森の奥深く、木々の開けた場所で
ゆっくりたちは思い思いにゆっくりと過ごしていた。
歌を歌うゆっくり、蝶を追うゆっくり、雑談を楽しむゆっくり。
それらに囲まれドスはいた。
ゆっくりしている群れを見て顔は緩みっぱなしだ。
ドスはほかのゆっくりにゆっくりしてもらうことを至上の喜びとする。
ならば今こそが、ドスにとっては最高にゆっくりできているときに違いなかった。
「ゆふぅ、きょうはとてもいいゆっくりびよりだよ~」
トスッ。
「ゆ?」
軽い音と共にドスは自分の額に軽い衝撃を感じた。
なんだろう?
その疑問の答えはそばにいたれいむが教えてくれた。
「ど、どすうううううううう!!!どすになにかささってるうううううううう!!!!」
その正体は矢だった。
それが今自分に刺さってると理解した途端、ドスは激しい痛みに襲われた。
「いだいいだいいだいいだいいいいいいいいいいいいい!!!!!
だれかこれぬいでええええええええええええええ!!!!!」
ドスンドスンと跳ねて暴れまわる。
「どす、おちつくのよ!いまぬいてあ、む゛ぎゅるっ!!?」
「ゆゆ!?ぱちゅりーがふっとばされたよ!」
「ゆっくりしてね!ちかづけないよ!」
ドスの巨体で暴れられては他のゆっくりたちではひとたまりもない。
弾き飛ばされたぱちゅりーは泡を吹いて気絶してしまった。
それを見たゆっくりたちはドスとの距離を保ち、遠巻きにみているしかなかった。
時折勇気を出してドスに近づくゆっくりもいたが、ぱちゅりーの後を追うという結果にしかならなかった。
しばらくするとドスは体力を使い切ってしまったらしく、ぜはぜはと口から汁を垂らしながらへたりこんだ。
「いまだよ!どすをゆっくりとりおさえるよ!」
「「「えい!えい!ゆー!!」」」
これをチャンスとばかりにゆっくりたちはドスに飛びかかり、ようやく動きを抑えることができた。
「いだいよ……いだいよぉぉおおおおお……」
「だいじょうぶだよ!いまぬいてあげるよ!」
刺さった矢を数匹がかりで咥え込むと全力で引っ張りあげた。
「ゆ~、なかなかかたいよ!ぐりぐりぬくね!」
「「「ぐ~りぐ~り」」」
「ゆっぎゃああああああああああああああああああ!!!!!」
滝のように涙を流し身をよじるが、体力を失った上に取り押さえられてる為に身動きは全くできなかった。
「「「ゆ~んしょっ!!!」」」
ずぼぉっ!
「ゆんぎっ!!!……ゆひゅー……ゆひゅー……」
額に小穴が開き、息も絶え絶えだったがドスはようやく痛みから解放された。
その一部始終を遠くで眺めていた男がいた。片手には弓をもっている。
「あちゃー、失敗だ。
餡子中枢ってのを外しちまったかな?」
男は付近の村の猟師であった。
普段はキジなどを射って糧としているのだが、今回の目的はドスの射殺だった。
「眉間を狙った程度じゃ致命傷にはならねぇか、一旦帰ってゆっくり解体新書を見直してくるか」
そう言い残し、男はその場を後にした。
翌日、同じ所でゆっくりたちはたむろっていた。
あのドスも一緒である。
「普通昨日みたいなことあったら場所を変えるか、しばらくでてこないかするだろ……」
呆れながら弓を構え、狙いをつけようとしたとき、男の目にあるものが映った。
他の遊んでるゆっくりたちとは別に、ドスを囲むように壁となっているゆっくりがいたのだ。
隙間は全くと言っていいほどなく、まさに饅頭の壁であった。
「どす!これでゆっくりできるよ!」
「みんなありがとう!ゆっくりするよ!」
男は驚愕した。
ドスの口から下を覆うゆっくりの壁、そしてその上から見えるドスのふてぶてしいゆっくりとした顔。
「なんてこった……丸見えじゃないか!」
男は弓を射かけた。
「ゆっぎゃあああああああああああああああ!!!!!?」
「ゆゆ!?そんな!ゆっくりけいごしてたのに!」
「ここはあぶないよ!ゆっくりはなれりゅぶぇっ!!!?」
矢は人で言うところのちょうど鼻の部分に深々と刺さり、ドスは昨日と同じくのたうちまわった。
ドスに張り付いて警護していたゆっくりたちは次々と吹き飛ばされていった。
その後は昨日の焼き増しである。ドスには穴がもう一つ増えた。
「んー、あれでもまだ死なないか。
なんでだ?場所はしっかりあってたはずなんだが……」
首をかしげながら男はその場を後にした。
それから数日後、男はまたしてもやってきた。
「いけねぇいけねぇ、ありゃ普通のゆっくり用の殺り方だったわ。
あれだけの大物になるとやっぱこれがなきゃな」
そう言うと持ってきた籠の中から真っ赤な何かが入った瓶を取り出した。
トウガラシをすり潰し、粘性がでるまで煮詰めて凝縮したものだ。
鏃にしっかりと塗り込み、獲物に狙いをつけようとしたが……。
「おお?いねぇじゃないか?」
以前までゆっくりで賑わっていた場所にはゆっくり一匹いなかった。
これはどうしたことかと考えあぐねていると、一匹のゆっくりれいむが目の前を通った。
「ん?こりゃちょうどいい、おい!」
「ゆ?ゆっくりしていってね!」
「おうよ。ところでここらにいた群れについて知らねぇか?」
「ゆ、ここらへんにいたどすたちならどっかいったよ!
ここはゆっくりできないっていってたよ!
いっぱいごはんあるのにへんなこというどすだよね!」
「……あ~そうか、そうだわなぁ、連日ああなりゃそうなるか」
どうやらこれ以上痛い目にあわないようにどこかに行ってしまったらしい。
もっと早めに間違いに気づくんだったと男は嘆いた。
「あー失敗したなぁ」
「ゆゆ?どーしたのおじさん?げんきだしてね!」
しょげる男を心配して足もとですりすりするれいむ。
それを見て男は元気づけられる気がした。
「そう、だよな!また探せばいいんだよな!
ありがとよ!れいむ!」
「ゆ~、れいにはおよばないよ~」
顔を赤らめながら体をよじるれいむ、照れているようだ。
「そう言わずに礼を受け取ってくれよ」
「ゆゆ~おじさんがそこまでいうならもらってあげないでもないよ~」
「じゃあ、あ~んしてみ、あ~ん」
「あ~ん」
べちゃり。
「ゆ!?がらい゛!がらい゛いぃいいいいいいいい!!!」
贅沢に一瓶丸ごとぶち込むと、のたうち回るれいむを尻目に男は帰途についた。
「みず!!おみずううううう!!!!ゆっくり゛でぎないよお゛お゛お゛おおおお」
最終更新:2008年11月24日 18:51