※俺設定などさまざまなものがありますので要注意



「おぅ・・・おおぅ・・・」
情けない声を出している俺は単なるお兄さんだ。
なぜこんな絶頂に達しそうな状態の声を出しているかというと、庭に植えた果物の木が育っており、とても小さいが立派な果物をぶら下げていたからだ。
ホームセンターで安い苗を買い、「桃栗三年柿八年」ということわざの元、気長に待って育てていた。


最初は30cm位しかなかった苗木も、3年以上経つと5倍の1m位の若木に成長し、花もつけ、そしてたった一つだが小さな実がなっていた。
この木事態まだ若い木なので実は小さいが、それでも細い枝に重そうにぶら下げている立派に出来た実を見て、俺は喜んだ。


だが、先ほどの声の通り、絶頂に達しそうで達していない。
なぜなら、出来た実はあまりにも小さいからだ。とても人が食べられるような代物ではない。

だが、そんなことはどうでもいい。俺自身、果物がなる木を育てるのは初めてだし、初心者だから育てても

「これ本当に果物がなるのか?詐欺なんじゃね?」

と育てている上で何回思ったことやら・・・。
まぁ、これは俺が初心者だから仕方が無いのだが。

だから実がなったことを確認し、俺は喜んだ。これは本当に果物の木だと。
農家の人がこの俺を見れば失笑物だが、そこは俺が初心者ということで目を瞑っていただきたいものだ。

木になっている果物を確認し、記念に写真を撮った後、俺はきびすを返した。
あの果物はまだ小さいし、食べれるようなものじゃない。ほっといても大丈夫だ、取られても痛くも痒くもない。
もうちょっと成長したらどうなるのか・・・、そう考えながら家へと引き返した。




家に人間が帰ったのを確認すると、奥の草むらから黒い山高帽がちょこちょこと動いていた。


「ゆっへっへ・・・、あんなところにくだものさんがなっているんだぜ!!いいものをみつけたんだぜ!!」

まりさは偶然通りかかっただけだが、あの果物をみて小躍りした。なにせ、ゆっくりにとって果物は大変貴重なものである。
果物がたくさん出来る木は、とても大きくそして高く成長しているので、人間じゃないと取れない。
高く飛べないゆっくりからすれば、地面に偶然落ちたおこぼれに預かるしかないのである。

無論、他のゆっくりも狙っているので、競争が激化するのは火を見るより明らかだ。場合によっては死傷沙汰になるのも不思議ではない。


だから、まりさは普段ゆっくりが寄り付かない人里に偶然寄ってみたら、このような幸運にめぐり合えたということなのだ。


さっそくまりさは周りに人やゆっくりがいないのを再確認し、その果物を取ろうとしたら、根元に小さな札が立ててあった。
札を見て、その果物がどんなものかを知るためのものだろうとまりさは即座に理解した。
野生で生きるうえでは、野草や木の実、キノコのことを知るということはとても必要なことである。
まりさは、その札の前に立ち、それを読もうとしたが・・・

「ゆゆぅ・・・・むずかしくてよめないんだぜ!!もうどうでもいいんだぜ!!さっさともってかえるんだぜ!!!」


ゆっくりにとって読めない漢字で書いてあったため、どんな果物かわからなかった。
だが、目の前においしく、そして重そうにぶら下がっている果物をみてどうでもよくなり、まりさは急いでその小さな実をジャンプして引きちぎり、
帽子に隠して逃げるようにかえっていった。野生では貴重な果物ゆえに、他のゆっくりに見られれば
「ころしてでもうばいとる」
ということになりかねない。それに危険な人里に来ているために、いつ危険が降りかかってくるかわからないからだ。

必死に逃げるようにして森へと帰るが、その顔はとても穏やかに、そして明るかった。




「ゆっ!まりさがかえってきたよ!!おかえりなさい!!」
「ゆーっ!おとうしゃんだー!」
「おとうしゃん、おかえりなちゃい!!」
「ただいま!!きょうはとてもすごいものをてにいれたぜ!!きょうはごちそうだぜ!!」

まりさは自分の家へ帰り、家族にうれしそうに話した。

「ゆゆぅ!?ほんとうなのまりさ!?」
「ゆーっ!!きょうはごちしょうにゃの!?」
「ごちしょう!!ごちしょう!!」

思わず驚き、母れいむと子れいむ子まりさは聞き返す。
そして、どんなごちそうなのかと思いをはせた。とても美味しい芋虫さんなのか?それとも滅多にとれないはちみつさんなのか?きのこさんなのか?

「ゆっへっへ・・・これをみておどろくんだぜ!!」

そういうとまりさは帽子の中から一つの物を取り出した。人間から見れば小さいが、ゆっくりからすれば十分な大きさだ。
それは立派な綺麗な色をした「果物」だった。

「「「ゆゆゆゆゆぅぅぅぅーーーーーーー!!!!????とてもすごいよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおーーーー!!!!」」」

鮮やかな色に、特徴的な形、そしてとてもいい香りがする。その香りを嗅ぐと、自然とよだれがでてくる。
れいむ達も理解した。これは「ゆっくりできるごちそうだ!」と

「おとうしゃん!!れーみゅたべちゃいよ!!」
「まりしゃもまりしゃも!!はやくたべちゃいよ!!」
「ゆっへっへ、おちびちゃんたちあわてなくてもくだものさんはにげないんだぜ!!」
「まりさすごいよ!!おてがらだよっ!!!」
「ゆっへっへ、これもあいするれいむとおちびちゃんのためなんだぜ!!!」
「ゆふん!!おちびちゃんたちのまえではずかしいよっ!!」

といいながら、子供にいちゃつきを見せるまりさとれいむ。
「でもまりさ、このくだものさんはどこでてにいれたの?このへんにくだものさんがなる木はなかったよ?」
「まりささまがにんげんのさとにいって、くだものさんがなっている木をみつけてとってきたんだぜ!!」

「「「ゆゆゆぅぅぅっ!!!にんげんさん!!!???」」」

れいむ達は驚いた。普段、子供達にも教えている人間さんはとても恐ろしくゆっくりできない存在だと。
だが、教えているまりさがそれをとってきた。普段は絶対にしないその行動に、れいむたちは驚きと尊敬の念を持った。

「あんしんしていいんだぜ!まりささまはごらんのとおりなにもされていないんだぜ!!このくだものさんがなっている木をじじいがそだてていたから
まりささまがそれをもらってやったんだぜ!!だからじじいはとてもこうえいなんだぜ!!!」
「ゆゆう・・・、にんげんさんのところにいくなんてあぶないよ・・・。でもまりさはすごいよ!!とてもゆうきがあるよ!!」
「ゆっへっへ!!まぁ、そのじじいのおかげなんだぜ!!きっとまりささまのためにつくってくれたんだぜ!!!」
「じじいからとってくるにゃんて、おとーしゃんしゅごいよ!!」
「ゆっゆっゆ!!そのじじいはばきゃだにぇ!!!」

ゆっくりできない人間から奪ってきた故に、まりさはいつにもなく鼻が高くなった。
れいむも心配はしたが、とてもゆっくりできるごちそうをもってきたまりさに賛辞を惜しまない。
子ゆっくり達も、父の偉大な行動を見て調子に乗っていた。

そしてまりさが、果物を咥えて

「じゃあ、いまからくだものさんをわけるんだぜ!!れいむとおちびちゃんはまってくれなんだぜ!!」
「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」

人間であれば包丁を使い綺麗に分けるが、ゆっくりなのでそんなものを持ってるわけが無く、齧って分けるしかない。

「じゃあまずはんぶんにわけるんだぜ!!」

まりさは果物を咥えて勢いよく噛んだ。
半分が地面に落ち、もう半分はまりさの口の中に入る。無論、齧ったわけだから果物の果汁がまりさの口の中にどんどん広がっていく

「むーしゃむーしゃしあわ・・・・」

果汁が口の中に広がり、味をみたまりさは


「ゆぶぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!」


盛大に吐いた。



「ゆぁぁぁぁぁぁあああああ!!!ばりざあああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

「「おどうじゃあああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!」」

「ゆげっ・・・・ゆげぇっ・・・・ゆげげげっ・・・・・ゆっぐり・・・じだが・・・」
ピクピクと痙攣するまりさ。だがあまりにも衝撃的な味がしたゆえ、致死量の餡子を吐いてしまい、しばらくすると動かなくなった。

「ばりざあぁぁぁぁぁあぁあああああああああぁぁぁぁ!!!!へんじじでよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!」
「「ゆえええええええええん!!!!ゆええええええええええん!!!」」

ゆんゆん泣く残されたれいむ親子。だが、泣いている最中にとてもいい香りがしてきた。
香りをたどると、地面に落ちた半分の果物だった。

「ゆっ!!とてもいいかおりがするよ!!ゆっくりたべようね!!!」
「「ゆゅゅっ!!!ゆっくちおにゃかしゅいたよ!!」」

先ほど伴侶を失ったというのに、すぐに切り替わった。すばらしき餡子脳である。

「じゃあごはんにしようね!!」
「「ゆっきゅりたべるよ!!」」

れいむは、まず子ゆっくり達に食べさせた。
自分から食べずに、わが子に与えるのは母性が強いれいむ種だからだろう。

「むーちゃむーちゃ、しあわちぇ~!!」

子供達が喜んで食べ、そしてその声を聞いた。
はずだった


「「ゆぴょえぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃいいい!!!!」」


お決まりの台詞を言うはずだった子ゆっくりは盛大に餡子を吐き、すぐに動かなくなった。
親まりさですら、すぐに吐いてしまったのだ。サイズの小さい子ゆっくりならば言うまでもないだろう。

「・・・ゆ?おちびちゃん?どうしたの?むーしゃむーしゃしあわせーっていっていないよ?なんでうごいていないの?
なんであんこさんをはいているの?なんで?・・・なんで・・・?なんでしんじゃっているのおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


れいむは号泣した。愛するまりさを失ったと思ったら、最愛のわが子までも失ってしまったからだ。

「どぼじでぇぇぇぇええええええええ!!!!????どぼじでおぢびぢゃんどばりざがじんじゃうのォぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!」


いくら泣いても答えは出てこない。知能の低いゆっくりなぞに、答えが出るはずも無い。


「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・。ゆ?とてもいいにおいがするよ?」

しばらくゆんゆん泣いていると、いい香りがしてきた。
どことなく爽やかで、さっぱりしているようで、嗅ぐと思わずよだれがでてしまう香りが・・・。


その香りを追うと、子ゆっくりが食べたものだった。本来ならまりさと子供が死んだ時点で食べる事はしないだろう。
だが、そこはどこまでいってもゆっくりだった。危険なものと頭で理解しても、体が理解していない。
自然とそのいい香りがする果物に体が近づいていく。

「ゆぅぅぅ・・・、だめだよからださん。この・・・このくだものさんはまりさとおちびちゃんをころしたんだよ・・・?
ちかづいたらゆっくり・・・ゆっくり・・・ゆっくりできなくなるよ・・・?からださん、ゆっくりりかいして・・・ね?」

そう頭で否定しても、体が求めている。爽やかで、さっぱりしていて、嗅ぐとよだれが自然と出てくるその香りを・・・。
すると、餡子脳のれいむに天啓がひらめいた。

この果物さんは、まりさとおちびちゃんをゆっくりできなくしたやつだ、どうしても復讐したい。
でも復讐する方法がわからない、そういえばこれは果物さんだ。
果物さんなら、私がこれを食べればよい、全部食べれば果物さんに復讐ができる。


ゆっくりにとっての天啓ともいえるが、果てしなく間違った考え。



「まりさとおちびちゃんをゆっくりできなくしたくだものさんにふくしゅうするよ!!!」


だが、れいむはこの考えが正しいと思い込み


「くだものさんは、ゆっくりしないでれいむにたべられてね!!!ぱくっ!むーしゃむーしゃ」


同じ過ちを繰り返した。




しばらくすると、その巣にはなにか得体の知れない4つの破れたような饅頭がおいてあった。
その饅頭の餡子の香りと、その果物の香りに引きつられて、多くのゆっくりが次々に集まり、同じ過ちを繰り返していった。







「あれ?実がなくなっている。だれかとったのか?」

次の日にその木を見たら、たった一つだけなっていた実がなくなっていた。

「うーん、野犬か野生のゆっくりかな・・・?」

実を取っていった者を推理する。だが、不思議と怒りも悔しさも感じない。なぜなら実がなることが確認できただけでもうれしい俺にとって、
その実はまだ小さく食べられるようなものじゃなかったからだ。まだ若木だから仕方が無いだろうという面が強い。
だが、これからこの若木をちゃんと育てれば、大きな実、そしてたくさんの実をつけることだろう。

「まっ、いっか」

なくなった実のことなどどうでもよくなり、その木に水と液体肥料をやり、俺は家へと帰った。


その木の根元には小さな札が、漢字で書いてあった。






「檸檬」と










あとがき
お久しぶりです。家の庭に植えた檸檬の木が実を作った故にうれしくなり、おもわずこんなSSを書きました。
若木が3年で実を作るかどうかは突っ込まない方針でお願いします。すみません、すみません。

最後まで駄文を読んでくださりありがとうございました。もっと精進いたします。









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最終更新:2022年05月03日 22:54