ゆっくりいじめ系191 撲滅運動

「じゃあ行って来るよ」
「行ってらっしゃいタケちゃん」
「バーブー」
ゆっくりいってきてね!!!」
いつも通りの平和な朝の風景。若い夫婦に生後三ヶ月の息子、そして一匹の飼いゆっくりれいむ。
夫の仕事は順調で、妻は美しく優しい。そして息子は健康そのものでゆっくりは悪戯もしない賢いゆっくり。
はっきり言って百人が百人とも羨むような素晴らしい家庭である。
そんな和やかファミリーも朝食を終え、ゆっくりと寛いだ時間帯に突入している。
母親は食器を洗い家の掃除を始め、子供とれいむは別の部屋でゆっくりしている。
このゆっくりれいむはこの家の小さな子供を大変可愛がっていた。
今も子供が退屈しないよう、顔芸等をして一緒に遊んでいる。
「ゆっくりばぁ~!!!」
「HAHAHA!Nice joke!!」
決して喋っている訳ではない。たまたま喋っているように聞こえるだけである。
会話など無くとも、この一人と一匹はそれなりに心が通じ合っていた。
何しろれいむがこの家に飼われ始めてすぐにこの子は生まれたのだ。言わば兄弟のようなものである。
ところでこの子供には変わった癖がある。
隙あらば一緒に遊んでいるれいむの口の中にもぐりこもうとするのだ。恐らく暖かくて居心地が良いのであろう。
れいむはそれを内心では嫌がりながらも、子供が嬉しそうなのでついつい許してしまうのだ。
不幸な事に、母親がその事を一切知らなかった事と、れいむが大口を開けて子供を招き入れようとする現場に遭遇してしまった事である。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
絹を引き裂くような悲鳴が轟く。突然の事に驚いてれいむは思わず口を閉じてしまう。
「いやああああああああ!!!たかし!!たかしいいいいいいいいいいいい!!!!」
母親は半狂乱になってれいむの口をこじ開け、驚いている子供を抱き上げた。
「なな、何て事するのよ!!やっぱりこんな得体の知れない物飼うんじゃなかった!!大丈夫崇?どこも痛くない?」
れいむの鈍いゆっくりブレインでも、一体どういう誤解を受けているのかは分かった。
「ち、ちがうよ!!れいむはたかちゃんをたべてなんかいないよ!!あそんであげてただけだよ!!!」
「黙れえぇぇ!!!このっ…………化け物ぉ!!今まで可愛がってあげた恩も忘れて……お前なんか死んでしまえ!!!」
「ゆぅっ!!?」
泣きながら怒りで顔を真赤に染めた母親に怯え、泣き叫ぶ子供を抱きしめたまま、母親はれいむを踏み潰そうとした。
慌てて避けるれいむ。何とかして誤解を解こうと必死で説明する。
「ちがうんだよ!!いつもこうやってあそんでるんだよ!!れいむはたかちゃんをたべたりしないよ!!!」
「まだ言うの!!この人殺しぃ!!!」
「ちがぎゅぶっ!!!」
尚も釈明しようとして蹴り飛ばされ、偶々開いていた窓から外に放り出された。
「も、もう二度とここに近寄らないで!!!今度来たら殺してやる!!!」
「ゆぅ………………さようなら!!!ゆっくりしていってね!!!」
誤解を解く事は不可能だと思ったのか、寂しそうな顔をして別れを告げ去っていくれいむ。
子供はその後姿を泣きながら見送っていた。

『飼いゆっくりが人間の子供を食べようとした』
このニュースは瞬く間に人々の間に知れ渡った。
これを機に、「ゆっくり被害対策委員会」は「ゆっくり撲滅委員会」と名を改め、
その活動内容をゆっくりによる農作物や人家への被害を防ぐ事から、ゆっくりという生物の根絶へと改めた。
『人間が本気でゆっくりを滅ぼしにかかった』
この事実は、事の始まりとなった『人喰い』ゆっくりの存在と共に野生のゆっくり達の間にも広まっていった。
委員会は全ての野生のゆっくりに懸賞金をかけ、懸賞金目当てにゆっくりを狩るハンターが大勢現れた。
彼らは次々とより効率的な駆逐法を考案し、ゆっくり達はどんどんその数を減らしていった。
そのうち野生のゆっくりの中から保身に走る者が次々と出てきた。
巧妙に隠された家族の巣の在り処を人間に伝えれば助かるという妄想を抱いたのだ。
それらの裏切り者を、人間は徹底的に利用した。
発信機を埋め込み、同じゆっくりの視点から新しいゆっくりの巣の発見を手伝わせたのだ。
この策はかなり有効だった。裏切り者の殆どは巣の隠蔽に長けたゆっくりまりさであり、
殺されずに保護された事で完全に人間が自分の味方になったと考え、積極的に仲間の巣を探し、発見し、報告した。
中には野生のゆっくりのフリをして群れに紛れ込み、大規模集団の発見・殲滅に貢献した者も居た。
これらスパイの活躍もあり、ゆっくり撲滅運動が始まって僅か一年足らずで野生のゆっくりはほぼ全滅した。
また、その頃には飼いゆっくりも暴走したハンターに狩られ、居なくなっていた。
それから一年間、野生のゆっくりの発見報告が一度も入らなかった事から、
撲滅委員会スパイゆっくり全てを殺処分し、ゆっくりの絶滅を宣言し解散した。
ゆっくりが突如として全国に発生してから僅か三年後の出来事だった。

二十年後
立派に成長した崇は、大学生活最後の夏休みを利用して全国の山を登りまくる計画を立てていた。
最初に挑戦したのは標高3776メートルの霊峰。その中腹で、彼は遭遇した。
「ゆっくりしていってね!!!」
ゆっくりれいむである。相当に大きく成長したその姿は、かなりの年月を生きていたと思われる。
「な、何だこりゃあ?」
既にゆっくりが絶滅して二十年が経っている。若い崇がゆっくりの事を知らないのは当然の事だった。
「ゆっくりたべものをちょうだいね!!たべのこしでもいいよ!!!」
「と、特に危険は無い……のか……?」
恐る恐るポケットからカロリーメイトを取り出し、目の前に放り投げた。
「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせー!」
「は、ははっ。よく見たらちょっと可愛いかもな」
食べる際に牙が見えず、噛む力もそれ程強く無さそうな様子からすっかり安心した崇は、れいむの頭をそっと撫でてみた。
「ゆふぅぅ……おにいさん!もっとちょうだいね!!」
「ん?あぁいいぞ。ほれ」
もう一本カロリーメイトを取り出して、今度は掌に乗せて与えてみる。
「わーい!むーしゃ♪むーしゃ♪しあわ…………ゆっ?」
「何だ?」
食べる途中で何かを考え込み始めたれいむ。不思議そうな顔をする崇の掌をべろりと舐める。
「何だよくすぐったいぞ」
「ゆぅぅ…………!たかちゃんだ!!」
「あ?」
「おにいさんたかちゃんでしょ!!!れいむだよ!!おぼえてるでしょ!!!」
「何だそりゃ?俺はお前なんか知らないよ」
「うそだよ!!れいむおぼえてるもん!!このあじはたかちゃんのあじだよ!!!」
「知らん。大体何で俺の名前を知ってるんだお前?何だか気味が悪いな……」
「そんなことないよ!!れいむはかわいいよ!!たかちゃんはれいむのおくちのなかであそんでたんだよ!!!」
「何なんだこいつ……」
「ねえねえ!!れいむもたかちゃんのおうちにつれていって!!!いいでしょ!!!」
「う、うわ…何かヤバいかも。じゃ、じゃあな生首。着いて来るなよ」
気味悪そうにして足早にその場を離れようとする崇。必死でその脚にすがりつくれいむを、
「ねえねえつれていってよ!!またたかちゃんとあそびた「く、来るなよ!!」ゆびゅぐっ!!!?」
思わず蹴り飛ばす崇。蹴り飛ばされたれいむは近くにあった岩にぶつかり、中身を吐き出して倒れた。
「あ、餡子……?マジで気持ち悪ぃな。さっさと行こう」
足早にその場を去る崇。れいむはその後姿を目だけで追いながら、絶命するまでの数分間ずっと呟き続けていた。
「たが……ぢゃん……あぞ……ぼ……よ……」

EXTERMINATED!


作:ミコスリ=ハン

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最終更新:2008年09月14日 06:12
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