夏目レイコは、家に帰って寝なおそう、と言った。何しろ身体の節々が痛い。地面にそのまま横になっていたのが悪かったのだろう。夏目レイコは渋面を作りながら、やっとのことで起き上がる。
「なんか疲れた」
気だるげに言葉を発し、ボサボサとなった髪をかきあげた。睡眠は身体を休めるのが目的だけど、硬い地面の上では、それも暢気に果たせるわけもない。朝の冷たい空気を吸い込み、心機一転。そんな風に元気を出したいけれど、強張った身体が、それを邪魔をする。どこからか聞こえてくる鳥の歌声に耳を傾け、レイコは目をそちらに向けた。
ここはどこだろう?
見慣れぬ光景に、レイコは首を傾げた。他人は自分を気味悪がり、距離を置く。そんなことを疎ましく思ったり、嫌気を差したりで、人目のない森の中に入ることは良くある。だけど、いま目の前にあるのは、レイコが見てきたものと、まるで様相が違う。
ま、いっか。
身体が覚えた違和感を、夏目レイコはその一言で全て片付けた。小鳥は囀り、緑は息吹き、風が染み渡る。そして自分は独り。そこに変化はない。それなら、どこにいたって同じこと。ただ日々を過ごすだけだ。ただ徒に。ただ無意味に。たった独りで。
お腹がズキリと痛む。
「そういえば、負けたんだっけ」
昨夜、訪れた一つの変化を思い出す。いつもは勝利を終える妖怪との勝負を、初めて敗北で迎えてしまったのだ。だけど、それは真正面から正々堂々やっての結果。そこに訪れるのは朝露のように清涼な、爽やかな気持ちだ。無論、嘘である。漫画のようにそう言い切れたのなら格好いいのだけれど、残念なことに悔しさと腹立たしさが残る。
能面のような夏目レイコの顔に表情が生まれた。今まで遠ざけてきた妖怪。それにまた会いたいという気持ちが生まれたことに、彼女自身驚き、また面白く思ったのだ。昨夜見たのは、ニヒルな顔を浮かべ、全てを透徹したかのようなクールな瞳を携え、逞しい筋肉を纏った妖怪。
そしてそこに感じるのは、身体を沸き立たせ、焦がしてしまうような熱い恋心。これは夏目レイコがする生まれて初めての恋。げに素晴らしきかな。ああ、恋せよ、乙女。ああ、花を咲かせよ、少女。
勿論、嘘だ。そんなロマンチックなものは欠片も無い。こちら見下げ果てたような冷たい目で、しこたま殴ってくれた妖怪。その顔を、思いっきり殴ってやりたい。彼女にあったのは、そんな童心、復讐心。夏目レイコの目に、メラメラと炎が燃え立つ。
「でも、あいつ強いんだよねえ」
完膚なきまでの敗北。それが彼女の火を消しにかかる。このまま再戦を挑んでも、同じように惨めに負けるだけだ。あの妖怪を負かすのには、何か策を講じる必要がある。身体についた土を払い落としながら、沈思黙考。そこで筋肉達磨の妖怪が、去り際に何かを言っていたことをレイコは思い出す。
「え~と、確か……元気かい? うらめしや~、だっけ?」
意味不明である。何かのアドバイス。そんなようなことだった気もするが、いかんせん記憶に靄(もや)がかかって、中々出てこない。やはり寝不足で、疲れているからだろうか。暢気にそんなことを思った彼女は、寝床を求めて、フラフラと歩き出していった。ここがどこで、何故ここにいるか。そんなことをキレイさっぱり忘れて。
【一日目 早朝】
【現在地 B-4】
【夏目レイコ@夏目友人帳】
【状態】お腹イタイ 、疲労(中)
【装備】友人帳@夏目友人帳
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 暇を潰す
1. 家に帰って、柔らかな布団で寝る
2. 筋肉達磨の言を思い出す
【備考】
※バーンや殺し合いのことは忘れました
※
戸愚呂弟の台詞は忘れました
最終更新:2012年08月18日 04:16