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主よ人の望みの喜びよ -Jesus bleibet meine Freude-(第2回)
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響子先輩――最初は苗字だったのだが、本人の希望で下の名前で呼ぶようになった――は、一年生に色々とスカウトの手を伸ばしていたようだった。ただ、ギターなどの楽器を演奏できる者はなかなかいないので、探すのに苦労していたようだ。
そしてとうとう、その魔手は僕に伸びてきた。
「ねえ、君。なにか楽器できない? よかったら入らない? 軽音」
一目見て、自分と対極にありそうな性格の人だった。快活、人のよさそうな顔の造型、一つのことにひたむきなその姿勢――全てが僕にはないものだった。
それに負けたのかもしれない。僕は「一応、できますけど」と生返事を返した。
「なにできる?」と好奇心の塊のように迫ってくる先輩に、「……エレキを少々」と答えた。
「へぇ。エレキできるんだ。エレキって、ギターの方でしょ?」
僕は静かに頷いた。
「ちょうどいいね。ベースかギターを探してたから。で、どう? 軽音に入ってみない? 面白おかしさに関しては、お姉さんが保証するから」
「はあ…………」
僕は返事をするのも忘れて呆けていたが、その後、なぜかは知らないが、勝手に放課後の軽音楽部の活動を強制されてしまったのだった。
仕方がないので、放課後に約束通り軽音楽部の部室を訪ねることにした。帰り道にゲームセンターに寄ろうと思っていたが、その時くらいは我慢していた。なぜなら、強引な勧誘だったといえど、久し振りに興味の対象が目の前に浮かんだからだ。自身にも仔細に言葉にすることはできなかったが、響子先輩に少なからずの驚きを隠し切れなかったからかもしれない。
あれほどバイタリティ溢れる人が、傍から窺えば『根暗』としか取られないようなつまらない人間と、ごく普通に喋る人間とを分け隔てなく勧誘している様がどことなく新鮮だったからだ。
人間とは、優れた部分には目が及ばないものの、劣っている部分をすぐに嗅ぎ分ける嗅覚を持っているのだ。そういった部分を人間は嫌い、否定する。それが対人関係の別離に繋がる。
けれど、先輩は違った。そういうものを探る様子もなく、逆によい部分を凝視しようとする努力が見て取れた。無論、彼女にも人間関係上の好き嫌いはあるのだろうが、先輩が誰かを嫌うことがあっても、先輩を嫌う人はそういないように見える。人によっては『でしゃばり過ぎだよね、あの子』という非難もちらほらと聞かれたが、それはただの妬みであって、妬みを生んでいるのは劣等意識があるからであり、響子先輩の罪ではない。
でも、人間であればなにかを嫉妬して当然なのかもしれない。だからこそ対抗心が生まれ、そこに切磋琢磨が生じ、より高みに上っていくのかもしれない。
だけど、僕にはそんなものはなにもなかった。
渇きようがないくらい空っぽだった。
そしてとうとう、その魔手は僕に伸びてきた。
「ねえ、君。なにか楽器できない? よかったら入らない? 軽音」
一目見て、自分と対極にありそうな性格の人だった。快活、人のよさそうな顔の造型、一つのことにひたむきなその姿勢――全てが僕にはないものだった。
それに負けたのかもしれない。僕は「一応、できますけど」と生返事を返した。
「なにできる?」と好奇心の塊のように迫ってくる先輩に、「……エレキを少々」と答えた。
「へぇ。エレキできるんだ。エレキって、ギターの方でしょ?」
僕は静かに頷いた。
「ちょうどいいね。ベースかギターを探してたから。で、どう? 軽音に入ってみない? 面白おかしさに関しては、お姉さんが保証するから」
「はあ…………」
僕は返事をするのも忘れて呆けていたが、その後、なぜかは知らないが、勝手に放課後の軽音楽部の活動を強制されてしまったのだった。
仕方がないので、放課後に約束通り軽音楽部の部室を訪ねることにした。帰り道にゲームセンターに寄ろうと思っていたが、その時くらいは我慢していた。なぜなら、強引な勧誘だったといえど、久し振りに興味の対象が目の前に浮かんだからだ。自身にも仔細に言葉にすることはできなかったが、響子先輩に少なからずの驚きを隠し切れなかったからかもしれない。
あれほどバイタリティ溢れる人が、傍から窺えば『根暗』としか取られないようなつまらない人間と、ごく普通に喋る人間とを分け隔てなく勧誘している様がどことなく新鮮だったからだ。
人間とは、優れた部分には目が及ばないものの、劣っている部分をすぐに嗅ぎ分ける嗅覚を持っているのだ。そういった部分を人間は嫌い、否定する。それが対人関係の別離に繋がる。
けれど、先輩は違った。そういうものを探る様子もなく、逆によい部分を凝視しようとする努力が見て取れた。無論、彼女にも人間関係上の好き嫌いはあるのだろうが、先輩が誰かを嫌うことがあっても、先輩を嫌う人はそういないように見える。人によっては『でしゃばり過ぎだよね、あの子』という非難もちらほらと聞かれたが、それはただの妬みであって、妬みを生んでいるのは劣等意識があるからであり、響子先輩の罪ではない。
でも、人間であればなにかを嫉妬して当然なのかもしれない。だからこそ対抗心が生まれ、そこに切磋琢磨が生じ、より高みに上っていくのかもしれない。
だけど、僕にはそんなものはなにもなかった。
渇きようがないくらい空っぽだった。