ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

レポート事件

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mizu0201_1|レポート事件

@bg file="rouka1.jpg" time=700
[cm]
@bgm file="gakkou1.ogg"
@texton
 廊下に出ると、目の前をうさぎ頭が走り抜けていった。[lr]
「どぅわっ!?」[lr]
 とっさに飛びのく俺。重心を大きく傾ける人影。うさぎの耳のようなツインテールが慣性に引かれて舞い上がる。彼女が廊下に身を投げ出すことで、辛うじて衝突を免れた。[lr]
@ld pos=c name="mizu" wear=u pose=2 b=3 e=2a m=5
「イタタタタ……」[lr]
「すみません、だいじょうぶですか? ……ってみずき!?」[lr]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=5 e=2a m=1]
「おっけー、おっけー、あたしはだいじょうぶ……ってみのる!?」[lr]
[mizu f="驚き" pose=1 pos=c]
 互いに素っ頓狂な声を出してしまった。[pcm]
「っていうか、お前、どうしてここに?」[lr]
;原文 よって当然ながら階は違うはずなのだが。
 みずきとは学年が異なるので階は違うはずなのだが。[lr]
;[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=3 e=1a m=5]
[ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=7 e=2a m=8]
「ごめん、説明してる暇ない!」[lr]
@cl
 だが、答える暇も惜しいとばかりに、みずきは再び駆け出していった。ツインテールの尾を引きながらそのまま走っていく。[lr]
 『うさぎ耳』とか似合うんじゃないか、と小学生のときから思っていた。[lr]
 あっという間に小さくなってゆく後ろ姿。俺の心に不安の雲が広がった。[lr]
「アイツ、まさかまた――」[lr]
「お、いたいた、みのりん発見」[lr]
 と、背後からお呼びがかかった。[pcm]
[imar f="真顔" pose=1 pos=c c=1]
「……なんだ、伊万里かよ」[lr]
[imar f="怒り" pose=1 pos=c]
「なんだとはなんだ。前から思ってたんだけどね、キミはボクをいったいなんだと」[lr]
「貧乳だと思ってるが」[lr]
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=4 e=3a m=7
「なんだとコラー!」[lr]
 ぼすん、と俺の胸を一撃してから、伊万里は急に表情を変えた。[lr]
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=4a m=1 c=1 s=1
「みずきこっちに来なかった……かな?」[lr]
「みずきなら向こうに――」[lr]
 と指を差したくなるのをこらえ、俺は逆に尋ね返した。[pcm]
「どうしたんだ?」[lr]
「――え?」[lr]
「だから、みずきはどうしたんだ? お前、知ってるんだろ?」[lr]
「…………」[lr]
 まっすぐ瞳を覗きこむ。幼馴染の愛想笑いを見た途端、俺は違和感を覚えた。何かを隠して媚びるような、そんな笑みは本来のコイツとは最も縁遠いはずだ。[lr]
 数秒の沈黙の後、[lr]
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=4a m=5 s=1
「……その、みずきがまた」[lr]
 観念したように伊万里は説明を始めた。[pcm]
@cl
@bg2 file="rouka1.jpg" time=1500
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=4a m=5 s=1
;;画面フェードアウトで暗転の後フェードイン? 背景は廊下 改ページ? 良くわからん(魚
;;追記してよく分からない。お任せしてもいいでしょうか? by宇宙人
;;フェードアウト時についでに改ページすれば良い予感。
「あー、ちょっと整理させてくれ」[lr]
 頭痛を揉みほぐすように、俺はこめかみに手を当てた。[lr]
「五限目にググレに提出する課題のプリントを忘れて取りに帰ったって? 昼飯も食べずに」[lr]
 俺の問いに深々とうなずく伊万里。さらにこっそりと口元に手を添え、耳打ちしてくる。[lr]
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=4a m=4 s=1
「しかも忘れたのはみずきじゃなくてその友達!?」[lr]
 俺はぐったりとしてしまった。[pcm]
@fadeoutbgm time=1000
@cl
@bg file="black.jpg"
@bgm file="ahumati.ogg"
[mizu f="微笑み" pose=1 pos=c]
;;改ページ。背景『真っ黒』。伊万里消し、みずき(デフォルト)。BGM『雨の降る街』
 如月みずきは――アイツは昔から面倒見が良すぎた。困っている人がいれば放っておけない性質なのだ。[lr]
 たとえば、電車の中では、相手が老人でなくても、自分より年上であれば席を譲ってしまう。[r]
 ……まあ、以前やったときは席を譲られた小太りの女性が『あたしゃ妊婦じゃないよ!』と怒ってしまい、みずきの親切心はお節介になってしまったのだけれど。[lr]
 そんなみずきにクラスメイトのピンチという状況を用意してやればどうなるか。仮にも友達を主張するならばソイツにも分かるだろうに。[lr]
 まして『あの事故』のせいで今のみずきは――あの『同い年の後輩』は……。[pcm]
@fadeoutbgm time=1000
@cl
@bg file="rouka1.jpg"
@bgm file="gakkou1.ogg"
[imar f="悲しみ" pose=1 pos=c t=1]
;;改ページ。背景『廊下』。BGM『学校的風景其の一 ver.2』に戻す。みずき消し、伊万里(焦りとか泣きとか。シリアスモード)。
「ねえ、どうしようどうしようどうしようどうしよう、ねえ、みのりん!」[lr]
 一度タガが外れると、もとから浮き沈みの激しい伊万里らしく、もう止まらなかった。俺のネクタイを締め上げつつ、がくがくと前後に揺さぶって脳震盪攻撃を仕掛けてくる。[lr]
「お、い、とに、かく落ち着、け」[lr]
「無理無理無理無理無理無理――!」[lr]
 熱に浮かされたように伊万里は繰り返した。[lr]
「だってだって、みずきち、物凄く急いでたもん。もし去年みたいなことになったら……!」[lr]
 ソプラノに焦燥をにじませた伊万里の手から力が抜けていった。[pcm]
「それはだいじょうぶだろ。もしそんなことになっても、ググレあたりに責任をとらせてやる」[lr]
 また去年の『あの事故』のようなことになれば……コイツが責任を感じてしまうのも無理はない。俺は伊万里をなだめ続けた。[lr]
 とはいえ、とりあえず今回はあの時のようにはなるまい。みずきは無事に戻ってきた。これ以上、気を揉んでも仕方ない。[lr]
「そういうことなら……っと」[lr]
 ようやく伊万里が落ち着いたところで、俺は伊万里の両肩を掴んだ。[pcm]
「伊万里」[lr]
[imar f="悲しみ" pose=1 pos=c m=9 t=1]
「ふぇ!? な、なんだよぅ」[lr]
 俺の邪悪な笑みに危機を察知したのか、ファイティングポーズをとる伊万里。[lr]
 む、これは危険だ。[lr]
「おまえを調教したいんだが」[lr]
 俺はまっすぐ伊万里の瞳を見つめて告げた。[lr]
 そして――[pcm]
;;SE『衝撃音』
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=2a m=7 c=1 s=1
[playse storage="tm2_hit002.ogg"]
@ws
「きゃああああああ!?」[lr]
「うぐうううううう!?」[lr]
 顔を真っ赤にした伊万里と顔を真っ青にした俺の悲鳴が重なった。[lr]
 あらかじめ構えていた俺のガードを無効化する一撃だった。ファイティングポーズを取りながら、しかし伊万里は俺の足を踏みつけたのだ。しかも小指をピンポイントで。[lr]
「へ、へ、へ、へ……」[lr]
 脚を抱えて声もなく悶える俺を見下ろしながら、伊万里が絶叫した。[lr]
「ヘ、ヘンタイーーー!」[lr]
 それっきり、伊万里は身をひるがえして走り去った。[pcm]
@cl
「もう少し下ネタにも対応できなきゃいけないなぁ、伊万里くん。いじられキャラの道は遠く険しいのだよ」[lr]
 俺がやったのは『しゃっくりを驚かせて止める』みたいなものだ。そっち系に免疫のない伊万里に下ネタを振れば、過剰な反応が返ってくる。[r]
 そうすれば親友への振り切れそうなほどの心配を一時的には忘れさせられるかもしれないと考えたのだ。[lr]
 とはいえ――[lr]
「――痛ぇ」[lr]
 痛ぇったら、痛ぇ。とにかく痛ぇ。どうしようもなく痛ぇ。[lr]
 俺は『[ruby text="いじ"]伊[ruby text="られ"]万[ruby text="キャラ"]里調教計画』の修正を考えながら(もちろんハードな方向に)、足を引きずってある場所へと向かった。[pcm]
@fadebgm time=500 volume=50
@bg2 file="rouka1.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@fadebgm time=500 volume=100
;;一度、画面をブラックアウトさせた後、改ページ。背景『廊下』、BGM『学校的風景其の一 ver.2』(フェードアウトしかけるんだけど切らない。デクレシェンドとクレシェンドをやるみたいな感じかな)。
「みずきはそろそろ教室に戻ってるころだろうな」[lr]
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=9a m=11 t=2
「ふぇぇぇ……」[lr]
 ある場所へ行った後、みずきの教室へ向かおうとした途中で見つけた伊万里を捕まえ、その腕を引きながら俺は歩いていた。[lr]
「誰か助けてぇ、調教されるぅ」[lr]
「お前のために調教するんだ、伊万里。お前もちょっとは下ネタに耐性つけておかないと社会に出たとき大変だぞ?」[lr]
「それは分かるけど」[lr]
「ならまずはエロトークをマスターしなければならないと思うんだ」[lr]
「これって絶対セクハラだよぅ……」[pcm]
@cl
 などという実に微笑ましい会話をしているうちに、みずきの教室へと到着していた。廊下から教室に顔を突っ込むと、[pcm]
@bg file="kyousitu.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[mizu f="笑顔" pose=1 pos=c c=1]
「ありがとう。助かったよ、キサちゃん」[lr]
「えへへ、そうでもないよ~」[lr]
 同級生に感謝の言葉を述べられているみずきの姿があった。[pcm]
 コイツがみずきを――。[lr]
 今まで伊万里をからかって遊んでいた口元が硬くなるのを感じた。[lr]
 コイツはみずきの置かれている立場を理解しているのだろうか?[lr]
 俺の中で黒いものが膨れ上がった。小学校からの友人として、先輩として見過ごせなかった。[lr]
@ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=1 e=1a m=6 c=1
「そんなたいしたことじゃないってば~」[lr]
 頬を薄紅に染めたみずきのはにかんだ表情を見ると、それは萎んでいった。[lr]
 コイツにとって、誰かの世話を焼くというのは生き甲斐みたいなものなのだろう。[lr]
「おーい、みずき」[lr]
「おっけーおっけー、あたしに任せておきなさいっ! ……あれ、みのる?」[pcm]
@cl
@bg file="rouka1.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[mizu f="驚き" pose=1 pos=c m=12]
 俺が手招きをすると、不思議そうな表情でみずきは教室のドアまでやってきた。[lr]
「伊万里まで、二人してどうしたの? ――アウトっ!」[lr]
[mizu f="怒り" pose=2 pos=c m=11]
 びしぃっ! と伸ばされたみずきの人差し指をたどっていくと、いつものように俺の髪に向けられていた。[lr]
「もう、寝癖くらいちゃんと直すっ!」[lr]
 みずきが慣れた動きで俺の髪を梳き始める。いつものことだ。[lr]
「それより自分の髪型を心配しろよな」[lr]
 溜め息を吐くと、俺はいつものお返しとばかりにみずきのツインテールに手を伸ばした。[pcm]
[mizu f="驚き" pose=1 pos=c m=10 c=1]
「きゅ……」[lr]
 指先が疾走で乱れた髪を捉えると、みずきは小動物の鳴き声のような声をかすかに漏らした。そんな反応にどきっとしながらも、サラサラの感触を梳いた。[lr]
[mizu f="真顔" pose=1 pos=c]
『ボクを除け者にするなぁ! ……ボクだってちょっと寝癖ついてるのに』という後半はよく聞こえない伊万里の抗議が聞こえるが、俺とみずきは示し合わせたかのように無視した。[r]
『ええええっ!? なんでみずきちまでー!?』などと言っても無駄。俺とみずきはアイコンタクトを交わし、ふふん、と共犯の微笑みを交換する。[lr]
 時間にして一分と経たなかったのだろうが、俺にはその何倍もの時間が過ぎたように感じられた。[pcm]
@cl
[mizu f="驚き" pose=1 pos=rc m=12]
「……あれ、伊万里。どうしてこんなところにいるの?」[lr]
@ld pos=lc name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=6a m=9 t=2
「しくしくしくしく」[lr]
 俺とみずきが互いの毛づくろいを終えると、いつの間にか伊万里はしきりに泣き真似をしていた。[lr]
[mizu f="真顔" pose=1 pos=rc]
「放っとけ放っとけ。それより」[lr]
@ld pos=lc name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=2a m=7 c=1 s=1
「ええええっ、無視するの!?」[lr]
[imar f="不満" pose=1 pos=lc]
 ぎゃーすか喚く伊万里はさておき、俺は床に置いていた袋を持ち上げた。売り切れるのが早すぎると悪名高い学食で買ったパンを差し出す。[lr]
「お前、飯くらいちゃんと食えよな」[pcm]
@ld pos=rc name="mizu" wear=u pose=4 b=1 e=7a m=3 c=1
 てっきり『サンキュー、みのるってば気が利く~』などと言い出すかと思いきや、みずきは何も言わずに頬を赤らめたかと思うと、すっと瞳を伏せた。[lr]
「もしかして、みのるの奢りだったりする?」[lr]
「当たり前のことを訊くな」[lr]
@ld pos=rc name="mizu" wear=u pose=4 b=1 e=6a m=1 c=1
[imar f="真顔" pose=1 pos=lc]
「それってみのるからあたしへプレゼントってことだよね?」[lr]
「だから、当たり前のことを訊くな」[lr]
@ld pos=rc name="mizu" wear=u pose=4 b=1 e=2a m=8 c=1
「そうなんだ……えへへ♪」[lr]
@ld pos=lc name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=9a m=11 t=2
 隣では『ボクにはくれないんだ……』と伊万里が恨めしげに指をくわえていた。[lr]
 みずきが顔を上げた。[lr]
[mizu f="笑顔" pose=3 pos=rc c=1]
「嬉しいっ!」[lr]
「――!?」[pcm]
@cl
[mizu f="笑顔" pose=3 pos=c c=1 size=L]
 甘い香りが鼻をかすめた、と思ったそのときには、懐にみずきが飛び込んでいた。[r]
 触れ合った部分からは熱く柔らかな感触が伝わってくる。小さくとも充分すぎるスリーサイズを備えた肢体。[lr]
[imar f="驚き" pose=1 pos=l c=1]
;;伊万里(驚き) みずきにかぶって見えなければ消すか移動
「ああああーっ!」[lr]
 と、廊下になぜか伊万里の悲鳴が響き渡った。[pcm]



@fadeoutbgm time=1000
@cl
@bg file="black.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"

[jump target=*mizu0201_2]

[s]



mizu0201_2|買い食い禁止

@bg file="syoutenngai.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
 うちの学食は戦場として有名である。ラッシュ時の通勤電車にも劣らない人口密度に、少なめに設定された品数。群がる人垣の分厚いこと、野次馬の如し。[lr]
 そんな中を後ろから乗りこんでいけるほど俺は体格に恵まれていない。いつも昼休みと同時にダッシュして前のほうに並んでは辛うじて確保していた。[lr]
 だが、伊万里と会話している間のタイムロスが、そんな普段のサイクルを狂わせた。[r]
 たどり着いたときに残されていたのは、パンがわずかに数個。そして、それらは今頃みずきの活動エネルギーへと変換されている。[pcm]
 というわけで、空腹に耐えかねた俺は帰る前に腹ごしらえでもするか、とこの商店街に立ち寄った。最近の悪習だが、背に腹は代えられない。[lr]
;; 昼のエピソードを通過していると、上の四段落を採用。通過していなければ、『今日も今日とて、俺、藤宮稔は不良少年である。なにせ、家にまっすぐ帰らずに買い食いするためにこの商店街へやってきたのだから。最近の悪習だが、背に腹は代えられない。食欲というのは三大欲求のひとつなのだ。』を挿入してほしい。
;仕様変更につき↑は気にせず。行動選択が1回になったため。
;;SE『お腹の鳴る音』。これは要らないのではなかろうか。
「今日はどこの店に行くかな」[pcm]
@bg2 file="syoutenngai.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
;;ファーストフード店などの背景(カラオケとかも使うこともあると思うので、そういうのを流用して)をパラパラ変えて、最後に屋台を表示。
「たこ焼きとか悪くないな」[lr]
 屋台から漂ういかにも食欲をそそる匂いに、俺は小躍りしながら一箱注文した。[lr]
「美味そうだな~」[lr]
 ほっかほかの焼きたてである。タレの香ばしい香りに、青海苔の海の匂いが合わさって唾液がどっと溢れる。鰹節が陽炎のように揺らめく光景は幻想的とさえ言えた。[lr]
 唾をごくりと飲みこむと、一つに爪楊枝を刺して大きく口を開けた。[lr]
「アウトっ!」[lr]
 後ろからびしぃ! と指を刺す擬音が聞こえた。[lr]
「なんだよ、みず……ってああっ!?」[pcm]
[mizu f="笑顔" pose=1 pos=c c=1]
「ん、美味し♪」[lr]
 せっかくの御馳走を横取りされた俺の悲鳴などどこ吹く風とばかりに無視し、もぐもぐと口を動かすみずき。[lr]
「い、いつの間に――!?」[lr]
 油断も隙もあったもんじゃない。いつの間にかみずきの手の上で湯気を上げていたタコ焼きを取り返す。[lr]
@ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=4 e=4a m=4
 先輩として俺は説教モードに入った。[pcm]
「いいか、みずき、今のお前の行動は――」[lr]
「むー!」[lr]
「明らかに泥棒なわけで――」[lr]
@ld pos=c name="mizu" wear=u pose=1 b=4 e=3a m=4
「むー!!」[lr]
「だいたい世の中には窃盗罪というものが――」[lr]
[mizu f="不満" pose=2 pos=c]
「むー!!!」[lr]
「伊万里寿司って美味いかな――」[lr]
[mizu f="不満" pose=2 pos=c size=L]
「むー!!!!」[lr]
「……分かった、食え」[lr]
 俺は諦めて箱を差し出した。[pcm]
[mizu f="笑顔" pose=1 pos=c c=1]
「……こ、これはあたしが食べたいんじゃないからね! みのるの買い食いをやめさせるためなんだからね!」[lr]
 すしゃっと残像さえ見える速度で箱に飛びつくみずき。[lr]
「…………」[lr]
 先輩だから、そう、先輩だから譲ってやっただけだ。決しておねだりするみずきの表情にくらくらっとしてしまったからじゃない。[lr]
「っていうか、お前、なんでここにいるんだ?」[lr]
 まさかまた何か雑用を引き受けてるんじゃないだろうな。そう思っての心配だったのだが――。[pcm]
[mizu f="笑顔" pose=1 pos=c m=8 c=1]
「♪」[lr]
「……無視ですか」[lr]
 しかし実に美味そうに食べるものだ。屋台のおっちゃんが見たらさぞかし喜ぶだろう。[lr]
 何個か掠めるだけかと思いきや、みずきはしっかり全部平らげた。[lr]
[mizu f="笑顔" pose=1 pos=c m=1 c=1]
「ふぅ、満足満足」[lr]
――俺、一つも食べてないんだけど……。[pcm]
[mizu f="怒り" pose=2 pos=c m=11]
;;みずき(怒り)。差分で歯に青海苔がついてると嬉しい。いや、労力がかかるなら贅沢は言いませんけれど。
「アウトっ!」[lr]
 びしぃ! と人差し指を俺に向けるみずき。[r]
 ちっちゃな身体で威厳を出そうと頑張っているのは認めるが、歯にくっついた青海苔がすべてをぶち壊している。俺は笑いをこらえるので精一杯だった。[lr]
「買い食いばかりして! 太るし身体に良くないの分かるでしょ!?」[lr]
 むしろ今は痩せそうだ。空腹だって身体に良くないだろうに。[lr]
 だが、俺はとても賢明である。ここでは何も言わずに聞き流すのが吉だと、長年の経験が告げていた。[lr]
――ああ、道行く人々から怪訝そうな視線を感じる。歯に青海苔をつけた女子生徒に説教されている哀れな男子学生。[r]
 しかもソイツが飢えで生気のない顔をしているとなれば、もう理解に苦しむしかあるまい。[pcm]
[mizu f="怒り" pose=2 pos=c size=L]
「ちゃんと聞いてるっ!?」[lr]
「うわぁっ!?」[lr]
 聞いてる聞いてる、聞いてますから爪楊枝を眼球の前に突きつけるのはやめてください。[lr]
[mizu f="怒り" pose=2 pos=c m=10]
「だいたい昼に何食べたわけ?」[lr]
「……あー、えーっと」[lr]
 とっさに俺は頭をフル回転させた。[lr]
「く、空気だ。俺は仙人になったからな、霞を食べて生きていけるのさ」[lr]
[mizu f="怒り" pose=2 pos=c m=11]
「嘘、そう言って昼を軽く済ませては買い食いするくせに! さっきからも言ってるけど――」[lr]
 みずきの説教が再度ループする。[pcm]
;;昼のエピソードを通過していると、下四段落を表示。
;↑これも同じく気にせず。
 俺がみずきのために自分の昼食を犠牲にしたことは、決して悟られてはならないことだった。俺が考える本当の親切とは、親切にしたことを相手に悟られないことだからだ。[lr]
――だからな、気づくんだ、みずき。[lr]
 お前が俺に親切を受けていたと知ったとき、どんな気持ちになるのか。それをよく考えてから人助けはするものだ。[lr]
 こういう余計な気回しをしてしまうのが、先輩かつ友人という立場なのだろう。[r]
 小型発電機でも内蔵したようなコイツの活動力は半端ではないが、それだけに危うさをも抱えている。[r]
 そのサポート役に回ってやれたら、俺はいつもそんな風に感じてしまっている。[pcm]
[mizu f="不満" pose=2 pos=c]
「もう、みのるの食生活見てらんないっ! あたしが全部管理するっ!」[lr]
 ポケットからペンとメモ帳を取り出すみずき。慌てて止めようとする俺の眼球の前にペン先がびしぃ![lr]
[mizu f="怒り" pose=2 pos=c m=11]
「まずは昨日の夕食!」[lr]
「ええっと、昨日は……」[lr]
「炒飯でしょ! それくらい憶えときなさい!」[lr]
「はいぃ!」[lr]
 なんで知ってるんだよ、との疑問が脳裏を掠める間もなく次の質問が飛んだ。[pcm]
「昨日の夕方!」[lr]
「えっと、あ、そうだ、アレ、あそこの――」[lr]
「星野屋の牛丼! つゆだくの卵つき!」[lr]
 だからなんで知ってるんだよ。[lr]
 どうやら『つゆだくの卵つき』をメモするのに時間がかかったらしく、そこで俺の疑問が割りこめた。[lr]
「お前、なんで俺の食ったもの知ってるんだ?」[lr]
「なんでって……」[lr]
[mizu f="驚き" pose=3 pos=c]
@ld pos=c name="mizu" wear=u pose=3 b=4 e=7a m=9
 瞬間、ハッとしたような表情がみずきの顔をよぎった。[pcm]
[mizu f="不満" pose=2 pos=c s=1]
「そ、そんなことはどうでもいいじゃん! とにかく、食生活はきちんとすること!」[lr]
@cl
 慌てたように背を向け、みずきが慌しく去っていく。[lr]
 奢ってもらっておいて、その態度はないよね、如月君。[lr]
 俺の中にちょっとした悪戯心が生まれた。みずきの背中に向かって、周りの人にも聞こえるように大声で教えてやった。[lr]
「おーい、みずきー、歯に海苔がついてるぞー」[lr]
[mizu f="驚き" pose=3 pos=c c=1]
@cl
 慌てて確かめたらしいみずきが振り返り『バカっ!』と顔を真っ赤にしながら怒鳴ろうとして、しかし周囲の人々の視線に圧されてすごすごと退散していった。[lr]
 ふふ、同い年でもからかいの年季が違うのだよ。[lr]
 俺の完全勝利だった。[lr]

[nowait][r][endnowait]
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@wait time=500
@playse storage="a09.ogg"
;;SE『空腹音』
@ws
;;鳴り終わるまで待つ。
 ……俺の完敗だった。[pcm]



@bg file="black.jpg" time=1000

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;[jump storage="cmmn.ks" target="*0201n"]
[jump storage="scenemenu.ks"]
[s]
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