力が欲しい
誰にも負けない力が欲しい
――いや、それは嘘だ
心から言ったことじゃねえ
飯だ
もっと美味いモンが食いてえんだ
調理何てしなくていい
ナマの食材を味わいたい
一度浸っちまったんだ
もう抜けることは出来ないし辞めたいとも思わない
最高の食材に出会ってしまった
これは革命だ
快楽を求めるのに理屈はいるのだろうか
いいや、いらないね
だから俺はもっと喰いたい
人間【食材】を――――
■
この光景を誰が予想できただろうか。
これだけの者達が一同に会すこの状況を誰が予想できただろうか。
かつて地上最強と呼ばれた、此処に来て新たな力を手に入れた範馬勇次郎。
何時からこの殺し合いに参加していたのか、それさえ解らない【挟む】者月島秀九郎。
その存在故に牢に封じ込められた音を使いし美食屋四天王、ゼブラ。
そして伝説のサイヤ人二名が集結するなど誰が想像できただろうか。
「よう悟空、俺の前に来たってことはもう準備はいいんだよなぁ?」
一度戦い損ねた獲物と再び相まみえた勇次郎は既にやる気に満ちており、サイヤ人に触発されたのか体から溢れんばかりの気が漏れ出している。
既に人間の域を超えた勇次郎に歯止めなど存在しない。男はただ上を目指すのみ。
対する悟空は若干困り気味に返答した。
「勇次郎、お前とも戦いたい。でもよぉまだブロリーを倒してねえんだ」
時間を遡れば、たしかに悟空と勇次郎は戦っていた。
幾つかの邪魔が入ったがそれでも二人は戦い続けた。ブロリーが来る前は。
それからは戦場を宇宙に変え戦っていた悟空とブロリーだったが二人は戦いを終える前に戻ってきた。
月を破壊したと言う事実と共に。
会場に月の破片が落ちてくるのも時間の問題であり、あまり悠長にしている時間はない。
真剣に考えているならば
だがゼブラと月島は違うが他の三人は一種の共通点とも呼べることがある。
それは何も考えずに純粋に戦いたい、ブロリーの場合は殺したいである。
悟空も最後にドラゴンボールで無かった事にしようと考えている辺り、殺すまで戦うと言う意味合いだろう。
勇次郎も激戦の果てに相手の生命を奪った結果になったとしても何も後悔することはないだろう。
ブロリーから見れば月の破片で人が死のうが関係ないし、会場が壊れたとしても同じ。
勇次郎から見れば誰がどうなろうが関係の無いこと。
悟空から見れば最後に元通りになるのだから過程など関係なかった。
「なら俺も仲間にいれろ……ンッ!!」
悟空の返事が曖昧だったがそれに構うこと無く勇次郎は悟空に飛びかかる。
言葉を発してから攻撃に移るまでのモーションに一切の隙は存在せずに一般人なら区別もつかない程の鮮やかな移行。
繰り出される飛び膝蹴りは美しく悟空の顔に吸い込まれて行くが届くことはない。
ブロリーが放った気弾の横槍により、勇次郎は空中で攻撃を中止し体制を強引に回避に移行させる。
そのまま気弾は悟空に襲いかかるが瞬間移動により簡単に回避に成功する。
空中での回避からそのままブロリーの前に降りる勇次郎と、瞬間移動によりブロリーの背後に立った悟空。
ブロリーは両者に挟まれる形なった。
「俺の邪魔をするかサイヤ人……ッ!」
「やっぱお前から倒すかブロリー!」
「フンッ!いいだろうカカロットに勇次郎!お前らを捻り潰してやろう!!」
ブロリーが力を込め気弾を地上に打ち込み衝撃波が4人を襲う。
ゼブラは音で自分に迫る衝撃波を対消滅させ、月島が空中に行くことにより無効化させる。
悟空と勇次郎はお構いなしにブロリーに殴りかかっていた。
拳と衝撃波が当り、轟音を響かせながら新たな衝撃波が生まれる。
だが3人共引くことは無く己の力比べと言わんばかりに互いの力をぶつけ合っていた。
顔は怒りよりも微笑みに満ちており3人共この戦いを楽しんでおり、周りの事など一切気にしていなかった。
先のホテル崩壊もこの衝撃に一つの理由があったなど誰も気づかないだろう。
純粋に無邪気に力比べする3人は誰が見ても隙だらけであり、自由の身である二人が狙わないわけが無かった。
ゼブラは自分の怒りを声に乗せそれを悟空に向けて放つ。
鋭く放たれたその一撃を悟空は瞬時に気づき力比べを中断させ、同じく気弾を放つ。
2つのエネルギーが空中でぶつかり合い小さな爆発が辺りを包み込んだ。
爆風で何も見えない中ゼブラは耳をすませる・
(聞け……あいつの音を……)
その類まれなる聴力で悟空の座標を定めるゼブラ。
ノイズが多い中でも確かに悟空の音を聞き当てた彼はそこに追撃をかける。
「ボイスミサイル!!」
ゼブラの力は音を司る。
口から放たれる音速のミサイルは爆風に包まれていながらも確実に悟空へと向かっていた。
目が見えない中での確実な攻撃。
ゼブラはこれでも喰らいやがれ、言わんばかりに力を込めて悟空へとぶつける。
ココと言う大事な、決して本人の前で言うことは無いが大事な仲間をゼブラは失った。
その犯人を知っている、音で全てを知っていた。
それがサイヤ人、そいつが目の前にいる孫悟空。容赦など存在するはずが無い。
仮にもココを、同じ四天王であるココを殺したならばその腕を侮ることは出来ない。
現に悟空は気で全員の位置を感じ取っておりゼブラのボイスミサイルも簡単に回避に成功していた。
「おめぇ、あの時の兄ちゃんと同じ……いや結構似ている気だな。知り合いか?」
「……チョーシに乗ってんなら殺すぞ……」
悟空は聞かなくても気で元気玉で死んだ男と目の前にいる男が知り合いなのは感じていた。
だが、それでも聞いた理由はただ一つ。この男の本気を知りたい、戦いたい、感じたい。
己の欲求、男なら誰でも思う強い奴と戦いたい。
彼の原動力はそれ一つだ
そしてそれは勇次郎も同じである。
月島はブロリーを狙っていた。
勇次郎とは既に会話をしていたし、その獲物である悟空を奪うつもりはなく、必然的にブロリーを狙うことになった。
それに『ブロリーを殺せば願いが叶う』と言う餌はとても美味しいものであり狙わない理由がない。
仮に願いが叶わないとしてもここでブロリーを堕とすことはこれからの殺し合いに大きなアドバンテージを付ける。
殺し合いがそこまで続けばの話になるのだが。
参加者には霊圧に近い何かを感じ取っていたため目が見えなくても簡単に相手の位置が掴める。
それはここにいる5人に共通することだが月島だけは違っていた。
彼だけは一撃を、挟むだけで全てが終わるため、最後まで戦う必要がない。
先ほどの攻撃がジャブ程度だとしても悟空と勇次郎を二人同時に相手するブロリーの力は本物だろう。
それに自分を挟み込むのに成功したのなら月島の勝率は二倍どころの話ではない。
「さぁ、過去を思い出すといい――――――」
「ん~?何か言ったかぁ?」
「――なッ!?」
月島がブロリーに振り下ろした斬撃は右肩へ確実に。
だが刃がブロリーを切り裂くことを、届くことはなかった。
ブロリーの体を包む気が刃の到達を妨害しており、月島の刀は体に触れること無く、気とぶつかり合っていた。
「くっ……やってくれるね……!」
どんなに力を込めても刃が届くことはなく、追撃の恐れもあるため距離をとる月島。
その刃は地面に触れることしか出来なかった。
案の定気弾が迫ってくるがそれを宙に逃げる事により回避、そして次の行動を考える。
爆風が上がり5人の姿が公になるが、爆風の前と後で特に違いはなく誰も傷を負ってはいなかった。
自分一人でブロリーは手に負えないため誰かに協力してもらうしか無いが、ゼブラと勇次郎の標的は悟空であった。
悟空はブロリーを相手にしたかったらしいが、もう関係なくただ、ただ戦いを楽しみたいと言う欲求が勝っていた。
「フン……貴様なんぞの雑魚よりも先にカカロットを片付ける……カカロットォォォォオオオオオオオ!!!!」
目にも負えない、と言うのは言い過ぎだが猛スピードでカカロット……悟空のことだろうか、迫っていくブロリー。
月島としては目の前の恐怖から開放されて安堵するが一瞬の天国でしか無く戦いの余波が響いてくる。
ゼブラと勇次郎は組んでいるわけではないが獲物が同じのため共闘している様に月島の目に映っていた。
そうすると月島のスタンスは定まってくるわけだ。
「カカロット……面白うそうな相手だ」
「ボイス――」「かーめーはーめー――」
「バースト!!!」「波―――――!!!」
ゼブラと悟空が放ったエネルギーは両者引くこと無く己を強調する。
光りに包まれ、だがその煌めきは消えること無く己と己を競い合う。
ゼブラからしてみればカカロットはココを殺した許されない存在であり、チョーシに乗ってる奴はすぐに殺したい。
だがカカロットは強くそれを簡単に実行することは出来ない。
現にカカロットは戦いを楽しんでおり、勿論本気をまだ出していない。
ゼブラも相手が力を抑えてることを確信はないが感じ取っているため余計に怒りが増していた。
そのためボイスバースト本来よりも、悟空が想像していたモノよりも強く繰り出された。
この好機を狙ったのゼブラでもカカロットでも無かったのだが――
「サイヤ人に魔法少女に――たしか美食屋か。
ここは飽きることはない――最高のディナーショーじゃねえか」
強者に飢える獣範馬勇次郎。
空中にいるカカロットに向かい、足を踏ん張り、大地を蹴り、勢いで飛んでいく。
繰り出された拳はカカロットの拳と衝突、水を刺されてから初めてのカカロットの戦い。
拳に伝わる波動は正に勇次郎が戦ったどんな相手よりも強く、激しく、雄々しく勇次郎が満足するものだった。
顔には笑みが溢れ彼の心に眠る強者を求める欲求が語りかける、もっと戦いたいと――。
拳の衝突に生まれた衝撃はやがてカカロットと勇次郎を突き放す。
そしてボイスバーストとかめはめ波が生んだ衝撃波。それらの気を纏った拳をカカロットが迫るブロリーに放つ。
生まれた衝撃を上乗せしても、ブロリーが放つ拳は退かずに均衡、それ以上を保っていた。
衝撃にカカロットが吹き飛ばされる形になるが空中で受け身を取り、全てが振り出しに戻る。
月島も勇次郎とゼブラの傍に駆け寄り宙に居るカカロットとブロリーを見上げる。
「お前も空を飛べたのか」
「まぁね。でも彼等に対してあまり意味を持たないけど」
「……」
男たちは欲求に身を委ね再び――――――
■
――――――
――――
――
―あ
ちっと寝てたか……
あー、腹立つぜあいつら!!
次あったら容赦しねえからな!!
……適当に歩くか
体のあちこちが痛え
うん――これは
ふ、ふふ
アハハハハハハッハハ!こいつは傑作だ!これアイツの槍じゃねえか!
こんな所に落ちてるってことは死んだか!ざまあみろぉぉおおおお!!!!
……けっ
くだらねえ
つまんねえわ、ってか願いが叶うとかナメてんのか
あーあー、無駄な時間を過ごしちまった
――ん!?こりゃ!?
【ようどうだこいつはよぉ】
誰だお前!それになんでお前がコレを!コイツはあいつの――
【いいしゃねえか。それよりもこいつはお前のもんだ】
あ?俺がコイツに乗るのか?
【そうだくれてやるよ、革命でも起こしてこい】
まさかコイツに乗ることになるとは……まぁ性能は良いからいいか
で、条件でもあんのか?
【察しがよくて助かる。ある参加者を殺してほしい】
そいつは簡単な内容だ。だが
【願いを一つ特別に叶えてやる。今オマエの前にある機体が証拠だ】
【殺す奴の名はカカロットだ】
■
「これが界王拳だ、今のオラをさっきまでと一緒に思うな」
「そんな雑魚い技が俺に通用するとでも思ったのかカカロット!!」
闘気を纏い体を紅蓮に染め上げたカカロットとブロリーが格闘戦を地上で繰り広げる。
近くには幾つものクレーターが出来上がっており、それが戦闘の規模を表していた。
ゼブラは悟空が放った簡易元気玉の処理に阻まれ戦闘に参加できないでいた。
音を打ち込み対処するが仮にも元気玉。軟な攻撃じゃ打ち壊すことは出来ない。
勇次郎もサイヤ人の戦いに加わろうとその身を戦いの最中へと投入、月島は立っていた。
こいつらの戦いは次元が違う。感じ取ってしまった月島は戦いを見守っていた。
「ん?……うわああああああああああああああ」
降ってくるエネルギーに月島さんは包み込まれた――
「人間如きがサイヤ人の俺に勝てるとでも思っているのか?」
「俺は今魔法少女らしいせ?」
伝説の超サイヤ人の格闘戦に何とか、いや普通について行ける勇次郎。
たしかに今までの彼ならそれは難しい話しであったが今は違う。
何を願い、何を引き換えに力を手に入れたのか、何でソウルジェムが砕け散ったのに生きているのかは解らない。
言えることは唯一つ。もう勇次郎は地上最強の域を超えていると言うことだ。
鍛えぬかれた体、歴戦で培われた直感、戦いを求める欲求。
全てを兼ね備えた勇次郎はサイヤ人に迫る勢いで追撃を掛ける。
右ストレートを打ち込み、それを塞がれても左膝で腹を狙う。
これも阻まれようが手を休めること無くもう一度膝蹴りを、塞がれてもそのまま強引に振り抜ける。
左足が地を離れたことにより勇次郎の体は普段よりも力に踏ん張りが欠ける。
そこを狙いブロリーがストレートを猛威の速さで勇次郎の腹に打ち込もうとモーションを取る。
勇次郎もそれを防ごうと左肘を腕に叩き落とすがワンテンポ遅れ、攻撃を当てるものの防ぐことは出来ず直撃を受ける。
「ぐっ!」
片足しか地についていないため踏ん張ることも出来ず勇次郎はその衝撃を流すことも出来ず後方に飛ばされる。
直線上に飛ばされやがて地面に体が接触するが無理矢理受け身を取ることで体制を整える。
この戦いで初めて受けたダメージは普段の生活では得ることのない別次元の強者の力。
勇次郎の顔には再び自然と笑みが溢れていた。
「えふ……ハハハハハハ!!面白い!面白いぜ!!サイヤ人!!!」
極上の獲物に出会えた獣の視野は狭くなり目標に向けてひたすら前進する。
クラウチングスタートのような体制を取りじっとブロリーを見つめる勇次郎。
その瞳にはブロリーしか映っていなくカカロットは対象から外れていた。
この時ゼブラも状況を把握し先に他の者を利用してブロリーを排除した後にカカロットを殺す手段を考えていた。
ジリジリと地面に跡を入れて勇次郎は獲物に向けて鋭い眼光を放ち一瞬笑顔になる。
そして弾丸の如く走りだす。
その速さは本来勇次郎一人で出せる速さを悠々と超えていた。
そこには契約を交わしたことによる身体強化と魔力によるブースト、そしてゼブラの力が上乗せされていた。
音の力を帯びた勇次郎の速さは音速に迫るレベルまで到達していた。
しかし音速を超えていようとサイヤ人にとってそれは大した脅威にはならない。
ブロリーは特に警戒することなく緑の光を腕に宿しその気弾を勇次郎に放つ。
人の域を越えようと勇次郎の世界は他の世界と比べても比較的ファンタジー要素の薄い世界のため限界がある。
契約で手に入れた力も具体的には解らないままであり、勇次郎の戦闘スタイルは以前と変わらない格闘主義。
対するサイヤ人やゼブラ、他の参加者は比較的異能の力や飛び道具、遠距離技を所有しているため真っ向勝負では分が悪い。
ニィィィ
弾丸と化した勇次郎はその速さを緩めることはなく音速のまま気弾に向かっていく。
ブロリーが遊び半分だとしても腐っても伝説の超サイヤ人の力だ食らえばひとたまりもない。
だが勇次郎はそれでもとことん止まらない。
向かい風の中で拳を振り上げ彼は吠える
翳された拳からはゼブラから受け継いだ音速の力をそのままエネルギーと化し気弾と追突する。
2つのエネルギーは互いにぶつかり合い消滅し再び辺りが爆風で覆われる。
しかし勇次郎はそれでも速度を落とさずブロリーに向かい飛び続ける。
爆風の中から飛び出した勇次郎はそのまま速度を上乗せした力を拳に纏わせブロリーに放つ。
ブロリーも対抗し拳を突き出すが勇次郎の力を侮っているのか本気の欠片も感じない。
そんな軟弱な拳で勇次郎の力を対消滅することも出来ず、ブロリーはその衝撃を身に受け後方に飛ばされる。
ブロリーがダメージを負うのは初めて出会い最後の最後に油断して一矢報いた名も無き女騎士に喰らった一撃振り。
シグナムが最後に切りつけた胸の裂傷以来のダメージを負うことになった。
そのまま山に体を埋め込むブロリー。
山に大きな衝撃が走りブロリーが着いた場所には大きな亀裂が走っていた。
「貴様から血祭りに挙げてやるぞ勇ゥゥゥゥゥ次郎ッォォォォォオオオオオオオオ!!!!」
「祭りってのは楽しむもんだ」
「それにはオラも賛成だ。にしてもおめぇまた一段と強くなったな」
「どうやら俺はまだまだ成長するらしい」
この二人の共通点の一つには力への探究心がある。
もっと強いやつと戦いたい、もっと強い力がほしい。
力に対する飽きない好奇心はいつまでも男を少年にさせ、いつまでも力を培う糧となっていた。
だがそれが彼等を、男たちを成長させる源となっていた。
怒るブロリーが今度は勇次郎目掛けて接近してくる。
正直な所、この中で一番疲労しているのは間違いなく勇次郎であり根気戦に突入した場合一番最初に脱落するのは勇次郎だろう。
現段階ではまだだが、ゼブラが本格的に参入するとその戦闘スタイルから一番最初に堕ちるのはゼブラになる。
四天王の中でも一番の破壊力を誇るゼブラだがその分一番消耗が激しいためある程度チャージの時間を確保する必要がある。
だがこんな激戦を繰り広げている状況ではそんな悠長な時間は無いためある程度の温存が必要になってくる。
そのため今ひとつ本腰を入られないが、もうそんなことは言ってられない。
先程会場の音を出来るだけ拾っていたがその数は最初に比べると大幅に減少していた。
これは参加者が脱落していったことを意味している。
垣根帝督、トリコ、サニーの音だけは突然反応を絶ってしまったためどうなったかは解らない。
特にトリコの音に関しては何とも言えない、一種の悪寒を感じられるがそれを確認する手立ては存在しない。
今は目の前の悪魔たちを処理し、ココの仇を取る大事な使命が代わりに存在するのだから。
迫り来るブロリーの攻撃を迎撃しようとその場から動かず反撃の姿勢をとる勇次郎。
その身に漂うのは前のを野生的な『動』と称した場合、今は『静』を感じさせる空気を纏う。
獣はただじっと獲物を狩り取る時期を測りその瞬間に全てを叩きこむだけ。
叩き込めればの話しだが。
ブロリーの本気を出した拳と迎撃する勇次郎の拳は再度激突し力を均衡させるがそれは一瞬の出来事だった。
最高のタイミングでブロリーの拳に合わせた勇次郎だがそれでも力の計算を間違っては意味が無い。
全開を伴ったブロリーの一撃は勇次郎を簡単に遠くへ吹き飛ばす。
追撃しようと気弾を放つも力を貯めていたゼブラの音に相殺されてしまう。
本来ならありえないが会場では制限がかかるための出来事である。
力が強ければ強いほど制限が掛かる。制限に意味など最早存在しないと主催側も判断していたが此処に来て対主催に好機を促す。
そこに悟空が近接戦を持ち込み勇次郎のカバーに入る。
サイヤ人同士の戦闘は圧巻の一言に尽きる。
衝撃一つ一つが大地を、大気を震わせるほどの物であり、瞬間移動などゼブラの音速をも簡単に超える程だ。
ブロリーを殺すには悟空の力が必要であり、そしてブロリーが怒りに身を任せ正確な判断が鈍る時、または本気を出さない時が好機であるようだ。
拳、蹴り、気弾……全てが人間の域を超えている。
ゼブラも薄々と感じていたが彼等は同じ種族ではない。
グルメ界など足元にも存在しないような自分が本来会うはずなかった圧倒的実力差。
認めたくはないが、目の前に存在する男たちに人類は勝てるかどうか怪しい所まで来ていた。
だがゼブラも勇次郎も自分が勝てないなどと到底感じることもなく、相手を倒したい、殺したいと心の底から思っている。
それはサイヤ人である二人にも言えることであり、この場にいる四人は誰一人として自分が負けるビジョンを想像していなかった。
「仕方ねえな……サウンドバズーカ!!」
宙で戦闘しているブロリーに、悟空を巻き込む形でゼブラは攻撃を放つ。
音を広範囲にぶつけるゼブラのサウンドバズーカは比較的近い距離にあったためサイヤ人の二人に初めてハッキリとしたダメージを与える。
範囲の焦点をブロリーに絞っていたため悟空に当たるのはある程度の範囲となり、大半の音はブロリーに飛んでいく。
ブロリーの左腕に音が重点的に当りブロリーの顔が痛みに対し歪んでいく。
その姿を見て顔を緩めるゼブラだが攻撃を食らう前に瞬発的に放ったブロリーの気弾にしっかりとした対処が出来ず音で軌道を少し変えただけ。
地面に気弾が着弾するがその爆風がゼブラに襲いかかる。
ゼブラも顔を歪めるがその姿はすぐに爆風で見えなくなりダメージを負うことになるのは確実だろう。
ここまでの段階ではやはりサイヤ人に分があるようだ。
「最高だ…楽しいぜサイヤ人供……ッッッ!!」
攻撃により一時離脱していた勇次郎が戦場に復帰してくる。
その姿は先程の魔法少女服では無く本来の勇次郎である普段の格好になっていた。
これが彼なりの意思表明なのかは解らないが、かつて地上最強と呼ばれた男が本気になったのだ。
そして伝説の超サイヤ人と呼ばれたブロリーも本腰を入れ始めており、それは悟空に
も言える事だ。
ここに来て男たちは本来の力を、或るいはそれ以上の力を全開にするために本腰を入れる。
始まりは深夜に行われたこの殺し合いも太陽が昇りすでに昼を迎え始めていた。
最初にいた参加者も今では数が減り続け追加の分を含めてもその勢いは衰えることはなく、確実に終着に向かっている。
男たちもそれを感じ取ったのか此処に来て制限に近い力を引き出し始めていた。
そして全開に到達しようとしている男がまた一人。
「来ぉぉぉおいぃぃいい!!!ガンダアアアアアアアアムゥッッ!!!!!!」
■
すまねえ……
すまねえサニー……
俺はお前を喰らっちまったんだ
ゼブラに顔を合わせれねえし、小松にも、会長にも、ゼブラにもだ
でも、此処で止まっちまったら駄目なんだよ
今まで喰らった奴らの為にも何ないしな
だから俺は戦う
もっともっと――
「沢山喰う、フルコースの完成……楽しみにしとけ」
■
「よう!俺はミケロ……カカロットってのはどいつだ」
突然現れガンダムと名の機体に乗り込んだミケロは問いかける。
勇次郎は最初の武道会会場の端の方にミケロが倒れていたことを思い出すがそれはまったく関係ない話し。
「オラが孫悟空……カカロットだ」
「ほーうお前か」
この男見覚えがあった。
最初のパーティーでそこにいる勇次郎と、トリコと一緒に主催に殴りかかっていた男だ。
たしかにガンダムファイターに優るとも劣るとも言えないその力に興味はあった。
それが今回の標的、サイヤ人カカロット。
今のミケロには決して乗る機会など無かった機体に乗っている。
その名をゴッドガンダム。
参加者として同じくこの殺し合いに参加しているドモンの愛機である。
かつてミケロも敗北の経験がある機体にまさか自分が乗ることになるとは思っていなかった。
逆にその強さを知っているため妙な自信が湧いてくる。
戦いの一部始終を観戦していたがどいつもこいつもガンダムファイターレベルに達する、それを超える強さを持つ者ばかり。
とくにカカロットとブロリーに関してはガンダムでも……いやそれはない。あったとしても勝てばいいだけのこと。
殺せば何でも願いが叶う。信じる気はなかったが、それを裏付けするようにこの機体に巡り会えた。
尚、ミケロは気絶していたためブロリーを殺したら願いが叶うと言う褒美を知らない。
「来いよカカロット、俺が相手してやる」
「……仕方ねえな、でも場所を変えるぞ、ここじゃおめぇには狭いだろうし」
そう悟空は呟くとゴッドガンダムに近寄り始める。
これにより戦いは一時中断となり悟空が抜けることになる。
だがそれで戦いが終わるはずもなくこれからも戦いは続くだろう。
つまりブロリーを勇次郎とゼブラで処理しなくてはならないのだ。
「安心しな今アイツが向かってるしオラもコイツを片付けて来てやっから」
「ああ!?なめんじゃ――!!」
それだけ残して悟空はゴッドガンダムごと瞬間移動で消え始めた。
しかし遠くを見るとその姿が確認できるため一エリア分と言ったところか。
そしてここで悟空が言っていたアイツが駆けつける。
「カカロットは消えたか……ようブロリー、まさか貴様ともう一度逢うことになるとはな」
「ベジータか……フン!まずは貴様から血祭りにあげてやろう」
「抜かせ、俺だってここで死ぬつもりはない」
ここに新たな戦いの火蓋が切って落とされる――。
エリア1つ分隣に移動した悟空とミケロは再び互いに視線を飛ばし合う。
ガンダムと人が戦う、そう考えると勝敗は考えなくても簡単にん理解できる。
だが、その回答を簡単に覆せるほど悟空は強く、勝敗は既存の公式では絶対に正確性を持たない。
サイヤ人は己の闘争本能に従い純粋な心で強者を求める。
それが相手の生命を奪おうとも関係なく。
「まぁドラゴンボールがあるからな」
「ドラゴンボール?なんだそれは」
「おめぇには関係無い話しだ、全部オラが責任取るからさっさとやるぞ」
そう言うと悟空は再び20倍界王拳を発動させ、簡単にゴッドガンダムの懐に飛び込む。
繰り出される右足蹴りはゴッドガンダムの体は簡単に浮きその体制を崩す。
「ぐぅぅぅぅう!?」
そのまま追撃の手を休めること無く勢いを利用して回転し左足でゴッドガンダムを天高く飛ばす。
そして飛ばした先に瞬間移動で先回りし、両手を組みハンマーの要領で背中を強打し地面に叩きつける。
悟空の、サイヤ人カカロットの一方的な殺戮劇になろうとしていたが、ミケロも黙っている訳にはいかない。
落ちていく中機体を反転させ悟空の位置を確かめると攻撃の体制に移る。
「バァァァアアアルカン!!!!」
かつての搭乗者を思わせるような叫びでゴッドガンダムのバルカンが悟空に襲いかかる。
撃ちだされた無数の弾丸は悟空の位置に的確に飛んでいくが……
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」
「何ィィィィィイ!?」
何と悟空は気を放つことも、避けることもしなかった。
全て腕による連撃で弾丸を叩き伏せたのだ。
その光景を見たミケロは自分の目を疑うがすぐに事実と認識し体制を立て直す。
上手く両の足で着地し空にいる悟空を見上げるが悟空は疲れを感じさせず、対する機体には傷を負わされる結果となっている。
機体によるアドバンテージもサイヤ人の前では対等に、それ以上になるかもしれない。
大地を蹴りあげ悟空との距離を一気に詰めるゴッドガンダムは右手に握る。
通称ゴッドスラッシュ。ゴッドガンダムに武装されている武器の一つのビームソード。
両手に握り替え大きなモーションで縦に斬りかかるが対する悟空は今度も避ける気はない。
「ナメてんてんじゃねえええええええ!!!」
振り下ろされたビームソードは確実に悟空の命を刈り取るだろう――直撃すればだが。
「波ァ――――――!!」
悟空は右手からエネルギーを飛ばしビームソードに正面から対向する。
ジリジリと音を立てビームとビームは互いに引くこと無くぶつかり合う。
悟空は奥の手も残していて余裕の表情だがミケロは焦っている。
たかが生身の人間に、たしかに生身でも強い人間がいることはミケロも理解しているがこいつは、カカロットは次元が違う。
機体があれば真田にも、ココにも負けないという自信が、ロボなら人間に負けないという式が完成していた。
だが現実は、サイヤ人には全く通用する気配が無く、むしろ追い込まれているのは――
「こ、こんな事があるかあああああああ!!」
さらに出力を増し力を入れるミケロだがそれでも悟空にゴッドスラッシュが届くことはない。
そこに悟空も出力を増しとうとうゴッドガンダムを打ち負かす。
両手が空き体の守りが手薄になった所に右拳を容赦なく叩きこむ。
そしてそのまま下へとゴッドガンダムに拳を打ち込んだまま落ちていく。
「ちょっと力出させてもらうぞ……ハァアアアアアアア!!」
界王拳を解いた悟空は己の気を高め新たな段階へスーパーサイヤ人、通り超えスーパーサイヤ人2に変身する。
カカロットはこの戦いを終結させようとしたのだ――
■
「喰らいやがれ!ビックバン・アタァァァックッ!!」
「フンンンンン!!!」
光と光が激突し辺りの視界は閃光に包まれるがそれでも戦いが止まることはない。
すぐにブロリーとベジータの近接戦闘に縺れ込むが地の力では圧倒的にブロリーが優位に立っている。
ベジータも瀕死の状況からジュエルミートで復活したためその戦闘力は上昇しているが、それでも伝説の超サイヤ人は伊達ではない。
ラッシュの中でもブロリーが押し続け最後にはベジータを突き飛ばす。
そこに勇次郎が拳を振り落とすも、簡単に避け、追撃に来たゼブラの音も気弾で相殺する。
そのまま自分は天高く飛翔し大地に向けて緑色の悪魔の閃光を降り注ぐ。
先の戦いから温存していたゼブラがボイスバーストを放ち相殺させようとするも威力を僅かに削るだけ。
そのまま悪魔の光は大地に着地し大きな閃光を放ち大爆発を起こす。
「ハハハハハハハハハ!!その程度か?人間どもよ」
正確に言えば人間といえる者は百歩譲ってゼブラぐらいだが、ブロリーの力は圧倒的だった。
「その傲慢な態度が貴様の命取りだ!うぉおおおおおおお!!」
その隙を逃さずベジータが気弾のラッシュをかける。
ブロリーの不意を突いたため、全弾全てブロリーに吸い込まれて行く。
「マシンガンボイス!!」
そこにゼブラも音を無数に放ち威力を水増しさせさらにブロリーに圧力を掛ける。
ブロリーを中心に着弾した攻撃は周辺に爆発を起こしその威力を想像させる。
「「やったか!?」」
「それで終わればつまらないよなぁ……伝説の超サイヤ人!!」
勝利の希望を望むベジータとゼブラを尻目に勇次郎だけはその身を飛び出させブロリーに向かう。
こんなんで終わるほどあいつは弱くない、これで終わるならとっくに終了している。
その予想は正しく爆風が晴れた先には笑っている悪魔が一人存在していた。
ベジータもゼブラもつい口に出したが本心ではブロリーが死んだなどと思っていない。
ただ、そうでもしないと簡単に悪魔の絶望に飲み込まれてしまうのだ。
結果三人がブロリーに突撃する形となり正面には三つの拳が並ぶ。
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお」」」」
四人の拳が、三対一の形で激しくぶつかり合う。
三人掛かりの拳でもブロリーは一つの拳で立ち憚るがパワーバランスはここで崩れる。
相打ちに近い形となり四人がそれぞれの方向へ弾き飛ばされ、力が分散される。
ゼブラがチョーシに乗ったブロリーを粛清しようとボイスミサイルを放とうとするがそれを阻止したのは勇次郎。
ゼブラの顎を跳ね上げその音は天高く消えてしまう。
「テメェ!!殺されたいのか!!」
「組んでるつもりはねえからな、当然だ」
「ああ!?」
怒りの矛先が完全に勇次郎に向いたゼブラはその音を勇次郎に放つ。
勇次郎はそれを笑い、先ほどの様な要領で――
「そうそう、これを待っていた」
拳に音を震わせそれをブロリーに向けて放つ。
音速の波動はブロリーに直撃し更に顔を歪めるブロリーとは対象に笑顔になる勇次郎。
本来の勇次郎なら成せない所業だが未知の遭遇が彼を新たに成長させていた。
「くそったれ!」
ダメージを負ったブロリーに対しベジータが追撃をしようと接近する。
並の力じゃ、今のベジータの全開を持ってしてもブロリーに致命傷を与えることは出来ない。
ならどうしたらいいのか。それは単純明快。
もっと全開になればいいのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
スーパーサイヤ人2。今のベジータの全開だ。
その拳はブロリーに届きその巨体を大きく吹き飛ばす。
勇次郎もゼブラもベジータも全開を引き出し悪魔を倒すために死力を尽くす。
そしてゼブラは周りの音を聞いてある変化に気づく――
「おい、気に食わねえが少し耳傾けろ―――――」
■
ゴッドガンダムに乗るミケロはその中から天を見上げる。
その体制は仰向けで機体は傷だらけ。その傷が戦いの激しさを物語っている。
大きなクレーターの中心に倒れ込んでいるゴッドガンダムを天から見下ろすサイヤ人カカロット。
生身でガンダムを圧倒するその力は正に本物、悪魔と呼ばれてもおかしくない。
「もう終わらせっぞ、ミケロ。オラのほうが強い」
スーパーサイヤ人2となったカカロットを腕に気を集中させ砲撃に移ろうとする。
今のゴッドガンダムは可動限界まで追い込まれておりこれ以上の損傷は機体維持に影響するだろう。
「これで終わり……冗談じゃねえぞカカロットこらぁッ!!」
傷ついた体だろうとゴッドガンダムはその足で大地に君臨する。
まさに満身創痍だがそれでも立ち上がりカカロットにしっかりと体に向ける。
どっちが正義でどっちが悪なのか。
客観的に見た場合、それを正しく判断できる人間はいるのだろうか。
「お前にはわかるか……?わかんねえよな俺の気持ちがよぉ!!」
傷ついた体でも何度でも起き上がれば問題はない。
「強い奴はいいよなぁ、俺みたいに細胞に蝕まれなくても強いんだからよぉ!」
かつてドモンやシャッフル同盟のような連中を頭に浮かべながらミケロは叫ぶ。
「……オラがおめぇより強い。ただそれだけだ」
「その見下した態度が気に食わねんだんよ!!」
スラスターを全開にしてカカロットに突貫するゴッドガンダム。
その手には二本のビームソードが握られている。
カカロットもそろそろ戦いを終わらせたいらしく特にリアクションも起こさないまま攻撃を開始する。
腕から放たれるエネルギー波は真っ直ぐゴッドガンダムへ向けて進む。
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
そのエネルギーに逃げること無く正面から突っ込むゴッドガンダム。
ビームソードで斬りかかりゴッドガンダムを起点にエネルギー波が真っ二つに割れていく。
そのまま止まること無くカカロットへ進軍し振り下ろす。
「ダブルゴッドスラッシュ!!」
しかしカカロットは難なく瞬間移動で攻撃を躱す。
「んのおおおおおおお!!」
勢いを利用してミケロはゴッドガンダムの軌道を無理矢理回転させ背後に回ったカカロットへビームソードをなぎ払う。
これにはカカロットも驚き急いで上半身を下げることにより回避する。
この時カカロットはゴッドガンダムを殴り飛ばそうとしていたため必然的に近寄る必要があった。
密着状態なら、この状況なら、ミケロはかつての戦いを思い出し技を繰り出す。
「ゴッドスラッシュタイフーンッ!」
対のビームソードを握りしめ己を軸にし回転する。
そこから生み出されるエネルギーは圧巻の物であり全てを斬り刻む。それはサイヤ人も例外ではない。
無数に繰り出される高出力の回転がカカロットに襲いかかる。
両腕を交差し防御の体制に入るがそれは所詮気休め程度にしかならない。
カカロットの体に傷が走り回転の波に乗せて鮮やかに鮮血が飛び交う。
「ぐっ!」
このままではただ傷を負うだけなので後方に飛び逃げるカカロット。
この殺し合いにおいて初めてと言っても過言ではないダメージを貰い何故か顔がニヤけるカカロット。
雑魚だと思っていた相手が奇跡にしろ土壇場にしろ力を出したことに喜びを感じている。
この好機を逃さないとミケロは追撃の手を休めることはない。
回転を止めカカロット目掛け二つのビームソードを投げつける。
「波!」
カカロットも両手からエネルギー体を発射させこれに対応する。
ビームソードは簡単に飲み込まれその姿をこの世から消してしまう。
だがここで終わるはずがない。
エネルギー体の光が消えた時カカロットの前に見えたのは拳を掲げるゴッドガンダムの姿。
フィンを展開させエネルギーを出力し推進力を得たゴッドガンダムの速度は一瞬にして間合いを詰めた。
その真骨頂は格闘戦でありゴッドガンダムの、ミケロの、ガンダムファイターの最も得意とするスタイル。
「喰らいやがれええええええええ!!」
繰り出される拳はサイヤ人に初めて届き轟音を鳴り響かせ敵を吹き飛ばす。
「落ちろ!カカロットォオオオオ!!」
上から下へと振り下ろす形となった拳はカカロットを容赦なく急落下させ、ミケロもそれに合わせ追撃をかけようと大地へと向かう。
自分のスタイルでもある、右足を蹴りだす構えを取りカカロットの体目掛け落下していく。
落下による衝撃、追撃による衝撃を合わせば常人なら体が形を留めないほどの威力になる。
ミケロもまたこの戦いを終わらせようとしていた。
しかしそれはカカロットも同じ、世界を何度も救った英雄は容赦なく必殺のかめはめ波を放っていた――
エネルギーに飲み込まれたゴッドガンダムはその勢いを失い逆に天高く上昇していく。
装甲は剥がれ、残っている部分も傷が付き今すぐにでも停止してもおかしくない状況。
中にいるミケロもまた大きなダメージを受け一国の猶予もないような状況に追い込めれている。
やがてかめはめ波は全てを飲み込み、対象を大きな爆発に包み込む。
そこから開放されたゴッドガンダムは容赦なく大地に叩き落され衝撃が機体をさらに無へと助長させる。
満身創痍
機体もミケロも限界、いやすでに限界など超えていたのかもしれない。
「ハハ……意味分かんねえよな」
急に笑い出しミケロは語りだす。
その声は相手を挑発するような、見下すような、嘲笑うものではない。
どこか寂しげな、哀愁を感じさせる静かに語りだす。
「いくらファイターが俺でもよ仮にもあのドモンの……キング・オブ・ハート様の機体だぜ?
それがただのクソ強い生身の人間にやられてんだぜ?」
ゴッドガンダムの能力はあの世界において一級品であり、その世界を救った英雄でもある。
認めたくはないがDG細胞に体を蝕まれても、その力を持ってしてもドモンの方がミケロよりも強者だ。
だがそれを差し引いても生身の人間に負けるとは想像できなかった。
「俺もこんな奴だがファイターの端くれ……けっ、これが悪と正義の差なのか?」
かつてマフィアとしてガンダムファイトや世界で暴れたミケロ・チャリオット。
倒されたその後でもDG細胞に身を任し四天王として世界を相手にすきかってに暴れていた。
その最後は言うまでもなくドモン達に、正義のシャッフル同盟に倒されてその生涯に幕を閉じた。
だがそんなミケロも純粋に強さを求めた時代があったのかもしれない。
「何かよどっちが悪もんか分かんねえよな……この俺様が正義の味方に見える可能性もあるんじゃねえか?」
空は蒼い。
その中に存在する黄金の光を放つ戦闘狂。
その信念は『どうせ生き返らせるから皆殺しても大丈夫』
とても正義の味方を語るにはありえない信念。
どこまでも広がる蒼い空がそこの一点だけ黒ずんでるように歪んで見える。
ミケロも人のことを言えるわけではないのだが。
「なあ、俺は何で戦っていると思う?
優勝するためか?元の場所に帰るためか?暴れるためか?願いを叶えるためか?」
「おめぇの戦う理由なんてオラが知るわけねぇだろ」
はは、違いねえな。
そう心の中で台詞を吐くミケロ。
カカロットは他人の事など、ミケロに対して興味が薄れたらしく雑に言葉を吐き捨てる。
これが世界を何度も救った英雄、正義のヒーローのあるべき姿なのか――
「そうだよ!俺も分かんねえんだよ!
いきなり集められて殺しあえ!?冗談にしろよ意味分かんねえんだよ!!
出会った奴と情報交換?気に入らない奴は殺す?仲間を作る?知ったこっちゃねえ!!
いきなりの初対面で、こんな状況で他人なんて信用できるわけもねえ!
俺だって最初は戦っていたさ。でもよぉ、気づいちまったんだよ、意味が無いってな。
戦いの先には何があるんだ?褒美もねえし自己満も感じねえし、達成感を得られねえ。
教えてくれよ、俺はどうしたらいい?人を殺せばいいのか?ドモンにリベンジすればいいのか?
まったく分かんねえんだ!俺がここにいる理由がよぉお!!」
自分が例えどんなに情けなくても、惨めだろうとプライドを捨てミケロは叫ぶ。
これが本当に悪人なのか。感じられるのは巻き込まれた可哀想な被害者。
己を己とする信念を失くし大きく揺れ動く男は希望を未来を掴み取ろうと匙を投げ飛ばす。
その叫びは全ての参加者を代表にするような悲痛の叫び。
「……心配するなもう楽になって後は俺に任せろ。
全部最後にドラゴンボールで元通りにしてやる。だから死ねよ」
希望は輪郭も無くなるほど砕け散る。
ミケロの問は回答されるどころか、全てを粉砕される。
しかしこれで一つ確信づいたものがある。
目の前にいる男は正義のヒーローなんかじゃない。ただの殺人鬼だ。
その理論は自分が暴れたいだけ、自分の非を正当化するための偽りの正義。
自分とはまた違う、狂気だけで言えばこのカカロットと呼ばれる男は会った中全ての人間の中で一番腐っていた。
「ハハ、ハハハハハ!そうだよなぁテメェみたいな奴が正義のヒーローな訳ねえよな!」
こころの台詞を敢えて声に出すミケロ。
カカロットはそんな挑発にも乗らずただ静かにもう一度かめはめ波の体制に移行しようとしていた。
今度は確実にこの世から消すためにブロリーの時のように力を上げて。
その目は悪を倒す目じゃない。邪魔な虫ケラを踏み潰すような冷たい目。
「正義のヒーローってのはあいつらみたいな馬鹿なやつらなんだよ。
お前みたいなクズ野郎とは違う。まぁ俺もお前の事は言えないけどよ」
自分が傷ついても決して恐れること無く弱き者を助けるために戦う者達。
それはミケロもよく知っている、何度も戦った『あいつら』を知っている。
それは絶対に交わることのない者達だが戦いを通して、一種の気を感じていた。
世間から見ればミケロが悪。これは揺るぎのない事実だ。
だが今のミケロには何故かそんな気は一切感じないそ、寧ろ悟空の方が悪の匂いに満ち溢れている。
「わかったよお前は生きてちゃいけねえ存在だ。柄じゃねえが死ねよ、殺してやる。
知らない奴らやあいつらを守るためじゃねえ、俺が生きるために……
これが最初で最後のガンダムファイターとしての役目だ……!」
ゴッドガンダムはその体が限界でも大地に立つ。
悪と戦い世界を救った英雄はこの大地でも悪を討つために立ち上がる。
あの世界の住人がいれば中にいるファイターがミケロと気づくものはいるのだろうか。
中にいるのがミケロと言われて信じる人が存在するのだろうか。
立ち上がるその姿は誰もが描く正義のヒーローそのもの。
何が起こったかは解らない。
誰も知る由もない。
だがそれは現実だ。
奇跡かもしれない。
ご都合かもしれない。
何時だって奇跡は正義の味方だ。
それがこの場所で起こらない何て誰が証明できるのだろうか。
「これが……!いいぜどうせ最後だもう流派とか関係ねえ、やるだけやって果ててやるさ……」
黄金に輝くゴッドガンダムはカカロットに向け最後の一撃を――。
それは決して訪れることのない訪れであり、本来の時間軸では絶対に起きない現象。
誰が、何が干渉したかは解らないが一つだけ言えることがある。
ミケロもまたこの戦いにおいて全開の境地に至った
「おもしれえぞミケロ……かーめーはーめー……ッッッ!!!」
その姿は全てを消そうとする破壊神の姿。
『気』の知識がなくても誰が見てもわかる、今この男は目の前の存在を消そうと気を高めていると。
溢れ出るその気は宇宙を、大地を、会場全体を震わせるほどの大きさ。
首輪という枷を付けられた制限下のカカロットが今出せる全開。
「見ろよ、東方よぉ!!」
そのカカロットに対してミケロもまた構えを取り気を高める。
自分にその技が使えるか、使う資格があるかは解らない。
だが使える気がする、現に使えているのだ。
(これっきりだから許せドモン……!)
「石破ァァァァ!!天驚ォォォォォォォォォォ!!!」
「波ァァァァァーーーーーーーーーーーーー!!!」
男と男の己を賭けた全開が意地へと形を変えてぶつかり合う。
己の欲を満たすために戦う男、流れに身を任せていたが最後に己を見つけようと抗う男。
姿形は違えどその心に共通する全開は同じ。
この戦い、より全開な者に勝利が訪れる。故に勝つのは――
「おおおおおおおおおお!!どうしたミケロ!!オラが押し勝つぞ!!」
カカロットのかめはめ波が徐々にゴッドガンダムの技を押し始める。
土壇場で覚醒しようが積み重ねてきた重みが違う、カカロットは決して悪ではない。
ただ歪んでしまっているだけでありその実力は本物だ。
「もっとだ!輝きが足りねえ!もっとだああああああああああ!!」
対するミケロもここで引くことは出来ない。
ここで引けばもう立ち上がる気力は、ゴッドガンダムは、ミケロの存在はこの世から消えているだろう。
これが正真正銘のラストチャンス。
己の意地を見せる時であり仮にもガンダムファイター、簡単に諦める訳にはいかない。
だが現実は――――――――――
「じゃあなミケロ・チャリオット。おめぇ中々面白かったぞ」
■
雄々しく生えていた緑の大地も今はただの荒野。
全てがかめはめ波に削られ大地が剥き出しになっていた。
石破天驚拳とかめはめ波のぶつかり合いはこの会場で起きた戦いの中では一番の全開だった。
故に勝ったのは孫悟空、サイヤ人の戦闘能力は伊達ではない。
ミケロも決して訪れることのない全開の境地に達して善戦したが地が違う。
土壇場のご都合奇跡と長年培った努力の結晶である悟空の強さには叶わない。
勝った悟空を照らす太陽は輝き続ける。
彼はこれからも戦いを止めることはない。
今からブロリーへと向かい、ゼブラ、月島、勇次郎、ベジータそしてまだ見ぬ参加者との戦いが待っている。
それを想像するとニヤけが止まらない。涎が垂れる。
その顔は歪んでいて、暗く、明るく狂気にあふれている。
そんな悟空に太陽は輝きを失い彼を暗く――――――!
「まさか――――――!?」
昼の太陽が突然輝きを失うことなどありえない。
何かの影が悟空を覆ったのだ。
人を覆うほどの影など機械じゃないとありえない。
そう機械だ、悟空は機械と出会っている。
先ほどの石破天驚拳はかめはめ波に押し負けたわけではない。
途中で撃つのをやめていたから、起点を失くした力が出力を上げ続ける力に勝てるはずがない。
ゴッドガンダムは天高く飛び上がり悟空に最後の一撃を放とうとしていた。
その一撃は、黄金に輝く一撃は正にミケロの全力全開。
これは土壇場のご都合主義ではない。
ミケロが自分自身で勝ち取ったたった一度の奇跡。
そこから放つ技は彼が最も得意とする技を全開で悟空にお見舞いするだけ。
「ハイパァァァァアア黄金の足ィィィイィスペシャァァルッッ!!!!」
全ての力を注ぎ込んだ光り輝く黄金の足は正に全開の一撃。
その輝きは天高く照り続ける太陽の輝きをも凌駕する。
この一撃に悟空は敬意を示す。
ミケロ・チャリオット。彼もまた全開に相応しい強者だった。
だからこちらも全開で対応する、それが散りゆく強者への手向け。
スーパーサイヤ人3となった悟空は再度かめはめ波を放ちゴッドガンダムを包み込むのに時間は必要なかった――
これでよかったのか?――――――なあドモン
【ミケロ・チャリオット@機動武闘伝Gガンダム 死亡】
【孫悟空@ドラゴンボール】
【状態】 疲労(中)ダメージ(小)スーパーサイヤ人3
【装備】 胴着 (上半身は破けてる)
【持ち物】ランダム
支給品1~6、基本支給品一式
【思考】
基本: 優勝した後主催者を倒してドラゴンボールでみんなを生き返らせる
1:せっかくだからここで強い奴らとの戦いを楽しむ。
2:ブロリーを倒す。
3:少し疲れっちまったなあ
【備考】
※連載末期の魔人ブウと戦ってた頃からの参戦です。
※ベジータの言葉の影響はありません。
スーパーサイヤ人2となったベジータとブロリーは空中で戦闘していた。
高技術の応酬だがその戦闘力はブロリーの方が高くベジータに疲労が蓄積されていく。
僅かな隙を逃さずブロリーはベジータを大地へと突き落とし追撃に気弾を放つ。
その攻撃を蓄えたゼブラが渾身の音で威力を軽減させ、勇次郎が近接戦に持ち込みブロリーを休ませない。
この戦闘スタイルが続くがブロリーが倒れる気配はなく此方側のスタミナだけが消耗されている状況。
このままでは負けの道を黙って進むのを続けるだけ。
ここで一つ革命を起こす必要がある。
死の淵からジュエルミートを食し復活したベジータの力は確実に上昇している。
そして以前ブロリーと戦っていた時よりも強くなっている。
それでも上を行く辺り流石伝説の超サイヤ人と言ったところか。
ベジータと勇次郎相手に引けをとらないその強さが証明している。
勇次郎の拳を受けること無く瞬間移動で背後に移動し笑みを浮かべるブロリー。
完全な虚から放たれる一撃を勇次郎は避けるすべがなく、それが空中なら飛行出来ない勇次郎は落下することしか出来ない。
「フンッッッ!!」
決して身動きの取れる状況では無いが勇次郎はこの戦いを通して成長している。
足は浮いているのに大地にあるような、右足を軸にし左回し蹴りを背後に放つ。
瞬間移動の先なんて知らない、『気』を感じ取っただけであり言わば本能の反応。
空中の動きも知らないが体が戦闘に適応していく。
回し蹴りはブロリーの首に直撃し彼の体を吹き飛ばすが反動で勇次郎も落ちていく。
だが余裕が生まれ損傷なく着地しブロリーに再度狙いを定める。
しかし空を見渡してもブロリーの姿が見当たらない――背後以外は。
背後に回ったブロリーは何も呟くこと無く黙って気弾を放つ。
ゼブラの飛ばした音も関係なく炸裂し勇次郎を吹き飛ばすのに理由は必要なかった。
背中から大量に血を流し飛んでいく勇次郎はそのまま地面を引きずりながら進んでいく。
ガリガリと大きな音を立て地面には引きずられた跡が生々しく残っている。
そのまま岩に突っ込み衝撃の大きさに岩は大破し崩れ落ちる。
ブロリーの真上に瞬間移動したベジータが踵を振り下ろす。
だが軽く避けられ踵は大地に突き刺さりそこにヒビを入れ崩壊させる。
難なく裏拳をベジータの顔面に放ち笑うブロリー。
「くそったれえええええ!!」
飛ばされながらも気弾を連発するベジータだが全ては無意味。
全弾直撃してもブロリーを死に追いやることは出来ずにいる。
無論ノーダメージという訳でもないが底が知れないため客観的には何もわからない。
わかるのは相手にどんなに攻撃を打ち込んでも粉砕されるだけの事実のみ。
「サウンドナックル!」
「お前が一番弱いなぁ~!!」
音を拳に宿せ殴りかかるゼブラだがその攻撃がブロリーに届く事はない。
気を当てられ音は欠片も無くバラバラに分散させられてしまう。
そのまま力と力のぶつかり合いになった時どちらに軍配が上がるのか。
美食屋とサイヤ人――考える必要もなくゼブラが撃ち負ける。
「本当の力と言うのを教えてやろう!」
激しい光を帯びたブロリーの右腕に溜められる気は大気をも震わせる。
この攻撃を食らう事は死を意味するのかもしれない。
「ブロリィィィィィイイイイイイイッッッッ!!」
声の方向に顔を向けるとそこにはあの男の姿。
崩れていた岩を吹き飛ばしその姿を表した勇次郎。地上最強の生物は宇宙最強の民族へ飛びかかる。
ブロリーはゼブラに放つために溜めた気を勇次郎へと向ける。
「貴様から死ね!!」
「そこだーーーーーーー!!」
放たれた気はブロリーのものではない。
緑の光では無くもっと澄んだ色の蒼い閃光――ベジータの気だ。
気と勇次郎の板挟みになるブロリー。
この状況ではどちらかしか防げず、片方の攻撃を喰らうのは確実。
ブロリーの選択――
左腕から気を放ちベジータの気を粉砕し右腕で勇次郎の攻撃を受け止める。
避ける必要なんて無い、力で捩じ伏せればいい。
もう飽きた、全てを終わらせようか。
勇次郎の腕を掴み軽々と放り投げ瞬間移動で距離を取る。
足を広げ腰を下ろし気を高めていく。
その圧倒的力に大気は割れ、岩が隆起し、大気が震える。
伝説の超サイヤ人は鬱陶しいやつらに終止符を打つために力を蓄える。
「貴様らの息の根を止めてやろう!!」
悪魔の輝きは見ている人を虜にする程の光。
だがその輝きに触れることは死を意味するに違いない。
「黙ってやられるか!うおおおおおおおおおおおおおお」
この攻撃を食らえば確実に死ぬ。
この攻撃を防がないと確実に死ぬ。
ベジータもこの会場において一番の力を、全開に――
ベジータの全開とブロリーの強気の力の発動によりエリア周辺の大地は震えていた。
大きく隆起し、割れ草原が荒地へと変化していく。
この世の終わりを告げるような戦いを証明するようかの光景。
この会場屈指の実力者達が行う全開の戦いの幕引きに相応しいような光景。
「ベジータ……貴様が俺に勝てると思うのか?」
「黙れブロリー!俺は貴様を倒しこのふざけた殺し合いを止めて帰らないといけないからな」
その力の差は歴然。
だが止めることは出来ない。
勝てないから逃げる諦める死ぬしか無いもうおしまい?
そんな戯言はただの言い訳に過ぎず己を良い方向へ逃しているだけ。
全開になれば運命を変えられることだって出来るかもしれない――
「ファイナルフラアアアアアアアッッッッシュッッッ!!!!!!」
ベジータの全てを込めた全開の一撃が悪魔をこの世から消すために放たれる。
「フンンンンンンン!!!!!!!」
悪魔がこの世の生物を消すために一撃を放つ。
蒼い光と緑の閃光が互いにぶつかり合いどちらも退かずに――
いや徐々に蒼い光が押し負けている。
サイヤ人の戦闘能力は一般人のそれを凌駕する。
ベジータもブロリーも惑星を破壊するほどの実力を本来は持っている。
だが同じ惑星でもその規模は違う。
ベジータが地球を破壊できるとしたらブロリーは全ての星を破壊できるだろう。
同じ種族でも力の差は存在しそれを痛感する。
その蒼い光にゼブラの生命の音が共鳴する。
音がファイナルフラッシュを包み込み更に威力、鋭さを増しブロリーの攻撃に耐える。
ゼブラもサイヤ人に劣るがそれでも有数の実力者。
四国を破壊するほどの力を持っている。
「甘いな雑魚ども!」
それでも悪魔の力に撃ち勝てる事はできない。
伝説の超サイヤ人はその勢いを止めること無く二人に襲いかかる。
段々とベジータのファイナルフラッシュを押し返し徐々に生命の終わりが近づいてくる。
「くそったれええええええええええ!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
二人も全開に、臨界点を突破する勢いで力を振り絞るもブロリーには届かない。
それほどまでに強い、圧倒的、絶望なまでの力の差。
悟空がいれば結末は違っていたかもしれないが今の悟空は悟空じゃない。
サイヤ人の使命を全うする戦士カカロットになった今どちらにせよサイヤ人と言う種族はこの殺し合いで壁になる。
なら遅かれ早かれこの壁に衝突することは見えていた。
それが諦める理由にはならないのだが。
全開になった二人の力は徐々にだがブロリーの攻撃を受け止める。
そして先程の行いがまさかの形で実を結ぶ。
「何ィ!?」
「降り注げ……メテオノイス!」
空から降り注ぐは無数の音の流星。
その煌めきは夜空を切り裂く流星の如し。
突然の攻撃にブロリーは対処せざるを得ない。
両手で放っていた攻撃を片手に切り替えゼブラのメテオノイズを消すために左腕からも気を放つ。
流星は大地に到達すること無く儚く消えてしまうが全てではない。
大地に突き刺さり爆発を起こしブロリーをも巻き込む。
「小賢しい真似をッッ!!」
片手になったブロリーの気は気づけばベジータが大きく巻き返していた。
手が空いた隙を逃さずベジータは奮闘するも後一歩及ばずブロリーが両手に戻し徐々にまた押され返す。
そもそもどうしてゼブラのメテオノイズが此処に来て発動したのか。
それは勇次郎とのやり取りにあった。
一度ゼブラの攻撃を邪魔して空高く音が上がった時――あの攻撃が結果としてメテオノイズになったのだ。
運も味方するが……
「くそ……力が足りない……ッ!!」
それでも現実は重く伸し掛かる。
奇跡は掴み取ることが出来る。
だが奇跡だからこそ掴み取れない時だって存在する。
圧倒的悪に立ち向かう大正義の英雄、その姿はどの時代幾多の世界の中でも人々に栄光と平穏を齎す光の象徴。
いつだって世界を守り人々に憧られ悪を倒す――そんな存在に夢を希望を抱かずにはいられない。
例え勝てない相手でも諦めること無く立ち向かい、努力、友情で勝利を勝ち取る。
だ が
そんな事が現実に、簡単に実現することもなく悪魔の笑いは木霊する。
修行する時間なんて無い、力を貯める時間も無い、策を練る時間も存在しない。
栄光の道から離れた時そこから見える景色は絶望の闇なのか。
「俺を忘れるとはな……舐めてくれるじゃあねえかサイヤ人ッッッッ!!!!」
運命を打開するのは正義の英雄で在る必要なんて無い。
それを判断するのは受け継がれた伝説のみであり当の本人には関係無い。
光だとか闇だとかそんな括りは別に大した問題じゃない。
自分がやりたいことをやれる時に真剣に行い、その先に悪が倒れるならそれもまた英雄の語り草になる。
誰だって英雄になれる資格がある――無論この男が英雄と言う肩書きを求めている訳ではないが。
渾身の一撃はブロリーの顔面に当りその体を大きくぶっ飛ばす。
範馬勇次郎
とある悪魔と契約を果たした元・地上最強の生物の拳は伝説の超サイヤ人に届いていた。
「雑魚どもが粋がりやがってえええええええええええ!!!!」
飛ばされても悪魔の勢いが止まることはない。
寸前に気の軌道をずらしファイナルフラッシュは天高く逸れる。
足を大地に差し込み身を削りながらもその衝撃を殺し再度殺すために構える。
あの三人を……そう三人を。
カカロットの代わりに来たベジータを含めて三人……三人?
「僕を忘れてないかい――」
一度はその刃を防がれた
一度はその身は焼かれた
だがこうして立っていられる
体は限界を超えているがゼブラの音で最後の力を振り絞る
また弾かれてもいい、だから一太刀だけ
その胸にある裂傷になら僕の――
「礼を言うよ名も無き剣士さん。君のおかげで僕の想いが届く――」
■
いつだって俺を助けてくれた
カカロットが煩かった時も
惑星ベジータから脱出する時も
いつだって救ってくれた
でもその存在を思い出せない
あんなにお世話になったというのに
カカロット達に負けた跡も救ってくれた
新惑星ベジータの時だって
解らない宿題は教えてくれたし
学校帰りにはマックだって奢ってくれた
そんな大切な人の名前を思いだせないなんて――!
俺は人間失格だ
あの人に会わす顔がない
「そんな卑屈になる必要は無いよブロリー」
あ、あなたは!?
「どうやら思い出してくれたみたいだねブロリー」
(そうだ、いつだってこの笑顔が俺を救ってくれた)
「そんな君に頼みがあるんだ」
なんですか!?
「自殺してほしい――ブロリー、出来るかい?」
はい!喜んで!月島さん!!
「あのブロリーが自殺とはな……」
「チョーシに乗るからだ」
「呆気ねえ幕切れだなサイヤ人も」
伝説の超サイヤ人の最後は自ら首を絞めると言う結果。
全てを破壊した悪魔の生涯はここで終焉を迎える。
その最後の戦闘は強き男たち四人を相手に最後まで優位に立ち続けその名に恥じない強さだった。
大地は砕け粗々しく足場なと数えるぐらいしか存在しない。
だが男たちに休息なんて存在しない。
まだ倒すべき相手がこの会場に存在しているのだ。
その中でも真っ先に倒す存在を知っているから。
「あのチョーシに乗ってる男は殺す……」
信頼の仲間をココを殺した張本人。
あの男だけはこの手で必ず息の根を止める。
「まだ決着はついていねえしな」
今まであったことのない極上の相手。
あの男だけはこの手で倒さないと気が済まない。
「カカロット……俺はお前を始末しなきゃいけないんだ」
かつてのライバルは存在しない。
そこにいるのはかつての自分のような己の使命を全うする誇り高きサイヤの血。
お前のお陰で世界は何度も救われたし俺も救われた。
ゼブラはその足を進め悪魔の元へ向かう。
「じゃあな、お前の全開も悪く無かった……月島」
勇次郎も一声かけ悟空の元へ。
「許せカカロット……ドラゴンボールは自分勝手な願望具現の道具ではない……」
そして全てを終わらせるためにベジータも向かう。
かつての友カカロットを殺すために――
【ブロリー@ドラゴンボール 死亡】
【月島秀九郎@BLEACH 死亡】
【G-6/1日目・昼】
【ゼブラ@トリコ】
【状態】 ダメージ(中)、疲労(大)、カロリー消費(大)
【装備】
【持ち物】ランダム支給品0~2、基本支給品一式
【思考】
基本: 主催含めチョーシに乗った者は殺す。他は知らない。
1:悟空を殺す
2:邪魔する奴(チョーシに乗ってる)は潰す
3:小松はついでに救う。あと食料がほしい
【備考】
※グルメピラミッド後参戦
※若干能力の方に制限
※オープニングでトリコと一緒に食べていたのは四天王達です
※ウルベやまどかの音を聞きましたが誰かは分かっていません
※トリコの変化の音を聞きました
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
【状態】 ダメージ(中)、疲労(中)
【装備】魔法少女服
【持ち物】ダイヤモンド、 ランダム支給品1、基本支給品一式
【思考】
基本: 不明
1: 悟空と戦う
【備考】
※参戦時期は書き手さんに任せます
※戦闘力に制限はありません
※魔法少女から人間に戻りましたが魔法少女服は気にいったのでそのまま着ています
※勇次郎が何を願ったかは不明です
【ベジータ@ドラゴンボール】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、固い決意
【装備】 普段着
【持ち物】 ランダム支給品1~3、基本支給品一式
【思考】 基本: 主催を倒し生還する
1: カカロットは絶対に倒す
2: ドラゴンボール……
3: 元へ帰る
4:できれば首輪も外したい
5:自分だけでも他の者を守りたい
【備考】
※原作終了後(GT前)より参戦
※気を探るのは範囲各1マス。舞空術は若干の体力消費
戦闘力は会場そのものを壊す事以下に制限がかけられてる
※天津飯が参加している事に気付きました。
※悟空が殺し合いに積極的なのを知りました
※現在ジュエルミートにより回復中です。
※瀕死の状態から復活するので起きたら戦闘力が上昇します
嗚呼、男たちは出会ってしまった
一度は弾かれた運命だがまたこうして巡りあう
誰が何を言おうが関係無い
目の前にいる――その理由があれば
何故戦うのか、それは拳に聞け――
最終更新:2014年12月31日 22:28