魔力は尽きた。頼みの綱のカートリッジも、先ほどの攻撃で全てを費やした。怪我も回復しきらない今は、もうまともに歩くことすら、ままならない状態だ。だけど、それでも
ヴィータは息を切らせながら、グラーフアイゼンを杖代わりとして、何とか歩みを進めていった。目の前に弾薬庫がある。そしてその中には魔力カートリッジが眠っているはずなのだ。それを手に入れれば、この身体不調を持ち直し、再び攻撃手段を持てることが出来る。
「どこへ行くんだい、お嬢ちゃん?」
後ろから聞こえてきた
戸愚呂弟の声に、ヴィータは一筋の冷や汗を額に流した。こちらは既に魔力を使い切り、戦闘など臨めない体たらく。それとは反対に敵の男は、怪我や疲れを感じさせない快調な声のトーンだ。自らの必殺の一撃をまともに受けて、そういった様相では、些か以上に自信が失ってしまうが、それで暢気に呆然とはしていられない。ヴィータは戸愚呂の声を無視して、必死に足を前に進めていった。
「この青年の鳴き声で浦飯を呼び戻そうとしていたんだけれどねえ、あんたのせいで台無しだよ」
戸愚呂は、まるで車に潰された蛙の死体のように横たわるリヴィオを横目に溜息を吐いた。リヴィオほどの強者なら、殴ることに躊躇いはないが、ヴィータのような少女では罪悪感が自ずと湧き出てしまう。しかし、こうした事態を引き起こしてしまったのは、目の前の少女であるし、また浦飯との決着は何より大切なものだ。だから、戸愚呂はヴィータの頭を掴み、何の遠慮もなし地面に叩きつけた。
轟音と共に、たちまち大地が砕け、血が飛散する。それによって幼い少女には似つかわしくない赤い血が、彼女の顔を色濃く彩った。その傷は、これ以上の攻撃を躊躇わせるだけの惨たらしい有様だ。だけど、戸愚呂はうめき声を上げるヴィータの顔を片手で掴み、構わずに持ち上げると、死刑にも等しい残酷な言葉を言い放った。
「悪いけれど、今度はあんたの悲鳴で浦飯を呼んでもらうことにするよ」
ヴィータの何十倍もあるであろう太さの腕で、戸愚呂は彼女を殴りぬけた。その衝撃によって、ヴィータの身体を守っていた最後の砦であるバリアジャケットは一瞬で霧散。またそれでも防ぎきれなかった威力は、ヴィータの身体を駆け抜け、何十メートルも地面を転がしていった。
「強情だねえ。そんなあんたに何か得でもあるのかい?」
悲鳴を上げないヴィータに、戸愚呂は呆れながら呟いた。この場合は、さっさと声を出して泣いた方が、双方にも良いはずだ。それなのにヴィータは、その結果を頑なに拒んでいる。戸愚呂はそれが不思議でならなかった。対するヴィータは、その疑問に答えるかのように不敵に笑い、股間丸出しの戸愚呂に向かって唾を吐きかけた。
「ハッ……誰が、てめーみたいな変態の言いなりになるかよ……ッ!」
「あんたもバカだねえ」
再び戸愚呂の拳が激突。ヴィータは顔から血しぶきを上げて、転がっていった。既にヴィータの顔面は陥没状態。そこから血が湯水のように溢れ出て、彼女が本来持つ可愛さを、根こそぎ奪っていく。だけど、それがどうしたことか。もう少しで弾薬庫に到達するのだ。歩いては不可能だと思えた距離が、殴られ、吹き飛ばされることで、飛躍的に距離を縮めているのだ。勿論、怪我を負う自体は喜ぶべきことではないが、それでも相手の目的を考えるに、死には至らない。死ななければ、戦闘プログラム体である自分は回復は容易なもの。そして魔力カートリッジを手に入れられれば、反撃の手は幾らでもあるのだ。
「へ……、小さいくせに……た、態度はデケェな。この変態野郎……! 」
ヴィータは大きく殴り飛ばされるべく、血を吐き出しながらも、挑発を行った。
「……おっと、こいつは失礼」
ヴィータの視線に、ようやく自分の状態に気づいた戸愚呂は謝罪を入れた。しかし、そうしながらも、戸愚呂は真ん中の足をぶらぶらと揺らせ、地面に倒れたヴィータの髪を引っ張り、持ち上げる。巨岩。そう形容して然るべき戸愚呂の拳が、すかさずヴィータへと見舞われた。だが、戸愚呂が得た感触は人を殴ったものではなく、自らの拳に痛みをもたらす、何か硬質なものだった。
「……大丈夫スか?」
戸愚呂は、少女に声を掛けるその男に見覚えがあった。左目の上にタトゥーを入れ、灰色の髪を短く刈り上げ、その上に黒のウェスタンハットを被ったキザなガンマン。ダブル・ファングを十字に構え、戸愚呂の攻撃を受け止めたリヴィオが、そこにいたのだ。
「なるほど、あんたも普通の人間じゃないみたいだねえ」
蛙の轢死体を思わせたリヴィオが、今は二本の足で大地に立っていることに、戸愚呂は驚いた。
「ええ……ヤケクソで始めた外道の技と体ですけどね」
「だけど見たところ、まだ完全には回復していない。折角、出てきたところで悪いけれど、次の一撃は本気で行く。一人鳴いてくれれば、それで十分だからねえ。果たして、あんたにコレが耐えられるかい?」
氷点下を思わせるほどの冷酷な目をリヴィオに注ぎ、戸愚呂は硬い筋肉で覆われた腕を振りかぶった。腰を捻り、巌のように隆起した背中を見せる戸愚呂の威容に、リヴィオは堪らず唾を飲み込む。戸愚呂の言うとおり、まだ身体は万全とは言い難かった。その上、先の攻撃を受け止めたせいで、治りかけていた腕と胸の骨は、また折れた始末。ハッキリ言って、戸愚呂の拳を耐え切るだけの自信は、今のリヴィオにはない。だけど、それでもここを動くわけにはいかない。リヴィオの後ろには幼い少女がいるのだから。
「ァ……んだ、てめーは? どけ、よ……!」
その幼い少女――ヴィータはリヴィオに向かって、吼えるように声を掛けた。リヴィオの存在はハッキリ言って、ヴィータにとって邪魔でしかない。彼が盾となっては、これ以上の負傷はなくなるだろうが、自らの目的が達成できなくなってしまうかもしれないのだ。
「どきません!!」
「ああ?」
リヴィオから迷いなく放たれた言葉に、ヴィータは思わず疑問の声を上げた。自分を庇って、何の意味がある。そもそも先ほど殺そうとした奴を、何故助ける必要がある。正義感を振りかざすにしても、限度があるものだ。ヴィータにはリヴィオの行動が全く理解できなかった。
だけど、リヴィオはその限度を遥かに超えたバカを知っていた。そしてリヴィオはその人を尊敬し、かつての外道から今に至ったのだ。それならば、今の自分をその人に誇るために、またその人に恥じぬ生き方をするために、この道を貫き、バカになるまで。
ヴィータが、いきなり人を殺しにかかる血に塗れた外道などというのは、知ったことか。幼い子どもがその選択肢を取ったというのなら、その当人を責めるのではなく、そうしなければならなかったその環境を責めるべきだ。こんな殺し合いという地獄の中で、子どもが死ぬ必要なんて、どこにもない。子どもの命は、守る価値が十分にあるものだ。
「話は終わりかい? それじゃあ、行くよ。死にたくなきゃ、精々大きな声を上げてくれることだね」
その言葉と共に戸愚呂の大砲が放たれた。スピードではなく、パワーで空気を震わせ、衝撃波を生み出す規格外の攻撃。それは音を立てて真っ直ぐとリヴィオへ向かい、不思議と彼の横を通り抜けていった。
「は?」
リヴィオの口から、間の抜けた声が漏れた。死を予感させる一撃は横へと逸れたのだ。その事実に、リヴィオの頭の中は驚きで埋め尽くされる。だけど、それは戸愚呂が何故攻撃を外したかという理由からではない。戸愚呂の攻撃の不発の原因が、すぐに分かったからこそ、リヴィオの顔は唖然と口を開けてしまったのだ。
戸愚呂の拳が向かってきた瞬間、鳴り響いた銃声。そして三発の弾丸が、全く同じ箇所に当たり、戸愚呂の腕の進行方向を無理矢理ずらす。動いている物体に対して、一ミリの狂いもなく同一の箇所に銃弾を当てることなど、常人には不可能なことだ。しかし、そんな神業めいたことを気軽にやってのけられる人物を、幸いにしてリヴィオは一人知っていた。
「や、リヴィオ。大丈夫だったかい?」
「ヴァッシュさん!!」
リヴィオは聞こえてきた声に急いで振り返り、笑顔でその名を叫んだ。
【一日目 早朝】
【現在地 B-5 弾薬庫付近】
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン・マキシマム】
【状態】健康、肉の芽による洗脳
【装備】ヴァッシュの銃@トライガン・マキシマム (残弾3/6)
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 殺し合いの打破、
DIOに忠誠を示す
1. 戦闘を止める
2. ジョースター一行とDIOの部下を探す
3. ナイブズにDIOを紹介する
【備考】
※ジョースター一行とDIOの部下の情報を得ました
※肉の芽はDIOへの忠誠を高めるだけのものです
【
リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
【状態】疲労(大)、両前腕骨骨折(回復中)、胸骨骨折(回復中)、全身亀裂骨折(回復中)、全身打撲(回復中)
【装備】二重牙(ダブルファング)@トライガン・マキシマム(残弾85%)
【道具】支給品一式
【思考】
基本 殺し合いの打破
1. 核爆弾と弾薬を危険な奴らから守る
【備考】
※弾薬庫には核爆弾@トライガン・マキシマムが置かれています
【戸愚呂弟@幽遊白書】
【状態】素っ裸
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本 浦飯と決着をつける
1. 浦飯を探す
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのは A's】
【状態】顔面陥没、全身に刺傷(治りかけ)、疲労(極大)、魔力消費(極大)
【装備】グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのは A's
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本
八神はやてを守る
1. 八神はやて以外を殺す
【備考】
※
戸愚呂兄を殺したと思っています
※リヴィオの行動に困惑しています
最終更新:2012年11月06日 00:22