「じゃあ行って来るよ」
「行ってらっしゃいタケちゃん」
「バーブー」
「
ゆっくりいってきてね!!!」
いつも通りの平和な朝の風景。若い夫婦に生後三ヶ月の息子、そして一匹の飼いゆっくりれいむ。
夫の仕事は順調で、妻は美しく優しい。そして息子は健康そのものでゆっくりは悪戯もしない賢いゆっくり。
はっきり言って百人が百人とも羨むような素晴らしい家庭である。
そんな和やかファミリーも朝食を終え、ゆっくりと寛いだ時間帯に突入している。
母親は食器を洗い家の掃除を始め、子供とれいむは別の部屋でゆっくりしている。
このゆっくりれいむはこの家の小さな子供を大変可愛がっていた。
今も子供が退屈しないよう、顔芸等をして一緒に遊んでいる。
「ゆっくりばぁ~!!!」
「HAHAHA!Nice joke!!」
決して喋っている訳ではない。たまたま喋っているように聞こえるだけである。
会話など無くとも、この一人と一匹はそれなりに心が通じ合っていた。
何しろれいむがこの家に飼われ始めてすぐにこの子は生まれたのだ。言わば兄弟のようなものである。
ところでこの子供には変わった癖がある。
隙あらば一緒に遊んでいるれいむの口の中にもぐりこもうとするのだ。恐らく暖かくて居心地が良いのであろう。
れいむはそれを内心では嫌がりながらも、子供が嬉しそうなのでついつい許してしまうのだ。
不幸な事に、母親がその事を一切知らなかった事と、れいむが大口を開けて子供を招き入れようとする現場に遭遇してしまった事である。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
絹を引き裂くような悲鳴が轟く。突然の事に驚いてれいむは思わず口を閉じてしまう。
「いやああああああああ!!!たかし!!たかしいいいいいいいいいいいい!!!!」
母親は半狂乱になってれいむの口をこじ開け、驚いている子供を抱き上げた。
「なな、何て事するのよ!!やっぱりこんな得体の知れない物飼うんじゃなかった!!大丈夫崇?どこも痛くない?」
れいむの鈍いゆっくりブレインでも、一体どういう誤解を受けているのかは分かった。
「ち、ちがうよ!!れいむはたかちゃんをたべてなんかいないよ!!あそんであげてただけだよ!!!」
「黙れえぇぇ!!!このっ…………化け物ぉ!!今まで可愛がってあげた恩も忘れて……お前なんか死んでしまえ!!!」
「ゆぅっ!!?」
泣きながら怒りで顔を真赤に染めた母親に怯え、泣き叫ぶ子供を抱きしめたまま、母親はれいむを踏み潰そうとした。
慌てて避けるれいむ。何とかして誤解を解こうと必死で説明する。
「ちがうんだよ!!いつもこうやってあそんでるんだよ!!れいむはたかちゃんをたべたりしないよ!!!」
「まだ言うの!!この人殺しぃ!!!」
「ちがぎゅぶっ!!!」
尚も釈明しようとして蹴り飛ばされ、偶々開いていた窓から外に放り出された。
「も、もう二度とここに近寄らないで!!!今度来たら殺してやる!!!」
「ゆぅ………………さようなら!!!ゆっくりしていってね!!!」
誤解を解く事は不可能だと思ったのか、寂しそうな顔をして別れを告げ去っていくれいむ。
子供はその後姿を泣きながら見送っていた。