「ゆ?まりさのおうちで
ゆっくりしないでね!!!」
部屋を明け渡す当日に目を覚ますと10匹のゆっくり親子が俺の部屋に入っていた。
部屋は1階なので網戸を開けて入ってきたようだ。
荷物は昨日業者に頼んで送ってもらったので部屋には寝袋にくるまった俺とゆっくりだけで何もない。
これがゆっくりかなどとぼ~っと見ていると、
「おにいさん。ここはまりさたちのおうちだよ。」「さっさとでていってね。」
「食べ物をもってきたらゆっくりさせてあげるよ。」「はやくもってきてね。」
案の定である。
「そうか、ここは君たちのおうちなのか。ごめんね。」
「そうだよ。だからおにいさんは早くでていってね。」
「ゆ~、おなかすいたよ。はやくごはんをもってきてね。」
「さっさとよういしてね。」
「おにいさんはゆっくりできそうにないからでていってね。」
どっちなんだろう。まあいいや。このボロアパートはもうすぐ取り壊すことになっていた。
今日は昼ごろに管理会社に鍵を返すことになっていたからもうしばらくしたらここを発つ
ことにしていたのだが、この様子だ。さっさと出て行くことにした。
「ごめんね。ここは君たちのおうちなんだね。さっさと出て行くことにするよ。」
「そうだよ!さっさと出て行ってね!」「まりさたちのおうちでゆっくりしないでね!」
起きあがって窓を閉めて鍵をかける。その間も母ゆっくりは俺に体当たりをしてくるが、
俺には痛くもかゆくもない。寝袋を畳んでバッグにしまっていると子ゆっくりも体当たりをしてくる。
「ゆっくりしてごめんね。後は君たちだけでゆっくりしていってね。」
「二度とこないでね!!」
そう言ってドアを開けて外に出た。そして鍵をかけて管理会社へと向かった。
このアパートが取り壊されるのは一週間後のことである。
最終更新:2008年09月14日 09:41