私の最後の任務とその後の話が聞きたいんだっけ?酔狂なヒトも居たもんだわね。
ま、良いわ。減るもんじゃないし聞かせてあげる。
そう、44年の秋。貴官なら知ってるはずよ、知らないとは言わせない。
私だって貴官のことは調べておいたんだから。
……っと、私の話だったわね、失礼しましたっと。
はるばる日本から特殊兵器を積んだ船団がやってくるから、連合軍をなるべく航路から遠ざけろ。
シンプルな任務。ええ、私はずーっとそういうことばっかりやってきたの。
ヨソの列強連中が莫大な予算と人員を投じてる中で、私達の海軍は歪んだ発達を遂げてしまってた。
お金も技術も無かったワケじゃないんだけど、経験と、あと……タテ割りがよくなかったかな?
あんまりその辺のコト覚えてるワケじゃないんだけどね。
そういうわけで、どうしても守らないといけないフネがいくつかあったの。
一番大切にされてたのは、そうね、潜水母艦。
通商破壊でのUボートの活躍はご存知だと思うけど、もちろんそれを支えるのが彼ら彼女らだったの。
潜水艦ちゃんたちに洋上補給を行える手段……ってのは、貴官に説明するまでも無いわね。
それでね、我が国最大の潜水母艦がウンシュトルトさん。彼女のことだってもちろん、知ってるよね?
なんせ日本からやってきた元客船だもんね。まぁ、私が進水する前の事だからこの目で見たワケじゃないけど。
ともかく、彼女の護衛は手厚かったのよ。高速戦艦一隻に重巡まで従えて。まるでお姫様みたいな待遇。
あ、私は同伴してないよ。私の役目は斥候、そしてあわよくば機雷をバラ撒いて敵の侵入を妨害すること。
そ、だから、守る相手が違うだけ。潜水母艦ご一行様か、日本から来るって子達かの違いしか無かった。
だからあの日も、いつも通りにやるつもりだったんだけどさー。やらかしたよね。
既に連合軍の連中は航路上に居たんだ。私はその中に一隻、突っ込んじゃったワケ。
凄い陣容だったんだから。なんか馬鹿みたいにデカい空母に航空戦艦に、たくさんの軽巡に。
でもね、私脚だけは速かったからさ、もうめちゃくちゃに奴らの隊形の内側を走りまくってやったのさ。
連中も同士討ちが怖いからか撃ってこなくってさ、楽しかったよ。
散々引っ掻き回して煽りまくったから、航路と反対側に脱出して陽動してやろうと思ったの。
で、私はロケットモーターに点火して、一気に速度を上げるつもりだった。
うん、ちゃんと点火したよ。四基いっぺんに。たぶんこれがよくなかったんだね。
50ノットを超えたあたりからさ、艤装がミシミシ言い出して。ヤバッと思った次の瞬間にはバラバラ!
で、海に放り出されちゃった。それも敵の目の前で!ウケるでしょ。
もう死んだなって思った。言っとくけど私幽霊じゃないよ、まだ続くから。
ま、わかるよね。艤装を失って、結局フネとしての私は死んだも同然。そんな状態で敵前で放り出されりゃ捕虜よ捕虜。
ライミーどもにとっ捕まって、英本土の捕虜収容所送りだったワケ。
私は女性型だったから扱いはまだ良かったよ、これで男性型だったらどうなってたか。
それでね、退屈な毎日を過ごしてたの。気付いたらドイツも戦争に負けちゃってた。
それからちょっとしたらさ、手紙が来たのよ。鹵獲艦の通訳と教育役をしてみないかって。
なんのこっちゃ、って思ったけど。収容所暮らしよりはマシよねってことで、請け負ったのよ。
でさ、差出人に会ってみたら、そいつは潜水艦の女だった。ますますわけがわからない。
どっかで会ったことある?って訊いてもヘラヘラしてるし、本題に入ったの。
そしたら後ろからちんまい子が出てきてさ。そいつが鹵獲艦だって言うのさ。
いやこんなフネ私は見たことも聞いたことも無いって言ったんだけど、そうでしょうねーってニヤニヤするばっかり。
諦めて話しかけてみたら、確かにドイツ語を話したんだ。自分は重巡洋艦だって言ってた。
こんな小さな重巡洋艦が居るもんか、って言ったらむすっとしちゃってさ。こりゃこの先大変だーって思ったね。
でもそんな様子を見て潜水艦の女は表情を緩ませて、あなたになら任せられそうねって。やっぱりわけわかんない。
そんなこんなでその潜水艦女と、ちんまい重巡との奇妙な生活が始まったのよ。
語学の先生みたいに、英語を教える毎日。連合軍を煽り散らすために覚えた英語がこんなことに役立つなんてね。
気付けば太平洋まで連れてこられちゃってた。二人が出かけている間、もうフネじゃない私は香港でお留守番。
立場もドイツ系英国人ってことになってたよ。あの潜水艦女の仕業だったのかな?
結局、戦争が終わるまでずっと香港に居たの。終わったら、また英本土に帰ってきて、共同生活。
潜水艦女は相変わらず軍に居たから、ちんまいのと一緒に居る時間は増えたさ。すごい懐かれた。
んで、あいつが軍をやめると、日本に行くとか言い出してさ。面白そうだし着いてきて、それで今ココに居るワケね。
ん、今住居は別なのよ。私は一人暮らし。でも定期的に会ってるよ。あいつらと居ると楽しいしさ。
………えっ、うん。私の話はこれで終わりよ?貴官から手紙が来たから、ここに居ることは言うまでもないし。
ちょ、ちょっと待ってよ、大した収穫が無かった?そんな殺生な~。
(おわり)
ま、良いわ。減るもんじゃないし聞かせてあげる。
そう、44年の秋。貴官なら知ってるはずよ、知らないとは言わせない。
私だって貴官のことは調べておいたんだから。
……っと、私の話だったわね、失礼しましたっと。
はるばる日本から特殊兵器を積んだ船団がやってくるから、連合軍をなるべく航路から遠ざけろ。
シンプルな任務。ええ、私はずーっとそういうことばっかりやってきたの。
ヨソの列強連中が莫大な予算と人員を投じてる中で、私達の海軍は歪んだ発達を遂げてしまってた。
お金も技術も無かったワケじゃないんだけど、経験と、あと……タテ割りがよくなかったかな?
あんまりその辺のコト覚えてるワケじゃないんだけどね。
そういうわけで、どうしても守らないといけないフネがいくつかあったの。
一番大切にされてたのは、そうね、潜水母艦。
通商破壊でのUボートの活躍はご存知だと思うけど、もちろんそれを支えるのが彼ら彼女らだったの。
潜水艦ちゃんたちに洋上補給を行える手段……ってのは、貴官に説明するまでも無いわね。
それでね、我が国最大の潜水母艦がウンシュトルトさん。彼女のことだってもちろん、知ってるよね?
なんせ日本からやってきた元客船だもんね。まぁ、私が進水する前の事だからこの目で見たワケじゃないけど。
ともかく、彼女の護衛は手厚かったのよ。高速戦艦一隻に重巡まで従えて。まるでお姫様みたいな待遇。
あ、私は同伴してないよ。私の役目は斥候、そしてあわよくば機雷をバラ撒いて敵の侵入を妨害すること。
そ、だから、守る相手が違うだけ。潜水母艦ご一行様か、日本から来るって子達かの違いしか無かった。
だからあの日も、いつも通りにやるつもりだったんだけどさー。やらかしたよね。
既に連合軍の連中は航路上に居たんだ。私はその中に一隻、突っ込んじゃったワケ。
凄い陣容だったんだから。なんか馬鹿みたいにデカい空母に航空戦艦に、たくさんの軽巡に。
でもね、私脚だけは速かったからさ、もうめちゃくちゃに奴らの隊形の内側を走りまくってやったのさ。
連中も同士討ちが怖いからか撃ってこなくってさ、楽しかったよ。
散々引っ掻き回して煽りまくったから、航路と反対側に脱出して陽動してやろうと思ったの。
で、私はロケットモーターに点火して、一気に速度を上げるつもりだった。
うん、ちゃんと点火したよ。四基いっぺんに。たぶんこれがよくなかったんだね。
50ノットを超えたあたりからさ、艤装がミシミシ言い出して。ヤバッと思った次の瞬間にはバラバラ!
で、海に放り出されちゃった。それも敵の目の前で!ウケるでしょ。
もう死んだなって思った。言っとくけど私幽霊じゃないよ、まだ続くから。
ま、わかるよね。艤装を失って、結局フネとしての私は死んだも同然。そんな状態で敵前で放り出されりゃ捕虜よ捕虜。
ライミーどもにとっ捕まって、英本土の捕虜収容所送りだったワケ。
私は女性型だったから扱いはまだ良かったよ、これで男性型だったらどうなってたか。
それでね、退屈な毎日を過ごしてたの。気付いたらドイツも戦争に負けちゃってた。
それからちょっとしたらさ、手紙が来たのよ。鹵獲艦の通訳と教育役をしてみないかって。
なんのこっちゃ、って思ったけど。収容所暮らしよりはマシよねってことで、請け負ったのよ。
でさ、差出人に会ってみたら、そいつは潜水艦の女だった。ますますわけがわからない。
どっかで会ったことある?って訊いてもヘラヘラしてるし、本題に入ったの。
そしたら後ろからちんまい子が出てきてさ。そいつが鹵獲艦だって言うのさ。
いやこんなフネ私は見たことも聞いたことも無いって言ったんだけど、そうでしょうねーってニヤニヤするばっかり。
諦めて話しかけてみたら、確かにドイツ語を話したんだ。自分は重巡洋艦だって言ってた。
こんな小さな重巡洋艦が居るもんか、って言ったらむすっとしちゃってさ。こりゃこの先大変だーって思ったね。
でもそんな様子を見て潜水艦の女は表情を緩ませて、あなたになら任せられそうねって。やっぱりわけわかんない。
そんなこんなでその潜水艦女と、ちんまい重巡との奇妙な生活が始まったのよ。
語学の先生みたいに、英語を教える毎日。連合軍を煽り散らすために覚えた英語がこんなことに役立つなんてね。
気付けば太平洋まで連れてこられちゃってた。二人が出かけている間、もうフネじゃない私は香港でお留守番。
立場もドイツ系英国人ってことになってたよ。あの潜水艦女の仕業だったのかな?
結局、戦争が終わるまでずっと香港に居たの。終わったら、また英本土に帰ってきて、共同生活。
潜水艦女は相変わらず軍に居たから、ちんまいのと一緒に居る時間は増えたさ。すごい懐かれた。
んで、あいつが軍をやめると、日本に行くとか言い出してさ。面白そうだし着いてきて、それで今ココに居るワケね。
ん、今住居は別なのよ。私は一人暮らし。でも定期的に会ってるよ。あいつらと居ると楽しいしさ。
………えっ、うん。私の話はこれで終わりよ?貴官から手紙が来たから、ここに居ることは言うまでもないし。
ちょ、ちょっと待ってよ、大した収穫が無かった?そんな殺生な~。
(おわり)