『誰にでもは出来ないお仕事』
※ついつい急ぎ書きなぐってしまいました……
※とあるSS作家さんに捧ぐ……といえるほど大したものじゃありません(汗)
幻想郷のどこか、妖怪の山や外から来た湖のさらに向こう。
切り立った谷の上、少し寒い風の吹く小さな花畑に、彼女らはいた。
ずんぐりむっくりした身長1mほどの幼女体型に、ピンク色のおべべと帽子。
背中には、申し訳程度に黒く小さな羽がはえている。
1匹、また1匹と、その場所に集まってくるのは、
ニコニコと下膨れスマイルを浮かべあう"ゆっくりれみりゃ"達だ。
「う~う~♪ うぁうぁ~♪」
「うっうー♪ おぜうさまたちがいっぱいだどぉー♪」
「みんなえれがんとだどぉー♪ かりしゅまもりだくさんだどぉー♪」
集まるれみりゃの数は増えていき、今や30に迫ろうとしている。
初めて会うれみりゃ達は、互いの可愛さを褒め称えあいながら、"うぁうぁ"踊りあい、歌いあう。
「れみりゃはかわいいどぉー♪ さっすが、もりのおぜうさまだどぉー♪」
「うーうー♪ れみりゃのだんすもさいこーにしぇくしぃーだどぉー♪ めろめろになっちゃうどぉー♪」
「おともだちいっぱいで、れみりゃうれしぃどぉー♪ みんなおぜうさまのこーまかんにあそびにきてだどぉー♪」
実にゆっくりした、楽しいひと時。
れみりゃ達はすぐに仲良くなり、この出会いを感謝し、喜び合った。
「うー♪ まんまぁ~☆おぜうさまがいっぱいだどぉー♪」
「うぁ☆あかじゃ~ん♪ みんなにごあいさつするどぉ~♪」
そんなれみりゃ達の集まりに、遅れて親子のれみりゃがやって来た。
親子のれみりゃは、腕をぐるぐる、羽をぱたぱた、お尻をぷりぷり左右に振り始める。
親愛の情を全身で表現する、れみりゃ種特有の"のうさつ☆だんす"だ。
「「「うぁー♪ のう☆さつ☆だんすだどぉー♪」」」
そのダンスにつられて、周りのれみりゃ達も自慢の"のうさつ☆ダンス"を踊りだす。
ダンスのクライマックス『れみ☆りゃ☆うー♪ にっぱぁー♪』をやる頃には、全員が気の置けない仲になっていた。
「うー♪ いいあせかいたどぉー♪」
「おからだ、ぽかぽか☆するどぉー♪」
「あーぅあぅー♪ おぜうさまは、"おしごとまえ"のじゅんびうんどうもえれがんとだどぉー♪」
「仕事前」……1匹のれみりゃは確かにそう言った。
そのれみりゃに呼応するように、他のれみりゃ達もそれぞれ、
お帽子の中から1枚の紙切れを取り出して"おしごと"について語り合いだした。
その紙切れには「ぎゃおー♪」と下膨れスマイルを輝かせるれみりゃザウルスのイラストと、
イラストにそえられるように数行の平仮名が書かれていた。
『だれにでもできるかんたんなおしごとです♪』
『えれがんとにとべるゆっくり、とくにおぜうさまだいかんげい♪』
『びっぷをおでむかえしますので、それにはじないかりすま☆がもとめられます』
『じきゅう、ぷっでぃ~ん☆3つ♪ おうそうだんです』
『しゅうごうばしょは・・・・・・』
それは、まさしくれみりゃ達に対する求人情報だった。
この場所に集まっているれみりゃ達は、ぷっでぃ~ん☆を得ようとこの仕事に応募したのだ。
「う~♪ あがじゃんまってるんだどぉ~♪ いま、まんまぁーがぷっでぃ~ん☆もらってきてあげるどぉ♪」
「まんまぁーありがとぉーだどぉー♪ れみぃー、だいじにだいじにぷっでぃ~ん☆たべるどぉ~♪」
一番後に来た親子のれみりゃも、両手で頬をおさえて、報酬のぷっでぃ~ん☆を期待している。
大好きなぷっでぃ~んを親子そろって食べる光景を思い描き、幸せに身もだえするれみりゃ親子。
そうこうしているうちに、一人の人間がれみりゃ達の前に現れた。
そして、れみりゃ達に仕事の指示を始めるのだった……。
* * *
10分後、そこには谷の対岸を結ぶ、
奇妙な"れみりゃの橋"が出来上がっていた。
人間の指示の下、1匹のれみりゃが谷の向こう側まで飛び、対岸の大地に手をかける。
続いて、別のれみりゃを対岸へ飛ばし、谷の上をパタパタ浮遊させながら、先にいるれみりゃの足を持たせる。
それを永延と繰り返し、総勢30匹のれみりゃからなる、橋が完成する。
しかし、たまらないのはれみりゃ達だ。
れみりゃ種は、一様にぷよぷよふにふにした手足と、ずんぐり重たいお尻が特徴だ。
筋力の低いれみりゃ達では、この組体操のような姿勢を保つのは、非常に重労働だった。
「う~! れみりゃのかわいいおててがぁ~!!」
「うぁぁー! れみりゃのかぼそいあんよがいたいどぉー!!」
「もういやだどぉー! こんなのおぜうさまらしくないどぉー!!」
「ぷっでい~んもっでぎでぇ~! じゃなきゃ、さくやにいいつけてやるどぉ~!!」
あるものは頬を膨らませて、あるものは涙ぐみながら、不満や助けを叫ぶれみりゃ達。
一方、れみりゃ達を求人した男は、そんならみりゃ達を満足気に眺めて頷いた。
その人間の傍らには、サイズが小さいために「橋」になることから免れた子れみりゃがいる。
橋の先頭で対岸の地面をおさえて"うーうー"と声を漏らす親れみりゃを見ながら、
子れみりゃは"うぁうぁ♪"リズムを刻みながら声援を送っている。
「まんまぁ~がんばるんだどぉ~♪ れみぃーもがんばって"のうさつ☆だんす"でおうえんするどぉー♪」
と、その時だ。
人間と子れみりゃの後方から、ドドドドドという地鳴りにも似た音が聞こえてきた。
その音は次第に大きくなり、どんどん近づいてくる。
「う、うぁ? にんげんしゃん、あれなんのおとだどぉー?」
子れみりゃは近づく音にそわそわしながら、傍らの人間の裾を引っ張った。
それに対し、人間は何も答えず、ただ子れみりゃの頭を撫でながら微笑んだ。
「う、うー! かってにれみぃのおぼうしおさわりしちゃだめなんだどぉー♪」
男に帽子を触られるのを嫌がり、音の方へ振り向く子れみりゃ。
次の刹那、音の正体を見て、子れみりゃは目を見開いて叫んだ。
「うぁぁぁぁーーーー!!!」
そこにいたのは、凄まじい速さで走る、馬の頭のついたキノコだった。
「しゃくやぁぁーー!! まんまぁーー!!! こぁいひどがいるよぉぉーーー!!!」
ドドドドドドドドッ!
地響きの主は、何も言わぬまま、子れみりゃと人間のわきを通り過ぎていく。
混乱し、滝のように涙を流す子れみりゃの叫びは、その音の前にかき消されてしまう。
そして同じように。
馬頭のついたキノコが谷を渡る際、
足下の橋から次々に発せられる叫び声が誰かに届くことは無かった。
「「「ぷんぎゃぁぁぁーーーー!!!」」」
ドドドドドド……。
地響き音は、あっという間に谷を越えていく。
踏みつけられ、耐え切れずに谷へと落ちていくれみりゃ達の叫びを背に受けて、
馬の頭のついたキノコは地平の彼方へ消えていった。
「…………」
人間は、霞んでいくキノコの姿を確認してから、その場を後にした。
この人間もまた、とある別の人間に雇われた存在でしかない。
人間は依頼主へ報告をすべく、幻想郷の森の中へと消えていった……。
* * *
一方、谷の底では、一定のリズムでながれるせせらぎが乱れ、
川の中からぬぼぉーっとした影が現れた。
「う~~~! ごぁがったどぉ~~~!」
ひたひたと、自慢のおべべを水浸しにして、水の中かられみりゃが這い出てくる。
れみりゃは肩で息をしながら、川辺にペタンと座り込み滝のような涙を流した。
すると、水面が次々に乱れ、ざばーざばーとれみりゃ達が陸へ上がってきた。
「う~~、びっくりしちゃったどぉ~~♪」
「ざむいどぉ~~! びちょびちょきもぢわるいどぉ~~!」
「あのにんげんしゃんはゆっくりできないどぉー! さくやにいぢめてもらうどぉー♪」
「れみりゃのおぼうしがぁー! だいじだいじがどっかいっちゃったどぉー! うわぁぁぁーー!!」
あるものは安堵し、あるものは涙ぐみ、あるものは泣き叫びうろたえて、れみりゃ達は川辺で体を休める。
その中で、橋の先頭で対岸の大地を支えていた親れみりゃが、そわそわパタパタ羽を動かし始めた。
「う~、あがじゃんにあいたいどぉ~」
「そうするがいいどぉ~♪ きっとしんぱいしてるどぉ~♪」
友達になったれみりゃにも促され、親れみりゃは崖をパタパタ登っていく。
その上で待っていてくれるだろう、愛する我が子の下膨れスマイルを胸に描いて。
「あがじゃんといっしょにこーまがんにかえるどぉー♪ きょうはいっしょにあまあまぱーてぃにするどぉー♪」
崖は思った以上に高く、れみりゃのパタパタ☆では中々上がりきることができない。
それでも親れみりゃは「うーしょ♪うーしょ♪」と額に汗を浮かべながら、
とうとう夕焼けの照らす崖上の花畑にまでたどり着いた。
そして、親れみりゃは、きょろきょろあたりを見回す。
その時親れみりゃは、川の水以上に冷たい汗が流れるのを感じた。
「う~? れみりゃのあかじゃ~ん?」
* * *
ドドドドドッ!
走り抜ける馬の頭のついた巨大キノコ。
その馬の頭には、数々のゆっくりがくくりつけられていた。
そして、そのキノコのカサの上には、おべべの引っかかった子れみりゃがいた。
「う~♪ おまんじゅうだどぉー♪ あまあまいっぱぁ~い♪」
「「「どぉーじで、れみりゃがいるのぉぉーー!?」」」
ゆっくりれいむ達を見て、ヨダレをたらす子れみりゃ。
「まんまぁーといっしょにおまんじゅうたべるどぉー♪
う~♪ れみぃーをはやくまんまぁーのところへえすこーとしてねぇーん♪」
ドドドドドッ!
地響きが如く移動音は、止むことがない。
どこかにあるだろう目的を目指してか、それとも移動すること自体に意味があるのか。
「う、うー?」
果て無き旅路は続いていく。
子れみりゃの声は、その音の前にかき消され、届くことはなかった……。
おしまい。
※3月7日更新:誤字脱字修正しました(by ティガ)
最終更新:2022年05月03日 23:54