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  • ジノーヴィーSSその2

vipac @Wiki

ジノーヴィーSSその2

最終更新:2009年03月26日 19:18

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 午前五時。
 目覚ましはなかったが、ジノーヴィーはその時刻きっかりに目を開けた。
 それから強化人間のマニュアル通りに、手足を軽く動かし、神経と骨格の調子を確認する。
 彼の手足は、今日も忠実に脳幹の命令を実行していた。
 手の握りに淀みはなく、膝の屈伸にも痺れはない。光ファイバーの神経は、手術から五年を経た今も快調だ。
 向こう十年はメンテナンスがいらない、というクレスト技術者の言葉は嘘でなかったらしい。
「……よし」
 呟くと、ジノーヴィーはベッドから下り、立ち上がった。
 起き抜けとは思えない、洗練された動きである。
 無論、立ちくらみもなければ、過度の眠気もない。
 意識はすでに冴え渡っていた。
(……睡眠も万全だ)
 順調な朝に、ジノーヴィーは満足げに鼻を鳴らした。
 それから、ぐるりと部屋を見渡してみる。
 ただでさえ狭苦しい部屋は、昨日運び込んだ荷物が散乱しているせいで、より一層狭く見えた。まともに床が見えている箇所など、ベッドと玄関を繋ぐ直線ぐらいである。
(……まぁ、全て必要なものだ。仕方があるまい)
 思い、ジノーヴィーは最後に玄関へ向かった。
 外の空気を吸うためである。
 不測の事態に備えるべく、寝るときも外出用の服を着ていた。仕立てのよい、落ち着いたデザインのGパンとシャツだ。
 これなら、外に出ても問題はあるまい。
 ただ、さすがにサングラスはつけておらず、素顔が丸見えだった。
 それ故、その辺のバッグから帽子を取りだし、目深に被る。目元が隠され、顔の判別がしにくくなった。
 また、ジノーヴィーは別のバックから、携帯ラジオも取り出した。
 アンテナのない、掌タイプだ。
 ジノーヴィーはそのスイッチを入れると、チャンネルを合わせ、胸のポケットにねじ込んだ。

「……情報が、基本だからな」
 そういった全ての作業を終えると、ジノーヴィーはドアを開けた。
 一四時間ぶりに、外へ出る。
 途端――息を呑んだ。
 蒼いのだ。地上を覆う、空が。
 まさしく『秋晴れ』という言葉に相応しい、雲一つないオーシャンブルー。
 それは呆気にとられるほどの、素晴らしい天気だった。
 見上げれば、そのまま吸い込まれてしまいそうである。
「……見事」
 知らず、賛辞を口にした。
 生まれて初めて、空を写真に撮りたいと思った。
 実際、子供の頃これを見ていたら――本気でその道に進んでいたかも知れない。
(……まぁ、今となっては遅いことだな)
 自嘲気味に笑っていると、庭の方に小鳥が飛んできた。
 チュンチュンさえずりながら、マンションの芝生をつついている。
 ふとその向こうに目をやると、道路の方では、すでに雑踏が生まれていた。
 廃れているといっても、ここは中心街である。やはり、五時でもそれなりの賑わいはあるらしい。
(……なんだ?)
 ジノーヴィーは、しばらくそうした『平和な日常』を眺めていたが――不意に、眉をひそめた。
 危機感、というほどのものではない。
 『違和感』だ。
 一見、素晴らしい平日の朝である。だが、何かが違う。何かがおかしい。
 そういった空気があるのだ。
 無論、ジノーヴィーはこの街について、まだ一日だ。
 だが戦場で培った勘が、何かを囁いている。
 そして――悪いことに、こういう勘は外れたことがない。
「……まずい」
 呟いた直後、ジノーヴィーははっと気づいた。
 目の前の道路、確かに人は通っている。

 だが、そのさらに向こうにある――線路。そこは、先程から一台も電車が通っていない。
 奇妙なことだった。向こうの線路は街の中心を通るローカル線であり、住民の足だ。
 昨日の、寂れた駅とは訳が違う。
 寂れていた方の駅は、主に『連絡駅』と呼ばれる、都市と都市とをつなぐ駅だ。
 対して、目の前にある線路は、住民の生活を支えるローカル線なのである。過疎化が進んでいるといっても、そこには一定数以上の列車が常に通っているはずだった。
 実際、昨日確認した時刻表では、そうなっていた。
 なのに、ラッシュに近いこの時刻、先程から一台も通らない。
 これは、あまりにも奇妙なことだった。
 無論、偶然かも知れない。ちょっとしたら、何事もなく電車がやってくるのかもしれない。
 しかし、四つもある線路を、一台も通らないというのは――。
 そういった違和感は、次で確信に変わった。
(そういえば……!)
 ジノーヴィーは、慌てて胸ポケットに手を入れた。
 そこから取りだしたのは、先程の携帯ラジオだ。
 そのONになったスイッチと、きちんと調整されたチャンネル、そして、それらに反して一言も喋らないスピーカーを確認する。
 念のため、携帯電話、無線機、そして腕に巻いた電波時計、それら諸々も見てみたが――これらも、残らず使用不能になっていた。
「やはり!」
 違和感が危機感とすり替わった。
 電車が通らない。ラジオが通じない。携帯電話や、電波時計も使えない。
 推察するに、恐らくありとあらゆる場所で、電波機器そのものがダメになっているのだろう。
 ラジオや携帯電話は言うに及ばず、この御時世では、一般電車も――軍用はともかく――電波を使ったリモートコントロールで動いている。その意味では、電車も電波機器の範疇だ。
 そして――こういう状況を引き起こすのは、一つしかない。
 磨き抜かれた経験と勘も、その答を支持していた。
 すなわち――電波妨害、『ECM』の発生だ。
「来たな……!」

 ジノーヴィーに、獰猛な笑みが宿った。
 ECMは電波機器全てをダメにする、強力な妨害装置だ。
 その威力は、ACやMTのミリタリー・チップの処理容量を持ってしてさえ、機能不全に陥らせるほどだ。
 電車やラジオなど、一溜まりもなく使用不能になってしまう。
(……だが、支給のラジオは、軍用品でなかったか? ……せめて、ノイズくらいは拾うはずだがな)
 怪訝に思った直後、部屋の中で甲高いコール音がした。
 通信機だ。
 ジノーヴィーは内部に駆け込み、叩きつけるように通信ボタンを押した。
「はい、こちら」
『ジノーヴィー、緊急事態だ!』
 ディグルトだった。だがその声には常の余裕がなく、逼迫感で満ちていた。
『すぐに、デュアルフェイスの所へ、向かうんだ!
計画は、ミスだった。クレストの完全な読み違えだ!
いいか、敵は、「下」にいたんだ! 我々の「下」に、最初から隠れていたんだ!
……情報不足だ! 情報不足だったということにさえ、我々は気づけなかった!
どうやって利益を得るのではなく、いかに被害を抑えるかを、考えるべきだった――!』
 そこで、声が大幅に乱れた。
 ジノーヴィーは目を剥いた。
 この高性能通信機が、電波障害の影響を受けているのだ。
 テロリストには度が過ぎた、ACにも積めない強力過ぎるECMだ。
『早く、デュアルフェイスへ! 時間――ない!
残念――が、電波障害が酷くて、こち――からは君の声が聞こえ――い!
今は聞こえていることを――祈る! 繰り返――』
 そこで、言葉がブツリと切れた。
 通信が途切れたのだ。
 通信機のスピーカーから、通信終了のブザーが虚しく響き出す。
(……どういうことだ?)
 ごくり、と喉が鳴った。
 テロリストが襲撃を開始したのは、間違いがない。
 だが、やり方が異常だ。ここまで強力なECMなど、聞いたことがない。企業が開発した最新型のものでも、ここまで強くはないはずだ。

「嫌な、感じだ」
 だが、止まっているわけにはいかなかった。
 レイヴンに怠慢は許されない。
 街の被害は、この際諦めるとしても――デュアルフェイスが無ければ、応戦さえ不可能だ。
 まずは下水道を通って、ガレージへ。そのために探すべきは、マンホールだ。
(確か、通りに一つあったはずだが……!)
 思い、駆けだそうとした瞬間だった。
 街に『演説』が響きわたったのは。
『諸君……!』
 腹に響く、大音量だった。
 それが、あらゆる場所のスピーカーから響き出す。それこそ、テレビやパソコンといった、スピーカーがあるもの全てが、この声を響かせていた。
 無論、ジノーヴィーのラジオも、通信機も同様だ。
 部屋の空気が、巨大な音にぶるぶると震えるのが分かる。
『我々は「楽園の灯火」である。高慢なる世から、人々を解き放ち――』
 そこまで聞いたところで、ジノーヴィーは身を翻した。
 ――目指すは、マンホール。
 ひどい胸騒ぎと、甘い闘争の香りがした。


     *


 再び、ジノーヴィーの真下にある――地下空間。
 昨日、テロリスト達が集結していたその場所が、本格的に活動を開始していた。
 壁が揺れるほどのエンジン音、その合間を縫って怒声が飛び交っている。耳を塞ぎたくなる騒がしさだが、当人であるテロリスト達は構いもせず、床をかけずり回って最後のチェックを済ませていた。
『我々「楽園の灯火」は――!』
 そんな中、『演説』が高く響く。
 しかし昨日とは違い、それに注意を払う者はいなかった。
 誰もが大声を交わしながら、ACの最終チェック、巨大四脚兵器の調整、資材の詰め込み、などの作業に徹している。
 しかし――そんな状況でも、壇上の演説者には気分を害した様子はなかった。
 むしろマイクに向かって喋りながら、そんな作業員達を満足げに見つめている。
 これは彼らが、演説の目的をきちんと弁えているからだった。
 そもそも、この演説は作業員に向かってのものではなく――地上の街に向けて、発信しているものなのだ。
 もとより作業員達が聞くものではないし、そもそもこんな忙しい状況下で、呑気に演説に耳を傾けている部下の方が問題だろう。
 であれば、聞き流されて不愉快になるはずもない。
 むしろ――演説する男は、作戦遂行に高ぶってでもいるのか、見る見る熱を上げていった。
『革命に犠牲はつきものだ。残念だが、この街のあなた方には、未来はない……!
理解して欲しい、とは言わない! だが約束しよう!
我々は、あなた方の屍を無駄にはしない! 必ず、必ず企業支配を打ち砕き、真に自由な世界へ登るための、礎としましょう!』
 暴論である。だが、その暴論に反論するものはいない。ここにいる全員は――例外が一人いるが――その理論への賛同者だし、聞かされている地上の人々には、反論する手だてもない。
 たった一人だけのステージで、迷彩服の男は、勝手な理論を高々と歌い上げていく。
 そんな中、天井から小さな爆発音が聞こえたが――よほど興奮しているのか、演説者はそれにさえ気づかなかった。

『我々の行動は、非難されるでしょう。蛮行の誹りは免れないでしょう!
ですが――我々は信じる! やがて歴史が、我々の正しさを証明することを!
企業の独裁世界に、民主制という花を咲かせるには、今しかないので――』
 そこまで言ったとき、突如マイクが取り上げられた。
 最後の「す」の音は、マイクに拾われることなく周囲の騒音にかき消される。
 聞き手達からみれば、通信自体が途切れたように見えるだろう。
「誰だ!」
 男は声を張り上げ、隣を見た。
 するとそこには――不気味な笑いを張り付けた、レイヴン『ハンマーヘッド』の姿があった。
 剣山のような髪型と、鮫のように尖った歯が、相変わらず異様だった。
「何の真似だ!」
 怒鳴る男に、ハンマーヘッドは取り上げたマイクで天井を示す。
「来たよ」
「何がだ」
「敵だよ。クレストだよ。
どうやら……見つかったみたいだね」
 眉をひそめる男だが、直後、二度目の爆音が響いた。
 上からだ。
 四方の壁が揺れ、天井から派手に塵が落ちてくる。
 彼らのすぐ側では、そびえる大型四脚兵器――ディアパルゾンが、衝撃に足を揺らしていた。
「……まさか……」
 ごくり、と喉を鳴らす男に、ハンマーヘッドはケタケタと笑った。
「そうだね。ここが、やっと見つかった!
クレストは、ようやく『地下ガレージのすぐ下に、テロリストが隠れてた』ってことに気づいたのさ!
行動を起こされる前に、連中は、爆弾で床を破って、こっちに来ようとしてる!」
 途端、男の顔から血の気が引いた。もはや、全て上手くいくも同然――そう考えていただけに、衝撃は大きいのだろう。
 その動揺は、ハンマーヘッドの声と共に、部下にまで伝わった。働いていたテロリスト達まで、徐々に足を止め始める。
 張りつめた時間が、流れた。
 誰もが動きを止め、目と目で相手の出方を伺っている。きっと誰もが、どうするべきか、決めかねているのだろう。
 しかし――時が一刻を争うのは確かだった。

 ハンマーヘッドは、奪い取ったマイクを口元まで持っていく。
 そのスイッチをONに戻し、音量を最大まで引き上げて――
『全員ディアパルゾンに乗れぇ!! 天井ブッ壊して敵がくるっぜぇ!!』
 腹まで響く大声に、空間全体が震撼した。
 そしてその直後、上から三度目の爆音が起こると、テロリスト達の方針は決定された。
 全員が馬型巨大兵器――ディアパルゾンへと走り込む。
 垂らされた縄ばしごから、続々と『馬で言う』胴体部分へ乗り込んでいく。
 その様子は、巣へ戻っていく蟻の姿を連想させた。
「……だが、街への演説がまだ終わってないぞ」
 そんな中、演説をしていた男――集団のボスはそう漏らしたが、ハンマーヘッドに見つめられ、慌ててディアパルゾンへ向かっていった。
 そういったやりとりの間も――いったいどういう積載をしているのか――ディアパルゾンは揺らぐことなく、テロリスト達を胴体に納めていく。
 ディアパルゾンは四脚型だが――ACの四脚とは違い、高い積載量を誇るようだ。すらりと伸びた馬のような足は、機動性と積載量の両立に、見事成功しているらしい。
「……さすがは、キサラギ」
 ひっそりと呟くと、ハンマーヘッドも自身のACに向かった。
 ディアパルゾンの足下に立つ、真っ白い逆関節ACだ。
 ディアパルゾンにとって、そのACは膝ぐらいまでの大きさだが――これでも、標準的なサイズより大きい。むしろ、ディアパルゾンが大きすぎるのだ。
 ハンマーヘッドはそんな愛機の足首に取り付くと、装甲をよじ登り始めた。ほどなくして、コクピットへの入り口がある、脇腹の辺りまで辿り着く。
 ハンマーヘッドは、そこの解放レバーを引いてハッチを開け、中に滑り込んだ。それと、テロリスト最後の一人がディアパルゾンに乗り込むのは、ほぼ同時だった。
 ガシュン、というハッチ密閉音が重なる。
 その直後――四度目の爆音が起こった。
 頑強な天井も耐えきれず、ついに崩落、無数の瓦礫が降り注いだ。
 まるで岩石の豪雨である。
 クレスト側のガレージと、テロリストの隠れ家、二つを隔てていた分厚い岩盤は、今や無数の破片となって下階に雪崩れ込んでいた。
 その大規模な崩落は、一分程では終わらなかった。二分が過ぎ、三分が過ぎ、四分が過ぎた頃――ようやく、瓦礫の落下が止まる。
 だがその時では、まだ黒煙と粉塵が立ちこめ、何も見えない。
 下階の照明は死んでいたが、無論、上階の天井照明はまだ健在だ。しかし、たったそれだけの明かりでは、とうてい視界を確保することなど不可能だ。
 どうしようもない闇の中で、時間だけが刻々と過ぎていく。

『……仕方がない』
 だがある時、そんな声がした。
 演説をしていた、ボスの声だ。
 瓦礫にでも埋もれているのか、その声は若干くぐもっている。
『ハンマーヘッド。これじゃ埒が明かない。ディアパルゾンは、「計画通り」地上に出る。
着いてこい』
『了解』
 不吉なやりとりに、新しい声が来た。
『何を言っている? おまえ達、何をするつもりだ?』
 テロリスト達の声でも、ハンマーヘッドの声でもない。これはクレストの雇った、ランカーレイヴン『ジギタリス』の声だった。
 ハンマーヘッドがくつくつと笑う。
『……レイヴンかい? 瓦礫を崩したのは、あんたかい?
床を壊して、いっしょに落ちてきたってわけか』
『応える義務はないな。が、仮に……「そうだ」と言ったら?』
『あんたが瓦礫を崩したのだとしたら、もう上にクレストの連中はいないね。
大方、地上にでも脱出したのかな?
どっちにしろ、あんた達が苦心して見つけた「地下ガレージ」の下に――テロリスト達がいた、っていうびっくりな仕掛けは、味わっていただけたようだがね?』
 これに、ジギタリスは応えなかった。
 ハンマーヘッドは構わず、続ける。
『まぁ、いいだろ。「同じこと」だしね。
……ディアパルゾン、早くこんな穴蔵は出よう。やってくれ』
 その言葉を合図に、暗闇の中で金属音が連鎖した。
 砲身が展開される音、マガジンに弾が込められる音。
 その一方、空間のあちこちで、色とりどりの光が――ENのチャージ光が輝き始めた。
『……砲撃で、天井を壊すつもりか? それで、地上に出るつもりか?』
 ジギタリスの言葉を、ハンマーヘッドは肯定した。
『うん』
『馬鹿な。何十メートル厚みがあると思って……!』
 今度は、ハンマーヘッドも応えなかった。

 だがしばらくすると、お決まりのケタケタとした笑いが来る。
『じきに分かるよ。そう、すぐに!
……お楽しみだよ、「ジギタリス」!』
 直後、閃光と轟音が炸裂した。


     *


 少年は、山にいた。
 今日は、学校がある日である。しかし、山には重要な用事があったのだ。それと比べれば、本日の授業など――今日の授業は、彼にとって興味の薄い『国語』と『家庭科』だけなのだ――毛ほどの価値もない。
 少年は、ゾーン・ゲームで街全体を支配することを、本気で目論んでいた。
 他の連中のように雰囲気を愉しむだけでは、到底彼の『野心』は満足しなかった。
 そしてその『支配』とは、この山であろうと例外ではない。立ち入り禁止の区域であろうが、少年にとっては領土とするべき場所なのだ。
 だから、その入念な下見をするべく、警備が薄くなる今日を見計らって、ここへやってきたのだった。
 もっとも――今は、昨日の出来事のせいで、ゲームそのものへの関心が薄れている。
 今日来たのも、純粋な下見と言うより、すでに立ててしまった計画への惰性、そして嫌いな授業をサボる口実、という側面が強かった。
 そしてそんな姿勢であったため、少年はその出来事を見たとき――本来の目的をいとも簡単に忘れてしまった。
「……なんだあれ」
 小山の頂で、少年が目を剥いた。
 彼の見つめる先では――地面に、商店街の地面に穴が開いていた。綺麗な円形である。少年は山の上にいるため、そういった細かい形もよく見えた。
 そして、その穴の中から――異様な物体が飛び出してくる。
 頭のない馬だ。
 そうとしか表現しようのない形だった。
 すらりと伸びた四本足に、胴体、そして首。頭があるべき位置には、代わりに数本のアンテナが設置されていた。
 何故か最低限の塗装さえされておらず、剥き出しの金属が、秋の陽光でメタリックに輝いている。
「なんだよ、あれ」
 少年は、思わず笑った。
 あまりに不格好な機械であり、笑わずにはいられなかったのだ。
 しかし――その機械が、四方八方から砲弾を飛ばし、レーザーを放ち、街を破壊し始めたときには、その笑顔は凍りついた。
 そしてそれは徐々に弛緩し、後には魂の抜けたような、『無表情』だけが残される。
(……なんだこれ……)

 茫然自失の体で、破壊を振りまく巨体を見つめた。
 だが、そんな中でも――ここにまで持ってきていた、汗拭き代わりの『スカーフ』。赤の地に、金の星がプリントされたその戦利品を、少年はぎゅっと握りしめていた。まるで、お守りであるかのように。
 そして――彼の瞳が、危険な輝きを帯びる。
 ジノーヴィーが見た、あのぎらぎらした獣のような眼光。
 強烈な『野心』を原料としたその光が、再び彼の目に灯った。
「なんだろ……」
 少年は、譫言《うわごと》のように呟いた。

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