「むきゅ、えらい
ゆっくりはおしろにすむものなのよ」
ある時ぱちゅりーはドスまりさにこう言った。
なんでも人間の中で地位の高い者は城という巨大な家に住み、殿様と呼ばれ、それはそれはゆっくりしているというのだ。
ドスには珍しく権力を笠に着る傾向が強かったこのドスまりさはその案をいたく気に入り、早速城の建築に取りかかった。
「むきゅ、りっぱなおしろにするにはじょうぶなどだいがひつようなのよ。
そしてそのどだいはゆっくりばしらをたてることでよりけんこになるのよ」
建材を用意し、さぁ始めるぞという段になって、またもぱちゅりーがドスまりさにこう進言した。
ドスまりさは躊躇った。ゆっくり柱とはゆっくりを生きたまま土台に埋め込むことだという。
それはまさしく同族殺しであり、ゆっくりできない行為に他ならなかった。
だが、ぱちゅりーの説得にドスまりさは渋々ゆっくり柱を立てることにした。
曰く、「おしろがあればてきにおそわれない」
曰く、「どすがゆっくりすることでむれみんながゆっくりできる」
などと群れにとって城を持つことが如何に利益のあることかを散々説かれたからであった。
しかし、一体誰を……。
群れの皆は額を集めて相談したものの、当然のごとくゆっくり柱になろうと名乗りを上げるゆっくりはいなかった。
そうこうするうち、ぱちゅりーが明朝一番に群れの近くを通ったゆっくりを捕らえてはどうかと発言した。
それはいい、群れでないゆっくりならば問題ない、とこの案は満場一致で採用された。
そして次の朝、運悪くやって来たのは、一匹のゆっくりみょんだった。
何も知らないみょんは、
「ちーんぽ!」
と声をはりあげながら、駆けていた。
群れのゆっくりたちは無言でこのみょんを捕らえると、ゆっくり柱としてそのまま土台の下に埋めてしまった。
それからというもの、土台付近では毎夜、
「ぺにす、ぺにす」
という哀れな声がどこからともなく聞こえるようになったという。
ドスには珍しく嗜虐的であったこのドスまりさはこれに味をしめ、その後も通りがかったゆっくりを数匹地中に埋めた。
この頃には群れから同族殺しに対する嫌悪は大分薄まっていた。
次に、ドスたちは石垣に取りかかった。
しかし、この石垣には卓越した石積みの技能が必要で、誰しもができることではなかった。
そこで群れで一番石積みを得意としていたゆっくりちぇんが、石垣の担当として選ばれた。
そしてひと月かけ、見事な高石垣を仕上げた。
これを見たドスが、
「このいしがきをこえられるのはとりさんいがいにいないね!」
とちぇんを褒めたところ、
「こんなのかんたんなんだよー」
と返答し、本当に易々と登ってしまった。
自らの能力を披露したつもりのちぇんであったが、ちぇんの裏切りを恐れたドスは、
ちぇんに飛び乗り、その場で潰してしまった。
その死体から漏れ出す餡を見てぱちゅりーは閃いた。
「むきゅ!これをもくざいともくざいのすきまにつめればもっとおしろはがんじょうになるわ!」
ぱちゅりーの考え通り、ちぇんの餡を詰めると木材同士の接合部のガタつきは解消された。
それを見たドスまりさの脳裏にはある考えが浮かんでいた。
(もっとゆっくりをおしろにつかえばおしろはもっとゆっくりできるようになるね……)
その後も何かと理由をつけてゆっくりは殺され、皮までもが壁に使われた。
通りがかりのゆっくりを捕まえることも絶えることはなかった。
捧げるゆっくりがいなければ自分たちがやられると、群れのゆっくりたちは理解していた。
こうして城は完成した。
多くのゆっくりたちがかり出されて出来上がったこの城の陰には、多くのゆっくりの命が捧げられた。
「むきゅ!おしろができたらぱーてぃーをするものなのよ!」
群れのゆっくりは全て城内に移り、城の落成式が盛大に行われた。
群れのゆっくりたちは城の完成までに生き残れたことを喜びあい、死んだ仲間を悼んだ。
ドスとぱちゅりーはふんぞり返って城の出来に満足していた。
その晩、城は豪雨に見舞われた。死んだゆっくりたちの怨嗟を飲みこんだかのようにどす黒い雲は雨を降らせ続けた。
大量の水分が城に入り込んでしまい、ゆっくりで作られた部分から城は崩壊した。
群れは全て建材で押し潰され、貫かれ、引き裂かれた。
ぱちゅりーもご多分に漏れず、落ちてきた欄間に分断され死んだ。
ドスは崩壊後もその巨体のせいかまだ生きていた。
しかし、体の至る所は破れ、餡子の損失は著しかった。
その上この雨である。日が昇る頃にはドスのいた場所には黒い水たまりしか残っていなかった。
一部丸亀城の説話から抜粋。
最終更新:2008年11月08日 13:20