―1965年夏 南太平洋上
「この島がこ……なんて読むんですか、これ?」
色白で小柄な少女が呟く。
地図の示す地点には"姑獲鳥島"と書かれている。
「こかくちょうとう……でも良いんですが、"うぶめ"じま、というのが正しいらしいですよ」
そう答えるのは、長いサイドテールの少女。
「米国ではバース島と呼ばれているそうです」
誰にということもなく補足するのは薄紫の髪をふたつ、輪っかにして束ねた少女。
彼女たちはそれぞれ、水産庁漁業取締船"ちふり"、海上自衛隊護衛艦"みぞれ"、"もちゆき"であった。
「このあたりはミナミマグロの漁場でして、日本の遠洋漁業船も多く来ているんです」
「でも、あの島自体は米国領なんだっけ?」
「ええ、現在は米軍の射爆訓練場に指定されていますよ、先輩」
「私のよく来ていた沖ノ鳥島諸島からも外れた、絶海の孤島……無人島ですね」
「私は本土防衛してたからよく知らないんだけど、この島に日本軍は?」
「多少居たようです。米軍も上陸したんですが、その頃にはもぬけの殻だったらしくって」
「民間航路からも外れているこの島近辺の掃海作業はここ数年でようやく手を付けられ始めたのですよ」
もちゆきは地図を指差し、ぐるりと円を描く。
「そして、その掃海作業で原因不明の行方不明者が出ているのです」
「漁船もこの近辺で何隻か行方不明になっていて……最初は触雷事故だと思われたのですが……」
「どちらもよくわからず、私達が調査へ来た。そうですよね?」
「そのとおりですよ、先輩。さて、調査の段取りなんですけど……」
さきほど円を描いた白い細指は島の沿岸部を指差し、続ける。
「岩礁の多い島なので上陸地点は限られます。この砂浜から、お二人は上陸を試みてください」
そして、顔を上げた彼女は最後に一言告げた。
「私は海上で"準備"がありますので、私から連絡があったらこちらの合流地点へ――」
色白で小柄な少女が呟く。
地図の示す地点には"姑獲鳥島"と書かれている。
「こかくちょうとう……でも良いんですが、"うぶめ"じま、というのが正しいらしいですよ」
そう答えるのは、長いサイドテールの少女。
「米国ではバース島と呼ばれているそうです」
誰にということもなく補足するのは薄紫の髪をふたつ、輪っかにして束ねた少女。
彼女たちはそれぞれ、水産庁漁業取締船"ちふり"、海上自衛隊護衛艦"みぞれ"、"もちゆき"であった。
「このあたりはミナミマグロの漁場でして、日本の遠洋漁業船も多く来ているんです」
「でも、あの島自体は米国領なんだっけ?」
「ええ、現在は米軍の射爆訓練場に指定されていますよ、先輩」
「私のよく来ていた沖ノ鳥島諸島からも外れた、絶海の孤島……無人島ですね」
「私は本土防衛してたからよく知らないんだけど、この島に日本軍は?」
「多少居たようです。米軍も上陸したんですが、その頃にはもぬけの殻だったらしくって」
「民間航路からも外れているこの島近辺の掃海作業はここ数年でようやく手を付けられ始めたのですよ」
もちゆきは地図を指差し、ぐるりと円を描く。
「そして、その掃海作業で原因不明の行方不明者が出ているのです」
「漁船もこの近辺で何隻か行方不明になっていて……最初は触雷事故だと思われたのですが……」
「どちらもよくわからず、私達が調査へ来た。そうですよね?」
「そのとおりですよ、先輩。さて、調査の段取りなんですけど……」
さきほど円を描いた白い細指は島の沿岸部を指差し、続ける。
「岩礁の多い島なので上陸地点は限られます。この砂浜から、お二人は上陸を試みてください」
そして、顔を上げた彼女は最後に一言告げた。
「私は海上で"準備"がありますので、私から連絡があったらこちらの合流地点へ――」
"みぞれ"及び"ちふり"が上陸を完了すると、何やらカリカリと音が聞こえる。
「ちふりちゃん、これ何の音?」
「ガイガーカウンターです。持っていけと言われたんですが……どれどれ?」
ちふりは機械を取り出すと、顔をしかめた。
「うげぇ、これじゃ人間の長期滞在は厳しいですね……私達も、帰ったら除染が必要なレベルです」
「この島で核実験でもしたのかな……?」
「……いえ、それはないと思います」
ちふりが指差す先には、チョロチョロとやや大振りなトカゲが這い回っていた。
そして前に向き直すと、見つめる先には、鬱蒼と茂った熱帯雨林があった。
「この中に分け入って、指定の地点に観測機器を設置しないといけません」
入っていけそうな場所を探していると、二人は戦車を発見する。
「九五式軽戦車……ハ号ですね。損傷はなさそうですが……」
みぞれは登ってみたりして、各部を調べてみる。すると、奇妙な点を発見した。
「損傷はないけど、ハッチが内側からロックされてる……」
「え!?じゃあ、この中に誰かが?」
「そのはずだけど……そんな様子も無いし……」
米軍がやってくる頃にはもぬけの殻だったという話と少し様子が違う。
この戦車の搭乗員は、米兵を恐れて閉じこもったまま、餓死でもしてしまったのだろうか?
とはいえ考えても仕方ないので、戦車は放っておくことにして、二人はこの場を離れた。
「ちふりちゃん、これ何の音?」
「ガイガーカウンターです。持っていけと言われたんですが……どれどれ?」
ちふりは機械を取り出すと、顔をしかめた。
「うげぇ、これじゃ人間の長期滞在は厳しいですね……私達も、帰ったら除染が必要なレベルです」
「この島で核実験でもしたのかな……?」
「……いえ、それはないと思います」
ちふりが指差す先には、チョロチョロとやや大振りなトカゲが這い回っていた。
そして前に向き直すと、見つめる先には、鬱蒼と茂った熱帯雨林があった。
「この中に分け入って、指定の地点に観測機器を設置しないといけません」
入っていけそうな場所を探していると、二人は戦車を発見する。
「九五式軽戦車……ハ号ですね。損傷はなさそうですが……」
みぞれは登ってみたりして、各部を調べてみる。すると、奇妙な点を発見した。
「損傷はないけど、ハッチが内側からロックされてる……」
「え!?じゃあ、この中に誰かが?」
「そのはずだけど……そんな様子も無いし……」
米軍がやってくる頃にはもぬけの殻だったという話と少し様子が違う。
この戦車の搭乗員は、米兵を恐れて閉じこもったまま、餓死でもしてしまったのだろうか?
とはいえ考えても仕方ないので、戦車は放っておくことにして、二人はこの場を離れた。
「このあたり?」
みぞれは観測機器を下ろし、電源を起動。アンテナを伸ばす。
「大丈夫だと思います。次の地点で最後です」
最後は、島の中央部に近い高台であった。
みぞれは観測機器を下ろし、電源を起動。アンテナを伸ばす。
「大丈夫だと思います。次の地点で最後です」
最後は、島の中央部に近い高台であった。
「うわ、これはもしかして……」
目指していた高台には、建物があった。
「旧軍の遺構だね、わりかしキレイな」
「"姑獲鳥島守備隊本部"ですか」
入り口に看板が掛かっている。それ以外にこの建物が何であるかを示すものは見当たらない。
「あれ?この島って米軍が上陸したんだよね?この建物使わなかったのかな」
「言われてみれば確かに?……最後の観測機器は、この建物の屋上に設置するように指示されています」
外側に梯子や階段は設置されていないようだった。窓は割れ、扉は外れ、形が歪んでしまっている。
「酷く荒れ果ててますね」
「もう戦争終わって17年近くなるもんね」
中に入ると、上下へ通じる階段があった。
「目的地は当然上階ですが……」
「調査だし、下階も見に行くべきだよね……ちふりちゃん、屋上で設置をお願いできるかな?」
「了解しました」
目指していた高台には、建物があった。
「旧軍の遺構だね、わりかしキレイな」
「"姑獲鳥島守備隊本部"ですか」
入り口に看板が掛かっている。それ以外にこの建物が何であるかを示すものは見当たらない。
「あれ?この島って米軍が上陸したんだよね?この建物使わなかったのかな」
「言われてみれば確かに?……最後の観測機器は、この建物の屋上に設置するように指示されています」
外側に梯子や階段は設置されていないようだった。窓は割れ、扉は外れ、形が歪んでしまっている。
「酷く荒れ果ててますね」
「もう戦争終わって17年近くなるもんね」
中に入ると、上下へ通じる階段があった。
「目的地は当然上階ですが……」
「調査だし、下階も見に行くべきだよね……ちふりちゃん、屋上で設置をお願いできるかな?」
「了解しました」
薄暗い階段を降りていくみぞれ。当然電気など通っておらず、降りた先は真っ暗だ。
探照灯を頼りに歩みを進めると、そこそこ大きな部屋に辿り着いた。何やら扉の付いた棚のような機械がズラリと並んでいた。
「なんだろう、これ……?」
照明や温度計、ヒーターと冷却器のついたそれは、いわゆる"孵卵器"であったが、みぞれにはそういった分野の知識は無かった。
しかし、知識がなくとも、みぞれはそれが何なのか知ることになる。
「これは……タマゴ?」
ある棚に乗ったままの綺麗な卵を発見する。改めて周りを見回すと、棚の中や床には卵の殻が散乱しているのだった。
「ここで卵を孵していた……?食料……?」
機械と卵の殻以外部屋に無いことを確認すると、屋上から悲鳴が聞こえた。
「きゃーっ!!あっち行って!」
「ちふりちゃん!?」
みぞれは大急ぎで階段を駆け上がる。屋上に着くと、2mはあろうかというカマキリがちふりを屋上の隅に追いやっていた。
「ちふりちゃん!頭下げて!」
「は、はい!」
刹那、みぞれは携えていたマーク42・5インチ速射砲を大カマキリに向けて発砲する。
大カマキリの頭は吹き飛び、残った体は崩れ落ちるようにして倒れた。
「大丈夫!?」
「は、はい……なんとか……」
混乱する二人の元に無線通信が入ってくる。
「観測機器、設置完了しましたね?早いとこ戻ってきてください」
みぞれは大カマキリの事を報告しようとしたが、飲み込んでしまった。何故なら続けて無線機から
「お二人が無事なうちにお願いしますね」
と、聞こえてきたからである。
探照灯を頼りに歩みを進めると、そこそこ大きな部屋に辿り着いた。何やら扉の付いた棚のような機械がズラリと並んでいた。
「なんだろう、これ……?」
照明や温度計、ヒーターと冷却器のついたそれは、いわゆる"孵卵器"であったが、みぞれにはそういった分野の知識は無かった。
しかし、知識がなくとも、みぞれはそれが何なのか知ることになる。
「これは……タマゴ?」
ある棚に乗ったままの綺麗な卵を発見する。改めて周りを見回すと、棚の中や床には卵の殻が散乱しているのだった。
「ここで卵を孵していた……?食料……?」
機械と卵の殻以外部屋に無いことを確認すると、屋上から悲鳴が聞こえた。
「きゃーっ!!あっち行って!」
「ちふりちゃん!?」
みぞれは大急ぎで階段を駆け上がる。屋上に着くと、2mはあろうかというカマキリがちふりを屋上の隅に追いやっていた。
「ちふりちゃん!頭下げて!」
「は、はい!」
刹那、みぞれは携えていたマーク42・5インチ速射砲を大カマキリに向けて発砲する。
大カマキリの頭は吹き飛び、残った体は崩れ落ちるようにして倒れた。
「大丈夫!?」
「は、はい……なんとか……」
混乱する二人の元に無線通信が入ってくる。
「観測機器、設置完了しましたね?早いとこ戻ってきてください」
みぞれは大カマキリの事を報告しようとしたが、飲み込んでしまった。何故なら続けて無線機から
「お二人が無事なうちにお願いしますね」
と、聞こえてきたからである。
「もちゆきさん、何か知ってるんでしょうか?」
「そう、なのかもしれない」
元・雨氷型駆逐艦であったみぞれと違い、もちゆきは雨氷型として未完成だった船体を戦後に建造続行し、新たに護衛艦とした艦である。
雨氷型の血は引いているものの、元旧海軍艦艇たちとはどこか一線を引いていた。
また、装備品も試験装備の色が濃く、通常の用途の護衛艦であるとは言い難かった。
来た道を戻る二人。木々の間を進んでいる……つもりだったのだが。
「なんだかこの木、変ですよね……」
「私達と一緒に動いている……?」
木に近づいて調べようと一度立ち止まったところ、上から何かが飛んできて、みぞれの艤装に命中した。
「被弾っ!?」
幸い装甲が弾いたが、飛んできたものを確認すると、何やら巨大な針のようであり、先からは何かが滴っている。
「なにこれ…!?」
みぞれが上を向くと、そこには巨大な蜘蛛の胴体、そして頭があった。
木々だと思っていたものは、この蜘蛛の脚だったのだ。
ちふりもみぞれの視線の先の存在に気付く。
「ひっ………」
みぞれはゆっくりと速射砲を構える。
「ちふりちゃん、私が撃ったら……走るよ」
「はい……!」
発砲音。この世のものとは思えないうめき声。走り出す二人の足音。
撃破確認もせず、全力疾走で森を抜けていった。
「そう、なのかもしれない」
元・雨氷型駆逐艦であったみぞれと違い、もちゆきは雨氷型として未完成だった船体を戦後に建造続行し、新たに護衛艦とした艦である。
雨氷型の血は引いているものの、元旧海軍艦艇たちとはどこか一線を引いていた。
また、装備品も試験装備の色が濃く、通常の用途の護衛艦であるとは言い難かった。
来た道を戻る二人。木々の間を進んでいる……つもりだったのだが。
「なんだかこの木、変ですよね……」
「私達と一緒に動いている……?」
木に近づいて調べようと一度立ち止まったところ、上から何かが飛んできて、みぞれの艤装に命中した。
「被弾っ!?」
幸い装甲が弾いたが、飛んできたものを確認すると、何やら巨大な針のようであり、先からは何かが滴っている。
「なにこれ…!?」
みぞれが上を向くと、そこには巨大な蜘蛛の胴体、そして頭があった。
木々だと思っていたものは、この蜘蛛の脚だったのだ。
ちふりもみぞれの視線の先の存在に気付く。
「ひっ………」
みぞれはゆっくりと速射砲を構える。
「ちふりちゃん、私が撃ったら……走るよ」
「はい……!」
発砲音。この世のものとは思えないうめき声。走り出す二人の足音。
撃破確認もせず、全力疾走で森を抜けていった。
「森、抜けましたね……」
いつの間にか、戦車のあった場所まで戻ってきていた。
蜘蛛がどうなったかはわからない。尤も、みぞれは確かめたくもないのだったが。
「ここまでくればもう大丈夫……」
そこまで言いかけたのだが。森の奥から何か物音が近づいてくる。
「今度は何が……っ」
ちふりは絶句してしまった。
物音の主は、四足歩行にも関わらず、体高が木の高さほどもある巨大なトカゲだったのだから。
トカゲは明後日の方向を向き、まだ二人には気づいていない様子だ。
しかし、それを見つめる二人はもう限界だった。
「はっ、あっ………」
みぞれは顔がこわばり、無意識に速射砲を構える。手が震える。
彼女は今までいくつかの戦場を経験してきたが、今この時が今までで一番恐怖を覚えた瞬間に違いなかった。
速射砲が火を吹き、巨大なトカゲに命中する。
……命中したのだが、あまりにも気の抜けた命中音がするに留まった。トカゲの体表には、まるで砂利を足の裏で踏んだかのような小さな凹みしかできていない。
「ダメ、まるで効いてない……!」
トカゲは二人に気づいたようで、ヌッと方向転換する。方向転換に際して、巨大な尻尾が木々を薙ぎ倒し、戦車をブリキの玩具のように吹き飛ばしてしまった。
がらんがらんと音を立てながら転がっていく戦車を見て血の気が引く二人。
「早く!逃げましょう!」
砂浜を駆け出し、水上へ出ようとする二人。幸いトカゲの歩みは遅かったが、その巨体ゆえ一歩が大きく、速い。
とはいえ二人のほうがわずかに速く、二人は水上航行に移行した。
「海の上へ出てしまえばこっちのもの!」
そう思ったのも束の間。トカゲはざぶざぶと海の中へ入って追いかけてくる。
巨大な尾を使った泳ぎは陸上より遥かに速い。
「泳げるなんて聞いてなぁい!!」
いつの間にか、戦車のあった場所まで戻ってきていた。
蜘蛛がどうなったかはわからない。尤も、みぞれは確かめたくもないのだったが。
「ここまでくればもう大丈夫……」
そこまで言いかけたのだが。森の奥から何か物音が近づいてくる。
「今度は何が……っ」
ちふりは絶句してしまった。
物音の主は、四足歩行にも関わらず、体高が木の高さほどもある巨大なトカゲだったのだから。
トカゲは明後日の方向を向き、まだ二人には気づいていない様子だ。
しかし、それを見つめる二人はもう限界だった。
「はっ、あっ………」
みぞれは顔がこわばり、無意識に速射砲を構える。手が震える。
彼女は今までいくつかの戦場を経験してきたが、今この時が今までで一番恐怖を覚えた瞬間に違いなかった。
速射砲が火を吹き、巨大なトカゲに命中する。
……命中したのだが、あまりにも気の抜けた命中音がするに留まった。トカゲの体表には、まるで砂利を足の裏で踏んだかのような小さな凹みしかできていない。
「ダメ、まるで効いてない……!」
トカゲは二人に気づいたようで、ヌッと方向転換する。方向転換に際して、巨大な尻尾が木々を薙ぎ倒し、戦車をブリキの玩具のように吹き飛ばしてしまった。
がらんがらんと音を立てながら転がっていく戦車を見て血の気が引く二人。
「早く!逃げましょう!」
砂浜を駆け出し、水上へ出ようとする二人。幸いトカゲの歩みは遅かったが、その巨体ゆえ一歩が大きく、速い。
とはいえ二人のほうがわずかに速く、二人は水上航行に移行した。
「海の上へ出てしまえばこっちのもの!」
そう思ったのも束の間。トカゲはざぶざぶと海の中へ入って追いかけてくる。
巨大な尾を使った泳ぎは陸上より遥かに速い。
「泳げるなんて聞いてなぁい!!」
「……あれあれ。おまけ付きですか。仕方ありませんね」
双眼鏡を覗き二人を発見したもちゆき。
「後始末が面倒なんですが、そうも言っていられませんし」
もちゆきのアスロック・ランチャーが旋回し、蓋が開く。
「人間を連れてこなくて正解でしたよ」
ランチャーからロケット弾が発射される。もちゆきは再び双眼鏡を覗き、弾着観測をする。
放たれた弾は大トカゲに命中、かと思いきや、なんと開いた口に飛び込み、飲み込まれてしまう。
「あらら」
想定外だったようだが、特に慌てる様子のないもちゆき。
「まぁいいです。薬は打つより飲むのに限りますよ」
少しして、トカゲの動きが止まる。無線が入ってくる。
「今の、もちゆきちゃんがやってくれたんですか!?」
「……ええ。お二人とも、早くこちらへ」
双眼鏡を覗き二人を発見したもちゆき。
「後始末が面倒なんですが、そうも言っていられませんし」
もちゆきのアスロック・ランチャーが旋回し、蓋が開く。
「人間を連れてこなくて正解でしたよ」
ランチャーからロケット弾が発射される。もちゆきは再び双眼鏡を覗き、弾着観測をする。
放たれた弾は大トカゲに命中、かと思いきや、なんと開いた口に飛び込み、飲み込まれてしまう。
「あらら」
想定外だったようだが、特に慌てる様子のないもちゆき。
「まぁいいです。薬は打つより飲むのに限りますよ」
少しして、トカゲの動きが止まる。無線が入ってくる。
「今の、もちゆきちゃんがやってくれたんですか!?」
「……ええ。お二人とも、早くこちらへ」
「助かりました……けど、あれは一体……?」
「あれは旧日本軍のものです」
「あの大トカゲが!?」
「えっと、あれ以外にもクモとかカマキリとかも見たんですけど」
「ええ、それらもです。ちょっと、想定より育ち過ぎてしまったようですが」
「育ち過ぎ……?」
「ええ。なので、私達はようやく後始末をしに来たということです。あ、ちょっと屈んでてください」
もちゆきは再びアスロックランチャーを旋回させ、ロケット弾を発射する。今度は島の中央部へ向かって飛んでいく。
「設置していただいた観測機器は、誘導装置も兼ねてます。完璧な仕事でしたよ、先輩方」
見えなくなったかと思うと、一瞬空が強烈な光に包まれ、直後に島を呑み込むほどの巨大な火柱が立った。
「もちゆきちゃん!これって!」
「これですか?TPex(テルミットプラス・エクストラ)です。先輩方は、TP爆弾というものを使っていたと聞いていますが。あれの強化型ですよ」
「そんなものが……でもどうして」
「奴らは無性生殖で増えるそうです。島ごと焼き尽くす必要がありました。あの大トカゲの飲み込んだ"GUSOH"も焼却処理できて一石二鳥ですね」
「GUSOH……後生!?あの化学兵器の!?」
「米軍が接収したものを供与してもらっていたのです。米海軍はこの近辺の掃海作業で既に多数の犠牲が出ていましたから」
もちゆきは二人の方へ向き直し、続ける。
「日本人の作ったものの後始末は、日本人がやれってことです」
愕然とする二人。何かを言おうとしても、言葉が出てこない。
「先輩方。あれらは消し去らねばならないものですが、忘れ去ってはならないものです」
「…………」
「こんなものが、あといくつあるのでしょうね?さぁ、帰りましょうか、先輩方」
もちゆきの背後の火柱がようやく収まる。後には、焼け爛れた荒れ地だけが残っていた。
(おわり)
「あれは旧日本軍のものです」
「あの大トカゲが!?」
「えっと、あれ以外にもクモとかカマキリとかも見たんですけど」
「ええ、それらもです。ちょっと、想定より育ち過ぎてしまったようですが」
「育ち過ぎ……?」
「ええ。なので、私達はようやく後始末をしに来たということです。あ、ちょっと屈んでてください」
もちゆきは再びアスロックランチャーを旋回させ、ロケット弾を発射する。今度は島の中央部へ向かって飛んでいく。
「設置していただいた観測機器は、誘導装置も兼ねてます。完璧な仕事でしたよ、先輩方」
見えなくなったかと思うと、一瞬空が強烈な光に包まれ、直後に島を呑み込むほどの巨大な火柱が立った。
「もちゆきちゃん!これって!」
「これですか?TPex(テルミットプラス・エクストラ)です。先輩方は、TP爆弾というものを使っていたと聞いていますが。あれの強化型ですよ」
「そんなものが……でもどうして」
「奴らは無性生殖で増えるそうです。島ごと焼き尽くす必要がありました。あの大トカゲの飲み込んだ"GUSOH"も焼却処理できて一石二鳥ですね」
「GUSOH……後生!?あの化学兵器の!?」
「米軍が接収したものを供与してもらっていたのです。米海軍はこの近辺の掃海作業で既に多数の犠牲が出ていましたから」
もちゆきは二人の方へ向き直し、続ける。
「日本人の作ったものの後始末は、日本人がやれってことです」
愕然とする二人。何かを言おうとしても、言葉が出てこない。
「先輩方。あれらは消し去らねばならないものですが、忘れ去ってはならないものです」
「…………」
「こんなものが、あといくつあるのでしょうね?さぁ、帰りましょうか、先輩方」
もちゆきの背後の火柱がようやく収まる。後には、焼け爛れた荒れ地だけが残っていた。
(おわり)