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「子供を産み育てやすいか」国際比較調査
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林道義のホームページ「寸評」平成18年4月29日
内閣府がまたまた毒を含んだ意識調査を発表した。「少子化対策の参考にするため」「子供を産み育てやすいか」など出産や育児について、日本、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデンで調査したのだそうである。それによると「子供を産み育てやすいか」と「育児の役割分担」に関して、日本・韓国と他の三国とでは正反対の結果を示したとされている。すなわち……
「子供を産み育てやすいか」に関しては、日本は「とてもそう思う」が9%、「どちらかと言えばそう思う」が39%、合わせて48%、韓国は両方合わせて 19%、スウェーデンは98%、アメリカは78%。また「さらに子供を増やしたいか」と聞いたところ、日本は「増やす」が43%で、「増やさない」が 53%、韓国も「増やさない」が半数を越えた。対するにスウェーデンとアメリカは「増やす」が約8割だった。
さて、これらの結果と密接に関係があると必ずされるであろう結果が、他方で出されている。すなわち「育児における役割分担」についての意識についても、日韓と他の三国では「違いが目立った」とされている。
日韓では「もっぱら妻が行う」と「主に妻が行う」を合わせると7割近くに達したのに対して、スウェーデンでは「妻も夫も同じように」が9割強で、米仏も半数を越えた。
「3歳までは保育所を利用せず、母親が世話をすべきだ」という意見に、日本は7割近く、韓国も8割以上が賛成したが、スウェーデンは反対が7割近くだった。
この結果を受けて、内閣府は「出生率の低い日韓と、高い米国、フランス、スウェーデンには、国民の意識そのものにも大きな違いがあることが分かった。今後の少子化対策に反映させていきたい」としているそうである。どうせ、日韓の国民の意識は「遅れている」から、「育児を夫婦半々でという方向に変えるべきだ」、そのために「父親の育児休暇をとらせる」方向に誘導すべきだ、という結論が出されるのであろう。まるで正反対の、間違った結論である。
日韓で「子供を産みたくない」「増やしたくない」と考えているのは、意識が遅れているせいではない。日韓の国民は育児に関して正しい考えを持っているのである。いや、正しいかどうかについては意見が分かれるかもしれないが、しかし例えば「3歳までは保育所を利用せず、母親が世話をすべきだ」という意見は、その国の文化に根ざしたものであり、尊重されるべき考え方である。国民の意識を尊重し、尊敬し、それに合った政策を打ち出すのが政治のあるべき姿であろう。内閣府の考え方は、国民の意識を軽蔑し、それを変えないと少子化が止まらないという、思い上がった思想と、根強い国民蔑視を基礎にしている。
スウェーデンで「子供を産みやすい」「増やしたい」と答える人の多いのは、政策と国民の意識とが一致しているからである。国民がしてほしいと思っている政策(共働きを前提にして保育所を完備する政策)を国が行っているからである。しかも、その意識とやらは、女性が男性を敵と見て対抗心を燃やすというスウェーデンの国民性による特殊な意識を基礎にしており、さらにフェミニズムの洗脳が成功した結果なのである。加えて高度福祉国家になったために税金が高くなり、夫婦共働きでないとやっていけなくなって、「仕事も育児・家事も半々に」とならざるをえなかったためである。
しかし日韓では、国は国民が願う政策をしていない。むしろ日本では逆のこと、逆のことをしてきたのである。すなわち家庭育児を多くの人が望んでいるのに、「子供を保育所に預けて働く」ことばかりを優先する政策を推し進め、家庭育児(専業主婦)を不利にする政策ばかり推進してきたのである。
日本の少子化は、まさしく国民の意識と国の政策との乖離の結果なのである。内閣府と猪口氏が進めようとしていることは、国の間違った政策に合わせて国民の意識を変えようとする傲慢な思想に基づいている。逆に、国民の意識に合わせて、つまり家庭育児を支援する方向で国の政策を考えるべきである。そうすれば、若い夫婦は喜んで子供を産むようになるであろう。
内閣府は、出生率だけに焦点を絞った調査をして、「少子化は役割分担意識という遅れた意識のせいだ」と暗示にかけるやり方をいつまで取るつもりなのか。こういうやり方を取れば取るほど、日本の出生率は低くなっていくだろう。国民の多数の気持ちと要望に反する政策だからである。
出生率との相関関係を調べてみるのなら、例えば「離婚率」「婚外子の率」「自殺率」「犯罪発生率」との関係を調べて公表したらどうか。これらの率はすべて「女性の社会進出の度合い」を示すGEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)と比例しているのである。スウェーデンをはじめとする西洋諸国は、こうした多大な犠牲を払って、かろうじて出生率の改善を勝ち取ったにすぎない。
男女の違いを否定するという、人間性に反した意識になってしまっている、きわめて特殊なスウェーデンという国を調査の対象に加えて、暗にそれを模範にせよと言わんばかりの意図的な調査で、日本の政策をミスリードしようという内閣府男女共同参画局は、国賊とも、獅子身中の虫とも言うべきである。そして、こんなくだらない調査に貴重な税金を無駄使いするとは、汚職に匹敵する許しがたい犯罪である。