「ゆっくちちちぇいっちぇね!!」
「ちょきゃいひゃー!!」
「みゅきゅう」
「ゆっくち!!ゆっくち!!」
赤ゆっくりが詰まった箱はまた別の部屋に運ばれた。
「ほい」
台車を押していた男性が箱を降ろした。
「うおー。また結構な数だな」
「ちゃっちゃとやっちゃいましょう」
この部屋にいた2人の男性が箱を手元に寄せた。
「おしょりゃをういちぇりゅよー」
赤れいむが摘み上げられた。
「餡子はこっち」
赤れいむは20cm四方の白い容器の中に投げ入れられた。
「いじゃっ!!!にゃにしゅりゅにょ!!りぇいみゅおこっちゃよ!!」
容器の中では赤れいむがぷくぅと膨れた。が、赤れいむを投げた張本人は容器の中を見向きもせず新たに赤まりさを摘んでいた。
「おしょらをとんでるのじぇ………ゆべっ!!」
赤まりさも白い容器の中に投げられた。そして次から次へと赤れいむと赤まりさが容器の中へ投げ入れられていった。
「ゆわー。おしょらをういちぇるわ」
もう1人の男性は赤ありすを摘んでいた。彼の右手にはバッテンの形をした焼き鏝が握られていた。
「ありちゅはありちゅよ!よろちくね!!…ゆ?」
赤ありすは見慣れぬ鏝をじっと見ていた。
「しょれにゃあ……ぴゅううううううう!!!!!!!!!!!!」
鏝は赤ありすの口に押し付けられた。ジュッと音がして口元から煙が上った。
「ひゅううううう!!!!!!!」
彼は鏝を赤ありすの口から離した。赤ありすの口にバッテンの形をした焦げ跡が残った。
「ぴゅぅぅぅぅぅぅ………ひゅぅぅぅぅぅ…………」
赤ありすは口を開くことができなくなった。完全に口を塞いでしまったわけではなく口の両端は塞がれていない。
叫ぼうにも口の両端だけでは空気が漏れるだけである。
「ひゅっ!!!!………」
赤ありすは黄色い容器に投げ入れられた。彼の前には黄色い容器、紫色の容器、赤い容器が並べられていた。
「いやああああ!!!!!らんじゃまあああああ!!!!」
彼は赤ちぇんを摘んだ。先程の作業を見ていたのか赤ゆっくり達が騒ぎ始めた。
「はなじぢぇええええええええええ!!!!!ゆびゅううううううううう!!!!!」
赤ちぇんも焼き鏝を押し付けられ口にバッテンの形をした焦げ跡が出来上がった。
「次」
赤ちぇんは赤い容器に投げられ次は赤ぱちゅりーが摘み上げられた。
「あちゅいよ!!くりゅちいよ!!」
「せみゃいよ!!」
「ちゅぶれりゅううう!!!」
一方赤れいむと赤まりさを入れた白い容器は8割方埋まっていた。
「でるんだじぇえ!!!!」
1匹の赤まりさが容器から飛び出した。
「あ、こら!!」
地面に着く前に男が受け止めた。そのまま容器の中に戻された。
「ゆああああ!!!だすんだじぇええ!!!きゅるしいんだじぇええ!!」
「あぶねえあぶねえ…」
男は容器に蓋をした。蓋といっても2cm程の穴が開いている。
「おじしゃんん!!きょきょからだちてね!!!」
「せみゃいよ!!!おにゃかしゅいたよ!!」
「おきゃあしゃんにあわしぇちぇね!!」
穴から赤ゆっくり達の文句が聞こえる。彼は応じず容器を持って移動した。
「よいしょっと」
移動といっても数歩動いただけ。大きな業務用の冷凍庫の前で止まった。冷凍庫の脇には魔法瓶が置いてあった。
「暑かったんだろ?」
魔法瓶の蓋を開け中身を穴から注ぎいれた。
「ちゅめちゃいい!!!!」
「ぴいいいい!!!!」
中身はキンキンに冷えた水だった。
「とけちゃうよ!!!!」
「ちにちゃくにゃいよおおお!!!」
「ちゅめ…ぶぐぐぶぐぶぶぐぶぐぶぐぶぐぶ…」
「だじでえええ!!!!たしゅぎぇ…ぶぶぐぐぶ…」
容器一杯に冷水を流し込んでから冷凍庫の中にしまった。
「いらっしゃいませ!!」
「喫茶幻想郷へようこそ!」
「お待たせしました!ゆっくりしていってね!!」
ある喫茶店。巫女姿のウエイトレスや魔法使いの格好をしたウエイトレスが店内を忙しそうに回っている。
「注文いいですか?」
「は…はい!どうぞ…」
猫耳に2本の尻尾を付けた可愛らしいウエイトレスだ。少しぎこちない。
「えっと……ぁあ!消えちゃった…」
「どうしちゃったの?ああ…ここはこうやるのよ。ちゃんと覚えてね。…お客様、申し訳ございません。まだこの子新人でして」
「気にしないでいいですよ」
「あ…あの…もう1回注文お願いします」
「"ゆじきんとき"1つ下さい」
「トッピングは?」
「え~っと…足焼きありすを1つと全身焼きありす1つ」
「かしこまりました」
厨房の中を覗いてみよう。シャリッシャリっという音が聞こえる。時折赤ゆっくりの悲鳴も聞こえてくる。
「あ、氷がなくなるぞ。新しいの持ってきてくれ」
数分後白い容器が運ばれてきた。水の中に浸けたり叩いたりして容器から氷の塊が出てきた。
「いい表情してるな。こいつは美味いぞ」
氷の塊の中では赤まりさと赤れいむがビッシリと詰まっていた。皆歯を食いしばり必死な形相をしている。
氷はかき氷機にセットされハンドルが回された。シャリッシャリっとかき氷機からは餡子色の氷の雨が降り注ぐ。
一山出来上がるとそこに抹茶をかけた。
「えっと…注文は足焼きありす1と全身焼きありす1か」
保温機の中の黄色い容器から赤ありすを2匹摘んだ。ひんやりしていた。
「…ゅ……ぃ…ひゅ……」
「ぴゅ…ひゅ……ゅ…」
2匹とも微かに震えながらか細い声を上げていた。口元はバッテンの焦げ跡がついていた。口を完全に塞いでは面白くない。
ガスの火がついた。箸で赤ありすを摘むと底部を炙った。
「!!……!!…!……ひゅうううう!!!!!!」
言葉にならない呻き声を上げて涙を流す赤ありす。あまり長く炙ると焦げてしまう。茶色くなるくらいで十分だ。
火から離すと氷水の中に浸けた。氷水の中に浸けるのは冷やすためと涙を洗い流すためである。
「ぴゅううう!!!!!!……!!!!!………ひゅいいいびゅうう!!!!!!!」
もう1匹は全身を丹念に炙られた。全身が茶色く焼けあがったところで氷水の中に落とされた。
「このくらいか」
2匹は氷水の中でかき回されてから小皿の上に乗せられた。
「びゅ…ぅぅぅぅぅ……」
「ぅぅぅぅ…ぴゅ……」
2匹の頭に軽く力が加わる。頭を押して口の中に入った水を押し出しているのだ。水切りを済ますと2匹をかき氷の山の脇に載せる。
最後にサクランボを山の頂上に載せると完成だ。
「どうぞごゆっくりお召し上がりください」
客席に"ゆじきんとき"が運ばれた。
「う~ん…。美味しい」
客は"ゆじきんとき"に舌鼓を打った。"ゆじきんとき"はこの喫茶店の夏限定の名物でこれ目当てに遠くからやって来る人もいるのだ。
この他にもこの喫茶店のウエイトレス目当てで来る人もいるとか。喫茶店とは思えぬほど混んでおり店の外には行列ができている。
メニュー表にはれいむとまりさの写真が貼られていた。マジックで何やら書かれている。
赤い文字で
"このあんこはわたしたちがつくりました!!!!ゆっくりあじわってね!!"
さらに黄色い文字で
"のこしたらだめなんだぜ!!!おいしいからおかわりもしてほしいのぜ!!"
と書いてあった。多分赤文字がれいむで黄文字がまりさのセリフなのだろう。
「"ゆじきんとき"くださーい!!」
「"ゆじきんとき"3人前お願いしまーす!!」
「ゆがああああ!!!!たべるなあああああ!!!」
「でいぶのおちびぢゃんがあああ!!!!」
「がえじでええええ!!!ありずのあがぢゃんがえじぇええええええ!!!!!」
「たべるなああああ!!!!やべろおおお!!!!」
先程赤ゆっくりを調達した部屋では台に載せられたゆっくり達が喚いていた。ゆっくり達は茎を生やしていなかった。
この時間帯は休憩だ。四六時中茎を生やしていると赤ゆっくりが不味くなってしまう。1日1時間、これだけで赤ゆっくりは美味しくなる。
「ほぉら、良く見てよ。特に人間さんのお顔。すっごいゆっくりしたお顔でしょ」
部屋の壁にはモニターが設置されていた。映っているのは喫茶店内の様子。映っている人達は美味しそうに"ゆじきんとき"を食べていた。
「君達の赤ちゃんは素晴らしいね。人間さんをこんなにゆっくりさせてくれるんだから。君達は優秀なゆっくりだ」
「うあああああ!!!!ありずのおちびぢゃんがああああ!!!!!」
「ぼういやだああああ!!!!はなじでよおおお!!!!」
「わがだないよおおおお!!!!!らんじゃまああああ!!!!」
誰一匹として納得するゆっくりなどいなかった。最初は"かきごおりたべたいよ!!"とか"そのあまあまよこせえ!!"とか言ってたのだが。
「ハッスルタイムですよー!!」
部屋のドアが開いた。発情しきったゆっくり達が詰められた箱を載せた台車が部屋の中に入ってきた。
「あ、もうそんな時間?」
「ああ。おやつできてるよ。食ってこいよ」
「じゃ、俺も"ゆじきんとき"食ってくるわ」
モニターを消すと彼は部屋から出た。
「ありがとうこざいました!!」
「また幻想郷に遊びに来てくださいね!!」
今日も喫茶幻想郷は大繁盛だ。
「ゆわああああ!!!だずげでえええ!!!!」
「でいぶはおいじぐないよおおおお!!!」
「ままあああ!!!!だずげでええええ!!!」
3匹の子ゆっくりが必死に走っていた。3匹の後ろには野良犬が迫っていた。
「いぬざあああん!!!ゆっくりじようよお!!」
「ありずはたべものじゃないよおおお!!!!」
さらに後方では野良猫が何かを食していた。
「ゆぎゃああ!!!!いじゃいい!!やべっ……いいい!!!ぎゃぎゃあああ!!!!」
それは子まりさだった。既に3分の1程食べられてしまっている。
「いやああ!!!!!いやああ!!!!たべn………」
甘いものが好きなのは犬や猫だって同じだ。子まりさを完食し満足そうにどこかへ行ってしまった。
「ゆぎゃあああ!!!!はなじでえええ!!!れいぶをはなじでよおおお!!!!!」
子れいむが捕まったようだ。残る2匹の子ありすは子れいむを無視して逃げ続けた。
「ありずうう!!!!ありずう!!!!だずげでよおおお!!!いながものおお!!!!!だずげろおおお!!!!!」
子ありす姉妹と子れいむ子まりさ姉妹はいつも4匹で遊んでいた。今日も仲良く遊んでいたところ野良猫に出会った。
最初はじゃれ付いて遊んでいたのだが急に子まりさが齧られた。残る3匹は逃げ出した。その途中に今度は野良犬と遭遇したのだ。
「たべないでええ!!!!!でいぶはでいぶだよお!!!!!まんじゅうじゃだいよお!!!!!ゆぎゃ!!!い…いじゃいよお!!」
犬は一口齧ったが口に合わなかったのかペッと吐き出しどこかへ行ってしまった。
「あんよじゃんがぁ……うごげないよ……だれがああ!!!ありずう!!まりざあ!!!だじゅげでええ!!!!いじゃいよおおお!!!」
その頃2匹の子ありす姉妹は命からがらおうちに辿りつき親ありすに泣きついていた。
「ごわがっだよお!!!!!!」
「ばりざがああ!!!でいぶもじんじゃっだよおお!!!!」
親ありすは2匹を宥めていた。
「よしよし。こわかったね。でももうあんしんだよ。ままがまもってあげるからね!!」
2匹はずっと泣き続けていたが辺りが暗くなった頃には泣き疲れたのかぐっすりと眠ってしまった。
「ゆふう…さ、ごはんさんをさがしにいくわよ!」
明朝親ありすは餌を取りにおうちを出ようとした。
「ままぁ…まってよぉ…」
いつもならまだ眠っていた子ありすが1匹起きて親ありすを追った。
「まだねてていいのよ。おちびちゃん」
「こわいよぉ…ひちょりにしないで…」
「はいはい。じゃ、いっしょにいこうね。おねえちゃんがおきるまえにがんばろうね!」
親子はおうちを出た。すると親ありすの頭に何かが止まった。
「ゆ!?なに??」
「ゆあ!!からすしゃん!!からすさん!!ゆっくりしていってね!!」
親ありすの行動は早かった。
「おちびぢゃん!!!!ゆっくりしないでにげるのよ!!!」
「ゆ?」
子ありすは分からなかったが親ありすはカラスの怖さをよく知っていた。子ありすにとってカラスはただの空を飛ぶ動物だったのだ。
親ありすはカラスを追い払おうとしたがそれよりも早くカラスが親ありすを突いた。
「ゆぎゃああ!!いだいい!!!!ごのおおお!!!いながぼのおおお!!!!」
カラスは飛び上がり今度は目を突いた。
「いじゃああああああ!!!!!!ありずのおべべがあああ!!!!!!」
「ま…まま……ままあ…びゃああああ!!!!!」
子ありすが近づいたところをまた別のカラスが子ありすを嘴で掴みどこかへ飛んでいってしまった。
「か…かえじぇえええええ!!!!!!!ありずのおお!!!!ありずのちびぢゃんがえぜえええ!!!!!ゆっびょおおおお!!!!」
気づけばありすの周りには数匹のカラスが止まっていた。
「ごのおお!!!!いながぼのがああ!!!!がえぜええええ!!!!!」
ありすはカラスを殺そうと一心不乱に暴れまくった。だがカラスは軽く避けありすは地面に顔から飛び込むだけだった。
「ゅ……ゆ…いながぼの…ぃながぼのぉ……」
弱ったありすをカラスが突きまくった。
「ゆぎゃあ!!!ゆびゃあ!!!………ゆっぐぢ……ぢょがい……」
動かなくなったありすを軽く食べてからカラスたちは何処かへ飛んでいってしまった。
「ゅゅ……ままぁ……いみょうとは?……ひとりにしないでよ…こわいよ…」
おうちに残された子ありすが起きたときおうちには誰もいなかった。正確に言えば妹も親もカラスによってゆっくりできなくされていた。
「こわいよおお!!!!!ままああ!!!ゆっくりじないでがえっでぎでよおおお!!!!」
子ありすは泣き喚いていた。
「どうしたの?」
「ゆゆ!!ままああ!!!!」
子ありすはおうちに入ってきたゆっくりに飛び掛った。
「ままあ!!!ままあ!!!」
「ゆ!!れ…れいむはままじゃないよ!!どうしたの!!??」
それは親ありすではなくれいむだった。れいむの頭には子まりさが乗っていた。
「どうしたの?ありす」
子まりさが降りて問いかけた。
「ままがね…ままがね…いないの…こわいよおお!!!!」
「ゆ~ん。ひとりはこわいよね。じゃあれいむがちょっとだけままになってあげるね!!」
「まりさはまりさだよ!!よろしくね!」
子ありすはれいむにぴたっとくっついて離れなかった。
「ゆゆ~。そんなのこわかったんだね。よしよし」
れいむは子ありすをあやした。
「ありす」
れいむが話しかけた。
「なぁに?」
「ゆっくりたべられてね!!」
突然れいむが子ありすに圧し掛かった。
「ゆぎゃ!!!!なにずるのおお!!!!ゆびゃあ!!!!いじゃいい!!!びょお!!!!!」
「おかあさん!!ゆっくりしないでね!!」
「ゆふふ。おちびちゃん、しにかけがいちばんおいしいんだよ!!」
数回押し潰したところでれいむは子ありすから離れた。
「どぼじで……ぐるじい……ままぁ……だずげで…」
子まりさが子ありすに近づいた。そして子ありすを食べ始めた。
「むーしゃむーしゃ、あまぁぁい!!しあわせええ!!!!」
「ひぎゃっ!!!ひい!!いじゃいよおお!!!かまないでええ!!!あり…ぎゃ!!!たべぼのじゃ!!!」
子ありすは叫んだ。が、子まりさの方は全く動じず子ありすを美味しそうに食べている。
「おかあさん、おいしいよ!!いっしょにたべようよ!!」
「ぜんぶおちびちゃんがたべていいんだよ!おかあさんはこっちをたべてるから」
親れいむはというとダンボールハウスの前で散らばっていたありすの死骸を食べていた。
「むーしゃむーしゃ。このありすはおいしいね!!」
綺麗に死骸を食べ終えた頃子まりさがダンボールの中から出てきた。
「おちびちゃん!おいしかった?」
「うん!!れいむよりもありすのほうがおいしいよ!!」
「じゃあおうちにかえろうね!」
2匹は帰路に着いた。その途中だった。
「ゆぎゃっ!!!」
「ゆ!!おちびちゃん!!どうしたの!!!??」
「いじゃいよおおお!!!!ざざっだあああ!!!なにがさざったよおお!!!」
子まりさは寝転がりあんよを親れいむに見せた。確かに小さな石が子まりさのあんよに刺さっていた。
「お…おちびちゃん!なかないで!!いまおかあさんがとってあげるからね!!!」
普通の動物であれば全く問題無い砂利や小石がゆっくりにとっては致命傷になりかねない傷を付けることがある。
「ゆふう…ゆふう……」
子まりさのあんよから小石が抜かれた。子まりさは起き上がり息を切らしていた。
「だ…だいじょうぶ?れいむのかわいいおちびちゃん!」
親れいむは子まりさをぺろぺろ舐めて宥めていた。
「ふう…ふう……ゆ!!おかあさんもうだいじょうぶだよ!!もうあるけるよ!!」
子まりさは泣き止んだ。
「だいじょうぶ?おかあさんがおんぶしてあげるよ」
「だいじょうぶだよ!おとうさんとやくそくしたもん!!つよいゆっくりになるって!!!」
「おちびちゃん!!」
親れいむの目が潤んだ。番だったまりさはもうこの世にはいない。れいむにとっては誰よりも頼れる存在だった。
そのまりさの面影を我が子に見たのだ。
(まりさ…おちびちゃんは…おちびちゃんはまりさみたいなゆっくりになれるよ!)
「おかあさん?」
「ゆ!おちびちゃん、じゃあゆっくりかえろうね!」
子まりさは全く痛くないわけではなかった。少し強がっている。それでも一歩ずつゆっくりとはしていたが地道に自らの足で家路に着いた。
「ついたよ!!!ゆふううう!!!つかれたああ!」
結構な時間をかけて親子は巣に帰ることができた。
「おちびちゃんはとってもゆっくりできるじまんのこだよ!!よくがまんしたね!!えらいね!!」
「おかあさん……まりさつかれちゃったよ…」
「ゆぅ…おちびちゃんといっしょにいてあげたいけど……そろそろゆうごはんさんさがしにいかないと…」
「まりさひとりでおるすばんできるよ!!ねんねしてまってるよ!!」
「そうだね!おちびちゃんだったらだいじょうぶだよね!!だってこんなにりっぱなゆっくりだもん!」
親れいむは子まりさを巣に残し餌を探しに行った。
「おちびちゃんはりっぱにそだってるよ!!ゆゆ!!こんなにあんこもらしちゃってる…。きょうはがんばってごちそうだよ!!」
親れいむはいつもより力強く走り出した。
「まりさは…ねんねするよ……ゆゆぅ…つかれちゃよ……」
子まりさは巣の中で眠りについた。
さて、都会は田舎に比べ生き物が少ない。しかし都会でも普通によく見かける生き物がいる。
「ゆぴぃ……ゆぴぃ……」
暢気によだれを垂らしながら眠っている子まりさ。時間が経つにつれ子まりさに一本の黒い線が近づいてきている。
「ゆぅ…くすぐったいよ…ゆひゃひゃ…おかあさん…」
子まりさが身を捩じらせる。
「ゆひゃ!!おとうさん……くすぐったい……ひ…くすぐ…ゅ……」
子まりさは夢の中で違和感を感じていた。どうも体がむずむずする。ゆっくりできな……ゆっくりできない!!
「ゆあ!!!!!…ゅ…ゆ……ゆがああ!!!!!なにごれええええ!!!!」
子まりさは目を覚ました。自分の体に黒いものがビッシリとくっついていた。
「なにごれえ!!!!なにごれえええ!!!!どっでえええ!!!!だれがどっでえええええ!!!!」
子まりさは暴れた。体からボトボトと小さくて黒い物体が振り落とされた。
「ありざん!!!!!まりざからはなれでよおおおお!!!!!!きぼぢわるいよおおお!!!!!!」
子まりさは巣の中をゴロゴロと転がったり壁にぶつかったりと大いに暴れた。大量の蟻が振り落とされたり潰されたりした。
ゆっくりは虫を好んで食べるが蟻も例外ではない。蟻酸のせいなのか妊娠中のゆっくりが好んで食べるという話もある。
だが蟻にとってもゆっくりは食べ物なのだ。赤ゆっくりや小型の子ゆっくりが大量の蟻に蝕まれることがある。
弱った成体ゆっくりも蝕まれることがあるくらいだ。
「うがああああ!!!!!!!おがああざああああん!!!!!!!だずげでええええ!!!!!」
怪我をして破けたあんよから漏れ出した餡子を辿って蟻が湧いたのだろう。
「ゆぎゃあああ!!!!ゆ!!!…な…なに!!???なに!!!!??なんなのおおおお!!!!!!」
子まりさはまた別の違和感を感じた。目元がむずむずするのだ。
「ううう…うぞでしょおおお!!!!!!いやっ!!!!いやあああ!!!!!だずげでえええええ!!!!」
子まりさは今から起きることが予想できた。
「いや!!!!いやだあああ!!!!!!ありざんででごないでええええ!!!!!……ゆ……ゆあああああああ!!!!!」
予想は的中してしまった。子まりさ目から蟻が湧きだしたのだ。1匹、また1匹と蟻が目玉の上を歩き回る。
子まりさが就寝中に体内に侵入し中身を蝕みながら目元まで進んだのだろう。
「ひいいいいい!!!!!…ぉぉ……もおぼおろおもぼろぼ………」
視界を動き回る黒い点々に子まりさの精神が限界を迎えてしまった。大量の餡子を吐き出し白目を剥いて気絶してしまった。
「おちびちゃん!!おそくなってごめんね!!」
それから暫くして親れいむが帰宅した。相当頑張ったのだろう、花や葉っぱや虫など口の中を一杯に詰めて帰ってきた。
「おまたせ!!おちび……ゆ!!!な…なにごれえええ!!!!!?????」
巣の中にはビッシリと蟻が集っていた。
「お…おちびちゃん!!!おちびちゃん!!だいじょう…ぶ……?」
蟻を潰しながら親れいむは中へ入っていった。目の前に蟻で真っ黒になっている球体があり見慣れている帽子を被っていた。
「……う!!!…ゆあああああああああああ!!!!!!!!!!おおおお…おちびぢゃんがああああ!!!!!!!」
親れいむは舌で蟻を払い除けた。我が子に近づこうとする蟻を喚きながら踏み潰した。
「ででげええ!!!!!ででげええ!!!!おちびぢゃんがらはなれろおおお!!!!!!ゆあああああ!!!!!」
蟻を払い除けると目玉が現れた。真ん丸でキラキラした子まりさの目玉は破れどろっと中身が垂れていた。
「ゆあああああ!!!おちびぢゃん!!!!!!おちびぢゃん!!!きでいなおべべがああ!!!!おべべあげでよおお!!!!」
さらに蟻を払い除ける。以前は少し汚れていたもののもちっとした触感だったお肌。ボロボロで所々餡子が漏れていた。
「おちびぢゃあああん!!!!!べえろぺえろずるがらあああ!!!へんじじでよおおお!!!!!」
口元が見えた。口は半開きで餡子がべっとりと垂れていた。異常を察したのか蟻が口の中から逃げ出していた。
「おべべあげでよお!!!へんじじでよおおお!!!!うごいでよおおお!!!!おちびぢゃあああああん!!!!!」
子まりさは既に事切れていた。
「ひっぐ……おちびぢゃぁん……ゆえぇえぇえん……っぐ…じんじゃっだよぉ……」
親れいむは供養にと子まりさを食べ始めた。
「おぞらで……っぐ…まりざど……ゆっぐぢぢでね……ゆっぐ…」
同属を平気で食べていたが流石に我が子を食べて"しあわせぇー"にはならないようだ。
「あ、こんなところに饅頭が住んでるぞ!!」
「ホントだ。どっからこんなダンボール拾ってきたんだろうな?」
れいむの後ろから声が聞こえた。れいむが振り返ると外には小学生くらいの少年が数人こちらを覗いていた。
「れ…れいむはまんじゅうじゃないよ!!れいむはれいむだよ!!……ゆ…ゆっくりしないででていってね!!」
れいむはそう答えた。
「おい、なんか言ってるぞ」
「生意気だなこの饅頭」
「おらよ!!」
1人の少年が段ボール箱を軽く蹴飛ばした。
「ゆびゃ!!やめてね!!おうちがこわれちゃうよ!!!」
「ほれほれ!」
「早く出てこないとおうちが壊れちゃうぞ!」
れいむは抗議したが少年達はふざけ続けていた。
「おねがいだからでていってね!!おこるよ!!!ぷくうう!!!」
外に出たれいむは威嚇して大きく膨らんだ。
「おもしれえなこいつ」
「ピンク色に塗ったらまんまカ○ビィだな」
「そうだ、ちょっと味見してみないか?」
「食えんのか?不味そうだけど」
「まあ見てなって」
1人の少年がれいむを押さえつけ頭頂部を鷲掴みにした。
「いじゃい!!!れいむはかわいそうなんだよ!!おちびぢゃんをなくしちゃったんだよ!!だからだいじにしない…」
「うるせえよ」
彼は思いっきり頭頂部を引き千切った。
「ゆがあああ!!!!あだまがいだいよおおお!!!!!」
更に千切ると中身の餡子が現れた。
「食えんのかそれ?」
「いやまだだ。ちょっと待って」
腕を突っ込み餡子を掘り始めた。
「でいぶのながみがあああ!!!やべぢぇええええ!!!!ぐるじいよおお!!!!!ゆるじでええええ!!!!」
「よく叫んでいられるよな。もうじきだよ」
丁度中心くらいのところまで掘り続けた。
「このあたりのが美味いんだって。兄貴が言ってた」
「どれ…お、うめえ」
「俺にも食わせて…うは!超うめえ」
少年達は手を突っ込み餡子を食べ始めた。
「やべでえ!!やべでえ!!!!ながみたびぇにゃいぢぇえ!!!!!ゆぴゃあ!!!ゆびょお!!!」
れいむの言動がおかしくなり始めた。
「ゆぴょぴょぴょぴょぴょぴょぴょ!!!!!!ぴゅびょおおおお!!!!!」
彼らが美味い美味いと言っているのは丁度中枢餡と呼ばれているところだ。
「あ、雨だ」
「こりゃ結構強いぞ」
「おお!!帰るべ!!!」
少年達は走り去っていった。れいむは残され雨に打たれていた。
「ぴゃぴぴゅぺぴょおおお!!!!!!!ゆゆゆゆゆゆゆ!!!!!ゆぎょびょのよごお!!!!!!」
雨が止んだときそこにはどろどろになった餡子の塊だけが残されていた。
また会う日まで
最終更新:2022年05月03日 19:22