「むきゅ、これよりさいばんをはじめるわ。ひこくゆっくりのれいむと、……まりさ、はまえにでてね」
裁判長のぱちゅりーの言葉に従って、よそ者まりさとれいむが証言台に立つ。怒りと哀惜の声がそこかしこで上がった。
時は夕刻。狩りに出たゆっくりたちも帰還している。そこで、勝手にすっきりし、子をはらみ、あまつさえ堕胎と称して赤ゆ
っくりの素を食べたよそ者まりさとれいむの罪が裁かれるのである。
「れいむは、どすまりさがきびしくおしえたにもかかわらずすっきりしてこどもをにんっしんっしたつみ。そして……まりさは
、よそものにもかかわらずないしょでむれのゆっくりとかんけいをもったつみ。さらに、そうしてにんっしんっしたあかちゃん
を、〝だたい〟したつみにとわれているわ。むきゅ……まちがいない?」
「ないぜ」
よそ者まりさは堂々と答えた。その美々しさに、厳粛な裁判の席であるにも関わらず、一部で黄色い声が上がる。ただ大抵の
ゆっくりは、そのおぞましい犯行に顔をしかめた。赤ちゃんを食べてしまうなんて、まるでゆっくりできていないやつらだと。
「いまはさいばんちゅうよ! とかいはじゃないひとたちはゆっくりきえてね!」
それを制してヒステリックに叫んだのは、昼間にドスまりさとよそ者まりさとの情事を目撃してから、ずっと落ち着かないあ
りすである。普段は余裕と知性に満ちた雰囲気が、今はとてもささくれ立っている。
「……れいむも、まちがいない?」
「……ないよ」
答えるれいむは憔悴しきっており、頭部にもう蔦はない。最初に産まれた赤ゆっくりをのぞいて、わずかに難を逃れていた赤
ゆっくりの素は、全てぱちゅりーとありすによって処理されていた。唯一産まれた赤ゆっくりは、今は母れいむに見守られ、裁
判には参加せず眠っている。
「むきゅ、ふたりのざいじょうはおおよそはっきりしているわ。あかちゃんをにんっしんっしたことさせたこと、そしてそのあ
かちゃんをころしたこと……」
「いぎあり、なんだぜ」
よそ者まりさが、真直ぐにぱちゅりーを見上げた。
「むきゅ、ひこくゆっくりまりさ」
「たしかにあかちゃんをころしたらじゅうざいなんだぜ。まりさはこのむれのなかまじゃないけど、それがゆっくりできないっ
てことはわかるんだぜ。でも、まだうまれてないあかちゃんをころすのは、ほんとにいけないことなのかだぜ?」
「むきゅっ……」
言葉に詰まるぱちゅりーへ、たたみかけるようによそ者まりさは続けた。
「まりさは『きいてた』からしってるんだぜ。ここではどすにえらばれたゆっくりしかすっきりしちゃいけないんだぜ。たべも
のがすくなくなるとゆっくりできないから、あかちゃんをふやさないのにはまりさもさんせいなんだぜ」
「じゃあどうして赤ちゃんを食べちゃったの!?」
たまらず口を挟んだのはドスまりさである。
あれ以来、ドスまりさとありす、ぱちゅりー、よそ者まりさの間には妙な空気が流れている。まさか、という思いが彼女には
あり、しかしそれは外れていないだろうとも察していた。……恐ろしいことに、あのよそ者まりさが手を出していたのは、れい
むだけではなかったのだ。
「きまってるんだぜ。まだうまれてないあかちゃんはゆっくりじゃないんだぜ。それにうまれてもどうせゆっくりできないんだ
から、そうなるまえにおかあさんのからだにもどしてやるのがしあわせなんだぜ。そうすればあかちゃんはうまれてもいないん
だからしんでもいないって、まえにまりさのむれにいたどすがいってたんだぜ」
その論法を理解できたかはともかく、『他のドスが言っていた』というよそ者まりさの台詞は強く群に浸透していった。戸惑
いと納得と反発の声があちこちであがった。
「ゆー……。ほかのどすが……?」
「あのとかいはなまりさはいいこというわね! にんっしんっしてもたべちゃえばつみじゃないんだわ!」
「れいぷまのありすはばかいわないでね! あかちゃんはあかちゃんだよ!」
「むきゅー! せいしゅくに! いまはさいばんちゅうよ! げほっ」
ぱちゅりーが咳き込みながら動揺を収めるが、それは歯切れの悪い、表面的なものでしかなかった。
見かねて、ドスまりさが再び口を挟む。ちなみに裁判におけるドスまりさは刑の執行役である。
「ぱちゅりー! いまはとりあえず産まれていない赤ちゃんのことは置いておいてね! それよりも罪状を明らかにすべきだよ
!」
「そ、そうね。……むきゅ、まりさ、あなたはきょうのあさ……」
れいむとすっきりし、その一部始終をドスまりさに目撃された経緯を、ぱちゅりーは問いただす。これに頷いたあとで、よそ
者まりさはさらに加えた。
「たしかにどすにはれいむとのすっきりをみられたけど、それだけじゃないんだぜ。どすはまりさとれいむのすっきりをみてじ
ぶんもすっきりしていたんだぜ。
おまけにそのあと、まりさともどすはすっきりしたぜ」
その証言に、今度こそゆっくり達に驚きが伝播していった。
若いゆっくりのまとめ役であるまりさが、いち早くよそ者まりさに食って掛かる。
「どすをぶじょくするまりさはゆっくりしんでね! どすがそんなことするはずがないよ!」
純粋なそのまりさを一瞥して、よそ者まりさは落ち着き払って答えた。
「でもじじつなんだぜ。……おまけに、どすは ど う て い だったんだぜ! まりさがどすのはつものをいただいたんだ
ぜ! おまえらはすっきりもしらないどすをありがたがってたんだぜ! けっさくだぜおわらいだぜ! すっきりきんしとかい
ってるほんにんが ど う て い ( 笑 )! だったんだぜ!? ほんとこのむれのびっちどもはさいこうにゆっくりし
てるんだぜ! すいーつ(笑)!!」
「ゆ、ゆがああああああ!!! しね! ゆっくりしねこのよそものが!! どすのすごさなんてなにもしらないででたらめい
うなあ゛あああああ!!!」
敬愛するドスまりさを嫌味たっぷりに貶されて、潔癖なまりさはその顔を怒りで赤黒く染めた。
「げらげらげら! いくらおこってもじじつはかわらないんだぜ! ほらどす、これはさいばん(笑)だぜ? ゆっくりはやく
ほんとのことをみんなにおしえてやるんだぜ!?」
「もう゛やべでよばりざああああ!」
「むきゅ! せいしゅく、せいしゅくに……! ねえ、おねがいだから! どうして、うっ、まりざ……げえーっ」
「とかいはじゃないとかいはじゃないこんなのぜんぜんとかいはじゃない……どうしてまりさがどすなんかとどすなんかとまり
さ……うそでしょまりさぁ……」
「どうてい(笑)」
「どすがっかりー!」
「どうていがゆるされるのはこゆっくりまでだよねー」
「ぎざばら!! どすをばがにするなあああああ!!!」
「ゆげっ」