「テメェ……何してんだよ」

各地で行われていた戦いも終わりの兆しが見え始め全てが終結へと動き出す時が近づいている。
この男もその戦いに参加していた彼に加勢する形でその場所へと向かっていた。
途中にあった怪物と少女の戦いをここで知り合った仲間に託して。
だが、彼の音が急に弱まった。大きな音にかき消されて。
そして微かに残った音も大きな音に吸い込まれるように消えてしまった。
嫌な予感は正直に言うと最初からあった。だが、それを信じたくはなかった。
自分のキャラに合わないのは承知している。しかし同じ時を過ごした仲間の死を見るのは彼なりに響くものがあった。

「さっさと目を覚ませ――ココ」

ココが目を覚ますことはない。
その生はとっくに役目が終わり帰るべき場所へと還っていた。
その死体は体中の生気を吸われ尽くして干からびており、見るに耐えない光景だ。
だが、ゼブラは目を背けること無くただじっとココの姿を見つめていた。
その瞳に決して涙が流れることはない。その瞳は汚くても前を見続ける。


【ココを殺した男の音をゼブラは記憶している】


あのふざけた声を。汚い声を。ゼブラは記憶している。
声の持ち主ははるか高く空を超えた先に存在している。
残念ながらゼブラ自身に大気圏を突破することは出来無くはないかもしれないが、出来たとしても消費が激しすぎる。
相手の戦闘力の高さは尋常ではない。万全の状態でも素直に首を立てに振れない。

孫悟空。それほどまでに彼は強い。

「チョーシに乗ってるなら俺が潰す……なぁココ?」

決して答えが返ってくることはない。それでも声を掛けたかった――


「けっ……お前はそこで寝てろ。後で埋めてやるから」

心を開く事が無いゼブラが見せる一瞬の優しさ――

「だからよ……先に生きている奴から片付けてくる」


急激に音を変えた友――トリコ








野生

それは人間誰しもが、生物の全てが持っている心に眠る力。
誰もが内なる野生を秘めている。ただそれを解き放たないだけ。


「お前も一緒なのか――?」


この理論で言えば生物は皆同じ感覚を共有する仲間である。
全ての種族、生物は共に共存できる。だがそれは間違っていた。

弱肉強食、食物連鎖。

生物はただ生き残るために他の種族を殺さなくては生きていくことは出来ない。
互いの信念を賭けた大義名分を掲げて戦争を起こさないと生きていけない。
同じ種族でも黙って共存することは未だかつて成功していないのが地上における生物たち。


「って違うよな!俺は何を言っているんだ」


人間は誰かを好きになる。人間は誰か愛せる。
人間はどこまで行っても一人。人間は誰かを殺すことが出来る。
人間は夢を語る事が出来る。人間は夢を叶える資格がある。


「お前が一緒なんかじゃねえ。俺がお前に近づいているんだ」


もう後戻りは出来ない。それは心の問題では無い。


一度感じてしまった。ああ!あの素晴らしい感覚を忘れる事はできない!
生きる事と食す事を互いに生きがいを感じていた。
フルコースを埋めるため!美味しいものを食すため!!まだ見ぬ未知の味を求めるため!!!
忙しく、危険で、時には傷つくこともあったがその日々はかけがえのない素晴らしい日々だった!
新しい仲間、新しい食との出会いは興奮して自分を何時までも幼くさせる。
探究心が収まることはなかった。

だが今はどうだろうか!?この【味】を未だかつて味わった事があるのだろうか!?
ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないない
だから彼は退くことが出来ない!
心が!道徳が!世間の目が!人間としての性が!信念が!彼の全てが!
そんなもんじゃもう止められない――収まる事なんてもうない。




「人間って美味ぇよな――どんな食材よりも――」


「いや、俺の中じゃ人間も【食材】になっちまった」



野生が全て上回ってしまっているから――




「なぁそいつ、秀吉だよな?俺知り合いなんだわ」


寝ていた自分に放送の事を教えてくれた人物だ。
美食屋にも負けない体格でその風格も申し分ない強い男だった印象が残る。
彼が自分に■■が死んだ情報を伝えてくれたのだ。
あれ?もう名前思い出せねーや。

トリコの独白を黙ってい聞いていたピクルが食べかけていた秀吉の死体を持ち上げる。
これか?と言った彼なりの意思表明だろう。
その体は右足が裂け、腱がいくつもぶら下がっており生々しい肉もその姿を見せていた。

「匂いからしてお前が殺した訳じゃないよな?お前は落ちていた餌を喰らっている――違うか?」

トリコの問いに対し首を縦に振るピクル。
だがそれがどうしたのだろうか?飯を食う事は何も悪いことじゃない。
生物が生きていくために行う生理現象だ。




「だからよ――俺が喰う権利もあるんだよ」




トリコは殺し合いに置いて初めてその闘気を開放する。
ピクルは殺し合いに置いて初めて恐怖を覚える。後ろに浮かぶ闘気の表れに。
この野生は本物だ。人間を人ではなく餌として、喰す対象として見ている。
人間の皮を被った獣――いや、かつて人間とした歩んだ野生がたしかにそこにいた。
その瞳は赤く充血し、餌をただ一点曇ること無くじっと見つめている。
その口からは吐息が漏れ、発達した歯が奥で光り輝いている。
その体は無邪気な子供もように震えている。
その男は待てと言われた犬の如く、その時を待っていた。

「フライングナイフ!」

痺れを切らせたトリコは斬撃を腕に宿らせピクルに向けて放つ。
ピクルは今できる最高の反応を計算し実行する。文明に触れたが故に。
一歩も動く事無く生の無い秀吉を盾にする。
斬撃に触れ、右肩から大きく裂け飛び切断面から色々な汁を盛大にぶちまける。
その汁が雨となりトリコとピクルに盛大に降りかかる。

「この感覚――仕事帰りに速攻でシャワーを浴びて、喉に透き通る飲料水を飲んだ感覚――」

「俺の中の細胞が告げている、足りねえ、こんなんじゃ満足出来ねえってな」

「こんなんじゃ駄目だ!もっと人を喰らわねえと体がおかしくなっちまうんだよおおおおおおおおおおおおおお」


全速力でピクルに駆け寄るトリコの瞳はかつてのトリコの面影は残っていない。
餌を追い求める獣。いや、獣と呼べるかも怪しい。
対するピクルは武器を全てバックに仕舞っていた。
決して諦めた、トリコに負けを認めたわけではない。彼もまた捨てたのだ。そして取り戻した。


文明を捨て、かつての己を、野生をその身に宿す――


向かってくるトリコに対し己も全速力でトリコに向かう。
両者の走る衝撃にホテルの正面ホールは悲鳴を上げており、パラパラと崩壊の音を奏でている。
衝突寸前互いに勢いを止めることはなく、そのままの勢いで頭と頭をぶつけあう。
どちらも引くことはなく頭を密着させその野生をぶつけ合う。




「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」


行き場を失った力はホテル全体に響き更に崩壊の速度を速めさせる。
「ナイーフッッ!!」
均衡状態から抜けだそうとトリコは右手に鋭さを帯びさせピクルに降ろす。
その速さはかつてのトリコと比べほどにならないくらいのスピード、いくらピクルといえど――

「ニィ」

自分に野生を思い出させてくれたトリコに微笑みかけピクルは鋭い牙でトリコの腕に噛み付く。
ナイフは野生で培われた牙に阻まれ何も刻む事無く終わりを、むしろトリコ自身が傷を負うハメになる。
鍛えぬかれた顎の力で噛み付くピクルを振り切る事はできない。
ナイフで尖らせていても徐々に腕から血が流れ始める。

「くそっ!離しやがれええええええええええええええええええ!!」

片足を後ろに下げ、上半身を大きく捻り体制を整えるトリコ。
反動全てを利用して力任せのフルスイングでピクルを離す事に成功する。
すべての力が伝わったピクルは凄まじい勢いで壁に衝突し、口からは声が漏れる。
トリコの追撃は終わらない。
足を休めること無くピクルに襲いかかる。
技は得意なナイフでもフォークでも必殺の釘パンチでもない。

「いただきます」

生まれた時から全てを共にした口だ。

「ガアアアアアアアアア」

ピクルも同じ事を考えていたのだろうか。
同じく大きく口を開け鋭い牙を覗かせ、口からは涎がこぼれ落ちる。

両者互いに肩を食いちぎるように喰らいつく――







「ヘアロックだ。つのまにかキショくなったなトリコ」




かつてトリコと呼ばれた男の仲間、美食屋四天王サニー。
髪を武器に戦う美しさを大切にする一人の男がホテルの戦いを止めた。
ヘアロック。目にも見えないような髪で相手の動きを止めるサニーの得意技がかつての仲間に襲いかかる。
いつもと同じように、いやフルパワーでトリコに襲いかかっていた。


「離せえええええええサニーーーーーーー!!俺の邪魔すんじゃねええええええええ!!」


「るせぇ!!ココも死んじまったって言うのにテメェは何してんだ!!トリコ!?」


「俺の喰の時間を邪魔すんじゃねえ、殺すぞ」


その言霊は冗談ではなく本気の殺意が込められていた。
ここに来てからおかしいことが起きていた。
久しぶりに四天王全員が揃ったこともそうだ。絶対もう揃うことはないと思っていた。
そしてココの死。あの男が、最高の仲間が死ぬなんて信じられない、この目で確認するまでは。
その前に生きている仲間の変わった姿を目にした訳だが。


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」

縛られていたトリコとピクルは雄叫びを上げ拘束されている身体を震えさせる。
両者の力はサニーでも止められることはなく、身体の震えがホテル全体にも響き渡る。


「んの!抑えきれね……!!」





行き場を失った力はホテルを崩壊させた――









「テメェがココを……!」


「ココ?だれだそりゃ?」


「カカロットと俺の戦いを邪魔する気か?」


「なるほど。彼が孫悟空か」


「来たな、孫悟空。さぁ続きを始めよう……!!」


【G-6/1日目・昼】

【ゼブラ@トリコ】
【状態】 健康 消費(極小)
【装備】
【持ち物】ランダム支給品0~2、基本支給品一式
【思考】
基本: 主催含めチョーシに乗った者は殺す。他は知らない。
1:しかたねえ、敵をとる
2:邪魔する奴(チョーシに乗ってる)は潰す
3:小松はついでに救う。あと食料がほしい
【備考】
※グルメピラミッド後参戦
※若干能力の方に制限
※オープニングでトリコと一緒に食べていたのは四天王達です
※ウルベやまどかの音を聞きましたが誰かは分かっていません
※トリコの変化の音を聞きました


【孫悟空@ドラゴンボール】
【状態】 健康
【装備】 胴着
【持ち物】ランダム支給品1~6、基本支給品一式
【思考】
基本: 優勝した後主催者を倒してドラゴンボールでみんなを生き返らせる
1:せっかくだからここで強い奴らとの戦いを楽しむ。
2:ブロリーを倒す。

【備考】
※連載末期の魔人ブウと戦ってた頃からの参戦です。
※ベジータの言葉の影響はありません。

【ブロリー@ドラゴンボール】
【状態】 胸に裂傷(シグナムに最後斬られた傷)、左腕骨折
【装備】 なし
【持ち物】ランダム支給品1~3、 基本支給品一式
【思考】
基本: 全員殺す
1: 全員を殺し主催もころす
2: 特にカカロットやべジータは絶対に
3: カカロットを倒す
【備考】
※会場の戦闘で惑星破壊レベルは制限されていますが宇宙空間では別に問題ないようです
※参戦時期はお任せします


【月島秀九郎@BLEACH】
【状態】健康、主催者に強い怒り
【装備】ブック・オブ・ジ・エンド
【持ち物】 ランダム支給品1~2、基本支給品一式
【思考】
基本:殺し合いを打破し主催を倒し茶渡君の仇を討つ。
1:一護と合流したい。
2:殺し合いに乗った参加者は出来る限り無力化したい
3:これが噂のサイヤ人か
※参戦時期は藍染戦終了後です


【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
【状態】
【装備】魔法少女服
【持ち物】ダイヤモンド、 ランダム支給品1、基本支給品一式
【思考】
基本: 不明
1: 強き者と戦う
【備考】
※参戦時期は書き手さんに任せます
※戦闘力に制限はありません
※魔法少女から人間に戻りましたが魔法少女服は気にいったのでそのまま着ています
※勇次郎が何を願ったかは不明です




ホテルは崩れ、クロコダイルが砂漠化させたことも有り辺り一面は荒野と化していた。
サニーは力を振り絞り触覚で瓦礫を動かすが立ち上がる気力は残っていなかった。
力の支点になっていたため動くことが出来ず瓦礫の餌食になってしまったためダメージを多く貰うことになった。
日光が彼を照らすが美しさは無く、あるとしたら鮮血が鮮やかに輝いている光景だけだ。



「ざまぁ……ねえわ、つくしくねぇ……」



























「全ての食に感謝を込めて――いただきます」










「俺の勝ちだあああああああああああああああああああ」


瓦礫を飛ばしトリコは二本の足で立ち上がり雄叫びを上げる。
その足元には【ピクルと呼ばれていた残骸】が転がっていた。
崩れ落ちるホテルの中、トリコは、ピクルはそれでも戦うことをやめなかった。
トリコの勝因はグルメ細胞の活発化だ。
死体を喰らった事によりその力を吸収し新たな力、既存の力を大幅に強化した。
そして戦いの最中に口にした秀吉の残骸が結果として彼に勝利をもたらしたのだ。

口からは大量の涎と血液を垂れ流し、顔にはピクルの残骸が米粒のように張り付いていた。
ピクルの頭を蟹の要領で引きちぎり、その脳天を手刀でかち割る。
脳天の裂け目から流れ出る汁を口に含み、中に残っていた粕を吐き出す。
その顔は無邪気な子供のような、狂気の笑顔で溢れていた――


「美味ぇ……名前はしらないが俺の糧になった。その生命に栄光あれ――」


食に感謝の気持ちを忘れず穴に残骸を埋め祈りを捧げる。
ピクルの持ち物も奪うこと無く、尊敬の念を込め一緒に埋めた。
今のトリコに装備など、ただの食料など不要。
今必要なのは---――――





「そう言えばサニーの奴どこだぁ?」





自分の戦いを、食事を邪魔されたのは怒ったがそれも昔の話だ。
かつての仲間に出会えたのは正直に嬉しいし、あの状況じゃトリコの方に非があった。
謝罪の意味も込めて会話したいがその姿が先程から見当たらない。
サニー程の男じゃ瓦礫でやられるような男じゃない。
それに人間の美味さを教えるためにも会話をしたい。
トリコの顔はずっと笑顔のままで瓦礫除去作業に移っていった。


「~♪サニーはど~こぉだぁぁぁい~~~~♪」


陽気に鼻歌を歌いながら瓦礫をどけ始めるトリコの心は清く美しく歪んでいた。
己の常識が世界の常識となっているため自分がおかしいと気づかない。
だから平気で人を喰らい、それを迷うこと無く勧める。


「ガツガツ♪ガツガツ♪……お!これはサニーの髪!」


暫くした後にサニーの髪の毛が瓦礫の隙間から見えたので更にテンションを上げ瓦礫をどける。
するとサニーの右手が見えたのである程度瓦礫をどけ、その手を勢いよく引っ張った。


「おはようサニー君!君に言いたいことが……え?」



勢いよく引っ張った。

勢いがよかった。

勢いが強すぎた。

力の加減がわからなかった。

腕だけが持ち上がった。

そこには俺の噛み跡が残っていた。

あの野郎、俺に喰らわれる前にサニーを喰いやがったな!

許さなえ!さっき捧げた祈りは取り消しだ!

■■の次は■■―が死んじまった。

残っているのは俺と■ブ■だけ――ん?

名前が思い出せねえ……

何だ?急に焦ってきた……お、俺は悪くないんだ!

■■が死んだ時俺は寝てたんだ!

■■―の時はあいつが邪魔して……!

でもさっき何で俺の歯型が残っていたんだ

あいつが喰らったんなら俺の歯型はつかないし……

何でだ?俺が喰った可能性しかないよなー……え?








「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」








気がつくとそこには俺が喰いつくしたサニーの残骸が転がっていた―――――




【サニー@トリコ 死亡】
【ピクル@グラップラー刃牙 死亡】






【G-2 ホテル前/1日目・昼】

【トリコ@トリコ】
【状態】 喰人状態、グルメ細胞活発状態、狂気に満ち溢れている、錯乱
【装備】
【持ち物】 ランダム支給品1~3、基本支給品一式
【思考】 おれが■■■を……?おれがおれがおれがおれがおれがおれがおれがおれが
【備考】
※放送を聞き逃しました
※ベイの挑発は聞いてなかったようです
※聞き逃した情報を聞きました
※人を喰らった事により喰人状態になりました。人を見たら捕食します
※ゾロ、グリンバーチ、クロコダイル、アミバ、ゆり、ダークプリキュア、サウザーを喰らいました
※喰らいによりスナスナの実の能力を使えるようになりましたが泳げますよ。
※サニー、ピクル、秀吉を喰らいました
※狂気に満ち溢れ正しい判断ができません



とあるお嬢のマッハキャノン 時系列順 サバトの女王
投下順
怪物攻略戦 ゼブラ 進撃のサイヤ人-思春期を捧げた男の輝き-
アルマゲドン 孫悟空
ブロリー
月島秀九郎
範馬勇次郎
天元突破待ったなし! トリコ 絶影のシェルブリッド
モーニングはいかが? サニー GAME OVER
師弟対決 ピクル

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最終更新:2014年12月31日 20:30