いきなり目の前に現れた男に、シンは目を剥いた。久しく会っていなかったとはいえ、その容貌、その気配、その隙の無さは、しっかりと脳裏に刻み込まれている。
「トキ!」
男の名を叫び、シンは己の迂闊さを悔やんだ。
ポップを目を向けるあまり、トキの接近に気がつかなかったのだ。トキといえば、あの拳王
ラオウと肩を並べる強者である。自らの拳法は、いまだその高みに達していないことを知っているシンは、この不用意な対峙を誰よりも恨んだ。
「その声、姿……やはりシンか」
対するトキは自分に言い聞かせるように、ゆっくりと、ハッキリとした声で呟いた。トキの知識の内で言えば、シンは既に死した身。目の前にあるように、シンは決して動ける身体ではないはずなのだ。しかし、その条理を覆すかのように、シンは今を生きている。トキはその事実を噛み締めるように、シンを仔細に見つめた。
「堕ちたか、シンよ」
やがてトキはその瞳に哀しみを映し出しながら、重々しく口を開いた。
「堕ちた? 何を言っている、トキ?」
「とぼけるな、シン。何故あの少年を殺そうなどとする?」
「ク……それは奴がこの殺し合いに乗った奴だからだ。俺とて、年端もいかない少年に拳を向けるなど、本意ではない」
自らの不利を知る故に、シンは言葉を選びながら、慎重に受け答えをした。トキと真正面から対決すれば、敗北は必至。そうなっては、
ユリアを守るために何もすることができなくなってしまう。それではただ徒に時間を過ごし、ユリアの命を危険に晒すこととなるだけだ。
「下手な嘘だな」
トキはシンの言葉を受けて、ただ残念そうに呟いた。
「嘘ではない! 俺はあの小僧が侍の格好をした輩を殺すのを見たのだ!!」
「シン……嘘を吐くのなら、その猛る殺気をまず抑えることだ。その気配は、何よりも雄弁にお前の在り方を物語っている」
そう言って、トキは静かに北斗神拳の構えを取った。そこには付け入る隙が一分もない。攻撃どころか、最早、言葉を弄する余地などないのだろう。トキの構えからそれを悟ったシンは渋面を浮かべながらも、トキに呼応するかのように南斗聖拳の構えを取った。
「やはりユリアさんのためか?」
お互いジリジリと間合いを詰めていく中で、トキは口を開いた。そこに答えはなかったが、シンの性格を考えれば、十分に思い当たる結論だ。シンの宿星――殉星。その哀しいまでの愛に生きる姿は、既に周知の事実。
「ユリアさんが、こんなことをされて、喜ぶわけがない。お前なら、そのことを誰よりも分かるはずだ」
ユリアが自決を選んだサザンクロスでの悲劇。それを目の当たりにしたシンは、この殺し合いで成さんとしていることの結末を予想できるはず。トキはそれを悟らせようと、優しく、真摯に語りかけた。しかし、シンはそれにニヤリと不敵に笑って返す。
「安心しろ! 俺のことはユリアには伝えさせない! 決して!! 誰にも!! そんなことをさせる前に、俺はユリア以外の人間全てを殺すのだから!!!」
「そんなことが出来るとでも思っているのか? この場には、あのラオウがいるのだぞ!」
「一度は死した身! お前らの拳がどれだけこの身体を砕こうと、止まる術など持たぬわ!」
「……やはりシンが死んだというは事実であったか。ならば、どうして……?」
「それすらも分からぬか、トキィッ!! 俺はユリアに危険が迫るというのなら、地獄から何度でも蘇ってくるわぁぁ!!!」
驚きと疑問により、ほんの僅かトキの構えが揺れた隙を突き、シンは地面を蹴り、地面の土をトキの顔に浴びせかけた。そしてすかさずシンは咆哮と共に南斗孤鷲拳の奥義を放つ。
「南斗邪狼撃!!」
シンとトキが、刹那の時をもって交錯した。音もなく、お互いの立ち位置を交換した二人は、己が拳の手応えを実感する。そして次の瞬間、トキは呻き声を漏らし、地面に膝をついた。
「さすがは南斗聖拳のシンか……」
頬を流れた血を拭いながら、トキは賞賛の声を漏らした。先の
シグナムとの闘いにより、トキの身体は万全とは言いがたかった。そのせいで、貧血による立ち眩みを起こしてしまったほどだ。しかし、それでも僅か一瞬に見せた隙を的確に突くことができたのは、相手の技量の高さを示すもの。トキは素直に舌を巻いた。
「ウ……がッ……はァ…………!」
トキは静かに後ろを振り返り、声にもならぬ声を放つシンに勝負の結果を告げた。
「椎神(ついしん)という秘孔を突いた。これでしばらくは動けまい」
敵と相対しているというのに、シンはそこから一歩も動くことができない。その秘孔の効果を確認したトキは、再び優しくシンに語り掛けた。
「今一度、そこでゆっくりと自らの行いの結果を考えることだ、シン。お前もユリアさんを悲しませたくはあるまい」
シンは愛に生きる修羅だ。そこには愛する者以外への情けはない。しかしあのラオウすら、不可能と思えた情けを身に纏いつつあるのだ。
ケンシロウの良き友人としてあったシンなら、きっとラオウのように己が過ちに気がついてくれるだろう。そのことを心から信じるトキは穏やかな顔で踵を返して、その場を去っていった。
【一日目 早朝】
【現在地 D-8】
【シン@北斗の拳】
【状態】健康 、行動不能
【装備】妖気計@幽遊白書
【道具】武器支給品、支給品一式
【思考】
基本 ユリアを最後の一人にする
1. う、動け!
2. 人を見つけ次第殺す
【備考】
※しばらくの間は動けません
【トキ@北斗の拳】
【状態】死の病、胸部裂傷(止血済み)、失血により貧血気味
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本 殺し合いを止める
1. シグナムを止める
2. 修羅の身に落ちた者は殺す
【備考】
※ラオウが正道に戻りつつあると思っています
「やべえ、やべえ、マジでやべえ。どうすりゃいいんだ……って、アレ?」
シンから必死な逃亡を続けているポップは、頭を抱えている中で、ふとある事実に気がついた。いつの間にか、シンがいなくなっているのである。あの悪鬼のような形相で追走をしてくる輩が、果たして諦めという言葉を知っているのか。そのことに疑問を抱くポップは、驚くほどの時間を掛けて入念に、丹念に辺りを見回してみるが、ついぞシンの姿が見当たらない。ようやっとそのことを受け入れることができたポップは、この日一番の安堵の息を吐くことできた。
「ふー、本当に焦ったぜ。取り敢えず、今は魔法力の回復に専念か」
額に浮き出た汗を拭いながら、ポップは足を進めていく。どこか安心して、休めるところはないだろうか。そんな算段だったが、すぐにそれを叶えるような大きな施設が彼の目に入ってきた。幸先がいいことだ。ポップは口笛を鳴らして、その施設に入っていったが、綻んでいた彼の顔は瞬く間に歪められていった。
臭うのである。何というか、排泄物の臭いが辺りを充満しているのだ。あまりの臭さにポップはすぐにでもここを脱出したい気持ちに駆られたが、これは同時に自分以外の参加者がここにいることを意味しているものだ。それを悟ったポップは鼻をつまみ、意を決して奥へ足を進めていった。
ビチャ、ビチャ、と水の流れる音が聞こえる。扉一枚隔てた向こうに、誰かいることは明らかだ。どうやらその部屋はトイレみたいだが、ここで気を引いてはいられない。相手はシンのようなマーダーかもしれないのだ。暢気に用を足すのを待っていては、それこそ憂いの種と成り得る。ポップは口で大きく息を吸い込むと、ドアを盛大に蹴破った。
「おらー! 動くなよ! 俺の名はポップ! この殺し合いには乗っていな…………」
ポップの声は次第に小さくなっていった。目の前に他の参加者がいたのだ。勿論、それだけなら覚悟していたこと故、ポップは醜態は見せなかっただろう。だけど、相手がマーダーかと思い、警戒していたところに、コレではポップの気勢が削がれるのも致し方ない。寧ろ、それは回りまわって、申し訳ない気持ちになるほどだ。
「す、すまねえ、おっさん!」
ポップは慌てて部屋を出て行った。そんな彼の脳裏に思い返されるのは、つい先ほど目の当たりにした哀しい目をした男だ。その男は180センチを超える巨体を、小さな水道に押し込め、必死になって素っ裸になった身体を洗っていたのだ。ポップは後ろから聞こえてくる啜り泣き声に、人知れず涙を流してやった。
【一日目 早朝】
【現在地 E-7 闘技場のトイレ】
【ポップ@DRAGON QUEST-ダイの大冒険】
【状態】疲労(中)、魔法力消費(大)
【装備】ブラックロッド@DRAGON QUEST-ダイの大冒険
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 禁呪の解呪
1. すまねえ
【備考】
※博物館の展示品は全て把握しました
【
J.P.ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】全裸、疲労(大)、哀しみで胸が一杯
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本
DIOを倒す
1. …………
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最終更新:2013年11月26日 21:06