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主よ人の望みの喜びよ -Jesus bleibet meine Freude-(第6回)
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rock
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「………………」
意外な重い言葉に、僕は真剣に軽音部に入るべきなのだろうかと迷い、押し黙っていると、響子先輩は突如話題を変えてきた。
「ねえ、なにか好きな曲ある? ジャンルは適当でいいから」
「……ロックが好きです。さっきのとかは特に」
「へえ。なかなかいい趣味してるね。ふーん、ハード系が好きなんだ……」
「えっと……浅山先輩は?」
「いいよ、下の名前で。呼び捨てにしてもらっても構わないから」
さすがにそれはまずいだろうと思い、苗字で呼んだのだが……この頃からか。先輩を下の名で呼ぶようになったのは。
「ええっと……そうだねぇ。どれが一番って断言はできないけど、思い出深い曲ならあるね。クラシックは聴く?」
僕は首を横に振って否定しながら、また新たな一面を垣間見た気がする。この人は、初対面の人間にここまで己の素を明かすのだろうか、とちょっと驚いたりもした。
「じゃ、知らないかな。Jesus bleibet meine Freude……『主よ人の望みの喜びよ』って曲。ピアノの曲でね。曲を自作してる時、詰まったりもするんだよね。そういう時にね、あの曲を聴くと凄く落ち着くの。CD、貸してあげよっか?」「……まあ、機会があれば」
ちょっとばかり強引な先導をする人だと思ったが、これまで僕をリードしてくれる人なんていなかった。どんな場所にいても、いつでも独りぼっちだった。けれど、今は響子先輩がいてくれるような気がする。独りぼっちでいたがゆえに、誰かが手を引いて先導してくれることに多大な感動を覚え、心を突き動かされたのかもしれない。
その後、響子先輩はビッグマックという強敵をいともたやすく胃の中に流し込み、まだ腹八分目も行ってないなー、とか言って笑ってた。僕も笑ってみた。引き攣ってたけど。
意外な重い言葉に、僕は真剣に軽音部に入るべきなのだろうかと迷い、押し黙っていると、響子先輩は突如話題を変えてきた。
「ねえ、なにか好きな曲ある? ジャンルは適当でいいから」
「……ロックが好きです。さっきのとかは特に」
「へえ。なかなかいい趣味してるね。ふーん、ハード系が好きなんだ……」
「えっと……浅山先輩は?」
「いいよ、下の名前で。呼び捨てにしてもらっても構わないから」
さすがにそれはまずいだろうと思い、苗字で呼んだのだが……この頃からか。先輩を下の名で呼ぶようになったのは。
「ええっと……そうだねぇ。どれが一番って断言はできないけど、思い出深い曲ならあるね。クラシックは聴く?」
僕は首を横に振って否定しながら、また新たな一面を垣間見た気がする。この人は、初対面の人間にここまで己の素を明かすのだろうか、とちょっと驚いたりもした。
「じゃ、知らないかな。Jesus bleibet meine Freude……『主よ人の望みの喜びよ』って曲。ピアノの曲でね。曲を自作してる時、詰まったりもするんだよね。そういう時にね、あの曲を聴くと凄く落ち着くの。CD、貸してあげよっか?」「……まあ、機会があれば」
ちょっとばかり強引な先導をする人だと思ったが、これまで僕をリードしてくれる人なんていなかった。どんな場所にいても、いつでも独りぼっちだった。けれど、今は響子先輩がいてくれるような気がする。独りぼっちでいたがゆえに、誰かが手を引いて先導してくれることに多大な感動を覚え、心を突き動かされたのかもしれない。
その後、響子先輩はビッグマックという強敵をいともたやすく胃の中に流し込み、まだ腹八分目も行ってないなー、とか言って笑ってた。僕も笑ってみた。引き攣ってたけど。
夜。自室。エレキギターのある二階の部屋。
友人から譲り受けた、ちょっと古いヤマハのギター。ピックを持ち、今日もヴァン・ヘイレンの曲をコピーしようとした。
「暗闇の爆撃機」。どうやっても弾けなかった。早弾きテクも相当に難しいのであるが、それ以上に、どうやったってフレットを担当する右手の指が届かない。この曲を演奏するには、どうやったって物理的に無理がある。
僕にとって、ヴァン・ヘイレンが個人名なのか、グループ名なのかも知らない。しかし、このギタリストがとにかく凄いことだけは悟っていた。いくらこなそうとしても弾けない曲。
これが僕の壁だ。響子先輩なら、この壁を壊す鍵を持っているだろうか? それを思うと、僕は試したくなった。自分の可能性を。そして・・・響子先輩が恐らく夢見ているであろう理想を。
友人から譲り受けた、ちょっと古いヤマハのギター。ピックを持ち、今日もヴァン・ヘイレンの曲をコピーしようとした。
「暗闇の爆撃機」。どうやっても弾けなかった。早弾きテクも相当に難しいのであるが、それ以上に、どうやったってフレットを担当する右手の指が届かない。この曲を演奏するには、どうやったって物理的に無理がある。
僕にとって、ヴァン・ヘイレンが個人名なのか、グループ名なのかも知らない。しかし、このギタリストがとにかく凄いことだけは悟っていた。いくらこなそうとしても弾けない曲。
これが僕の壁だ。響子先輩なら、この壁を壊す鍵を持っているだろうか? それを思うと、僕は試したくなった。自分の可能性を。そして・・・響子先輩が恐らく夢見ているであろう理想を。
翌日。僕は部室に入ると、響子先輩に先日の馳走になった礼と、ある決心を固めていた。そして、それはもう成されていた。多分、それが響子先輩の望むことであったのだと思う。僕はその背中を追っていこうと腹を括っていた。
「さっき、担任の先生に入部届を出してきました」
いつにも増して、響子先輩の表情が光り輝くように明るく、はしゃいでいたようだった。
「さっき、担任の先生に入部届を出してきました」
いつにも増して、響子先輩の表情が光り輝くように明るく、はしゃいでいたようだった。