ゆっくり虐めSS ゆっくり木こりの泉 前編
【前書き】
作者はちぇんときめぇ丸が好きです
いつかは知らないがとある森の奥にいつのまにか泉が出来た。
しかし人も滅多に立ち入らないその森では些細な変化を気にする人間は誰もいなかったようだ。
「むきゅ?こんなところにいずみなんかあったかしら」
「そうだったっけー?ちぇんはおぼえてないよー?」
「いーや、こないだきたときにはこんないずみはなかったみょん!」
「むきゅう・・・さいきんあめはふってないのよ。なんでいずみができてるのかしら?」
「でもきれいだよー!すごくゆっくりしてるよー!」
「たしかにそうだみょーん!」
いや、いた。
人ではないが、ゆっくりがその泉の存在に気づいたようだ。
皆さんはもう分かっているだろうか、この泉はただの泉ではない。
そう、イソップ童話で正直者の木こりの鉄の斧を金の斧に変えたあの泉である。
理由は不明だが、なぜか時代を越え、次元を越えてこの幻想郷の森に現れたのである。
これも異変というべきだろうが、悲しいかなこんな森の奥、この先人間には見つかることはないだろう。
季節はもうすぐ冬、周囲に他のゆっくりは見当たらない。
ぱちゅりー、ちぇん、みょんの三匹は食料調達のためにいつもより遠出をしてきたようだ。
「ぱちゅりー!このおみずのんでもだいじょうぶかみょん?」
「ちぇんもからだをあらいたいよー」
「まって、ひょっとしたらゆっくりできないどくがはいっているかもしれないわ!さかなやむしがぜんぜんいないもの」
「でもごはんをたくさんとったからつかれたよー!ここでやすみたいよー!」
そして狩りは成功したらしい、彼らは沢山の木の実や虫を抱えている。
だがその代わりに三匹ともあちこち汚れている、ちぇんの気持ちも分からなくはない。
「わかったみょん・・・きけんかもしれないならしょうがないみょん」
「でもこんなにゆっくりできれいなんだよー、ちぇんものどがかわいたよー」
「むきゅ!だめよ!もしこのみずにどくがはいってたらどうするの!?」
「そうだみょん!もしちぇんがしんじゃったらちぇんのおくさんのめーりんがゆっくりできないみょん!」
「ゆぅー・・・でもー・・・」
ちぇんは自分の帽子につけられた星のバッジに目をやった。
このバッジはちぇんがめーりんにプロポーズしたときに返事として貰った、いわば『結婚バッジ』である。
ちなみにバッジには『夫』と書いてある、がその輝くバッジも受け取ってずいぶん経つ。
今はもう帽子共々傷だらけ、しかも今日の狩りで泥がべったりだ。
「のめなくてもせめてぼうしだけでもあらいたいよー、ばっじだけでもゆっくりきれいにしたいよー」
ちぇんは身を乗り出して泉を覗き込む、だがその足元は滑りやすいコケが生えていた。
結果・・・
「あにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ドボーン
「むきゅ!ちぇぇぇぇぇぇん!」
「みょぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」
落ちた
「むきゅ!みょん、みょん!」
「はやく、はやく!これにつかまるみょん!」
しかし幸いなことに、みょんが武器として持っている木の棒(みょん曰く「はくろうけん」)によりなんとか引き上げられた。
だが・・・
「ちぇんの、ちぇんのぼうしがあああああ!めーりんのばっじがあああああああ!」
「ゆゆこさまにもらったはくろうけんがああああああああああああ!」
命の次に大切な帽子は自らの起こした波にのり泉の真ん中に進んでいき、沈んでしまった。
棒も池の中央に流れていってしまった。
「ゆにゃああああああああ!どぼじでぼうじさんがああああああああああああああああ!」
「みょわああああああああ!いのぢよりもだいじなばぐろうげんがあああああああああ!」
「ふ、ふたりともおちついて・・・」
「ぼうじがないどゆっぐりでぎないよおおおおおおおおおおおおお!」
「はくろうけんがないとゆっくりでぎないみょおおおおおおおおん!」
「むきゅ!ふたりともおちつきなさい!いずみにとびこんだらしんじゃうわよ!」
ちぇんとみょんは今にも飛び込みそうな勢いで泣き叫んでいる、ぱちゅりーはそんな二匹を引きとめるのに精一杯だ。
そのとき、泉がゴボゴボと泡立ち、キラキラと輝き始めた。
「「「???」」」
泉の中から世にも美しい女神が現れた、その手には何かを二つ持っている。
ちぇん種のトレードマークの帽子と、どこかで見たことのある短刀だ。
そして女神は泣き叫ぶ二匹に言った。
「あなたが落としたのはこの新品の帽子ですか」
「にゃ?」
「あなたが落としたのはこの新品の白楼剣ですか?」
「みょん?」
「むきゅ・・・」
突然の出来事にあっけに取られる三匹、驚きのあまり言葉も出ないようだ。
答えを返さない二匹に対し、女神はもう一度問いかけた。
ちぇんとみょんはやっと気付いた、いきなりで驚いたがこのおねえさんは自分達が落としたものを返してくれるというのだ。
もう二度と戻らないだろうと思った宝物が返ってくるのだ、こんなに嬉しい事はないだろう。
「ありがとうおねえさん!そのぼうしはちぇんのたからものなんだよー!うれしいよー!わかるy・・・」
ちぇんは気付いた、おねえさんの帽子にはバッジが、愛妻めーりんにもらった大切なバッジが付いていない。
ちぇんの頭の中にめーりんとの思い出が走馬灯のように流れる。
「おねえさん・・・それはちぇんのぼうしじゃないよー。ちぇんのぼうしをかえしてほしいよー」
「・・・・・」
「・・・かえしてほしいよー」
女神はにっこりと微笑んだ
「あなたはとても正直なゆっくりのようですね、ご褒美にこちらの新品の帽子をあげましょう」
「ゆぅ・・・でもそれは・・・ちぇんのぼうしだよおおお!めーりんのばっじもあるよおおお!ぴかぴかだよおおお!」
「むきゅ・・・あなただれなの!なんでちぇんのぼうしをもってるの?」
ぱちゅりーは質問するが、女神はそれには答えずみょんに再度問いかける
「あなたが落としたのはこの新品の白楼剣ですか?」
「・・・それはなんだみょん?みょんのはくろうけんはそんなんじゃないみょん」
「あなたはとても正直なゆっくりのようですね、ご褒美にこの木製の短剣をあげましょう」
「すごい!すごいみょん!こんなはくろうけんはみたことないみょん!」
欲望に流されるとかそう言う以前に、みょんは刃物を知らなかった。
だから白楼剣だと言われてもみょんの中で『はくろうけん』は木の棒でしかなかったのである。
「むきゅ!おねえさんはなにものなの!」
「・・・・・」ニコニコ
女神は微笑みながら泉の中に消えていった。
「ゆっくりきれいなぼうしだよー!うれしいよー!」
「みょーん!すごいみょん!はくろうけんがつよくなったみょん!」
「むきゅ・・・」
ぱちゅりーは腑に落ちないらしい。
今日見つけた食料の中から小さな木の実を1つ口に含むと、泉の中に放り込んだ。
「あなたが落としたのはこの大粒の苺ですか?」
「・・・・・」
「あなたが落としたのはこの大粒の苺ですか?」
「・・・そうよ!ぱちゅりーがおとしたのはそのいちごさんよ!」
途端、微笑んでいた女神の顔がとても厳しい怒りの表情になった。
「あなたは嘘つきのゆっくりですね。罰です、木の実も苺も返してあげません」スゥー・・・
有無を言わさずに女神は泉の中に消えてしまった。
「なんでおねえさんはいちごをくれなかったのー?わからないよー」
「むきゅ・・・それはきっとぱちゅりーがうそをついたからよ」
「どういうことみょん?」
「ふたりはしつもんにしょうじきにこたえたわ、でもぱちぇはうそをついたのよ。ぱちゅりーがおとしたのはいちごじゃないもの」
「つまりしょうじきにこたえればいいものがもらえるってことかみょん?」
「たぶん、そうだとおもうけど・・・」
ポチャン
「あなたが落としたのはこのリンゴですか?」
「ちがうわ、ぱちゅりーがおとしたのはただのきのみよ。りんごなんかじゃないわ」
「あなたはとても正直なゆっくりのようですね、ご褒美にこのリンゴをあげましょう」
「むきゅ、やっぱりね、あのおねえさんはほんとうのことをいえばいいものをくれるのね」
「すごいみょん!これならいつでもゆっくりおいしいものをたべれるみょん!」
「しあわせだよー!わかるよー!みんなにもおしえてあげようよー!」
「むきゅ、そうね!でももうすぐくらくなるわね、またあしたきましょう」
「「わかったよー!(みょん!)」」
三匹は意気揚々とそれぞれの住処に引き上げていった。
が、泉の近くの茂みの中にそんな三匹をこっそりと盗み見る影があった。
「ゆほほ、とかいはないいものをみつけたわ。まりさにおしえてあげましょ、あとどすにもしらせなきゃ」
影は悪どい笑みを浮かべ、ピョンピョンとその場を去っていった。
最終更新:2022年05月21日 22:00