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主よ人の望みの喜びよ -Jesus bleibet meine Freude-(第3回)

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 廊下を歩く。
 足取りは重い。乗り気はしない。でも足は動く。前に、前に、目的地に。
 そして、とある部室の前で足を止める。
 嘆息する。吐く息が重い、気が重い、体が重い……やることなすこと全てに重力と圧力が三倍増しになっているような気分。
「よっ、少年。来てくれたねぇ」
 部室の前でうつむき加減に棒立ちしていると、背後から声をかけられた。それは間違いなく、響子先輩と知れた。この高校に話をできる知り合いなどまだいない。ついでに、これまで記憶してきた人物の中でも、先輩は底抜けに明るかった。 響子先輩のあとについて部室に入ると、一〇人ほどのメンバーがおり、軽く会釈した。先輩によれば、ここにいるメンバーだけで三つほどのバンドが結成されているらしい。ただ、響子先輩のバンドだけギターかベースが不足していたらしい。響子先輩はベースもギターもできるらしく、新加入の戦力の好みによって変えるそうだ。なまじギターを嗜んでいるだけに、その事実には素直に感心させられた。
「わたしの貸してあげるから。勝手にチューニングしていいから」
 早速といわんばかりにエレキギターを持たされ、適当にコードを弾いてみろと彼らはのたまう。僕はコードなんてよく知らないし、そもそもが我流で、説明書通りの演奏などできる訳がなかった。
 溜め息をつきながらも、とりあえずなにかを弾かなければ始まりはしないし終わりもない。ギターを構える。
「ちょっと待った」
 響子先輩が制して来る。あぁ、やっぱりトーシロのギターなんて、構える段階から分かってしまうものなんだな……と、半ば愕然とした。
 でも、よく考えれば、先輩達は音楽が好きでバンドとかやってるんだ。なんとなくギターを弾いているだけの自分とは志が違い過ぎる。自分よりも上手い人がここには絶対いるはずだし、自分より下手な人がここにいるとは思えない・・・ が、響子先輩の質疑は、僕の予想にはないものだった。
「ひょっとして、左利き?」
「え? はあ、まあ。そうですけど」
だからなんだと言うのだろう? 左利きだと不便なことでもあるのだろうか?
「しまった……左利きは想定外だったな。それ用のギターは用意してないよ、さすがに」
 顔面を覆って己の失態を露にする響子先輩。僕は首をかしげ、そこで放った一言が、周囲をどよめきの渦に巻き込むとは、まったく考えていなかった。
「ギターって、右利き用とか左利き用とかあるんですか?」

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