―197X年 鎌倉市
ついにやってきた日本定住の第一歩の日。
ドイツの巡洋艦だった私が日本へ住むことになった流れはまぁ~それは色々ありましたとも。
それは置いとくにしても、今更、それも東西に分裂してしまったドイツに戻る気は無いかな。
あの頃の知り合いだってきっと散り散り。それならと、あの英潜女……アブソルートさんと、なーちゃんと一緒にやってきたワケ。
あの子らは都内に住むらしいけど、私は"元艦船の入居者優遇"の文字に釣られて鎌倉市内のアパートに決めた。
……そう、契約書書くまで忘れてたのだけど。私誰かさんのおかげで人間の戸籍だったのよね。優遇対象外じゃん!馬鹿!!
まぁでも、きれいな海も近くてそう悪い場所じゃない。きっと、戦争中と違ってのんびり過ごせるはず。
ドイツの巡洋艦だった私が日本へ住むことになった流れはまぁ~それは色々ありましたとも。
それは置いとくにしても、今更、それも東西に分裂してしまったドイツに戻る気は無いかな。
あの頃の知り合いだってきっと散り散り。それならと、あの英潜女……アブソルートさんと、なーちゃんと一緒にやってきたワケ。
あの子らは都内に住むらしいけど、私は"元艦船の入居者優遇"の文字に釣られて鎌倉市内のアパートに決めた。
……そう、契約書書くまで忘れてたのだけど。私誰かさんのおかげで人間の戸籍だったのよね。優遇対象外じゃん!馬鹿!!
まぁでも、きれいな海も近くてそう悪い場所じゃない。きっと、戦争中と違ってのんびり過ごせるはず。
「はぁ~疲れた!」
ダンボールも崩さず、ベッドに倒れ込む私。こうやって一人になれるのはいつぶりだろう?
ついさっきまで引越屋……のフリをしたMI6の連中が部屋に居たけど、もう静かなものね。
ついウトウトしてしまう……けど、そうだ、こんなことをしてる場合じゃない。
アブソルートさんにもらった"引っ越しソバ"とやらを、両隣に配らないと!!
思い出した私はダンボールを開け、仄かに黒っぽい不思議な半生の麺が入った袋を取り出す。
これが"引っ越しソバ"。日本人は引越しの挨拶にこのソバなる麺類を配ると言っていた。理屈はわかんない。
わかんないけど……そういう習慣があるなら、きっと悪いものじゃないはず。あとで自分で買って食べてみよっと。
ダンボールも崩さず、ベッドに倒れ込む私。こうやって一人になれるのはいつぶりだろう?
ついさっきまで引越屋……のフリをしたMI6の連中が部屋に居たけど、もう静かなものね。
ついウトウトしてしまう……けど、そうだ、こんなことをしてる場合じゃない。
アブソルートさんにもらった"引っ越しソバ"とやらを、両隣に配らないと!!
思い出した私はダンボールを開け、仄かに黒っぽい不思議な半生の麺が入った袋を取り出す。
これが"引っ越しソバ"。日本人は引越しの挨拶にこのソバなる麺類を配ると言っていた。理屈はわかんない。
わかんないけど……そういう習慣があるなら、きっと悪いものじゃないはず。あとで自分で買って食べてみよっと。
"ピンポーン"
私の部屋から出て右隣の部屋を訪ねてみる。
「はーい」
中からちょっと幼い声と共にドタドタと足音が聞こえてくる。
がちゃり、とゆっくり開くドア。
「どちら様ー?」
出迎えてくれたのはブロンドでツインテール、青い目の女の子だ。
「えっと、今日となりに越してきました、イエナって言います」
「イエナぁ?ドイツ人なの?」
「あ~……ドイツ系、かな……?」
「かな?って何よソレ」
「あはは……」
「ま、良いわ。私はステーシー。元・合衆国海軍駆逐艦よ」
わぁ、ホントに元艦船が住んでるんだ。
「わざわざここへ越してきたってことはイエナも元艦船なの?」
「それは……どうかな?えへ……」
こういう時元艦船と言って良いものかいつも困るので、笑って誤魔化している。
「ヘンなの。イエナが元艦船でもそうじゃなくてもステーシーには関係のないことよ」
なんというか、気の強い女の子って感じ。
「あ、それで、これ、引越しの挨拶に持ってきました!」
ソバを差し出す。
「ふーん?ねぇ、ローセツ!今日越してきたお隣さんがなんかくれるって!」
もう一人居るのか。そりゃそうか。いくら元艦船でもこんな幼い見た目の子一人では生活しづらいだろうし。
奥の方から玄関へやってきたのはローセツと呼ばれたであろうちょっと背の高い女の子。
滅茶苦茶色白で、立体感さえ消え失せるほどの真っ黒な長い髪の……なんだか少し、実在感の薄い子。
「イエナって言うんだってサ」
そう言われると、何やらメモ帳を取り出し書き始め、渡される。
『臘雪(ろうせつ)といいます 素敵なお隣さんを歓迎します』
微笑む臘雪ちゃん。筆談をする理由が何かあるのだろうけど、別に気にする必要もないか。
「素敵だなんて照れちゃいます。あ、これ、ご挨拶の品です」
ソバを臘雪ちゃんに手渡すと、彼女は深々とお辞儀をし、ニッコリする。
臘雪ちゃんはステーシーちゃんに何か問いかけるようなジェスチャーをしている。
「そうね、せっかくなら天ソバがいいわ!あとでお買い物行きましょ!」
ジェスチャーで会話が成り立ってる。凄い……。
「それでは、お邪魔しました~」
……こっちのお隣さんはいい人そうで、ちょっと安心。
私の部屋から出て右隣の部屋を訪ねてみる。
「はーい」
中からちょっと幼い声と共にドタドタと足音が聞こえてくる。
がちゃり、とゆっくり開くドア。
「どちら様ー?」
出迎えてくれたのはブロンドでツインテール、青い目の女の子だ。
「えっと、今日となりに越してきました、イエナって言います」
「イエナぁ?ドイツ人なの?」
「あ~……ドイツ系、かな……?」
「かな?って何よソレ」
「あはは……」
「ま、良いわ。私はステーシー。元・合衆国海軍駆逐艦よ」
わぁ、ホントに元艦船が住んでるんだ。
「わざわざここへ越してきたってことはイエナも元艦船なの?」
「それは……どうかな?えへ……」
こういう時元艦船と言って良いものかいつも困るので、笑って誤魔化している。
「ヘンなの。イエナが元艦船でもそうじゃなくてもステーシーには関係のないことよ」
なんというか、気の強い女の子って感じ。
「あ、それで、これ、引越しの挨拶に持ってきました!」
ソバを差し出す。
「ふーん?ねぇ、ローセツ!今日越してきたお隣さんがなんかくれるって!」
もう一人居るのか。そりゃそうか。いくら元艦船でもこんな幼い見た目の子一人では生活しづらいだろうし。
奥の方から玄関へやってきたのはローセツと呼ばれたであろうちょっと背の高い女の子。
滅茶苦茶色白で、立体感さえ消え失せるほどの真っ黒な長い髪の……なんだか少し、実在感の薄い子。
「イエナって言うんだってサ」
そう言われると、何やらメモ帳を取り出し書き始め、渡される。
『臘雪(ろうせつ)といいます 素敵なお隣さんを歓迎します』
微笑む臘雪ちゃん。筆談をする理由が何かあるのだろうけど、別に気にする必要もないか。
「素敵だなんて照れちゃいます。あ、これ、ご挨拶の品です」
ソバを臘雪ちゃんに手渡すと、彼女は深々とお辞儀をし、ニッコリする。
臘雪ちゃんはステーシーちゃんに何か問いかけるようなジェスチャーをしている。
「そうね、せっかくなら天ソバがいいわ!あとでお買い物行きましょ!」
ジェスチャーで会話が成り立ってる。凄い……。
「それでは、お邪魔しました~」
……こっちのお隣さんはいい人そうで、ちょっと安心。
"ピンポーン"
今度は左隣。
"ガチャッ"
「ひっ!?」
いきなり開いて変な声出ちゃった。
開いたドアの隙間から見えるのは……なんだか幽霊みたいな……女の子……かどうかもよくわからない。
「どちら様」
「アッえっときょっ今日となりに引っ越してきたイエナと申しまっ……!」
「落ち着いて、別に取って食ったりしない」
「す、すみません……ちょっと気が動転しちゃってて…」
「……突然開けてごめん。新しい隣人だとは思わなかったから」
扉が全部開く。全体像を見ても、やっぱり幽霊みたいという印象は拭えない。顔も無表情だし。
「イエナ、って言うの?よろしく。私は……」
そう言うと彼女は目線を外して、少し困った顔をして考え込んでしまった。
表札を見ても何も掲示されていない。名乗る名前が無いのかな……?
「……アマミズ、でいい」
「アマミズさん!よ、よろしくお願いします!」
「呼び捨てで構わないよ」
「いえいえそんな……あ、これ、ご挨拶の品です」
「ふーん、外人なのにソバなんて、変わってる」
「ヘン……ですかね?」
「いや、悪い意味じゃなくてね」
「ええ……?」
「何にしても、このソバはありがたくいただくよ。隣人としてよろしく、イエナ」
「はい、よろしくお願いします!お邪魔しました!」
「そうだ、ふたつとなりの臘雪には会ったか」
「えっ?ええ、先程挨拶しました」
「そっか。良い子だろう、彼女は」
「そう……ですね?」
「きっと貴女も仲良くなれる。それじゃ」
"バタン"
……なんだか変わってるけど、それでも悪い人ではなさそう……なのかな?
ふたつ隣の事も知っていた様子だったし。
今度は左隣。
"ガチャッ"
「ひっ!?」
いきなり開いて変な声出ちゃった。
開いたドアの隙間から見えるのは……なんだか幽霊みたいな……女の子……かどうかもよくわからない。
「どちら様」
「アッえっときょっ今日となりに引っ越してきたイエナと申しまっ……!」
「落ち着いて、別に取って食ったりしない」
「す、すみません……ちょっと気が動転しちゃってて…」
「……突然開けてごめん。新しい隣人だとは思わなかったから」
扉が全部開く。全体像を見ても、やっぱり幽霊みたいという印象は拭えない。顔も無表情だし。
「イエナ、って言うの?よろしく。私は……」
そう言うと彼女は目線を外して、少し困った顔をして考え込んでしまった。
表札を見ても何も掲示されていない。名乗る名前が無いのかな……?
「……アマミズ、でいい」
「アマミズさん!よ、よろしくお願いします!」
「呼び捨てで構わないよ」
「いえいえそんな……あ、これ、ご挨拶の品です」
「ふーん、外人なのにソバなんて、変わってる」
「ヘン……ですかね?」
「いや、悪い意味じゃなくてね」
「ええ……?」
「何にしても、このソバはありがたくいただくよ。隣人としてよろしく、イエナ」
「はい、よろしくお願いします!お邪魔しました!」
「そうだ、ふたつとなりの臘雪には会ったか」
「えっ?ええ、先程挨拶しました」
「そっか。良い子だろう、彼女は」
「そう……ですね?」
「きっと貴女も仲良くなれる。それじゃ」
"バタン"
……なんだか変わってるけど、それでも悪い人ではなさそう……なのかな?
ふたつ隣の事も知っていた様子だったし。
「ただいま~……って、誰も居ないんだけどさ」
まだまだ生活空間というには程遠い部屋。
そこに突然、電話のベルが鳴る。
引っ越し直後に電話をかけてくるヤツなんて心当たりがないけど……まだ誰にも教えてないし。
とはいえ放置しても仕方ないので、受話器を取る。
「あの、もしもし…」
「元独軍偵察巡洋艦イエナで合ってるか?」
「ひっ!?」
「そう驚くな。私は防衛庁広報課の後野だ」
「そんなお方がこの私に何用ですかね!?」
「何、ちょっと貴艦とお茶したいだけだ。お茶代は出す。どうだ?」
「……良いでしょう。いつ、どこですか」
待ち合わせの約束をして、受話器を置く。
想像していたようなのんびり生活は、今しばらくお預けかもしれない。
(おわり)
まだまだ生活空間というには程遠い部屋。
そこに突然、電話のベルが鳴る。
引っ越し直後に電話をかけてくるヤツなんて心当たりがないけど……まだ誰にも教えてないし。
とはいえ放置しても仕方ないので、受話器を取る。
「あの、もしもし…」
「元独軍偵察巡洋艦イエナで合ってるか?」
「ひっ!?」
「そう驚くな。私は防衛庁広報課の後野だ」
「そんなお方がこの私に何用ですかね!?」
「何、ちょっと貴艦とお茶したいだけだ。お茶代は出す。どうだ?」
「……良いでしょう。いつ、どこですか」
待ち合わせの約束をして、受話器を置く。
想像していたようなのんびり生活は、今しばらくお預けかもしれない。
(おわり)