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地域格差

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 参加はブログで呼びかけたが、地元である新潟県内からの反応はほとんどなかった。手ごたえのなさに、ファクスでの告知を思いついたのは合宿開催の直前であった。信越総合通信局が6月に発表した「信越管内におけるブロードバンドの普及状況」によると、新潟県のブロードバンド世帯普及率は44.5%(全国平均は53.3%、東京は68.1%)。普段から、ブログやSNS、掲示板といったサービスを利用し、インターネットのビジネスインパクトを紹介した本を読んでいると、ネットによって人々は世界中とつながり、ネット上にはすべてがあるような錯覚に陥ってしまうことがある。そうではないという当たり前の現実を改めて感じた。

「塩沢の町を歩いてみると、ほんとに閑散としている。素材が沢山あるのに、もったいないなぁ。といっても、町全体が沈鬱とした雰囲気になっているかといえば、そうではなく。良くも悪くも、のんびりとした感じ。地元関係者の方々からは『(市民が)困っていないので、将来困ったことになると分かってもらうことに困っている』といったような発言があり、あーそこからなのか想像以上に大変だなぁと感じた」(一部抜粋)と感想を述べている。危機感を持った人は少ないのが現実だ。

 実は、南魚沼の平均寿命は新潟県平均を上回っている。将来を考えれば不安もあるが、もともと地域に住み、土地に根を張って生きている人にとれば、悪くなったとはいえそれなりの暮らしができる「パラダイス鎖国」なのだ。

 「パラダイス鎖国」とは、シリコンバレー在住の海部美知さんが2005年にブログで紹介した言葉。「自国が住みやすくなりすぎ、外国のことに興味を持つ必要がなくなってしまった状態」で、世界市場の中でそれなりの大きさを持つ日本市場でビジネスができてしまうことによって世界的な競争力を失ってしまうことを言う。スコープを小さくしてみれば、地方都市もまさにそうだ。

 南魚沼であれば、農家は減反があっても高く売れるコシヒカリを作っていてそれなりに潤っているし、地酒も人気がある。生活費も安く、リアルで濃密なコミュニケーションもある。ネットで積極的に発信して、他地域にアピールしなくてもやっていける。ネットに「つながる」必要性もないのだ。メディアは盛んに地方の疲弊を報じるが、それは夕張のような特異的な地域の状況を切り取っているに過ぎない。

 地域に新しい価値やイノベーションをもたらす要素を表すのに、「よそもの・わかもの・ばかもの」という言葉がよく使われる。しかし、パラダイス鎖国では心地よいパラダイスを守るために、「よそもの・わかもの・ばかもの」を排除するマイナスの力が働くのだ。


   彼女の生活費はおもに「ゲームプレイ・ワーキング」で支えられている。彼女は、中国系企業が提供する対戦パズルゲーム系のインターフェイスを得意としており、結果はおもに東アジア圏の企業や行政組織の意志決定システムの支援にマッピングされている。ゲームは24時間提供されているが、それが現実に結びついているときといないときがある。現実に結びつかないと賃金は発生しない。そのため、彼女の生活は意外と規則正しい。


   彼女の起床はだいたい正午ごろ。昼食を取り、メールを読み、部屋の掃除をし、ときに買い物に出かけたりと雑用をこなしていると、昼下がりの数時間はあっというまに過ぎていく。

   彼女の仕事が始まるのは夕方からだ。彼女は平日は、東アジアで組織内意志決定のニーズが高まり、時間賃金相場が上がる15時から23時までのあいだで、平均6時間ほどをモニタに向かい高度なパズルゲームをして過ごしている。プレイの練度が下がるので、パーソナル・デバイスは使わない。ゲームに付随するコミュニケーション機能も切って、ゲームプレイにだけ集中している。生活費をゲームプレイ・ワーキングで支えるためには、彼女の実力ではそれぐらいの集中が必要となる。彼女はときおり、これでは定職に就いているのと変わらないと感じるが、組織に入るのは煩わしいので当面はこの生活を維持するつもりでいる。ただ、将来に不安を感じないわけではない。実際、友人たちはつぎつぎとギートを止めている。

ゲームプレイ・ワーキングのシステムの説明はとても難しいです(というより、それをきちんと説明できることは新しい事業が興せることを意味しているので、そんなのは無理なわけです)。僕たちが考えているシステムでは、ネットの「こちら側」に見えているゲームプレイと、「あちら側」で現実に行われている(したがって金を生み出している)仕事の連関はユーザーには絶対に見えません。

たとえば、「電車でGO!」のゲームプレイが実際の山手線の運行に連動していたら、そんな危険な話はない。そういう危険性や、あと情報漏洩そのほかの可能性を防ぐために、ゲームプレイワーカーには、自分のゲームプレイがいかなる仕事にマッピングされているのか、まったくわからない。

これはいわば、徹底的に分業が進んだ世界です。ギートたちには、ネットから適当に、表面的には遊戯を装っているので「楽しい」、でも実際にはかなり厳しい単純労働が配達されてくる。自分の労働は確かに金になっているのだけど、労働者=ギートは、その成果からは徹底的に疎外されている。鈴木健さんの言葉を使えば、「新しいフォード主義」の世界です。

情報技術は、ひとびとを「エンパワーメント」する、ひとびとが「表現」「創造」する可能性を高める、という楽観的な言説があります。しばしば言っているように、僕は(これは3人の意見ではなく僕個人の意見ですが)、そのような楽観主義に強い違和感を覚えています。なるほど、情報技術は一部のひとびとに力を与えるかもしれませんが、他方でそれは巧妙な(もはや人間がその存在に気づかないほど巧妙な)「搾取」「詐欺」の道具にもなるはずです。僕としては、ギートやゲームプレイ・ワーキングの設定には、そういう問題提起の含みももたせたいと思っています。

▼あるギートの1日:ギートステイト制作日誌 - CNET Japan▼
http://blog.japan.cnet.com/geetstate/a/2006/09/1.html
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