重機関銃から吐き出された弾丸は、
戸愚呂弟の巌の如き筋肉だけで、あっさりと止めれた。弾丸をかわしたり、叩き落すというのは、リヴィオにとって既に見慣れたものだったが、さすがに耐えるという予想外のこと。しかもそれを生身で平然としてのけているのだ。リヴィオの顔に驚愕の色が表れるのも当然だった。
「終わりかい? それじゃあ、今度はこっちが攻撃する番かねえ」
リヴィオの表情とは反対に、戸愚呂は余裕をもって語りかけた。敵の武器である銃に対して、自分にはその銃弾を通さない「鎧」を持っているのだ。そこで揺らぐ勝敗の天秤などはない。もっともそういった真理は別として、戸愚呂に油断などなかった。妖気でプレッシャーを与えても、霊力のない人間が意志を微塵も揺らがせずに立ち向かってきているのだ。それは戸愚呂弟からしても、十分に敬意を持てる勇気ある行動だった。故にそれを賞賛して、戸愚呂は強者としての慢心を排した鋭い攻撃を放つ。
しかし、その意気込みは、あっさりと別の色に塗り替えられてしまった。戸愚呂が腕の筋肉に力を込めた瞬間、敵のつま先が鳩尾に深く入り込んだのだ。そして息を吐く暇もなく戸愚呂は後頭部を蹴られ、その巨体を地面に叩きつけられた。神速とも形容されるべき攻撃の流れ。霊気とは無縁の人間が起こす奇跡に、戸愚呂はただただ感心した。
「零距離です。そしてここにはアナタのご自慢の筋肉もありません」
リヴィオはそう言って、ダブル・ファングを伏した戸愚呂の後頭部に突きつけた。殺すというのは、最終手段だ。尊敬するウルフウッドの意志を継いだ今、幾ら敵が外道であっても、簡単に殺人を肯定できるはずもない。だからリヴィオは思いつく最高の形で穏便に降伏を促した。
だけど、リヴィオの期待とは裏腹に戸愚呂の口から出てきたのは、降参とはかけ離れたぞんざいな挑発であった。
「……やるねえ。だけど、そんなオモチャで何ができるんだい?」
リヴィオは返答とばかりに戸愚呂の頭を足で勢いよく踏みつけ、ダブル・ファングのトリガーを容赦なく引いた。狙うは膝間接の裏。そこも筋肉で纏われることはないし、また命を危険に晒すことなく相手の行動を阻害することができる。これはリヴィオが戸愚呂にできる最大限の譲歩だ。他人から見れば、無慈悲と映るかもしれないが、こうしなければ動きは止められない。そういった姿勢と強さをリヴィオは戸愚呂から言葉以外のものでハッキリと感じていた。そしてそのリヴィオの危惧を示すかのように、戸愚呂は銃弾に晒されながらも、上半身を起こし、反撃に移ってきたのだ。
戸愚呂の左腕が無造作に振るわれる。態勢が態勢なだけに、そこには威力も速度も危険視するだけのものはない。リヴィオは余裕を表すかのように鼻先で一寸の距離で、それをかわした。しかしその直後、リヴィオは殴られたかのような衝撃を受け、十メートルほど空を舞っていった。
白み始め空に浮かぶ月を目に留める。そこでリヴィオは初めて自分が殴られたことを理解した。攻撃はかわしたはず。それは確かなことだ。だけど、それを否定するようにリヴィオの身体は空に浮き、鼻血を垂れ流している。一体何をされたのだろうか。リヴィオは地面が近づくと、くるりと回転して、音もなく地面に降り立ち、警戒するように相手をねめつけた。
「今……何をしたんですか?」
「さてねえ」
曖昧な答えを発しながら、戸愚呂は地面から立ち上がった。そう、立ち上がったのだ。その事実を目の前にして、リヴィオは自分の目を疑った。銃弾は確実に戸愚呂の膝裏に直撃した。ダブル・ファングの威力を考えれば、そのまま足が木っ端微塵になってもおかしくないはずだ。それなのに戸愚呂は膝から多少の出血を許すだけで、平然とこちらに歩いてきている。一体どういった身体の構造をしているのだ。そう思ったリヴィオは戸愚呂の足を見て、言葉を失った。戸愚呂の膝が、先程までは無かった分厚い筋肉で覆われているのだ。
「アナタは一体何者ですか?」
「ミカエルの眼」ともプラントとも違う異様な存在に、リヴィオの口から疑問が漏れ出た。
「何、筋肉操作しかできない芸のない妖怪さ」
妖怪。GUNG-HO-GUNSや「ミカエルの眼」のように強者や何かの組織を表す称号だろうか。リヴィオがそんなことを考えていると、戸愚呂が相手を諭すように優しい声をかけてきた。
「あんたが無駄な努力をしないために一つ忠告しといてやるよ」
「何ですか?」
「俺の筋肉に死角は無い。頭も膝も他の全ても、俺の筋肉で覆うことができる。だから、あんたの攻撃は全て無意味だ」
そう言って、戸愚呂は一気にリヴィオに駆け寄った。そして再び戸愚呂は腕を振り上げる。素っ頓狂な物言いに一瞬反応が遅れてしまったが、リヴィオの目からすれば、戸愚呂の動きなど鈍重とも言えるスピードだ。そこから二つ、三つのカウンター攻撃を、リヴィオなら容易に仕掛けられる。だけど、リヴィオはその考えを、脇に追いやった。自分を吹っ飛ばした敵の正体不明の攻撃。このままそれを放っておいたら、後々厄介なことになりかねない。そう判断したリヴィオは攻撃の正体を見極めてやるべく、入念に戸愚呂の一挙一動を観察してやることにした。
鉄よりも硬い筋肉に覆われた戸愚呂の豪腕が、リヴィオの顔を目掛けて駆け抜け、目の前で止まる。今度は先のように紙一重ではなく、幾らかの余裕を持った回避だ。これなら戸愚呂の全体像も見えるし、不審な行動も警戒しやすい。しかし、戸愚呂は何ら特別な動作などはせずに、そこで攻撃を終えた。そして次の瞬間、リヴィオは強烈な衝撃により、何十メートルも地面を転がっていった。
「はあッ!!?」
不可解な現象に堪らず疑問の声が吐き出された。だけど、そのことについて考えている暇などはないと、リヴィオに追随してやってきた戸愚呂が追撃をしかける。リヴィオはそれに気がつくと、バックステップをして大きく回避。今度は何メートルも離れたのだ。これなら完全に攻撃はかわせるはず。だが、またしてもリヴィオは戸愚呂により、地面を転がされる羽目となった。
血と泥に塗れた無様な姿が月の光に映し出される。それはかつてGUNG-HO-GUNSに身を置いた者とは思えない情けない姿だ。だけどそのおかげか、リヴィオはようやく敵の攻撃の正体を見極めることができた。戸愚呂の腕を振るった瞬間、それに呼応したように動いた空気。それはつまり――
「風圧ですか?」
「そうだ!」
リヴィオの声を戸愚呂は力強く肯定。続けて、自らを誇示するかのように戸愚呂は力強く説明を加えていく。
「強さとは力だ! 技術やスピードなど、圧倒的な力の前では無力! 力こそが、全てをねじ伏せることができるのだ!」
そう声高に叫ぶや否や、戸愚呂は腕を振るった。たちまち風が巻き起こり、地面を抉りながら、リヴィオをに向かっていく。純粋な力のみによって起こる破壊の現象。しかしその直後、地面に倒れたのはリヴィオではなく、戸愚呂弟であった。リヴィオは風圧が自らに到達する寸前、瞬時に戸愚呂の背後に回りこんで、渾身の蹴りを叩き込んだのだ。戸愚呂の攻撃の種さえ分かってしまえば、恐いものなどない。風圧は戸愚呂の腕を起点として発動し、その方向は常に一定なのだ。弾丸の雨を、それより速いスピードでもって気軽に掻い潜ることのできるリヴィオの身体能力であれば、回避のしようなど幾らでもある。
とはいっても、それでリヴィオが戸愚呂にダメージを与えることができたわけではない。リヴィオの攻撃は、全て戸愚呂の筋肉に阻まれて、無効化されているのだ。その厳然たる事実を示しながら、戸愚呂は身体についた砂をはたいて、ゆっくりと起き上がった。
「さっき言わなかったかい? あんたの攻撃は……」
無駄。そう言おうとしたところで、戸愚呂の口は俄かに閉じられた。リヴィオが、いつの間にかいなくなっているのだ。戸愚呂は周囲を丹念に見回してみるが、影一つ見つからない。ひょっとして、逃げたのだろうか。確かにその選択は殺し合いを生き抜くことを考えれば合理的だ。この闘いは、リヴィオにとって何ら益することはないのだから、それは当然とも言える。
しかし、そんな考えとは裏腹に、戸愚呂には一つの確信があった。リヴィオの瞳に込められた愚直なまでの輝き。あれは闘いにおいて、諦めを知るものではない。幾多もの挑戦者を屠ってきた戸愚呂は、最後まで己の意志を曲げずに果敢に立ち向かってきた敵をリヴィオの姿から思い浮かべた。だからこそ、リヴィオは決して逃げない。
そしてほどなく、戸愚呂の確信は正しいものだと証明された。まばたきをして、次に目を開けた瞬間、戸愚呂の身体に何かが巻きついていたのだ。
「これは……弾帯?」
戸愚呂の言葉は正しく、それは総計何メートルにも及ぶ弾帯であった。しかも、そこに並べられているのは、ただの弾丸ではない。超兵器であるダブル・ファングを超え、最強の個人兵装とまで謳われるパニッシャーの重機関砲の弾丸だ。
相手を倒すに必要な火力がない時は一体どうすれいいか。リヴィオはウルフウッドの闘いおいて、既に身を以って経験している。そしてその為の手段も、弾薬庫に山となって存在しているのだ。リヴィオが、かつて喰らった攻撃を再現するのに、そう時間はかからなかった。
もっともこれだけでは、戸愚呂の筋肉を貫くことはできないだろう。リヴィオもそう思っているからこそ、ダメ押しの一発を戸愚呂に叩き込む。それはパニッシャーに同じく搭載されたロケットランチャーの砲弾。その威力は肉塊と成り果てても再生できるリヴィオにすら死を予感させるものだ。これで戸愚呂も死ぬかもしれない。しかし、ここに至ってリヴィオには、もうその躊躇いはなかった。
生半可な攻撃は通じず、拘束すらできないであろう筋肉の固まり。しかも、それは闘いを求めて、存在しているのだ。とても放ってはおけるわけがない。せめて言葉を聞いてくれれば幾らか対処の仕方があるだろうが、戸愚呂そのための耳すら持たない。そんな危険な輩は、最早殺すことでしか止められないだろう。そしてリヴィオは死の導きを全力で以って投擲した。
砲弾、銃弾に内包されたエネルギーは、凄まじいものだ。戸愚呂に着弾した瞬間、それは逃げ場を求めるかのように荒れ狂い、辺り一体を光と炎で染め上げたのだ。ある程度離れていたリヴィオですら、その余波で吹き飛んでしまった。だが、これで戸愚呂は倒したはず。それを確かめるため、リヴィオは地面から立ち上がり、いまだ炎と熱が残っている爆心地に向かっていった。
「やはりというか、さすがというか……」
それを見て、リヴィオはそんな言葉を漏らしてしまった。何と戸愚呂は爆発の中心点で、自らの二本の足で以って立っていたのだ。あの威力で人の形を保っていられるのは、驚きを通り越して、最早呆れるだけである。
といっても、死にはしなかったが、戸愚呂が生きているというのも、かろうじてのものだった。鎧のように覆われていた戸愚呂の筋肉は全て削げ落ち、今は至る所に骨を露出させ、炭化した内臓組織をさらけ出している。今にも途切れそうなかすかな呼吸音が、戸愚呂の生存を僅かに伝えているだけだ。
生き残ったことは幸いと呼べることかもしれないが、ここまでダメージを負った状態で生きているならば、寧ろ不幸なのかもしれない。リヴィオは罪悪感を覚えながらも、全てを終わらすためにダブル・ファングの銃口を戸愚呂に向けた。だけど、そこでリヴィオはトリガーを引くのを、やめてしまった。戸愚呂の声が、かすかに聞こえてきたのだ。遺言か何かだろうか。そう思ったリヴィオは、銃を収め、戸愚呂の最後の言葉に耳を傾けることにしてやった。
「やる……ねえ。……はち……じゅう%だ」
戸愚呂は声をかすれさせながらも、何とか音を搾り出した。そしてそう言うや否や、戸愚呂の身体に変化が訪れたのだ。戸愚呂にこびり付いていたかのように残った筋肉が、意志を持ったかのように蠢き出す。骨は瞬く間に真新しい筋肉に覆われ、炭化した細胞も筋肉に追い出されるように、身体から剥がれ落ちていく。そうして失った部分を取り戻すように、筋肉は身体全体を覆っていった。そしてその一瞬後には、先ほどまで闘っていた時よりも尚、大きくて厚い筋肉を纏った戸愚呂が、何事も無かったように平然とリヴィオの目の前に立っていたのだ。
「少し強くいくぞ」
驚きの目で自分を見上げるリヴィオに向かって、戸愚呂はその指先まで丁寧に筋肉に覆われた巨人の如き腕を振りかぶった。先の攻撃の返礼をかねてやろう。相手を死を知らせるかのように、戸愚呂の目は酷薄にリヴィオに注がれる。しかし、その戸愚呂の攻撃は、何ら意味を成すことはなかった。何故ならば、その瞬間、空を覆うほどの巨大な槌が、二人を嘲笑うかのように押し潰したのだから。
【一日目 早朝】
【現在地 B-5 弾薬庫付近】
【
リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
【状態】???
【装備】二重牙(ダブルファング)@トライガン・マキシマム(残弾85%))
【道具】支給品一式
【思考】
基本 殺し合いの打破
1. 核爆弾と弾薬を危険な奴らから守る
【備考】
※弾薬庫には核爆弾@トライガン・マキシマムが置かれています
【戸愚呂弟@幽遊白書】
【状態】???、素っ裸
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本 浦飯と決着をつける
1. リヴィオに悲鳴を上げさせる
【備考】
※支給品は爆発によって、全て吹っ飛びました
【
ヴィータ@魔法少女リリカルなのは A's】
【状態】全身に刺傷(回復中)、疲労(極大)、魔力消費(極大)
【装備】グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのは A's
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本
八神はやてを守る
1. 八神はやて以外を殺す
【備考】
※
戸愚呂兄を殺したと思っています
最終更新:2012年05月30日 20:51