―1945年春、幻海灘
「雨水I型甲の1。作戦開始時刻、まもなくです」
無機質な声が、ヘッドセットから聞こえてくる。
雨水I型甲の1。――それが、私の名前。
無機質な声が、ヘッドセットから聞こえてくる。
雨水I型甲の1。――それが、私の名前。
幻海灘。戦前は数多ある島々に、そこそこの住民が居たらしい。
けれど、今は民間人はとっくに本土へ退避して、今居るのは軍人と、よくわからない研究者たちだ。
開戦前……私が生まれる数年前から、この島々は戦争への備えとして、徹底的な要塞化が進められてきた。
こんな、本土から遠く離れた辺鄙な島に何があるというのだろう。
石油プラントはあるものの、どうもそれだけではなさそうだ。
「長生きしたければ知りすぎないことです」
私達に指示を出すオペレーターの口癖だ。
尤も、私たちは沈むのが仕事だ。長生きなど、もとよりできない。もう何度か沈んでいる。
雨水I型甲の1などと呼ばれているが、今のこの身体は雨水I型甲の17。
雨水I型甲の1は私の艦魂についた名前に過ぎない。便宜上、そう呼ばれているだけだ。
低コストで建造される私達はそもそも依代への艦魂の定着率が低いまま進水させられる。
どうせ長生きしたって碌なことは無い。
けれど、今は民間人はとっくに本土へ退避して、今居るのは軍人と、よくわからない研究者たちだ。
開戦前……私が生まれる数年前から、この島々は戦争への備えとして、徹底的な要塞化が進められてきた。
こんな、本土から遠く離れた辺鄙な島に何があるというのだろう。
石油プラントはあるものの、どうもそれだけではなさそうだ。
「長生きしたければ知りすぎないことです」
私達に指示を出すオペレーターの口癖だ。
尤も、私たちは沈むのが仕事だ。長生きなど、もとよりできない。もう何度か沈んでいる。
雨水I型甲の1などと呼ばれているが、今のこの身体は雨水I型甲の17。
雨水I型甲の1は私の艦魂についた名前に過ぎない。便宜上、そう呼ばれているだけだ。
低コストで建造される私達はそもそも依代への艦魂の定着率が低いまま進水させられる。
どうせ長生きしたって碌なことは無い。
幻海灘-日本本土間輸送。
大きいとはいえ、本土から遠く離れた幻海灘の島々の命綱。
この任務を完遂させるための囮が私の所属する艦隊の役割。
私と同じ雨水型と、無人操縦の木製輸送船で構成された、いかにも大規模な護衛艦隊ですといった風情の囮艦隊。
連合軍……主に米海軍、それも重巡を伴った艦隊が私達を襲撃してくる。
どうもこの頃は、8インチを上回る主砲と、ミサイルを搭載したものが配備されているらしい。
まだ私はそれを見たことはないけれど。きっと今までより痛いのだろう。嫌だな。
大きいとはいえ、本土から遠く離れた幻海灘の島々の命綱。
この任務を完遂させるための囮が私の所属する艦隊の役割。
私と同じ雨水型と、無人操縦の木製輸送船で構成された、いかにも大規模な護衛艦隊ですといった風情の囮艦隊。
連合軍……主に米海軍、それも重巡を伴った艦隊が私達を襲撃してくる。
どうもこの頃は、8インチを上回る主砲と、ミサイルを搭載したものが配備されているらしい。
まだ私はそれを見たことはないけれど。きっと今までより痛いのだろう。嫌だな。
「本隊の離脱を確認。作戦完了です。撤収してください」
……今日は沈まなかった。ただし、護衛対象の無人輸送船は全滅した。敵艦隊の襲撃は無かったが、空襲があった。
同行していた雨水Ⅱ型丙の7が敵航空機の爆撃で沈み、雨水Ⅱ型丙の11が推進器不調で作戦に支障が出たため私が雷撃処分した。
雨水型は、修理などされない。作り直した方が安く済む。所詮捨て駒。
雨水Ⅰ型丁の29、30、33は無抵抗に沈んでいった。
彼ら彼女らは完全なるダミー。真に沈むのが仕事。
私は抵抗できるが、あくまで雰囲気を出すためでしかない。この武器は、身を守るためのものでは、無い。
……今日は沈まなかった。ただし、護衛対象の無人輸送船は全滅した。敵艦隊の襲撃は無かったが、空襲があった。
同行していた雨水Ⅱ型丙の7が敵航空機の爆撃で沈み、雨水Ⅱ型丙の11が推進器不調で作戦に支障が出たため私が雷撃処分した。
雨水型は、修理などされない。作り直した方が安く済む。所詮捨て駒。
雨水Ⅰ型丁の29、30、33は無抵抗に沈んでいった。
彼ら彼女らは完全なるダミー。真に沈むのが仕事。
私は抵抗できるが、あくまで雰囲気を出すためでしかない。この武器は、身を守るためのものでは、無い。
「雨水I型甲の1。帰還を歓迎します。お疲れ様でした」
母港に着くなり聞こえてくる無機質な声。
この声の主であるオペレーターも艦船らしいが、ほとんど姿を見たことはない。
指揮官は別で居るのだが、少なくとも私達への指令は彼女を経由してしか発令されることはない。
実質的に彼女が私達の上官といえる。
母港に着くなり聞こえてくる無機質な声。
この声の主であるオペレーターも艦船らしいが、ほとんど姿を見たことはない。
指揮官は別で居るのだが、少なくとも私達への指令は彼女を経由してしか発令されることはない。
実質的に彼女が私達の上官といえる。
死ぬために生まれ、生まれては死に、また生まれる。
雨水型すべてがそうではないらしいが、少なくとも私はそういったサイクルで過ごしている。
他の艦……例えば、私たちが艦影を模している雨氷型駆逐艦たちは、私たちについてどういう認識なのだろう。
偽装のために着ている雨氷型向けと同型のジャケットを脱ぎ、見つめる。
私が正規の雨氷型に生まれ変わることはありえない。それでも、時々考える。
もし雨氷型として生まれていれば、全く違った感情を持って、全く違った生き方をしていたのだろうか?
雨水型すべてがそうではないらしいが、少なくとも私はそういったサイクルで過ごしている。
他の艦……例えば、私たちが艦影を模している雨氷型駆逐艦たちは、私たちについてどういう認識なのだろう。
偽装のために着ている雨氷型向けと同型のジャケットを脱ぎ、見つめる。
私が正規の雨氷型に生まれ変わることはありえない。それでも、時々考える。
もし雨氷型として生まれていれば、全く違った感情を持って、全く違った生き方をしていたのだろうか?
この島には、今は雨氷型が居ない。たまに寄港するくらいで、話す機会は無い。
しかし、私達の上官……水垂が言うには、年明けには恒常配備の計画があるらしい。
それまで戦争が続いているという算段なのか。全く嫌になる。
私達の地獄は、当分続く。
(おわり)
しかし、私達の上官……水垂が言うには、年明けには恒常配備の計画があるらしい。
それまで戦争が続いているという算段なのか。全く嫌になる。
私達の地獄は、当分続く。
(おわり)