どすん

『彼』は様子を見ていた一番大きな屋根の上から降りて来た。
「ゆ?」
家の一番近くで燃え上がる木を見てくつろいでいたゆっくりれいむがそれに気づく。
「まりさ! にんげんがいるよ!」
「ゆ? ほんとかだぜ? れいむ!」
まりさも『彼』の方を見た。
確かにそこには『何か』がいた。
人間のような何かが。
だが、まりさは違和感を感じていた。
まりさは一度だけ人間に会ったことがあった。
それはこの村に攻め入ったときだが、そのとき見た人間は―――
あんな石みたいな顔をしてなかった。
足や手がトカゲさんみたいなもので覆われてなっていなかった。
体中になにやらぶら下げていなかった。
指があんなにとがってなかった。
しかし、目の前の『それ』は二本足で歩いている。
「(やっぱりにんげんだ!)」
それだけでまりさの餡子脳は結論を出した。
他に二本足で歩く生物を見たことないのだから無理ないかもしれないが……。
「にんげんがなんでこんなところにいるんだぜ! ここはまりさたちのゆっくりぷれいすなんだぜ! 
ばかでよわいにんげんはとっととでていくんだぜ!」

彼の視界には最優先捕獲対象である『ドス』しか映っていなかった。
無論、化面の視覚タイプを「熱感知視覚」にしている以上、他のゆっくりも映し出してはいた。
だが、普通ゆっくりなど駆除するにも値しないと判断した『彼』には、ほかのゆっくりなぞ意に介するにも値しないものだったのだ。

どすんどすん

重量感を持った足音がする。
『彼』はドスに向かって歩いて行く。
「だがら“ごれ”は“れ”い”ぶだち”な”ん“だよ”ぉ“お”お“お”!?」
一方のドスは仲間たちに攻められて涙目になっていた。
「ゆ! まりさをむしするんじゃないぜ! よわいにんげんはゆっくりしね!!」
まりさはさらに声を上げるが『彼』は一向に反応しない。
やがて他のゆっくりも『彼』の存在に気づき、次第に声を上げ始めた。
「ゆ~!!にんげんがいるよー!」
「わかるよー。にんげんがいるんだねー」
「ゆゆ! よわいににんげんしゃんはゆっくりちんでね!」
「れいむたちのゆっくりぷれいすからゆっくりしないででていってね!」
「むきゅ~へんなにんげんだけどそんなにつよそうじゃないわね!」
「ほーけい!たーんしょ!ちっこう!!」
引き続き無視。
「なんでぶじずるのおおおおおおお!!!」
そして一番先に『彼』に気づいたれいむ一家に後一歩というところまで近づいた。
「べんじじろぉ“お”お“お”お“お”お“!! くそじじい”い“い”い“い”い“」
まりさが目を剥き唾を飛ばしながら絶叫する。
「おちょうちゃんをむちちゅるなー」
「ゆゆ~きこえないの? びゃかなの?ちぬの?」
赤まりさと赤れいむが『彼』の飛び出し声を上げた。
「おちょうちゃんがほんきだしゅたりゃじじ、びゅびゃ!」
「みみがきゅこえにゃいにゃんておおあわ、れみゃ!」
潰した。
『彼』には潰したという感覚すらないだろう。
蟻を潰しても人間には全くわからないのと同じくらいの価値しかない普通サイズのゆっくり。
赤ゆっくりなどはゴミ以下の価値もないものだったのだ。
「「「「……」」」」
『彼』をののしっていたゆっくり達は一瞬で静かになった。
全員目を限界まで見開き、潰れた赤ゆっくりを凝視している。
『彼』は相変わらずの様子でドスに向かって歩いて行く。
「ばりざのあがぢゃんがぁ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!」
「どぼじでごんな“ごどずるの”ぉ“お”お“お”お“お”お“!!」
「わがらないよお“お”お“お”お“ーー!!」
一斉にあがる悲鳴。
先ほどの罵声とは大きさが全然違う。
と、その悲鳴に巨大みょんが気がついた。
「みょん……? !! みょーーーーん!!」
巨大みょんも人間に気がついた。
ギャーギャーと喚く普通サイズのゆっくり達にも気がつく。
「し、し、しんせーーーーーーーーーーいほーーーーけーーーーー!!」
巨大みょんのあげた雄たけびに、村の中にいたゆっくり達が視線を向ける。
「ゆ“お”お“お”お“お”お“……ゆっ?」
「「「「「「ゆ?」」」」」」
泣いていたドスも、ドスをののしっていたゆっくり達も全員それを確認した。
にんげんだ!
おいはらったはずのにんげんがなんでここに!
あいつがまりさのあかちゃんをころした!?
にんげんのくせに!にんげんのくせに!
……
……ゆっくりしね!
……ゆっくりしね!
……ころせ!
……ころせ!
ころせころせころせころせころせころせ!!

『彼』は歩みを止めた。
ゆっくり達の様子が変わったのだ。
熱感知による視覚にその違いははっきりとでた。
ゆっくり達の体全体の温度が上がっている。
同時に中にある中枢餡子の温度がさらに上をいっている。
これは怒り。
ゆっくり達は怒っているのだ。
そして明確な殺気を放っていた。

「ゆ~っくり!!」
ドスまりさが声を上げる。
赤ゆっくりや子ゆっくりは数匹の普通ゆっくりと一匹の巨大れいむに連れられ広場から離れて行く。
他の普通ゆっくり達は縦横綺麗に整列しはじめ、巨大ゆっくりをリーダーとした『隊』を作っていく。
それぞれの隊は100匹ほどで構成されており、隊は扇形になるように散開し広場を包囲した。
そしてそのすべてを指揮するドスまりさと参謀巨大ぱちゅりー。
「ゆ!! 馬鹿な人間だね! たった一人でこの村にくるなんて! 大きなまりさやれいむを殺したのもおまえなんだね!!」
ドスまりさは怒気を込めていった
「もう許さないよ! ゆっくりできない人間はゆっくりと永遠にゆっくり出来なくしてあげるから覚悟してね!!」。
一方『彼』はその場で立ち止まり、周りのゆっくり達を眺めているようだった。
「ゆふん!! 今更後悔しても遅いよ! お兄さんはみんなでゆっくり踏み潰すからね!ゆっくりしないで死んでね!」
ドスは『彼』が自分達にビビッていると思っていた。
そして―――
「むきゅ!! ゆっくりーーにさんぶんたいとつげきー!!!」
「「「「「「「「「「「「「「「ゆーーーーー」」」」」」」」」」」」」」
真正面の隊が『彼』に突撃を開始した。
続けて左側、右側の隊も突撃を開始。
これでゆっくりが乱戦を行なうときに見られる『突撃中に仲間を踏み潰してしまう事故』は格段に減る。
大きくなって頭がさらに良くなった参謀巨大ぱちゅりーが編み出した会心の策だった。
かくしてゆっくり達の戦争が始まった。

仮面のモニターに字が表示される
<対象身体状態>
興奮状態
―――『戦闘意思あり』
<対象処理方法>
普通ゆっくり―――殲滅
巨大ゆっくり―――殲滅
ドスゆっくり―――殲滅
殲滅殲滅殲滅殲滅殲滅

『狩リノ時間ダ』

最狂の狩人(ハンター)が目覚めた瞬間である。

突撃したゆっくり達が空中に舞い上がった。
いつもならここで「ゆ~♪ おそらをとんでるみたい~♪」という暢気な声がしただろう。
「ゆゆっ?」
「うわあ~れいむがおそらとんでる~」
「ゆっくりとんでる~」
それを見ていた他の隊のゆっくり達がうらやましそうに言った。
やがて宙から落ちてきたゆっくり達だが何の反応もない。
そのうちの一匹が隊のすぐ前に落ちてきた。
「ゆ~つぎはれいむ……? まり……ゆぎゃあああああ!!!」
「ゆ? ……ま、まりざあああああ!?」
今までお空を飛んでいたまりさの顔は前半分が綺麗にそぎ取られていた。
これではさすがに即死である。
いつもの『お空を~』発言も聞けないのも納得だ。
何故こんなことになっているかというと、彼の手にはいつの間にか槍が握れていた。
それは二メートル近くある彼の身長より長く、上下に刃が取り付けられていた。
いつのまにそんなものを? と疑問に思うが、この槍は伸縮自在で今までは背中に背負われていたのだ。
混乱する隊をよそに彼は開戦を報せる雄たけびを上げた。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

大気を震わすその雄たけびはゆっくり達のそれより遥かに大きく、そして凶暴なだった。
「「「「「「ひっ!」」」」」
それによってゆっくり達は立ちすくんでしまった。

跳躍。
ドスまりさの背丈以上の高さに彼は跳んだ。
そして群れ全体のちょうど真ん中にいる隊の、巨大ありすに槍を突き立てつつ着地した。
「ゆべっ!!」
それは中枢餡子を正確に貫いており、声を上げるまもなく巨大ありすは絶命した。
続いてありすを突き刺したまま槍を振り上げ振り下ろし、隊の普通ゆっくりをつぶした。
槍には返しが付いているため振り回しても外れないのだ。
ドスン!!
「ゆ~! ありすがおそらを……ぶべびゃ!!」
「ゆぎゃああああ」
 ドスン!!
「どぼじであ”り“ずがびん”な“を”づぶずの”ぉ”お“お”お“……おびゅ!!」
「ゆっくりにげ……ゆべえっ!」
ドスン!!
「でがま”ら”っばっ!!!」
「だじげでぇ“え”え“え”え“っにぐまっ!!」
隊の半数が潰れたときだった。
「ありすをはなせぇえええええ!!」
他の隊の巨大まりさが彼に飛び掛った。
その跳躍は高さ三メートルを超えるもので、巨大になった体だからこそ出来るものだった。
「ありすをいじめるにんげんはゆっくりしないでしねえええええええ!!」
「(ありす! いまたすけるからね! それでこのわるいにんげんをたおしたらまりさとずっとゆっくり……)」
どうでもいいけど死亡フラグです。ほんとうに(ry
彼は槍を遠心力をつけるため一回転させ、まりさが頂点に来た瞬間に巨大ありすを投げつけた。
同時に槍を縮小させる。
これによって返しも内側に引っ込み、ありすはつっかえを失い空中に放り投げられた。
「ありすううううぅぅぅ―――ぶびっ!!!」
空中でありすと正面衝突するまりさ。
よほどの勢いだったのか。
アリスがぶつかった瞬間、お互いのぶつかった部分が心地よい『パーン』という音と共に爆ぜ、地面に餡子の雨を降らせる。
「ゆ“ぅぅぅぅ!! ゆ”っぐり“でぎな”ぃぃぃぃぃ!!!」
あまりの悲惨さに、餡子を浴びたゆっくり達は叫び声をあげた。
勢いを失った巨大ゆっくり二匹の胴体は地面に落ち、下にいたゆっくり達を潰した。
「ゆ“!! な”ん“でごっ”ち“に”ぐびょ!!」
逃げればいいものをのんきに叫んでいるからである。
一方の彼は槍を元の長さに戻し、槍に付着した餡子を空を切ることによって払った。
同時に飛び散った餡がついた仮面を拭った。
「むきゅ! にんげんはつかれているわ! よんこぶんたいとつげきー!」
「「「「ゆー!!!!」」」
攻撃の手がやんだのを見た参謀巨大ぱちゅりーの勘違いの元、さらにゆっくり隊が押し寄せてくる。
ちなみにここまでで全滅に近い被害を受けたのは二個分隊である。
「ゆっくりしてるにんげんはゆっくりじ、にゅべえぇぇぇぇ!!!」
「しょせんいなかものね! たたかいのとちゅうでやす、むぼほおおおおおお!!」
当然同じようになぎ払われ散っていくゆっくり達。
「ゆっくりしんでねぇぇぇ!!!」
隊長の巨大れいむが地面から低くはねて高速突進を繰り出してきた。
彼は鋭い左ストレートでそれを簡単に止める。
「ゆぎゅっ!!」
左手が深く顔面にめり込む。
ミチミチと音を立てて顔面の皮が破れ、体内の中に左手がもぐりこんでいく。
「ゆががががががが!!!!」
しかし未だ終わらない。
左手をすぐさま引き下からのアッパーカット。
巨大れいむの体が腕から抜け宙に浮いた状態にする。
そこに体のひねりを加えた渾身の右踵落とし!!
「ゆぶっ!!」
地面に叩き落された巨大れいむの体は接地面がはぜ散った。
続いてその隙を見てか背後から巨大みょんが鋭い枝を突き立てんともう突進してくる。
しかも二本咥えての二刀流である。
「みょおーーーん!」
いつもなら意味不明な淫語を連発するくせに、今回はまともなみょんだった。
しかし彼は背後を見ることもなく、巨大みょんの枝を左手で掴み止めた。
「ぺにすっ!?」
思わずいつもの淫語マスターに戻る。
そして止めた手をそのままに、振り向きざまの槍を持った右手よるジャブ。
先ほどの巨大れいむと同じく、巨大みょんの体に腕が思い切りめり込む。
「でがまっら!?!?」
そこに右手を引き抜く体の回転を利用した後ろ回し蹴りを放った。

おっとうまくきまった!(実況:ジョ○・カ○ラ)
とめるのむずかしいですからねー(解説:き○ざわつ○し)

巨大みょんは高速で吹っ飛ばされ、控えていた他の隊の巨大ありすに衝突した。
しかも持っていた枝二本がありすの両目に突き刺さった。

はいった! きまった! これでどうだああああああ!(実況:ジ○ン・○ビラ)
うおおおおおおおー!(解説:きた○わ○よし)

「ゆぎゃあ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”
ばでぃ“ずの”どがい”ばな“お”め“め”がぁ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”」
「ちぃぃぃぃん、ぽ……」
巨大みょんは受けた衝撃で気を失いかけている。
しかもジャブと蹴りを喰らった際に皮が破け餡子が飛び出している。
「ゆー!!! みょん! ゆっくりなおってねゆっくりなおってね!!」
「ぺーろ! ぺーろ!」
巨大ありす隊の普通ゆっくり達がみょんを気遣ってくれている。
このみょんは群れの中でもかなり人気があり、みんなから一目置かれている存在だった。
「ま……まーら」
みょんはお礼を言った。
そして立ち上がろうとした。
みんなのためにもあの人間を止めなければ。
でないとますます多くのゆっくりがやられてしまう。
自分ひとりではダメだったがみんなでやれ―――

ブシャッ

「な”ん”に”も”び“え”な“い”ぃ“ぃ”ぃ“ぃ”ぃ“ぃ”ぃ“」
目を失い痛みに暴れる巨大ありすが、みょんの弱っていた体に止めを刺した。
見ると隊のゆっくりのほとんどは既にありすによって潰されていた。
それを止めようと寄ってきた他の隊のゆっくりもだ。
「な”に”や”っでる“の”お“お”お“お”お“ぉ“ぉ”ぉ“ぉ”ぉ“!?!?」
「“みょ”ん“をぶん”じゃだめ“でしょお”お“お”お“お”ぉ“ぉ”ぉ“!?!?」
みょんの手当てをしていたゆっくり達は叫んだ。
しかし巨大ありすはわめき散らすだけで一向に収まらない。
さらに暴れ散らし他のゆっくりを潰していく。
「む“じずる”な“あ”あ“あ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”!!!」
「ゆっぐり“でぎな”い“あり”ずは“じね”っ!!!」
「ゆ“ぎゃあ”あ“あ”あ“あ”!?!?!?」
実に醜い仲間割れである。
一方、普通ゆっくりを近づかせることもせず槍で粉砕している彼の元へ、二つの影が接近していた。
「ちぇんたちのこんびねーしょんをみせるんだよー」
「わかるよー。ひっさつわざなんだねー」
巨大ちぇんである。
巨体に見合わぬ速さ(まあ……Gくらいですかね)で接近してくる。
実は今、突撃をしている普通ゆっくり達は、ちぇん達がそれぞれ指揮する隊のゆっくりで、二人の攻撃を成功させるための囮だった。
無論、普通ゆっくり達は囮にされていることも気づかずにやられているが。
二手に分かれたみょんは高く跳躍し、左右からのボディプレスを放った。
彼は前後左右から突撃してくるゆっくりに気をとられている―――
「ゆっくりしないでしぬんだよー!」
「わかるよーおわりなんだよー」
ガシシッ
「「ゆ?」」
―――わけなかった。
左右からきた巨大ちぇんズを左右一本ずつの手でしっかりと受け止めた。
槍は足元にいる普通ゆっくりを地面に串刺しにしていた。
「お、おにいさん、ちぇんをゆっくりはなしてね!」
「わかるよーさくせんしっぱいなんだねー」
そしてそのままちぇんの体同士を空中で叩きつけた。
「「ゆみ”ゃ!!?」」
そのままどんどん力を入れていき……
「や”ぁぁぁぁぁめ“ぇぇぇぇぇでぇぇぇぇぇ!!……ゆぎゅ!!」
「わ、か……るよぉ~て……お、くれ……なんだ……ねぇっ!!」
体を貫通した。
彼が両手を外側に払うと、巨大ちぇんは腕から抜け地面に転がっていった。
彼は再び槍を取って狩りの続きを再開した。

「むきゅ~……しんじられないわ……」
「ゆっ……」
ドスと参謀巨大ぱちゅりーは唖然としていた。
あの槍を持っているならば普通ゆっくりが敵わないのも頷ける。
だが槍を使わなくとも、あの人間は易々と巨大ゆっくりを葬る事ができる。
次々と物言わぬ饅頭となっていくゆっくり達。
普通ならばゆっくり達は、最初の隊が全滅した時点で逃げ出しただろう。
それでも逃げ出さないのはこの群れのルールがあるからだった。
『一番手柄をたてた隊に、一番ゆっくり出来る権利を授ける』
昨日までこの村に居座っていた巨大まりさとれいむは、先の戦いで一番人間に怪我を負わせた。
だから今日、山のみんなが来るまでゆっくりしていていい権利が与えられたのだ。
他の隊の連中がやられてくれれば自分の隊がゆっくりできる公算が高くなる。
そう思って大多数はいまだ留まっているが……
「も“う”い“や”だあ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“」
「ゆ”……づぶざな“い”でッ……づぶざ……ゆびゃ!!」
「あんよがああああああぁぁぁ! れいむのきれいなあんよがああああ!!!」
「ゆっぐ……み“、み”ん“な”ど“ご~……な”に”も“びえ”なぃぃぃぃぃぃ……」
「い”だい“よ”お“お”お“お”お“お”ぉぉぉぉぉ!!!」
「だれがぁぁぁ!!! まりざをゆっぐりじないでだずげでよぉぉぉぉぉ!!」
「かわがむりぃぃぃぃぃ!?!?」
大多数が『願望に溺れて溺死しろ』状態である。
「ゆぐぐ……」
ドスは空を見上げる。
それは何かを待っているかのようであった。
その時であった。
「ゆう、ドス」
「ゆ?」
ドスが後ろを見ると、そこには子・赤ゆっくりを避難させた巨大れいむがいた。
「なに? れいむ?」
ドスはつまらなそうに答える。
「れいむおもうの……みんな……このままだところされちゃう……」
「むきゅ! ばかいわないで!」
それに対して声を荒げたのは参謀巨大ぱちゅりーだ。
「わたしのかんぺきなさくせんがあるかぎり、はいぼくはないわよ!」
「ゆ! でもぜんぜんにんげんさんはたおせてないよ! むれのみんながいたずらにしんでるだけだよ!」
実はこの巨大れいむは、巨大ぱちゅりーの前の村の参謀だった。
しかし前回の人間の村襲撃作戦に反対した為左遷され、今では群れの外れにすんでいるのだ。
「むきゅ! いまはよ! いずれにんげんもつかれるわ! そのときまでたえるのよ!」
「ゆ!! そのときになってみんながしんでしまってたらいみないよ!」
一歩も譲らない両者の意見に、ドスの言葉は―――
「れいむ! ゆっくりだまってね!」
「ゆ……!」
「これ以上群れの戦士を馬鹿にすることは許さないよ! みんな一生懸命戦ってるのにれいむはいつも反対してばかりだね! 
少しは協力しようと思わないの!?」
ドスの横で、参謀巨大ぱちゅりーが勝ち誇ったかのように口元を歪めている。
「きょうりょくしてるよ! こどもたちのめんどうをみてるよ!」
「嘘つかないでね! 子供達に『人間と仲良くしよう』だなんて教えてる事、ドスは知ってるんだからね!」
「ゆう……。 でも……! いぜんはどすもそうやっていって……!」
「もう違うんだよ! 人間を倒してみんなをゆっくりさせるのが大切なんだよ! れいむはいい加減にゆっくり理解してね!!」
「そのにんげんをたおすためになんにんのこどものおやをころすの!! そんなのぜんぜんゆっくりできないよ!! 
どすの―――ゆっくりごろし!!」
「ゆ“!!!!」
その一言にキレたドスは巨大れいむに体当たりをした。
「ゆぎゃ!!」
いかに巨大種といえど、さらに大きいドスの体当たりを受けて無事なわけがない。
巨大れいむは地面に転がり倒れ、口から餡子を吐き出した。
その様子を参謀巨大ぱちゅりーは「おお、あわれあわれ」というような目で見ていた。
「それ以上言ったられいむを許さないよ! ゆっくりしないで子供達の場所に戻ってね!!」
その時、ドスは巨大れいむの後方を見て笑みを浮かべた。
「それにね……もうこの戦いは終わりだよ!」
「ゆ?」
巨大れいむは後方を振り返った。
そこには―――いや、後方の空には―――巨大うーぱっくとその一団が迫っていた。
「むきゅう! やっときたわね!」
参謀巨大ぱちゅりーが声を上げる。
巨大うーぱっくは縦二メートル、横一メートル以上の巨大な体をしており、その中に数匹の普通ゆっくりと大きな石を積んでいた。
他の普通サイズうーぱっくも、中に石と普通ゆっくりを乗せており、いわば爆撃隊のような存在であった。
ドスが待っていたのはまさしくこの空中戦隊だったのだ。
広場から少し離れた所に固まって避難している子供達は、いち早くそれを見つけ空に向かって歓声を送っていた。
「どうれいむ? あの人間も空からの攻撃は防げないよ。 どんな人間もそれは同じだよ。これでみんなゆっくりできるんだよ」
「ゆ……」
巨大れいむは思った。
確かにそうかもしれない……だけど……。
れいむには気になっていることがあった。
あの時……広場にあった木を燃やした『光る弾』の存在。
あれはあの人間が撃ったものではないか?
だとしたらいかに巨大なうーぱっくも太刀打ちできないのではないか?
とはいえ、あれを人間が撃った瞬間をみていないので、れいむはそれを強くいえなかった。
なにせ『何もない所』からいきなり光る弾が出てきたのだから。
「ゆーーー!! うーぱっく! ゆっくりこっちに来てね! 人間の上に石を落としてね!!」
「うーーーー!!」
巨大うーぱっくに大声で呼びかけるドスまりさ。
それに大声で答えるうーぱっく。
無論、それを彼が聞き逃すはずなかった。

巨大ありすを引き裂いた彼の耳に飛び込んできた声。
「ゆーーー!! うーぱっく! ゆっくりこっちに来てね! 人間の上に石を落としてね!!」
ドスまりさが視線を向けている方を見る。
空に複数の熱反応。
そのうち一つはかなり大きい。
彼は腕のモニターを開いた。
そしてボタンを入力する。
すると、背中の肩の部分についていた小さな筒が方の上へと競りあがった。
まるで小さな大砲のようだ。
銃身を前方に向ける。
そしてその横から赤い光がでる。
小さな点を三角形の形に配置したそれは、巨大うーぱっくの顔に照射されている。
そして、彼の被った仮面のモニターに三角形の照準が現われ、うーぱっくにそれを絞って行き―――
ピーーー シュバッ
小さな機械音と共に、銃身から白い光弾が発射された。
残滓を残しつつそれは真っ直ぐにうーぱっくに飛んでいき―――着弾し、爆ぜた。

ドガーーーン

思いのほか音は小さかった。
だが、光弾の直撃を受けた巨大うーぱっくは一瞬で絶命した。
光弾は着弾と同時に爆ぜ、その中身を空と地上にぶちまけた。
それによって巨大うーぱっくの周りを飛んでいた、普通うーぱっくもそのほとんどが絶命。
その中身を地上に撒き散らす結果となったのだった。

「「「……」」」
それをしっかりと見ていたドスと参謀巨大ぱちゅりー、巨大れいむは声も上げられなかった。
だが、巨大れいむだけは他のものを見ていた。
撃墜されたうーぱっくの中身が落ちて行く先には―――
「みんな!! にげてえええええええええええええ」



子ぱちゅりーは大きいれいむが大好きだった。
大きくなった大人たちは『人間を倒す訓練をする』と言って、全然遊んでくれなかった。
だが大きいれいむはそれに参加せず、自分達と遊んでくれた。
大きいれいむは本当にいろんなことを教えてくれた。
狩の仕方や寝床の作り方。
捕食種からの逃げ方や友達との上手い付き合い方。
喧嘩したまりさとも仲良くなる方法を教えてくれた。
群れのゆっくりから教えられる、『特別なお勉強』よりずっとためになった。
『ゆっくりは人間より強い』
『人間はお野菜を独り占めする悪い存在』
『人間はゆっくりによって倒されねばらない』
『子供達は早く大人になって戦えるようにならなければならない』
大きい大人たちが増えて、人間の村に攻める事が決まった日から、そんなことが教えられている。
他の赤・子ゆっくり達は、特別なお勉強が気に入ったようで、
「にんげんはゆっきゅりちね!」
「にんげんはゆっくりぷれいすをひとりじめするわるいやつなんだね!」
「わきゃりゅよぉーわりゅみょにょにゃんだねー」
「にんげんなんていなかものよねー」
「みゅきゅ! おびゃきゃにゃにんげんはゆっきゅりできにゃいわ」
そんなことばかり言っている。
でも自分は、それがゆっくり出来ない事のような気がしていた。
だから、勉強を抜け出しては巨大れいむの家に行って、色々な話を聞いているのだった。
そして今日、ついに人間の村に移動するという事で、群れは大移動をした。
子供たちのお守り役として、巨大れいむが付き添ってくれたときはすごく嬉しかった。
だが、他の子供たちはそれをよく思っていないようだった。
「おばさんはむれのはじさらしなんだね!」
「おとーちゃんたちがてゃてゃきゃうにょににゃんでにげりゅにょ?」
「おくびょーにゃんちゃね!」
「ありすはしってるわよ! こういうおとなをごみくずっているのよ!」
「ごみくずれいむはゆっくりしね!」
「わきゃりゅよぉーこんにゃおとにゃにはにゃらにゃいんだよー」
「みゅきゅ! ぱちゅりにちかよりゃねいでね!」
ぱちゅりーはやめるように言いたかったが、友達にいじめられるのもいやだった。
だから、何も言わないでみんなの中に立っているだけだった。
それでも巨大れいむは何も言わなかった。
ゆっくり出来ない人間が突然現われ、大きな大人たちが戦いを始めたときも、巨大れいむはみんなを守ってくれた。
大人たちがどんな戦いをしているかはここからでは見えない。
今、自分とみんなは安全なところにいて、巨大れいむはドスとなにやら話しに言っている。
その時、友達の一人が声を上げた。
「ゆ~! うーぱっくがくるよ!」
私はお空を見上げた。
そこにはおっきなうーぱっくがいた。
大きな大人たちと一緒で、ある日突然大きくなったうーぱっくが。
あのうーぱっくは確か、参謀ぱちゅりーの案で『投石部隊』になるうーぱっくだったはず。
何人かの大人を乗せて、悠然と空を飛んでいる。
わたしはその姿に感動を覚えた。
「ゆ~~!! まりちゃもにょしぇるんだじぇー!」
「ゆゆ! おそらをとんでるみたい!」
「とてもゆっくりしてるね!」
「ゆふん! にゃかにゃかときゃいはねぇ!」
友達達も興奮している。
そしてうーぱっくは私たちの真上まできた。
うーぱっくの中の大人たちも笑顔で私たちを見ている。
と―――

ドーーーン

突然うーぱっくが光った。
赤い光と白い光が混ざってとても綺麗。
それがたくさん空で光っている。
うーぱっくが落ちてくる。
ぼろぼろの体。
大人たちが落ちてくる
中身がこぼれてとてもゆっくりできなさそう。
大きな石が落ちてくる。
まりさの上に。
れいむの上に。
ありすの上に。
ちぇんの上に。
みょんの上に。
わたしの上に。



ドドドドドドドドッ

沢山の石や岩が地面に落下した。
巨大れいむは急いでそこに駆け寄る。
「ゆ……ああああああああああああああああ!!!」
そこは子・赤ゆっくりたちが避難していた場所だった。
運悪くも、うーぱっく達はその真上を飛行中に撃墜されたのだった。
「みんな! おちびちゃんたち! いまたすけるからね! いまたすけるからね! まっててね!!」
巨大れいむは体当たりと舌を使い分け岩をどけていく。
潰れた餡子。
ぼろぼろになったリボンや帽子。
子供達に作ってあげた花飾りの花びら。
ばらばらになったカチューシャ。
飛び出た小さな目。
黒い餡子。
白い髪の毛。
千切れた尻尾。
潰れた胴体。
「ゅ……ゅ…………」
「!!」
小さな声。
急いで岩をどかす。
そこには一人の子ぱちゅりーが。
「ゆ、ゆ……ゆあああああああ!! おちびちゃん!! よかったぁぁぁぁぁあああ!!」
岩の下から引っ張り出そうと近寄ったとき。

ズシン

巨大れいむの目の前に岩が転がってきた。
「ゆ?」
いきなりの事に呆然とする巨大れいむ。
下を見る。
そこには破れた小さな月の髪飾りだけが残されていた。

「…………ゆ…………

あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”
あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”
あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”」

「うそよ……うそ……ぱちゅりーのひみつへいきが……かんぺきなさくせんが……」
「ゆがああああああああぁぁぁぁぁ……」
ドスと参謀巨大ぱちゅりーは頭の中が真っ白になった。
巨大うーぱっくが墜落した場所を呆然と眺めていた。
同時にここへきてついに、あの人間に対する恐怖が芽生えた。
「ゆ、ゆっくりたいきゃ……」
チュドン
「!!」
しゃべろうとした参謀巨大ぱちゅりーの声が途切れた。
墜落現場の方に、失った半身から中身を飛び散らせながら吹っ飛ぶ巨大参謀ぱちゅりー。
ドスは振り返った。
彼は槍とショルダーキャノンを使いゆっくりと殺戮を行なっていた。
近距離のゆっくりは槍で払い、遠距離のゆっくりはショルダーキャノンで攻撃する。
ゆっくり達はそこにいてはやられると必死に動き回るが、ショルダーキャノンの正確無比な砲撃と
チートな追尾性能によって確実に数を減らされていった。
「どぼじでごっち“ね”ら“う”の“お”お“お”お“!!!」
「まりさはゆっくりにげるんだぜ! れいむはしっかりおとりになるんだぜ!」
「あじゅい”い”い”い”い“い”!! あ“り”ずの“どがい”ばな“あ”じ“があ”あ“あ”あ“あ”あ“」
「たいちょうたすけ……ゆびゃあああああああ!!!」
すでに隊はばらばらになり、群れは壊滅状態であった。
「ゆぅぅぅぅぅ……!」
ドスは正真正銘最後の切り札を使う事にした。
隠し持っていたキノコをかじる。
そして、チャージを始める。
ドスパークである。
実はキノコが後一個しかなく、次のキノコがいつ手に入るかわからなかったため、
たった一人の人間に使うのはもったいないと思っていたのだ。
うーぱっくも駄目。
ぱちゅりーも死んだ。
群れも半数がやられた。
もうこれしかないと判断した。
ドスの口腔内にエネルギーが溜まっていく。
「(ゆっくり、もーちょっとだよ!)」
が、しかし。
ドスは自分の眉間に赤い斑点のようなものがあるのに気がついた。
「(ゆ!?)」
それはゆーぱっくを撃墜したショルダーキャノンだった。
彼はすでにドスまりさの行動に気づいており、こちらに照準を向けていたのだ。
「(ゆううううううう!? ゆっくり待ってね! ゆっくり待ってね!)」
その時だった。
彼に飛び掛る一つの影が!
それはあの養育係の巨大れいむだった。
一瞬の隙を突き突撃したのだ。が、

ズン

それは彼の槍によって阻まれた。
しかし―――

ギン!!

「!?」
なんと槍が弾かれた!
見ると巨大れいむの口の中にはうーぱっくが運んでいた岩が入っていた。
それが槍の一撃を弾いたのだ。
「おちびちゃんだちのかたきぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
今までのどのゆっくりより、明確な殺意を持って飛び掛ってくる。

バシュッ バシャアアア

だが届かない
ショルダーキャノンからの一撃。
巨大れいむは岩と共にバラバラに砕け散った。
しかしその間に、ドスはドススパークのチャージを完了させた。
「ゆううううぅ……ごおおおおおおおお!!!」
「!!」
彼がドスの方へ向き直ると、ドスパークが発射されたのはほぼ同時だった。

ピカッ

「うおっまぶしっ」

まばゆいほどの閃光。
一瞬だけ、その場のすべてが白色に染まった。

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最終更新:2022年05月03日 21:16