ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

Cルート

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imari2|

[cm]
;;選択肢C『伊万里を愛している』
 伊万里とは違う。俺は幼いままだ。だから引きちぎることができる。うさぎの耳を。ごっそり引き抜くことができる。繊細な毛並みを。薄く笑みを浮かべたまま。[lr]
「……みずき」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=6 y=b m=9 t=1
 護符のように携帯を掲げると、氷結した言葉を放った。[lr]
「愛してる。だから――」[lr]
 淀みなく番号を入力した。一一○。後は発信ボタンさえ押せば、すべてが終わる。[lr]
「自首するんだ、みずき。……外でも、愛してるから」[lr]
;;みずき(制服 私服? 02,5B,09,00,00,00,M 片手胸に)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=9 y=b m=11 t=1
 呆けたように、携帯と俺の顔に視線を往復させるみずき。その瞳は潤んで霞み、見えていないのか虚ろだった。[pcm]
 やがてディスプレイが省エネ機能で真っ暗になる。舌打ちすると、俺はみずきを抱き寄せた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=8 e=9 y=b m=5 t=1 size=L
「んむっ!?」[lr]
 そのまま唇を合わせた。心地よさもなければ、充足感もない。ただ生暖かいだけだった。乾ききっていた。[lr]
;;みずき(制服 08,9B,04,01,00,00,M 片手胸に)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=8 e=9 y=b m=4 c=1 t=1 size=L
 しかし、みずきにとってはそうではなかったらしい。眼を大きく見張り、見る見るうちに頬を紅潮させた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=1 y=b m=10 c=1 t=1 size=L
「……ほんとうに?」[lr]
 接触していたのはあくまで数秒。夢か現実か確かめるように、みずきは唇を指でなぞった。[pcm]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=1 y=b m=11 c=1 t=1 size=L
「ほんとうに愛してくれる?」[lr]
「もちろんだ」[lr]
;;みずき(制服 02,2A,09,01,00,00,M 両手胸元) 1秒表示
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=2 y=b m=10 c=1 size=L
@textoff
@wait time=500
;;みずき(制服 02,4A,08,01,00,01,M 両手胸元) 1秒表示
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=4 y=a m=8 c=1 t=1 size=L
@wait time=500
;;みずき(制服 02,8A,06,01,00,02,M 両手胸元) 固定
;同場面中にハイライトon/off混合すると不自然になるから、一度目を閉じる
;演出的には正気に戻るって事で
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=2 e=1 y=a m=8 c=1 t=2 size=L
@texton
 間髪さえ入れずに答えを返す。きっぱりとした口調に、みずきの瞳にじわりと涙滴が浮かんだ。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=6 y=a m=10 c=1 t=2 size=L
「……そく」[lr]
 夜に溶ける儚い声音。それはまるで小学生の頃の。ソプラノが夜に広がり、しんと沁み渡った。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=1 y=a m=7 c=1 t=2 size=L
「約束、して」[lr]
 どこか舌っ足らずな発音で告げると、みずきは小指を差し出した。[lr]
「…………」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=6 y=a m=8 c=1 t=2 size=L
 俺はひとつ息をついてから、小指を絡めてやった。もう片方の手で、発信ボタンを押しながら。[pcm]
;;みずき消し

;;背景『作業小屋(昼バージョン)』。BGM『光の降る街』 ← BGM『k-03 恋音』に
@fadeoutbgm time=1500
@cl
@bg2 file="Lodge.jpg" time=2000
@bgm file="k03.ogg"

 衣食足りて礼を知る。俺が動いたのは正義のためではない。温もりを得るため、孤独を癒すため。そのために俺はみずきを捧げた。[lr]
 俺が必要としていたのはみずきであって、伊万里ではなかった。だから庇うつもりはなかったし、咎めるつもりもなかった。[lr]
 どうでもよかった。[lr]
 とはいえ、やはりアレはやりすぎたかもしれない。みずきが警察に護送されてゆく際、伊万里と抱き合っていたのを見せてしまったのは。[pcm]
;;みずき (06,3A,09,00,00,00,M 片手肩に)一瞬
;;みずき (06,3B,09,00,00,00,M 片手肩に)一瞬で消し
@mizu pos=c wear=u pose=1 b=6 e=3 y=a m=9
@mizu pos=c wear=u pose=1 b=6 e=3 y=b m=9
@cl
 スイッチを切られたようにふっと鳶色の瞳から光が消えた。裏切られたせいなのか、捕まったせいなのか。俺は後者だと信じている。[lr]
 愛されたいのに、愛されそうになると逃げてしまう。まさしく俺がそうだった。[lr]
 みずきが愛を示したところで、俺は怖がってしまうだけ。すがりつかれたところで振り払ってしまう。孤独に怯えて温もりを欲し、いざとなると牙を剥く。[lr]
 この上なく酷い思考だというのは分かっている。けれど、これが俺なのだ。[pcm]
 『人』という漢字の成り立ちから、人は支えあって生きているのだという人がいる。それは正しくて間違っている。長い払いは短い払いに支えられているだけ。短い払いは長い払いを支えているだけ。適材適所が組み合わさって、初めて二人そろって立つことができる。[lr]
 だが、もし払いが両方とも短ければ? 支えあうことは決してできない。互いの下へ潜りあい、そして倒れてしまうだろう。[lr]
;;伊万里(03,5A,04,00,00,01,M)
@imar pos=c wear=u pose=1 b=3 e=5 y=a m=4 t=1 size=L
「みのりん……」[lr]
 静謐にか細い悲鳴がこだまする。腕の中で伊万里は震えていた。[lr]
 間違ってはいない、はずだ。俺にとって大切なのは伊万里なのだから。[pcm]
;;伊万里消し

;;背景『無機質かつ殺風景な部屋』。BGMはなし。 ← BGM 『28年』に
;背景blackで押し切る
@fadeoutbgm time=1500
@cl
@bg file="black.jpg" time=1500
@wait time=1000
;@bg2 file="牢屋.jpg" time=2000
@bgm file="28years.ogg"

 仄暗い部屋はむしろ整然としていて生気がない。静謐が響いていた。何も物音はないはずなのに、耳鳴りがする。息づかいの音さえ聞こえてしまう無音は、むしろこの上ない重圧だった。[lr]
 そこにかすかなノイズが混じり始める。[pcm]
;;SE『何かを引っかく音』
 ……かり……かり……。……かり……かり。かり……かり、かり、かり、かりかかりかりかりかりかかりかかかかかかか……。[lr]
[nowait][r][endnowait]
 爪が壁を引っかいていた。想い人に文句でも言うように、彼女は壁を引っかき続けた。そしてうずくまると、そのままじっと動かない。耳元に手を添え、何かに耳を澄ませている。[lr]
 いつもはそれをじっと続けたまま、決して動かない。しかし、今日の彼女は違った。ぽつりと単語をひとつ漏らした。[pcm]
「みのる」[lr]
;;BGM『兆候』← BGM『28年』でこの場面を統一
[nowait][r][endnowait]
 その響きからだけでも、彼女は想い人の姿を思い描くことができる。張り裂けそうな胸のうちには、届かない愛がぱんぱんに詰まっている。[lr]
 愛しい愛しい想い人。彼が口を開こうとしている。彼女への愛を囁くために。幻影に手さえ伸ばしかけて。[lr]
;;伊万里(02,1A,03,00,00,00,M)を一瞬だけ表示してブラックアウト。
@imar pos=c wear=u pose=1 b=2 e=1 y=a m=3
@cl
 凍った悲鳴とともに、彼女は夜の海に沈んだ。[pcm]

;;BGM『13と1の誓い』
@fadeoutbgm time=1500
@wait time=2000
@bgm file="13_1.ogg"
[nowait][r][r][r][r][r][r]  [endnowait]
 何もかも、わざとではなかった。
@wait time=1000
[nowait][r][r]         [endnowait]
 それだけは嘘偽りなき真実だった。[pcm]
;;背景『通学路』
@bg file="bg088.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=700
[nowait][r][r][r][r][r][r][endnowait]
 二月十四日。彼女が想い人との登校を諦めてまで早々と学校へ向かったのは、ある目的のためだった。[pcm]
;;背景『昇降口』
@bg2 file="syoukouguti.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=700
 下駄箱を漁り、可愛らしい包みを引っ張り出しては秘密裏に処分する。誰のものかは知らない。知る必要もない。ただ、想い人の心に自分がなくなり、省みられなくなる。それが彼女には耐えがたかった。[lr]
 帰りもそうだった。素早く下駄箱に向かい、誰かが入れていた置き手紙を処分した。[lr]
 想い人が予想外に早く来て焦ったが、明るい振る舞いに隠すことができた。[lr]
@bg file="black.jpg" time=1000
 けれど、どんな綿密に行動しても、必ず綻びは生じるもの。[pcm]
;;背景『雪景色』、伊万里(01,1A,04,00,00,00,M)← UPしたのと同じ表情ですが変更したなら、そちらに合わせてください
@bg file="white.jpg"
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=3a m=4 c=1]
「みのりんっ!」[lr]
 背後からの親友の声に、彼女は頭が真っ白になった。[lr]
 想い人は、迷っていた。そのことに安堵するとともに、孤独という名の刃が突きつけられるのを感じた。もし、もし彼が受け入れてしまったら。[lr]
 彼が拒めばそれでよし。けれど、そうでなければすべてを失うことになる。[lr]
 だから彼の手を引いてしまった。こちら側に引き寄せようとしてしまった。[lr]
 当然、体はとっさに抗おうとする。想い人は向こう側へと行ってしまった。[pcm]
 そして、それが意図した行動であったかのように――事実、そうであったのかもしれないが、彼女はそう思いたくなかった――彼は彼女を袖に振った。[lr]
「あ……」[lr]
 彼女の口を衝いて出た悲鳴を聞き流して。[pcm]
;;演出でテレビを切る感じで一瞬だけブラックアウト。

@fadeoutbgm time=1000
@cl
@playse storage="others_07_putu.ogg"
@bg file="black.jpg" rule="上下から中央へ" time=100
@wb

 そこからは記憶のフィルムが乱れている。細雪で白くけぶった中に想い人の受け取ったオレンジの包みを見て、駆け去ってゆく親友の背中を見て。[lr]
 そして、茫然と立ちすくんでいると、近寄ってくる小柄な影を見た。[lr]

;;BGM OUT 2秒
;;ひめ(07,8A,09,00,00,00,M)。
;;BGM『雪景色』
@bg file="soto.jpg" time=700
@bgm file="yuki.ogg"

@hime pos=c wear=u pose=1 b=7 e=8 y=a m=9
「ちょっといいかな~?」[lr]
 口調は軽薄だが、目は笑っていない。有無を言わせない力で腕を掴まれた。[pcm]

;;背景『校舎裏』 ← 一緒に移動してるから立ち絵消さずに背景だけ変化
@cl
@bg2 file="kousyaura.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=700

 校舎裏まで連れてくると、ひめは彼女を突き飛ばした。[lr]
@hime pos=c wear=u pose=1 b=7 e=8 y=a m=9
「見てたよ」[lr]
「ん……」[lr]
 雪に尻餅をついたまま、彼女は戸惑うよりむしろうろたえた。口癖なのだが、気のない返事にとられたのではないか。そんな些細なことさえ気にしてしまうくらいにひめの声音は底冷えしていた。[lr]
@hime pos=c wear=u pose=1 b=7 e=7 y=a m=7
「さすがにやりすぎだよね」[lr]
「う、うん……」[lr]
 今度こそ、返事はだいじょうぶのはず。彼女にできたのは、かくかくと首を縦に振ることだけだった。[pcm]
;;ひめ(07,7A,07,00,00,00,M)。
;;BGM『crazeforyou』 曲割り込みで突然crazeforyouに
@stopbgm
@bgm file="c4u.ogg"
@hime pos=c wear=u pose=1 b=7 e=8 y=a m=7
「人の思いを踏みにじって。よくあれだけのことができるよね」[lr]
 ひめはあくまで見下している。彼女はようやくすべてを悟った。[lr]
 ひめが見ていたと言うのは、想い人への告白ではない。彼女が手紙を処分する様子……。[lr]
@hime pos=c wear=u pose=1 b=7 e=8 y=a m=9
「ひめ、もう我慢しないから」[lr]
 今思えば、ひめも狂っていたのだろう。常とは違い、二人の関係は荒涼と乾ききっていた。[lr]
 バラす。冷然と告げ、しかし泣きそうになりながら、ひめは背中を向けた。[pcm]
;;ひめ(04,7A,09,00,00,00,M)一瞬表示
;;ひめ消し。
@hime pos=c wear=u pose=1 b=9 e=7 y=a m=9
@cl
;;背景『img0012』一瞬だけ 0.2秒くらいで元に戻し 【避難所>>178のリンク先、効果背景>魔法、SF、特殊効果>2P目「よみがえる記憶」を使用】
;;SE『衝撃音』← 「ゴッ」って鈍い感じ? 音量は大きめの方が○ 出来るだけ背景とひめoff、SE同時に(若干SE早めじゃないと駄目かも)
@playse storage="bosu21.ogg"
@bg file="img0012.jpg" time=100
@bg file="kousyaura.jpg" time=100
@ws
@playse storage="bosu36.ogg"
@ws
@playse storage="bosu31.ogg"
@bg file="red.jpg" time=1000
@ws
@playse storage="bosu32.ogg"
@ws
@playse storage="bosu03.ogg"
@ws
@bg file="kousyaura.jpg" time=700
 次の瞬間には、彼女は血塗れの石を握りしめていた。足元には、血を流した小さなモノが転がっていた。[lr]
 冷静ではなかったはずだ。しかし、対応は冷静かつ極めて迅速だった。[lr]
 まず決めなければならなかったのは、自首するか否か。重い重い判断だったはずだが、彼女は即断した。捕まれば、彼と離れ離れになる。それだけは絶対にイヤだった。[pcm]
 指針は即決、次なる悩みはどうすれば捕まらずに済むかということだった。[lr]
 殺人事件となれば、警察も大々的に動くだろう。だが、ただの失踪事件なら。死体も凶器も見つからなければ。[lr]
@fadeoutbgm time=2000
 彼女は誂え向きな場所を知っていた。遠い夏休みの夜、彼と一夜を明かした思い出の場所。残念ながら二人っきりではなかったものの、それでも過ごした時間の密度は充分だった。[pcm]
;;BGM OUT 2秒
;;BGM『13と1の誓い』
 樹を切り出す作業員のための小屋だ。だが、今となっては使用されていないはず。闇に一筋の黎明を見出した彼女だったが、目下の問題はなんら解決されていなかった。[lr]
 正直、触れるのさえイヤだった。あくまで生理的な嫌悪は隠せない。けれど、すべては彼とともに歩むため。震える腕を叱咤し、彼女は死体の腕を掴んだ。皮脂と汗こそまだあったものの、硬直が既に始まっていた。[r]
 既に温もりがうせ始めているのは、周りの寒気のせいか、彼女の思考が自分で考える以上に長かったせいか。他人の吐瀉物に触れるときでさえ、こうもためらいはしまい――想い人のそれであれば、彼女は喜んで頬擦りさえするだろうが。[lr]
 引きつった形相が雪に埋もれてから、ようやく彼女は死体に触れた。懐から携帯を奪い、茂みへと押し込んだ。そして降り積もる雪を掻き集めて、覆い隠した。[pcm]
;;背景『山道(雪が降ってるとなおベター)』。
@bg2 file="trail_n.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1500
@snowinit forevisible=true
@bgm file="13_1.ogg"
 そしてダッシュ。雪道に自慢のMTBを駆った。小屋を整理してスペースを拵えると、リヤカーを準備した。[lr]
 頬に違和感を覚えてこすってみると、涙が凍って肌に張りついていた。それを確かめてから、初めてようやくハァと溜め息が出た。[lr]
 やっぱり止めよう、そんな考えが出てこなかったわけではない。しかし、どうしてもそれはできなかった。――彼と離れ離れになってしまうから。[pcm]
;;背景『携帯のズーム』、SE『携帯の着信メロディ』。
@playse storage="tam-n05k.ogg" loop=true
「ひうっ!?」[lr]
 突如、流れだす軽快なメロディ。弾かれたように後退り、次いできょときょとと視線を左右にめぐらせた。[lr]
 音源はすぐに分かった。携帯が着信メロディ。ただし、彼女のものではなく、ひめのもの。[lr]
 止まらなかった。茫然と彼女が動けなかった時間が短かったはずはない。けれどそれでもなお鳴り続けた。[lr]
@stopse
 やがて、鳴りやんでから彼女はようやく呪縛から解かれた。雪の中から携帯を引っ張り出す。[lr]
 なんとなく、だ。そう信じたかった。けれどそのとき既に彼女の中では計画が既に編みあがっていた。[pcm]
 もちろん稚拙だった。彼女が彼にさり気なく贈り、そして以後は全く省みられなかった手編みのマフラーのように。自分の髪を編みこんだ、依存の象徴のように。けれど、そのときの彼女の精一杯だった。[lr]
 決行は夜になってから。それまでにすべき裏工作は無数にある。[lr]
 まずは想い人に電話をかけて、ひめの無事を装った。そして自分の家へ誘導した。まさか声真似がこんなときに役に立つとは思わなかった。[lr]
 けれど――どんな計画にも綻びは生じる。[pcm]
;;背景『携帯のズーム』、SE『携帯のメロディ』
@playse storage="m-phone3.ogg"
@wait time=1000
 突如、流れ出す軽快なメロディ。しかし気が緩みきっていたのだろう。そのまま彼女は鳴り出した携帯に出てしまった。[lr]
@ws
「もしもし?」[lr]
――それが死者の携帯であることに気がつかないまま。[lr]
「……ひめっち?」[lr]
 不審げな蓬山早紀の声に彼女は青ざめた。[lr]
 とっさに声真似をして誤魔化した。しかし、流されるままに今度会う約束をしてしまっていた。[lr]
 電話をかけなおして改めて断ればよかったのだが、そのときの彼女にそれはできなかった。とてもではないが、平静の精神状態ではなかったからだ。[pcm]

;;背景『みずき宅廊下』
@fadeoutbgm time=1500
@snowuninit
@bg2 file="rouka1_mizu_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1500

 雪とショックで頭を真っ白にしたまま、辛うじてバレずに帰宅した。ところが廊下を渡ろうとした際、彼とすれ違った。目を合わせられなかった。血の匂いに気づかれてしまうのではないか。切り抜けようと必死に舌を動かしたが、やはり予想外の事態に上手くいかなかった。居心地の悪い沈黙が立ち込めた。[lr]
 やがて彼が頭に手を伸ばしてきた。それを彼女は振り切り、自室へと駆け込んだ。[lr]
 むしろ苦しかった。バレることに怯えているのではない。彼から差し伸べられた手を振り切ってしまった。そのことに彼女は後悔していた。[pcm]

;;背景『みずき自室』
@bg2 file="mizu_room_n.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1000

 眦を拭うと、自室に戻った彼女はいつものようにヘッドフォンをつけた。そしてパソコンを大型のTVに繋いで再生した――想い人の盗撮映像。[lr]
 画面の中で彼が服を脱ぎ捨ててゆく。盗聴器までは仕掛けたことがある。けれど盗撮カメラまでとなるとなかなか難しい。そしてそこまで踏み出す勇気は、それまでの彼女にはなかった。[lr]
 けれど、今の彼女は違う。――彼がスイッチを押してしまったから。誰かのために誰かを犠牲にすることを肯定してしまったから。彼女を向こう側へと突き落とした。[pcm]
 彼女が想い人をわざわざ自宅へ誘導したのは、まさにこのため。盗撮するためだけに。人は狂っていると評するだろう。[lr]
 けれど、それでも彼女は彼と繋がっていたかった。そして他に術を知らなかった。[lr]
 その夜、彼女の部屋には液晶の光が絶えなかった。[pcm]

;;背景『廊下』←学校の廊下。BGMはなし。
@bg2 file="rouka1.jpg" time=2000
 翌日はどうにか平静を繕って登校した。それもすぐにほどけた。親友こそがすべての誤算だった。[lr]
;;BGM『光の降る街』。伊万里(03,3A,04,00,00,00,M)
@bgm file="hikarinofurumachi.ogg"
@imar pos=c wear=u pose=1 b=3 e=3 y=a m=4
「ボク、見ちゃったんだ!」[lr]
 焦りも露わに早口で親友は問いつめた。[lr]
「それは……その、違……」[lr]
@imar pos=c wear=u pose=1 b=3 e=3 y=a m=5
「……昨日の六時、どこにいたの?」[lr]
「……家でゲームして」[lr]
;;伊万里(制服 03,3A,09,00,00,01,M)
@imar pos=c wear=u pose=1 b=3 e=3 y=a m=9
「……う、嘘だよ。そんなっ……! 駐輪場にあったマウンテンバイク、みずきちのだった!」[lr]
 その声は詰問よりむしろ悲鳴だった。自分の言葉に怯え、そうじゃないんだよね、とあくまで同意を求める。自分を疑わない親友の純潔さが、むしろ彼女を苦しめた。ついには泣きながら駆け出した。[pcm]
;;伊万里消し
;;SE『ドンッって人がぶつかる鈍い音』← 小音でいいです
@cl
@bg file="kaidan2.jpg" rule="左下から右上へ" time=500
 まさにそのとき、想い人の胸板がしっかりと彼女を受け止めてくれていた。[lr]
 泣いた。寂しくて、辛くて。怖かった。[lr]
 けれど、あらかたの感情を流しきって顔を上げると、彼もまた泣いていた。……彼女は微笑んだ。[pcm]

;;BGM『雨ノ/降ル/街』。背景『通学路』← 後半共通で『帰路』表記 同じ背景を
@fadeoutbgm time=1000
@bg2 file="mizuki_miti_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1500
@bgm file="amemati.ogg"
 そして帰路。彼女は想い人と一緒に歩いていた。[lr]
 心臓は押しつぶされそうだった。すべては仕組んだこと。だが、それより何より彼のまとう雰囲気こそが、その原因だった。[lr]
 この上なく『哀』。懊悩と煩悶。苦痛に耐えているその形相は、しかしどこか抗いがたい倒錯的な魅力が備わっていた。彼女自身気がつかなかったものの、二人の間の距離はいつもよりほんの少しだけ狭まっていた。[lr]
 やがて彼が体を抱き寄せてきたとき、彼女は狼狽したものの、頭では何が起こっているのかわかっていたし、受け入れるつもりでもいた。[lr]
 彼女は孤独の寒さを知っている。何年も何年も。温もりを欲して誰かにすがりたくなる衝動を知っている。遠い昔からずっとずっと耐えてきたのだから。[pcm]
 けれど、彼は首を振った。[lr]
「みのる」[lr]
 思わぬ事態に舌が止まらなかった。[lr]
「みのる?」[lr]
 問うても彼は首を振るのみ。[lr]
「あたしを見て」[lr]
 ついにはこちらから申し出る。けれど、彼は首を振った。[lr]
「どうして!?」[lr]
 理性の箍が弾け飛んだ。けれど、彼は首を振った。[pcm]
 彼女の中で風穴のような傷口が生じた。冷ややかな隙間風が吹きこみ、凍りつかせてゆく。心全体がびっしりと霜を吹いてゆくのが分かった。[lr]
 久しく忘れていた、気づかないフリをしていた孤独の冷気。沁み入るように奥深く芯まで痺れ、彼女は震えた。[lr]
 けれど、彼女は耐えようとした。いつもそうしてきたように、ぎゅっと全身に力を込めて、震えながらやり過ごそうとした。[lr]
 だが、そこにとどめの一撃が入った。[lr]
『あ……』[lr]
 口から何かが抜けてゆく。彼女の手を振り払うと、彼はさっと先を行った。彼女を見捨てた。最も温もりの必要な瞬間に、中途半端に与えてから奪った。[pcm]
;;SE『硝子が砕けるような音』
 彼女は自分の中で何かが崩れてゆくのを茫然と聞き呆けていた。亀裂が入る。心が裂けてゆく。傷口から闇が噴き出し、すべてを覆い隠してゆく。目は虚ろにかすみ、口はぽかんとだらしなく開いたままだった。[lr]
 それもこれもすべては彼女のせいであり、そして彼のせいだった。彼がもう一度、駄目押しのスイッチを押し込んだからだ。[pcm]

;;BGM『13と1の誓い』。背景『無機質かつ殺風景な部屋』
@fadeoutbgm time=1500
@bg file="black.jpg" time=1500
@wait time=1000
;@bg2 file="牢屋.jpg" time=2000
@bgm file="13_1.ogg"

 彼女は自分自身に魅力を感じたことがなかった。理由は小学生の頃――彼と出会う前にまで遡る。[lr]
 その頃の彼女は今とは別人だった。口下手で、引っ込み思案で、他に比類のない人見知り。陰鬱な雰囲気という、余人を寄せつけない鉄壁の殻をまとっていた。[lr]
 だが、彼が彼女を変えた。苦もなく彼女のテリトリーへと踏みこんでくると、温もりを与え、彼女を孤独の冷気から救った。[lr]
 こうして彼女の傷は癒えた。けれど傷痕は残る。そして古傷は再び血を噴きやすい。[lr]
 二度もスイッチを押し込まれた彼女は、ついにやってしまった。[pcm]

;;回想に入るよー的に、モザイク的なのかけるというか、背景の変更に変化をつけてほしいです。 ← 荒いモザイクにボカしていって背景移動 1秒くらいで
;;背景『携帯のズーム』
@bg file="Lodge2_n.jpg" rule="モザイク" time=1000

 ひめの携帯と自身の声真似。二つ揃えてしまえば、ターゲットを呼び出すことは難しくない。[lr]
 けれど、それは物理的な問題で、精神的なものはそうではないはずだった。……通常ならば。[lr]
 彼女は自分に自信がなかった。けれど、悲劇のヒロインとして振る舞えば、彼の心を振り向かせられるのではないか。そんな魔の囁きが忍び寄ってきていた。彼女はそれに耳を傾けてしまった。[lr]
 コンプレックスから生じた、狂えるヒロイニズム。それが彼女の行動を後押しした。[lr]
;;早紀(03,7A,04,00,00,00,Mを一瞬だけ表示)
@bg file="black.jpg" time=300
@saki pos=c wear=u pose=1 b=3 e=7 y=a m=4
@cl
@bg file="Lodge2_n.jpg" time=300
 人目につかない場所に呼び出し、殺害。運搬にはやはりリヤカーを用い、小屋へと運びこみ、解体の準備を整えた。[pcm]
;;背景『作業小屋内部』
 けれど、死体にチェーンソーを振るう。それはまだそのときの彼女にはできなかった。迷ううちに刃の重さに腕が痺れ、彼女は諦めて想い人の待つ自宅へ戻った。[pcm]

;;背景『みずき宅客人用の部屋』
@bg2 file="wafuu_kositu00.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1500

 もちろんいくら狂気に身を任せていても、彼女は語ったりしない。表情を繕うことにかけて、実は彼女は名女優の域にさえ達していたかもしれない。心を硬く鎧い、何一つ漏れないよう密閉する。[lr]
 ただ、それは脆く危うい硬さだ。彼は一度も彼女の内面に触れようとしなかったからだ。[lr]
 だからそのことにおいては耐性がない。触れられない限りは決して露見しないが、触れれば最後、すべてが露になる。[lr]
 彼が触れていれば。しかし彼は何も言わなかった。ただ姉にすがりつこうと、自分のことしか考えていなかった。[lr]
 彼女がなぜこんな夜更けに自分のところを訪ねてきたのか、それを憂慮しなかった。[lr]
 だから彼女は止まらなかった。[pcm]

;;SE『扉を閉める音』。木製の部屋用ドア
;;背景『廊下』 ←みずき宅の廊下
@bg file="rouka1_mizu_y.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=700

「みのる……」[lr]
 彼女は好き好んでこれらの罪を犯したわけではない。それは親友を最後に選んだことからも分かることだ。[lr]
 親友を拉致し、小屋に閉じ込めてから戻ると、彼が疲れたような顔で待ちかまえていた。そのとき覚えたのは、紛れもなく安堵だった。[lr]
 結局のところ、彼女は彼に止めてほしかったのだ。なぜなら――。[lr]
 信じていたから。愛してくれるとまでは言ってくれないにしても、彼女を庇ってくれはするに違いない。そんな甘く切ない幻想を抱いていた。[pcm]
 だから彼女は彼を小屋へ案内した。そして怯えて泣いて、しかし心の奥深く、どこかでは早く抱きしめてくれるよう願っていた。[lr]
 彼女は信じた。硬く鋭く、そして脆い殻を脱ぎ捨て、柔らかで繊細な中身を晒した。そして――彼は。[pcm]

;;SE『硝子が砕け散るような音』。回想から戻ったよー的な演出ほしいです。 ← 荒いモザイクにボカしていって背景移動 1秒くらいで
;;背景『無機質かつ殺風景な部屋』
;;BGM『13と1の誓い』← 原作者指定のまま残しますが、この場面 実はBGMに変化なし
@bg file="black.jpg" rule="モザイク" time=1000

 ハッと我に返れるほどの自意識は、今の彼女は持ち合わせていなかった。ただ爪が割れ、その痛みをかすかなノイズのように感じるのみだった。[lr]
「愛してる」[lr]
 血を滴らせたまま、手はなおも床を引っかき続ける。蹲ったままの声はくぐもっていた。[pcm]
「愛してる」[lr]
 低いトーン。[lr]
「愛してる」[lr]
 高いトーン。[lr]
「愛してる」[lr]
 彼女の声。[lr]
「愛してる」[lr]
 彼の声。[lr]
 声真似で演じられる独り芝居。淡々と、そして延々と。[lr]
 同じ台詞を連ねるごとに、少しずつ少しずつ壊れてゆく。風化し、ヒビが入り、錆びついて殻は瓦解してゆく。[pcm]
;;SE『ぱきっ、という音』
 爪が割れていた。――今度は、小指の。じわり、と鮮血の粒が浮かび上がる。[lr]
 彼女の口が大きく開かれた。小鼻が大きく膨らみ、目が瞳孔まで見開かれた。最後の一息が深く深く吸い込まれる。[lr]
「……約束したじゃんっ!」[lr]
 血を吐くような叫び。密室に閉じ込められたまま、悲鳴はいつまでも反響を続けていた。[pcm]

;;背景『控え室』。BGM『Lunatic Lovers~xx』 ← BGM『Y-07 Thanks』に
@fadeoutbgm time=2000
@bg2 file="waiting.jpg" time=3000
@bgm file="y07.ogg"

 切りのいい数字だ。十。とても切りのいい数字だ。何か運命めいたものを感じずにはいられない。[lr]
 あれから……あの事件から。ちょうど十年が経ったらしい。どうも現実味が湧かなかった。みずきの虚ろな瞳も昨日、いや一時間前のことのように思い出せる。[lr]
 この日を迎えるにあたり、別に今日という日を選ぶ必要はなかった。けれど、俺は無理を言ってこの日にした。未だに過去の呪縛に囚われた伊万里を救ってやるためだ。[lr]
 いや、救ってやるとは言い過ぎかもしれない。ただ決別する手助けをするだけだ。[pcm]
 遠い忘却の彼方へ、俺はあの頃の記憶を意図して置いてきた。だが、伊万里はそうしなかった。たとえあんなことをしでかした犯人だとしても、親友は親友――俺には理解しがたいことだが、伊万里はそんな風に考えているらしい。そんな優しすぎるところも好きなのだけれども。[lr]
「…………」[lr]
 熱を持った頬を手で叩く。一人で放置されてたからとはいえ、自分で惚気るとは俺も少々精進が足りないようだ。[pcm]
 女ならいざ知らず、男の身だしなみは本当に簡素だ。タキシードを着込んで、あとは着付けを直すだけ。やたらめったら時間のかかる化粧の類いもなければ、中世の鎧より着づらい拘束着ドレスを着る必要もない。あっという間に終わり、あとは放置プレイだった。[lr]
 しかし――俺は鏡を見て苦笑いせずにはいられなかった。様になりすぎていて、逆に少々滑稽だった。かといって紋付袴が似合うというわけでもないのだけれど。[pcm]
;;SE『ノック音』
@playse storage="door_11_knock.ogg"
@ws
「そろそろお時間です」[lr]
 スーツ姿の職員が呼びに来た。[lr]
「分かりました、すぐ行きます」[lr]
 物思いを断ち切ると、俺は腰を上げた。[pcm]

;;背景『教会内部(バージンロードつき)』。
;;BGM 無音
@fadeoutbgm time=1000
@bg2 file="chapel.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1500

 教会いっぱいに静謐が立ち込めていた。それは緊張させるものであると同時に、どこか心地よかった。背に感じる無数の視線が、すべて柔らかく温かいせいだろうか。[lr]
 足元には真っすぐに伸びた真っ赤な絨毯。その先端で俺は待ち続けていた。足元の赤さが血のように見えてしまったのは、物思いのせいだ。[lr]
 断ち切ったつもりだった。だが、思考の糸は再び繋がり、俺を思索へといざなう。[lr]
 これが終わったら、会いに行こうと思う。『逢いに』ではなく『会いに』。[pcm]
 会ってくれ。そうみずきの父に幾度となく頼まれたが、俺は断り続けた。[lr]
 なにしろ俺はアイツを裏切った。責められてもおかしくない。だというのに、断りきれずにたった一度だけ面会に行ったとき、みずきは……。[pcm]

;;背景『面会室』← 荒いモザイクにボカしていって背景移動 1秒くらいで
;BGM『雨ノ/降ル/街』
@bg file="black.jpg" rule="モザイク" time=1000
;@bg file="面会室.jpg" rule="モザイク" time=1000
@bgm file="amemati.ogg"

;;みずき(01,7B,10,00,00,00,M 片手肩に)。
;;みずき(01,9B,10,00,00,00,M 片手肩に)
@mizu pos=c wear=u pose=1 b=1 e=7 y=b m=10
@mizu pos=c wear=u pose=1 b=1 e=9 y=b m=10
 従容と連れてこられたみずきは、中身のない抜け殻の顔をしていた。影のかかった瞳孔。虚空を見つめていたそれがいきなり動くと、ロックオンのように捉えた。立ちすくむと同時、我知らず体が身構えた。[lr]
 だが。[lr]
;;みずき(05,5B,02,01,00,00,L 片手胸に)
;;SE 『分厚いガラスを叩く音』 大きめの音量で
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=5 y=b m=2 c=1 size=L
 壊れたように破顔し、ついで跳びついてきた。[lr]
@playse storage="HitD2@22.ogg"
@ws
 がつん、と衝撃音が響いた。間を遮る分厚い硝子板が大きく震えた。[pcm]
「みずきっ!?」[lr]
 透明な壁に赤いものが伝った。みずきの割れた額からの出血だ。[lr]
 しかし、みずきの笑みは止まない。割れた額をなおも圧しつけ、頭蓋骨を軋ませる。[lr]
 いつみずきがこちらへ躍り出てくるかと心胆から凍えたものだった。[pcm]

;;みずき消し
;;BGM OUT 3秒
;;背景戻し ← 荒いモザイクにボカしていって背景移動 1秒くらいで
;;BGM 無音
@fadeoutbgm time=1000
@cl
@bg file="chapel.jpg" rule="モザイク" time=1000

;;SE『扉が開く音』 ← 重々しい木製
@playse storage="DoorOpenC1@11.ogg"
@ws
 重々しい音には威厳さえあった。ゆっくりと扉が開かれる音に、慌てて俺は背筋を伸ばした。[lr]
 かすかに雪解けの香りを孕んだ風が吹き入って、さらに心は澄み渡ってゆく。もうすぐ伊万里が俺の横に来る。そして一生、俺の横にいてくれる。俺も横にいてやれる。[lr]
 二人がそろうことで完璧な『人』になる。[pcm]
;;SE『チェーンソー』 ←エンジン始動音 > 駆動音と歯が回転する音へ 。
;;BGM『13と1の誓い』
@bgm file="13_1.ogg"
 きっと過去に囚われた俺の幻聴に過ぎない。背後から響いた轟音。何かの駆動音が一気に唸りを上げ、静謐を打ち砕く。それは幻聴に過ぎないはずだ。なぜなら聞き覚えがある。過去の再現に過ぎない。俺は唾を飲み、努めて平静に前だけを見据えていた。[lr]
 一泊遅れて空気が動揺に波打った。幻に過ぎない。拳を固く握り締めて言い聞かせる。[lr]
 波打つ空気に乗って、強烈な異臭が押し寄せてきた。鼻の奥が刺激され、奥歯を噛みしめる。[lr]
 伊万里が来る。無様な真似はできない。紳士は常に泰然としているものだ。[pcm]
;;SE『チェーンソーが振るわれる音』← もう一度、駆動音と歯が回転する音を しつこいようなら↓に直行
;;SE『ザシュとかドシュっていう、アニメのエルフェンリートに使われたような生々しい音を2回』 視界を一瞬だけ真っ赤に。
;;少し間を空けて
;;SE『ゆっくり近づく足音 水溜りを歩くような足音だと素敵』 SE終わってから下文表示
「みのる……」[lr]
;;みずき(怯え 07,9B,12,00,00,00,M 両手胸元)
 やっぱり。俺は落ちかけてきた重心を持ち上げ、背筋を伸ばした。幻聴に過ぎない。みずきがこんなところにいるはずがないからだ。[lr]
;;SE 『濡れた軽めのものがぶつかる ベシャ って音を』
「ただいま」[lr]
;;みずき(笑み 02,1B,02,00,00,00,M 片手肩に)
 腰にすがりついてくる重いものがあった。幻もここまで来ると現実とさほど変わらない。[pcm]
「……はは」[lr]
 ふと乾いた笑みが零れる。背後の幻影が手の指を絡めてきていた。それは赤く濡れていて、ぬちゃりとおぞましい感触を伝えてくる。[lr]
 生温かい体温。生き物の温かさだった。それは伊万里の体内を駆け巡っていたものなのだろうか。それとも……。[lr]
「ね、みのる。こっちみて。みんなやっつけたよ。ほら」[lr]
;;SE『衣擦れ』2回
 小さな子どもがそうするように、タキシードの裾がくいくいと引っ張られた。[pcm]
「あたしをみて」[lr]
;;みずき(病み笑い 08,5B,06,00,00,00,M 片手胸に)
 甘い囁きが耳に吹き込まれる。振り返ってしまえば、むしろ楽だ。こうして現実を否定し続けなくてもいい。[lr]
「…………」[lr]
 だが、小さく首を振る。足元のバージンロード。俺は少しだけ先に行き過ぎてしまった。[lr]
 伊万里が来ないのは、そのせいだ。少し待てばすぐに追いついてくる。傍らに立ってくれる。[pcm]
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@font color="0xFF0000"
@delay speed=200
 その、はずなのだ……。[pcm]
@resetfont
@delay speed=user
@fadeoutbgm time=3000
@bg file="black.jpg" time=2000
@wait time=1000
;スタッフロール
[jump storage="main.ks" target="*staffroll"]



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