注意 出てくるゆっくりはみんな最終的に死にます。
   おれの好きなゆっくりが死ぬなど許せんッ!!!という方はご遠慮ください。


「ホーホー」
鳴き声を上げ、木の上で一羽の梟が獲物がかかるのを待ち続ける。
梟は肉食で鼠等を捕食する一流のハンターだ。
そんな彼等が今狙っているのは鼠ではない。
鼠よりも大きく、それでいてそれに匹敵する繁殖力を持つナマモノ“ゆっくり”
だった。


「ホー…ホー…」
この梟は幻想郷に住む梟の中で古参であり、あまりにも膨大な時間を生きている
為に妖怪になりかけていた。
その為知能もよく回り、餌には困らなかった。
「どうじでうごげないのおおおおおおッ!!?」
下では“撒き餌”が騒がしい。
木から梟が見るのは二匹のゆっくりまりさとゆっくりれいむの番だ。
しかもれいむは奴らの言い方からすればにんっしんしていた。
頭の茎を揺らしながらまりさに寄り添っている。

どうしてこんな事になってしまったのだろうか?
れいむはもう何度したかわからない自問自答をした。
自分達はただ巣の中でゆっくりしていただけだった。
かわいい赤ちゃんとかっこいいまりさといっしょにゆっくりしていただけだった

だけどいきなり恐い鳥さんがやって来てまりさを連れていってそしてれいむも…

その時の出来事を思い出しガタガタとれいむは震え出す。

彼女達は動かない。いや、動けないのだ。
身体のあんよにあたる部分を鳥に啄まれてしまったからだ。
だから暗い夜の森の中で寄り添っているしか出来ない。
ゆっくりは捕食種でもない限り夜中は出歩かない。
夜は危険がいっぱいだからだ。だから巣の中に閉じこもっている。
それでも安全とは言い難いがそちらの方が助かる確率が高かった。
しかし今は森のど真ん中にいる。
身動きもとれない。
動物に襲われたらひとたまりもない。
そんな恐怖に終わりが来た…最悪の形で。
「うーうー☆」
「れみりゃだああああああああッ!!!」
まりさの絶叫が響き渡る。
ぎゃあぎゃあと騒いでいたせいで見つかってしまったのだ。
「う~♪あまあまみつけたど~☆」
そこに現れたのは胴なしれみりゃだ。
大きさ的には成体よりは小さいといった感じだ。
おそらく親と狩りに来たのだろう。
獲物としては十二分だ。
妖怪や野犬だったら返り討ちになりかねない。
梟は仕掛けが功を奏した為ほくそ笑む。
しかし油断はしない。
長生きの秘訣は焦らない事だと自分に言い聞かす。
「やだこっちこないでええええええッ!!?」
れいむが涙を流しながら叫ぶ。
「うるさいど~♪
あまあまはえれがんとなおぜうさまのでざーどになるのがしあわせなんだど~♪

「そんなのぜんぜんじあわぜじゃないよー!!」
泣き叫ぶれいむに対して胴なしれみりゃは今にも襲い掛かろうとしている。
「おちびじゃんすごいんだど~!!」
そんな言葉と共に胴ありのれみりゃがやって来る。
おそらく親なのだろう。
胴なしれみりゃが襲い掛からなかったのは親を待っていたんだろう。
まあ動いたら襲い掛かるつもりだったんだろうけどれいむ達は底部を啄まれてい
るから身動きとれなかったから動かなかったのだろうけど。
「う~、おねえちゃんすごいんだど~!」
「さすがはれみりゃのじまんのいもうとなんだど~☆」
他にも三匹胴なしれみりゃが跳ねをパタパタさせてやって来る。
思ったよりも大量だ。
梟の目的はれみりゃ等肉の身体を持つ生物の捕獲だった。
梟は肉食だ。ゆっくりのような餡子饅頭は好まない。少なくともこの梟はそうだ
った。
ゆっくりは数が多く、巣が見つけやすく、ゆっくり自体捕まえやすい。
梟の体躯にはゆっくりの巣はちょうどよく潜り込める広さなのだ。
個人的には好みではないが捕まえやすい獲物…それを使えば他の獲物も捕まえや
すくなるんじゃないか?とこの梟は考えた。
そして考えついた手段がこれだった。
今れみりゃ達は皿におかれたディナーとなったのだ。
警戒が強ければ不自然に思うかもしれないが残念ながらこのれみりゃ達にそこま
で考える知能はなかった。
「きょうはおちびちゃんがぷっでぃんのつぎにすごいごちそうをみつけたんだど
~♪すごいど~♪」
親れみりゃは胴なしの子れみりゃの頭をなでなでする。
れみりゃは頭のいい個体ではない為捕まえた獲物はその場で食べてしまう。
そしてその間は本来ならば周囲を警戒しなければならないのによくわからない“
こうまかんのおぜうさま”としてのプライドとやらがある為でディナーは優雅に
食べるそうだ。傍目にも優雅にはカケラも見えないが。
しかも中身はほかほかの肉まん。
肉食のこの梟にとってまさにうってつけのカモだった。
「いただきますだど~♪」
親れみりゃの許可を得て子れみりゃがまりさに襲い掛かる。
「こないでね!たべるなられいむにぎゃあああああああッ!!!」
三方向から中身を吸われ絶叫するまりさ。
みるみる内にぺらぺな皮になっていく。
「うー!うー!」
一匹あぶれた子れみりゃが物欲しそうに見ている。
「だめなんだどー☆
おねえちゃんはいもうどにさきをゆずってあげるんだどー♪」
「う~…」
どうやら我慢しているのはこの中で一番上の姉のようだ。
サイズは大した違いは無いから時間的にはあまり差はないだろうが。
「ゆ゛っ…ゆ゛っ…」
皮だけに等しい状態になったまりさが痙攣している。
既に意識は無いだろう。
「ばりさぁッ!!しっかりじでぇッ!!」
れいむが泣き叫ぶ。
見捨てられたのを聞いていなかったのか今もまりさを慕っていた。
だがそんな想い等ここでは糞の役にも立たない。
「めいんでぃっしゅをいただくんだど~♪」
そう言って親れみりゃはれいむの頭に生えた茎を折った。
「「「「ゆぎゃああああああああああああああああああッ!!!」」」」
すやすやと希望に満ち溢れた未来が待っていた筈の赤ゆっくり達が目を見開き絶
叫を上げる。
中途半端に成長して自我が芽生えていたのが不幸だった。
「ゆっくちしていってね!」と親に告げる筈の口は、「ゆ…ゆ…」と絶叫と嗚咽
を漏らすだけだった。
「でいぶのあがじゃんがあああああああああッ!!!」
れいむが喧しく泣き叫ぶ。
遠くにいるこちらからでも五月蝿いのだ、れみりゃからすれば苦痛だろう。
「うー、うるさいどー!!」
「ゆげ!?」
親れみりゃがれいむを蹴り飛ばす。
そのままころころと転がり、止まる。
それに満足したのか親れみりゃは、
「うー、おちびちゃんおまたせしたんだどー♪」
そう言った親れみりゃの言葉と共に我慢していた子れみりゃがれいむに襲い掛か
る。
「やめてね!れいむおいしくないかぎゃあああああああああ!!」
「うー!」
れいむの中身がどんどん吸い出されていく。
「やだあ!れいむじにだくない!
まりさとあかちゃんとゆっくりずるのぉッ!!!
いっしょにおうたうたったりおさんぽしたりしてずっとゆっくりするのぉッ!!

れいむは足掻くが子れみりゃの牙はがっちりとはまり、抜けない。

最期の最後、れいむはどうしてこんな目に遭うのかと思っていた。
れいむは幸せだった。
ゆっくりしてかっこいいまりさと一緒にゆっくりして赤ちゃんが出来て、ゆっく
りした幸せな未来が続くと信じて疑ってなかった。
なのに現実はまりさや赤ちゃんを殺され、自分もれみりゃに食われている。
どうしてこんな事になったのか?
そうだ…あのこわいとりさんがれいむたちのゆっくりプレイスにきたからだ。
れいむの脳裏に丸い狩人の双眸がフラッシュバックする。
どうして…れいむなにもわるいことしてないのに…。
れみりゃに中の餡子を吸われいく中、最後まで自分の幸福を奪った梟を脳裏に浮
かべながられいむは事切れた。
れいむが完全な皮のみになった頃、梟はようやく羽根を広げる。
生物は食事を終えた後は動きが鈍くなる。
それはゆっくりにも同じ事だった。
さて、あちらの食事は終わった。次はこちらの食事だ。
そう梟は言いたげに音も無く飛び立った。


「うー、でざーとなんだどー♪」
そう言って親れみりゃは茎に生えている赤ゆっくりをちぎり子れみりゃに投げ与
えた。
「うー!とってもでりしゃすなんだどー♪」
赤ゆっくりはれみりゃ達にとって御馳走だ。
赤ゆっくりがいる間は親のゆっくりが巣から出ないからだ。
とても美味しいでざーとに子れみりゃは舌鼓を打つ。
「う~、れみりゃもほしいんだど~♪」
れいむを吸い付くした子れみりゃも親れみりゃのいる方へ羽根をパタパタとさせ
て近づこうとし、
「う!?」
音も無く消え去った。
それはあまりにも迅速で、赤ゆっくりを食べて幸せな子れみりゃとそれを配って
いた親れみりゃが気付く事もなく、一番上の子れみりゃは梟に連れ去られたのだ
った。


『う~!?』
叫び声を上げて逃げ出そうとするが梟の脚の爪ががっちりとくわえ込み、そのど
ちらも出来ない。
そしてそのまま木に梟は着地する。
『うげぇ!?』
身体が圧迫される痛みが走るが致命傷にはならなかった。
距離はさして離れていない。
子れみりゃから親れみりゃの姿も見える。
『まんま~!?』
れみりゃは必死に親に助けを求めるが声も出せない状況では気付く訳もない。
『う~!?ざくや、だずげで~!?』
本能に刻まれたさくやという存在に助けを求めるがそれは無駄な行動でしかない

梟も悠長にしていれば他の獲物が逃げてしまう為一匹に時間をかける訳にはいか
ない。
逃げられないように手早く羽根をむしり取る。
『うぎゃー!?いたいどー!!』
バタバタといっそう激しく暴れるが食い込んだ爪から逃れられない。
羽根がなくなったから飛んで逃げることも出来ない。
そして邪魔な帽子を捨て、啄みはじめる。
『もうやだどー!!れみりゃおうちにかえるー!!ぷぎゃ!うぎ!』
自分の中身が瞬く間に食われていく。
先程れいむにした事を身を持って味わっていく。
鋭い嘴によって生まれる鋭い痛みに子れみりゃの身体に生まれてから一度も味わ
った事のない痛みが何度も襲い来る。
皮は破れ、中からほかほかの肉まんの湯気を立ち上らせながら必死に助けを求め
るが既に口にあたる部分は破壊されて声が出ない。
『ま…んま……ざ…ぐや…』
目玉を啄まれ、残った片目で幸せそうな親れみりゃを見つめる。
親れみりゃはようやく一匹足りない事に気付くが、隠れんぼか何かと思い、「お
ちびちゃんどこなんだど~?」と明るい口調で言っていた。
『たず…』
必死に懇願する子れみりゃ。
だがその願は絶対に届かない。
残った片目も梟に啄まれる。
必死に瞼を閉じるが、その瞼も食われ、剥き出しの目が前方を向く。
そこには、かつてれいむが死に際に思い浮かべたものと同じ丸い狩猟者の双眸。
それが子れみりゃの見た最後の光景だった。
目をえぐられ、視覚を完全に奪われる。
『だれ…たず…』
薄れいく意識の中、あの双眸を脳裏に浮かべながらあてもなく誰かに救いを求め
、子れみりゃは髪の毛と皮を残し、梟の腹の中に収まった。
皮肉にも、この子れみりゃが最後に浮かべた光景と死に方は先程喰らったれいむ
とほぼ同じものだった。


「おちびちゃんかくれてないででてくるんだど~!」
一方、親れみりゃは赤ゆっくりがついた茎を片手に子れみりゃを捜す。
二つ程赤ゆっくりが残っているのはいなくなった子れみりゃの分だろう。
「う~、でてこないとでざーとたべちゃうんだど~!」
親れみりゃはいつまで経っても出て来ない子れみりゃに対して告げるが反応が返
って来ない。

れみりゃは幸福だった。
初めての一緒の狩りでおちびちゃんがすごい御馳走を見つけた事がとても嬉しか
ったのだ。
はじめてのかりでこんなでりしゃすなあまあまをとれるなんてさすがおぜうさま
のおちびちゃんたちだどー!と思っていた。
これから先自分を超えるカリスマ溢れるおぜうさまに相応しき存在になると信じ
て疑わなかった。
こうまかんにかえったらなでなでしてあげるんだどー♪と思っていたらいつの間
にかおちびちゃんがいなくなっていたのだ。
最初はかくれんぼだと思っていたがいつまでも出て来ないので不安になってくる

だがおぜうさまのおちびちゃんがやられるわけないんだどーという何処にも保証
のない結論を信じて疑ってなかった。
そしてその想いは裏切られる事になる。最悪の形で…。


親れみりゃは見つけた。
子れみりゃの成れの果てを…。
それは子れみりゃの髪と皮、羽根、そして帽子だった。
無残に食い散らかされたそれは紛れも無く“死”を物語っていた。
「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」
親れみりゃは絶叫する。
さっきまでかわいらしく笑っていた子れみりゃが今は醜い残骸に成り果てている

いずれえれがんとなおぜうさまになってこうまかんをひきいると親れみりゃが思
っていた妹思いな子れみりゃはもうどこにもいない。
かわいらしくてえれがんとな「う~☆」という鳴き声も聞けないのだ。
ショックのあまり持っていた茎を落としてしまう。
「おちびちゃんじっがりずるんだど~!!」
親れみりゃは子れみりゃの残骸をかき集める。
目尻には大粒の涙が流れていた。
ついさっき死んだれいむのように輝かしい未来が待っていた筈のれみりゃ達に突
然訪れた悪夢。
「う゛っ…う゛っ…おちびぢゃん…」
子れみりゃの残骸を抱きしめ落涙する親れみりゃ。
「まんまぁ~…げんきだすんだど~…」
そんな親れみりゃに今一番上となった二番目の子れみりゃが慰める。
「おねぇちゃんはきっとてんごくでしあわせにしてるんだど~」
自分だって家族で唯一の姉を失って辛いはずなのに一生懸命親れみりゃを慰めて
いる。
「まんまぁ~ないちゃったらてんごくのおねえちゃんもかなしくなっちゃうんだ
ど~」
「げんきだしてほしいど~」
そうだ…まだこのこたちがいるんだどー。
親れみりゃは三匹の子供達を見つめる。
一番上のお姉さんはいなくなってしまったけどまだこの子達がいる。
残念だけどいなくなった子の分まで仲良く幸福に暮らしていこう。
そう思い、両手に抱えていた子れみりゃの残骸を一旦地面にそっと置き、れみり
ゃは落とした茎を拾う。
「みんなでこのでざーとをたべておねえちゃんのぶんまでこうまかんのあるじに
ふさわしいおぜうさまになるんだどー♪」
「「「う~、わかったど~♪」」」
笑顔に戻ってくれた親れみりゃを見て子れみりゃも微笑む。
家族の死を乗り越えて彼女達は成長したのだ。
だが彼女達は気付いていない。
悪夢はまだ…終わっていないと…。



それは疾風のようだった。
親れみりゃが一番上の子れみりゃにあげる筈だった赤ゆっくりを二番目の子れみ
りゃにあげようとしたその時、
「う゛ぁ!?」
一番下の子れみりゃが変な声を上げ、親れみりゃがそちらの方を向いた時には一
番下の子れみりゃの姿が何処にもなくなっていた。
「うぎゃあああああああッ!!?」
そして子れみりゃの絶叫が響き渡る。
「おちびちゃん!?」
さっきの悪夢が再び蘇る。
また突然いなくなってしまった子供に親れみりゃは蒼白しながら辺りを見回す。
今度はすぐに見つかった。
「う゛…う゛…」
一番下の子れみりゃは木の枝に突き刺され、肉汁を垂らし、痙攣していた。
まるで百舌鳥のはやにえだ。
急所を外してあるからまだ生きていた。
「おちびちゃん!!いまたすけるんだどー!!」
そう言ってれみりゃが羽ばたいて子れみりゃを助けようと飛ぶ。
もう子供を失うのは嫌だ。
そんな親として純真な思いでれみりゃは向かった。
だが、
「うがぁ!?」
突然れみりゃは現れた何かに弾き飛ばされた。
かつてれいむを蹴り飛ばした時のようにれみりゃは転がる。
「ううう…」
身体に激痛が走る。
だけど早く助けないと子供が死んでしまう。
そう思い立ち上がる。
これがハリウッド映画だったら涙を浮かべる名シーンになっただろう。
だがこれはハリウッド映画じゃない。
親れみりゃの子を思う気持ちなど全く意味の無いものだった。
「まんまぁ~!?たずげでだど~!!」
親れみりゃの眼前にはさっき自分を慰めてくれた二番目の子れみりゃが鳥に踏ま
れていた。
丸い二つの無垢そうな双眸をした鳥。
無垢故に残酷さが込められている感じがする。
親れみりゃは理解した。
こいつがおちびちゃんを殺した奴だと。
「おちびちゃんをはなすんだど~!!!」
親れみりゃは叫ぶ。
今にも飛び掛かりたいのだが身体が痛くて上手く動けないのだ。
だから出来るのは精一杯の威嚇。
「まんまぁー!たずげでー!
れみりゃまだじにだぐないんだどー!!」
泣き叫ぶ子れみりゃ。
逃げ出そうにも子れみりゃに食い込んだ爪は深く、梟の重量を跳ね退ける力も無
い。
姉の死に悲しみながらも親を一生懸命慰めてくれた心優しい(親れみりゃ基準)
子の顔が恐怖に歪んでいる。
唯一無事な子れみりゃはがたがたと震えている。
そして梟はさりげなく、あまりにも自然に子れみりゃの帽子をひきちぎった。
頭の一部分を含めて。
「うわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
突如頭に走る激痛に絶叫するしかない子れみりゃ。

帽子と髪は剥げ、右目の周囲は剥き出しの肉まんの中身が見える。
人間でいうなら骨が見えているようなものだ。
親れみりゃはその光景に唖然とする。

こうまかんのおぜうさまにふさわしいかわいらしくてかりすまあふれるおかおが
…。
そこからは親れみりゃは何も言えなかった。
目を背けたくなるような光景(親れみりゃにとって)が広がっていたからだ。
しかし、自分達が危機的状況なのは変わらない。
梟はれみりゃが上手く動けないのを把握していた。
だから手早く羽根を毟り取り、吐き捨てる。
れみりゃの再生能力は高く、ゆっくりの中でも愚鈍な知能を補うかのように身体
能力は優れていた。あくまでゆっくりとしてだが…。だから羽根が毟られてもし
ばらくすれば生えてくるのだ。
今この場で梟がやっているのは逃亡の防止。
この時点になると既に梟から逃げる方法は皆無になる。
他のゆっくりと違って羽根というアドバンテージを持つれみりゃだがその分跳ね
るのが不向きなのだ。
羽根のない胴なしれみりゃはかつて獲物であった披捕食種にすら敗れる始末なの
だ。
その為に他のゆっくりと比べて体付きに進化しやすいのかもしれない。
先程一匹を囮にして親れみりゃに不意打ちをし、痛烈なダメージを与えた。
囮を使わないでそのまま突っ込んでもよかったのだがこの梟は徹底して慎重だっ
た。
もしも先にれみりゃが近付いてくるのに気付かれたら逃げられるのではないか?
手足がなく動きが鈍いれみりゃの方を攻撃しても牙にさえ気を付けていれば反撃
を受けることはない。
それ故の行動だった。
難点は悲鳴が喧しく、他の動物や妖怪をおびき寄せる可能性もあるが数だけは多
いゆっくりの悲鳴等森の中では日常茶飯事だ。
獣達が気にする事はない。
梟は安心して食事を進める。
と言ってもゆっくりのようにのんびりとしている訳ではない。
迅速に子れみりゃを喰らっていく。
「ざぎゅ!…だずげ…」
瞬く間に子れみりゃの身体が梟の腹に入っていく。
きっと中で姉妹と再会出来て先に食べられた子れみりゃも喜んでいるだろう。


「やめるんだどー!!!」
親れみりゃが身体の痛みを我慢して体当たりして来る。
子を思う気持ちが痛みを凌駕したのだ。
だがその程度で切り抜けるならこのような状況に陥らない。
梟は一旦食事を止め、軽く飛んでれみりゃの背後にまわって親れみりゃを地面に
叩きつけた。




時を軽く遡り、親れみりゃが梟に体当たりをかけたその時、
「ま…んまぁ…」
助けに来てくれた…。
中身が少なくなり思考が乏しくなった子れみりゃでもそれは理解出来た。

やっぱりまんまはさいきょーのきゅうけつきなんだどー。
こんなとりなんかあっというまにたべちゃうんだどー。
等と勝利を確信した子れみりゃ。
親れみりゃが木に突き刺さった子れみりゃを助けようとして梟に叩き落とされた
事など覚えていない。
だがこのれみりゃは知らない。
安易な希望は絶望を倍加させると。
自分にのしかかってた梟の重みが無くなる。
だが動けない。
子れみりゃは気付いていないがもう完全に助からない量まで啄まれてしまった。
もし親れみりゃの体当たりが成功し、もし梟に勝利した場合…それでも天文学的
確率の話だがそうなったとしても子れみりゃは死ぬ。それは絶対だった。
だが現実の悪夢は別の方向へと続く。
梟は難無くれみりゃの背後にまわり、地面に叩き付けた。
そう、子れみりゃがいる地面に。
それを子れみりゃはスローモーションのようにゆっくり感じた。
『まんまぁ~♪
こわかったんだど~☆』
カリスマ溢れる母の姿に恐れをなして梟が逃げ出したと本気で思っている子れみ
りゃは自分を抱きしめてくれると思っていた。
だがそれは違う。
親れみりゃの背後にまわり、上から地面に押し付けているのだ。
『まんまぁ~いたがったんだど~!!』
死に際なせいか周囲の動きがゆっくりと感じられる。
五感が鋭敏にでもなったのだろうか。
親れみりゃと子れみりゃが触れ合う。
愛しい母の抱擁に痛みを忘れて子れみりゃは幸せな気持ちになる。
だが、
『まんま…すこしいたいんだど…』
親れみりゃの抱擁が強くなる。
そもそも子れみりゃが勘違いしているだけで抱擁ですらないのだから。
だんだんと自身が圧迫されていくのがわかる。
『まんまぁー!いたいんだど!はなれてほしいんだど!』
もはや母の抱擁などと生易しいものではない。
確実に殺すのしかかりだ。
『いだいいだいおうぢがえどぅー!!』
勿論もう家には帰れない。
死神が歩きから全力疾走に変わっただけだ。
『ごべんなざいわるいごどじだのならあやまるからやめてだどー!!』
子れみりゃは必死に声に出ない命乞いをするがだれにも聞こえない。
そのまま子れみりゃの身体がひしゃげていく。
『ごべんなざいもうわがままいわないからあまあまをポイッとかじないがらまん
まのいうごどちゃんとぎぐがらやめでぐだざいだどー!!』
そんな命乞いなど誰の耳にも届かないのに必死で言い続ける。
『つびゅ…れる…』
じんわりと子れみりゃに痛みが走り、目が圧迫されて飛び出す。
一瞬にして子れみりゃの視界は暗闇に包まれる。
自分の身体が破壊されていくのがわかってくる。
『やだやだやだやだやだやだやだやだじにたぐないじにだくないじにたくないじ
にたくない!!』
五感が鋭敏になり、時間の流れがスローモーションのようになったのが災いした
。子れみりゃは本来なら一瞬ですむ痛みと恐怖をゆっくりと味わう羽目になった

目玉が飛んでいく。
そこから肉汁が溢れる
口から残った肉まんが飛び出そうとする。
その結果口いっぱいに広がる自身の味。
子れみりゃは口を閉じて耐えるがすぐに決壊し、口から流れでる。
『れみりゃのながみでてきちゃだめだどー!!』
口を強く閉じて流出を止めようとする子れみりゃ。
しかし上からの圧力ですぐに口自体が破壊され流出の中に歯が含まれ出す。
口だけではない。圧力で子れみりゃの中身は穴という穴から飛び出してくる。
『ざ…ぐ…や…だず…』
子れみりゃは母ではなくさくやに救いを求めたのだった。
そして長い痛みの中、子れみりゃは愛しい母の胸の中でようやく死ぬ事が出来た
のだった。



親れみりゃは自身の身体の下からダイレクトに子れみりゃの潰れる感触を感じた

「う゛あ゛、う゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ッ!!!」
もはやえれがんとやかりすまのカケラもなく泣き喚く親れみりゃ。

親れみりゃが泣き喚いているのを尻目に梟はある事に気付いた。
それは迅速に行動しなければならない事だった。
それを済ませ、梟はさっさと獲物を確保して巣に戻る事にした。
「う゛、う゛う゛~…」
濁流のような涙を流す親れみりゃを尻目に梟は親れみりゃの羽根をひきちぎる。
「うぎゃー!!!?」
激痛に親れみりゃがのけ反るが梟には関係ない。
そのまま羽根を今まで子れみりゃにやったようにそこら辺に吐き捨て、脚を啄み
機動力を奪う。
これでもう親れみりゃは満足に動けない。
「やだー!!もうおうちがえるー!!!」
もう親としての威厳もへったくれもない。
ぶざまに命乞いをする親れみりゃ。
すると、すっと上にのしかかっていた梟がどいたのだ。
「う゛?」
突然の事に戸惑いを隠せない親れみりゃ。
そんな親れみりゃを尻目に梟は飛び立つ。
「うー!だすがったどー!
れみりゃのかりすまにびびってにげだしたにちがいないどー!!」
そのまま森の中に飛んでいく梟を見ながら歓喜の踊りと称する手足ばたばたをす
る。
「う゛~!?なんでうごけないんだどー!?」
親れみりゃは脚を啄まれて動けない事をすっかりと忘れていた。
自分の怪我すら忘れてるのだ、枝に突き刺さっている虫の息の子れみりゃも忘却
の彼方だ。
それと同時に周囲に誰もいない事を気付かなかった…。
自身の子供が何処にもいない事に気付かなかった。
そして、
「う~しね!」
新たに現れた驚異にも気付かなかった。



後編へ)

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最終更新:2022年05月21日 22:20