
「あの……初めてお見かけすると思うんですけど」
「あら、そうだったかしら?」
惚けているような言葉だと思ったが、いざ言われるとどこかで見たような気もしてしまう。
どうだったっけ。でも、こんな人は、少なくとも、知り合いには居ない。
「はい……。たぶん。そう、だと思います」
「そう……私はよくここに来てるのだけどね」
「ここの艦船なの?」
「いいえ。日本軍でもなければ、アメリカ軍でも、イギリス軍でも、ドイツ軍でもないわ」
「どういう……ことですか」
「説明するのは難しいけれど……。そう、ですわね。夢美さんの、深層無意識だとでも思ってくれればいいですわ」
突然名前を呼ばれ、更に思ってもみない言葉が飛び出て心臓がズキッとする。
「どうして私の名前を」
「あなたの深層無意識なのだから、名前くらい知ってても、おかしくないでしょう?」
彼女は微笑んで見せる。その双眸には、底知れない深い青を湛えている。
「深層無意識だと言うのなら、今私の考えてること、わかりますよね」
「そうね。本当なら今日、この戦争が終わるはずだったのに、ガックリしている。そんなところでしょう」
「っ……!!」
「この…夢の世界の戦争は、貴女が知るものとも、もちろん私の知るものとも、似て非なるものですわ」
似て非なるもの。つい先程までは、大筋は大きく違わなかったのに。
そのついさっきの瞬間から、大きく違えてしまった。
「この先は……どうなるの」
彼女が私の深層無意識だというのなら、知るはずも無いのに、つい訊いてしまう。
「さぁ、どうなるのかしらね?」
「そう…よね、知る訳無いですよね」
「でも、仮にこれが貴女の夢だとするなら」
そっと手を重ねてくる彼女。体温を感じない、ヒンヤリとしたその、手。ヒトならざるものの、手。
「貴女自身の行動で、変えられる結末が、あるかもしれませんわ」
「私の行動……ですか」
「ええ。貴女が夢の中であっても喪いたくない人が居るとすれば、貴女の行い次第で救うことが出来るかもしれない」
「でも、そんなこと、どうやって……戦闘になれば、相手を沈めなければ、こちらが沈められます」
「手遅れになる前に助けるの。難しいことじゃないでしょう?貴女は何度か経験しているはずよ」
「!!それをどうして……」
「ふふ。私は貴女の深層無意識と言ったはずよ」
「でも、私だけそうしたって」
「貴女は水雷戦隊旗艦の立場に立つこともあるのでしょう?であるならば、教えることね。運命を変える方法を」
「……そっか……そう、します」
じっと手を見る。私の手の届く範囲で、できる限りのことをする、決意。
「ありがとうございま……えっ?」
目線を戻すと、そこには誰も居なかった。
慈しむような目で見つめてくる女性。耐えられず、声をかける。
「あの……初めてお見かけすると思うんですけど」
「あら、そうだったかしら?」
惚けているような言葉だと思ったが、いざ言われるとどこかで見たような気もしてしまう。
どうだったっけ。でも、こんな人は、少なくとも、知り合いには居ない。
「はい……。たぶん。そう、だと思います」
「そう……私はよくここに来てるのだけどね」
「ここの艦船なの?」
「いいえ。日本軍でもなければ、アメリカ軍でも、イギリス軍でも、ドイツ軍でもないわ」
「どういう……ことですか」
「説明するのは難しいけれど……。そう、ですわね。夢美さんの、深層無意識だとでも思ってくれればいいですわ」
突然名前を呼ばれ、更に思ってもみない言葉が飛び出て心臓がズキッとする。
「どうして私の名前を」
「あなたの深層無意識なのだから、名前くらい知ってても、おかしくないでしょう?」
彼女は微笑んで見せる。その双眸には、底知れない深い青を湛えている。
「深層無意識だと言うのなら、今私の考えてること、わかりますよね」
「そうね。本当なら今日、この戦争が終わるはずだったのに、ガックリしている。そんなところでしょう」
「っ……!!」
「この…夢の世界の戦争は、貴女が知るものとも、もちろん私の知るものとも、似て非なるものですわ」
似て非なるもの。つい先程までは、大筋は大きく違わなかったのに。
そのついさっきの瞬間から、大きく違えてしまった。
「この先は……どうなるの」
彼女が私の深層無意識だというのなら、知るはずも無いのに、つい訊いてしまう。
「さぁ、どうなるのかしらね?」
「そう…よね、知る訳無いですよね」
「でも、仮にこれが貴女の夢だとするなら」
そっと手を重ねてくる彼女。体温を感じない、ヒンヤリとしたその、手。ヒトならざるものの、手。
「貴女自身の行動で、変えられる結末が、あるかもしれませんわ」
「私の行動……ですか」
「ええ。貴女が夢の中であっても喪いたくない人が居るとすれば、貴女の行い次第で救うことが出来るかもしれない」
「でも、そんなこと、どうやって……戦闘になれば、相手を沈めなければ、こちらが沈められます」
「手遅れになる前に助けるの。難しいことじゃないでしょう?貴女は何度か経験しているはずよ」
「!!それをどうして……」
「ふふ。私は貴女の深層無意識と言ったはずよ」
「でも、私だけそうしたって」
「貴女は水雷戦隊旗艦の立場に立つこともあるのでしょう?であるならば、教えることね。運命を変える方法を」
「……そっか……そう、します」
じっと手を見る。私の手の届く範囲で、できる限りのことをする、決意。
「ありがとうございま……えっ?」
目線を戻すと、そこには誰も居なかった。
「伊予、周防。まだ、この戦争は続くわ。あの子……夢見さんのこと、引き続き見守って頂戴ね」
「了解しましたよ、っと」
「貴艦も大概にモノ好きガァね ほっとけば良いガァ?」
「貴艦達もあっちで見たでしょう。あの子に必要以上にトラウマを作らせるのは気が進まないの」
「気に入った相手にすーぐ肩入れするんですから」
「う、うるさい」
「せいぜい干渉しすぎないよう気をつけるガァね」
―終戦まで、あと3年と半年弱。
(おわり)
「了解しましたよ、っと」
「貴艦も大概にモノ好きガァね ほっとけば良いガァ?」
「貴艦達もあっちで見たでしょう。あの子に必要以上にトラウマを作らせるのは気が進まないの」
「気に入った相手にすーぐ肩入れするんですから」
「う、うるさい」
「せいぜい干渉しすぎないよう気をつけるガァね」
―終戦まで、あと3年と半年弱。
(おわり)