―1953年 横浜
「あいよーラーメン炒飯定食一丁上がり!さっさと持ってきな!」
元・中華民国海軍戦艦のイェンチュイの仕切る中華飯店"麒麟"は今日のランチタイムもそこそこに繁盛。
しかしわざわざこの店に来てラーメン炒飯定食とは……と思いつつも、私は席へ持っていく。
「お待たせいたしました~こちらラーメン炒飯定食です。それではごゆっくり……」
"カランカラン"
入店のベルが鳴る。
「いらっしゃいませ~お好きな席へどうぞ~……っ!!」
入口を見ると………そこには………。
私だと気付かれる前にカウンターの方へそそくさと逃げる。
「あ?どうしたんだ?そんな早足に戻ってきたりしてヨォ」
「樹氷が……雨氷型が来てるの」
「はーん。まためんどくさいな。お一人様か?」
「いえ、後野さんと、あともう一人で来てる」
「後野って……雨氷型とあまり積極的に関わるなって言ってんのアイツじゃねーのかよ」
「そのはずだけど……」
彼女達が座った席を見る。黒尽くめの女と目が合う。後野さんだ。
すると後野さんは何か一言言ってからこっちのほうへ歩いてくる。
「……すまない、近くに来て昼時になったものだからついうっかり来てしまった」
「バッカじゃねーの」
「本当に申し訳ないと思っている………どうにかやり過ごしてくれ」
「樹氷はわかるけど、あと一人は誰?」
「ああ、あいつは海上警備隊の"うぐいす"だ、元英海軍の軽巡だ」
「あぁ~どっかで見たことあるぞ、前はサン・フェアリー・アンとかいう名前だったやつだろ?」
「よく知ってるな」
「で、どうすんだよ。雨打は絶対バレるだろ?毒雨、注文取ってこい」
「俺?前臘雪にバレた前科があるけど大丈夫かよ?」
「毒雨は樹氷とは関わりがほとんど無かったでしょう」
「それはまぁ……そうだな」
「ハイ決まり、行ってらっしゃい」
「じゃ、私はトイレ行くフリをしてから戻るから……ああ、私は魯肉飯で」
「へいへい……」
渋々と向かう毒雨。大丈夫かしら。
元・中華民国海軍戦艦のイェンチュイの仕切る中華飯店"麒麟"は今日のランチタイムもそこそこに繁盛。
しかしわざわざこの店に来てラーメン炒飯定食とは……と思いつつも、私は席へ持っていく。
「お待たせいたしました~こちらラーメン炒飯定食です。それではごゆっくり……」
"カランカラン"
入店のベルが鳴る。
「いらっしゃいませ~お好きな席へどうぞ~……っ!!」
入口を見ると………そこには………。
私だと気付かれる前にカウンターの方へそそくさと逃げる。
「あ?どうしたんだ?そんな早足に戻ってきたりしてヨォ」
「樹氷が……雨氷型が来てるの」
「はーん。まためんどくさいな。お一人様か?」
「いえ、後野さんと、あともう一人で来てる」
「後野って……雨氷型とあまり積極的に関わるなって言ってんのアイツじゃねーのかよ」
「そのはずだけど……」
彼女達が座った席を見る。黒尽くめの女と目が合う。後野さんだ。
すると後野さんは何か一言言ってからこっちのほうへ歩いてくる。
「……すまない、近くに来て昼時になったものだからついうっかり来てしまった」
「バッカじゃねーの」
「本当に申し訳ないと思っている………どうにかやり過ごしてくれ」
「樹氷はわかるけど、あと一人は誰?」
「ああ、あいつは海上警備隊の"うぐいす"だ、元英海軍の軽巡だ」
「あぁ~どっかで見たことあるぞ、前はサン・フェアリー・アンとかいう名前だったやつだろ?」
「よく知ってるな」
「で、どうすんだよ。雨打は絶対バレるだろ?毒雨、注文取ってこい」
「俺?前臘雪にバレた前科があるけど大丈夫かよ?」
「毒雨は樹氷とは関わりがほとんど無かったでしょう」
「それはまぁ……そうだな」
「ハイ決まり、行ってらっしゃい」
「じゃ、私はトイレ行くフリをしてから戻るから……ああ、私は魯肉飯で」
「へいへい……」
渋々と向かう毒雨。大丈夫かしら。
―ったく、とんだ貧乏くじだ。
チョットでもバレないように雰囲気変えてみるか……。
「ご、ご注文はお決まりでしょうかぁ~?」
「私はランチセットを麻婆豆腐でお願い」
「えーっと…………」
……ヤバい。樹氷の姉貴にめっちゃ見られてる。
「い、いかがなさいましたか?」
「……あ、ごめんなさい、知り合いに似てたもので」
「そッそ、そうですか」
「とても可愛らしくてお似合いですよ、チャイナドレス」
「は、あ、ありがとうございます……」
「お姉ちゃんも着てみたらきっとこんな感じだったんだろうなぁ」
「樹氷、さっさと決めちゃいなさい」
「そうだったそうだった。ラーメン炒飯定食で」
わざわざここに来てラーメン炒飯定食かよ……。
「ご注文確認します、ランチセットを麻婆豆腐でおひとつ、ラーメン炒飯定食をおひとつ、お連れ様は魯肉飯とお伺いしております」
「なんだ、あの人もう頼んでたの」
「それでは今しばらくお待ちくださいませ……」
……あー、ヒヤヒヤした。
チョットでもバレないように雰囲気変えてみるか……。
「ご、ご注文はお決まりでしょうかぁ~?」
「私はランチセットを麻婆豆腐でお願い」
「えーっと…………」
……ヤバい。樹氷の姉貴にめっちゃ見られてる。
「い、いかがなさいましたか?」
「……あ、ごめんなさい、知り合いに似てたもので」
「そッそ、そうですか」
「とても可愛らしくてお似合いですよ、チャイナドレス」
「は、あ、ありがとうございます……」
「お姉ちゃんも着てみたらきっとこんな感じだったんだろうなぁ」
「樹氷、さっさと決めちゃいなさい」
「そうだったそうだった。ラーメン炒飯定食で」
わざわざここに来てラーメン炒飯定食かよ……。
「ご注文確認します、ランチセットを麻婆豆腐でおひとつ、ラーメン炒飯定食をおひとつ、お連れ様は魯肉飯とお伺いしております」
「なんだ、あの人もう頼んでたの」
「それでは今しばらくお待ちくださいませ……」
……あー、ヒヤヒヤした。
毒雨が戻ってきた。
「へい、注文伝票」
「うっす。大丈夫だったか?」
「まぁ、一応」
「じゃー持ってくのも頼むぜ」
「へーい」
それにしても……樹氷、生き残って、それから日本に戻ってたのね。
遠目に見れるだけでも嬉しい。会えなくてごめんなさいね……。
「樹氷の姉貴、姉さんのこと言ってたぜ」
「そりゃ、今の毒雨は私に似てるし……ねぇ」
「他人のフリして会ってくりゃいーんじゃねーの」
「無理無理。樹氷は誤魔化せないわ」
「そーゆーもんかね」
「そーゆーもんなの」
「へい、注文伝票」
「うっす。大丈夫だったか?」
「まぁ、一応」
「じゃー持ってくのも頼むぜ」
「へーい」
それにしても……樹氷、生き残って、それから日本に戻ってたのね。
遠目に見れるだけでも嬉しい。会えなくてごめんなさいね……。
「樹氷の姉貴、姉さんのこと言ってたぜ」
「そりゃ、今の毒雨は私に似てるし……ねぇ」
「他人のフリして会ってくりゃいーんじゃねーの」
「無理無理。樹氷は誤魔化せないわ」
「そーゆーもんかね」
「そーゆーもんなの」
「お待たせいたしました、ランチセット麻婆豆腐と、ラーメン炒飯定食と、魯肉飯です」
「おー、美味しそう」
「私の行きつけだからな、はは……」
「……………」
やっぱりジッと見られてるな……。
「あの、こんなこと店員さんにお願いするのもヘンですけど」
「は、はい?なんでしょうか?」
「私、樹氷って言うんですけど……呼んでみてくれませんか?」
「え、ええと……樹氷?」
「樹氷、店員さんに何させてんの……ごめんなさいね?」
「う~ん……お姉ちゃん、って言ってみてほしいです」
「樹氷!?ちょっと!?」
「か、構いませんけど……樹氷お姉ちゃん?」
「……ふ~ん」
「ふーんじゃないって。なんかすみません、妙なことお願いしてしまって」
「いえ、大丈夫ですよ……それではどうぞごゆっくり」
……そういうこと言わせたがりなの、姉さんと似てるんだな、樹氷の姉貴って。
姉さんも、今のこの身体になったとき、似たようなこと言ってきたもんなぁ……。
「おー、美味しそう」
「私の行きつけだからな、はは……」
「……………」
やっぱりジッと見られてるな……。
「あの、こんなこと店員さんにお願いするのもヘンですけど」
「は、はい?なんでしょうか?」
「私、樹氷って言うんですけど……呼んでみてくれませんか?」
「え、ええと……樹氷?」
「樹氷、店員さんに何させてんの……ごめんなさいね?」
「う~ん……お姉ちゃん、って言ってみてほしいです」
「樹氷!?ちょっと!?」
「か、構いませんけど……樹氷お姉ちゃん?」
「……ふ~ん」
「ふーんじゃないって。なんかすみません、妙なことお願いしてしまって」
「いえ、大丈夫ですよ……それではどうぞごゆっくり」
……そういうこと言わせたがりなの、姉さんと似てるんだな、樹氷の姉貴って。
姉さんも、今のこの身体になったとき、似たようなこと言ってきたもんなぁ……。
「……やっぱ姉妹なんだな」
「何よ唐突に?」
「いーや、こっちの話」
「あなただって私とよく似てるわ」
「知ってるって」
「中身の話よ?」
「ええ?それはわかんねーなぁ」
「わかんなくて結構よ」
「なんなんだよもー」
「お互い様ね、ふふ」
「何よ唐突に?」
「いーや、こっちの話」
「あなただって私とよく似てるわ」
「知ってるって」
「中身の話よ?」
「ええ?それはわかんねーなぁ」
「わかんなくて結構よ」
「なんなんだよもー」
「お互い様ね、ふふ」
「お会計お願いしまーす」
「あいよー、ランチセット麻婆豆腐と……」
ランチタイム最後の客だったので、オーナー自ら会計をしている。
「私から連れてきたのだから経費から出しておく、ごちそうさま」
「まいどありー」
会計を終えると、オーナーは私の方をチラチラと見て、顎で店を出ようとする樹氷たちを指す。
……そうね、最後くらい。
「ありがとうございましたー!」
「あいよー、ランチセット麻婆豆腐と……」
ランチタイム最後の客だったので、オーナー自ら会計をしている。
「私から連れてきたのだから経費から出しておく、ごちそうさま」
「まいどありー」
会計を終えると、オーナーは私の方をチラチラと見て、顎で店を出ようとする樹氷たちを指す。
……そうね、最後くらい。
「ありがとうございましたー!」
「……?」
「どうしたのよ樹氷」
「……ううん、なんでも」
そう言うと、樹氷は何やら満足そうに歩き出すのだった。
(おわり)
「どうしたのよ樹氷」
「……ううん、なんでも」
そう言うと、樹氷は何やら満足そうに歩き出すのだった。
(おわり)