まあ聞くがよいゆっくりどもよ。おまえたちのためになる話じゃて。
おまえたちは人のものを勝手に盗んだり、人の家に勝手に入り込んで荒らしたりととんだたわけどもじゃ。
それらも勘弁しがたいことじゃが、おまえたちは仲間にもむごいことをしおる。
飾がないだの亜種だの畸形だのと馬鹿にしては責め殺してしまうではないか。挙句の果てには同属をも喰らうときている。
よいか、そういうゆっくりには必ずバチが当たるのじゃぞ。神さまはどこにでもおらっしゃる。そして見てらっしゃるのじゃ。
さて、おぬしら外道に当たるバチのひとつについて教えてやろうかの。
あるところに、“ゆっくり屋敷”という屋敷があるそうな。
盗みなどの悪たれを働いた帰りに、ゆっくりは深い霧に遭う。どんなに天気が良くとも、いつの間にか霧に巻かれるのじゃ。
霧の中を闇雲に歩いていると遠くに灯りが見えてくるのだという。おぬしらは愚かゆえにそれを救いの灯だと疑いもせずに駆けていくことじゃろうよ。
灯りに近づいていくと、大きな屋敷が霧のなかからぼうっと浮かび上がってくるという。
屋敷からはかすかにゆっくりゆっくりと楽しげな声が聞こえてくる。
その声に誘われて屋敷の玄関にまでたどり着くと、扉になにか書かれているのがわかるじゃろう。
その文は「どんなゆっくりでも遠慮せずにゆっくりしていってね! おいしい食べ物や楽しい遊びでゆっくり歓迎するよ!」と読める。
おぬしらは一休みさせてもらおうと入るかもしれん。横着にもここを自分の家にしようと思うかもしれん。
まあどのみち屋敷に入るしかあるまい。例えきびすを返して去ろうとも、再び霧の中から屋敷が現れる。もはや逃れられんのじゃ。
屋敷に入り通路を進んでいくと大広間に突き当たる。そこには多種多様おびただしい数のゆっくりたちがゆっくりしておる。
大広間は豪華に飾られており、最上のクッションと椅子、いかにも楽しげな玩具があり、大テーブルの上にはありとあらゆる珍味佳肴が山のように盛られておる。
ゆっくりたちはそこで、食えや飲めや遊べやゆっくりすっきりと、ゆっくりの尽きぬこの世の楽園のように見える。
だがしかし、それはすべて見せかけにすぎぬ!
食物はすべて腐っていて酷い味がし、よくよく見ればすべてゆっくりを調理したものではないか!
だが一口でも食せば、果て無き飢えがおぬしらを襲い、喰い続けるしかないのじゃ。喰いすぎで皮が爆ぜ、食べ物が漏れ出してもな。
クッションや椅子は体を乗せたが最後! 鉄線と鉤爪が飛び出し愚かなゆっくりを苦痛と共に拘束し、二度と逃れることはできぬ。
玩具もそうじゃ。これらにはすべて罠が仕掛けられており、触れれば拘束され、恐ろしい拷問を永遠に受け続けることになる。
いたるところですっきりしているゆっくりたちは、おぬしらの眼から見れば微笑ましいものなのじゃろうが、よく見てみればおかしいことに気がつくじゃろう。
終わりがないのじゃ! 延々と延々とすっきりし続けておる。餡を使い果たしミイラのように干からびてもすっきりは終わらせられん。
絶え間なく子が生れ落ちるがそれらはすべておぞましい畸形じゃ。畸形どもは呪われた誕生を祝して跳ね回り親を囃し立てる。
何かに触る前にこの屋敷の本性に気がつけた、多少は賢しいゆっくりも、もはやその運命は窮まっておる。
屋敷から出ようとして、大広間に無数にある扉のどれをくぐっても、待っているのは複雑極まりない迷路じゃ。
その迷路を延々と彷徨った挙句、迷路を徘徊する恐ろしい何物かに食われるか、大広間に逆戻りするかのどちらかじゃ。
そしてこの屋敷の真の恐怖は、ここでは誰も死ぬことができぬということじゃ!
そこかしこに腐り果てたゆっくり、引き裂かれたゆっくりを見出すじゃろうが、それらはすべて生きておる。どんな目にあっても死ねぬのじゃ。
また、ここに入ったすべてのゆっくりはゆっくりすっきりむしゃむしゃしあわせせなど、ゆっくりにとって肯定的な言葉しか喋れぬようになる。いかにも楽しげな声でな。
だがその顔は苦痛と恐怖と絶望でひきつっておるのじゃ。
この屋敷を誰が建てたかはわかってはおらぬ。おそらくは妖怪の仕業じゃろうか。もっと恐ろしいものやもしれん。
ゆっくりの身勝手で欲深な性向を嫌う何者かがその生き様を皮肉ってやるために建てたことは間違いあるまいて。
どうじゃ恐ろしいじゃろう? 恐ろしいと思ったのなら今回だけは許してやろう。もう盗みなどしてはいかんぞ! さあ帰った帰った!
「ひどいもうそうだったね!」
「ばかなじじいだったね!」
「かんぜんにだまされていたよね!」
「ちょろいもんだよね!」
「ちーっともこわくなんかないよ!」
「あんなのほんとうなわけないも~ん!」
「かみさまはゆっくりのみかただよ!ゆっくりがいちばんえらいんだよ!」
「ゆっくりのゆっくりをじゃまするにんげんのほうにバチがあたるにきまってるよ!」
「ゆ!なんだがきりがでてきたよ!」
「そういうきせつだからだよ!しぜんげんしょうだよ!」
「はやくゆっくりプレイスにかえろう!」
「ゆ!なんだろうあのあかり……」
最終更新:2008年11月08日 18:59