寝床と決めたデパートの寝具売り場。そこのベッドでワインを片手に足を伸ばしていた
DIOは、ふと読んでいた本から、目を上げてみた。
「ニヒッ」
いつの間にかそこにいたブサイクな猫の不気味な笑顔が、ドアップですぐに返された。丸々と太った猫に、不自然なくらいに口角を吊り上げた笑み。その異様な風体は、突然の出現ということも相まって、さしものDIOも度肝を抜かし、思考に空白が生まれた。とはいえ、相手が獣であろうと、醜態を晒すことは、DIOのプライドが許さない。DIOは何事もなかったように落ち着き払ってベッドから下り、ゆっくりと猫に語りかけた。
「その胸の印……どうやら参加者のようだな」
ザ・ワールドの真なる能力を使い、猫を仔細に観察する。それによって得られた結論の一つをDIOは開示して見せた。別にそこに返事など期待していなかったが、驚くことにハッキリとした言葉で猫の口から返されることとなった。
「……甚だ苛立たしいがな」
「フム……君はひょっとしてスタンド、もしくはスタンド使いなのかな?」
猫が言葉を操るという異様な現象から、DIOは一つの答えを示した。
「全く……私を見ればスタンドスタンドと、どいつもこいつも同じ事を言う。まあ、スタンドなど、今を以ってさっぱり分からんが、おまえが誰かというのは分かった」
「ほう?」
「お前……DIOだな?」
猫こと、ニャンコ先生は、胸を張り、したり顔で、得意気にDIOに語りかけた。会ったこともない輩が、自らを知っている。そしてこちらに敬意も好感も抱いていない。それは否応なしに、一つの結論に辿り着いてしまうものだ。それに気がついたDIOは、忌々しそうに言葉を吐き捨てた。
「フン、既にジョースター一行と出会っていたというわけか」
「確かにポルポルはジョースターとかいう人間の仲間と言っていたな」
「……それでこのDIOを前にして、一体どうするというのだ?」
DIOは腰に手をやり、スタンドを発現させ、威圧感をたっぷりと含ませながら、猫に訊ねた。ポルナレフに出会ったというのなら、こちらに敵意を抱いていてもおかしくはない。このまま戦闘に突入するということも、十分に有り得るだろう。だけど、猫が放った言葉は、DIOの予想とはかけ離れたぞんざいなものだった。
「ん~、別に何もせん」
「私のことを聞いたのではなかったのか?」
「訊いてもいないのに、憎々しげに語ってきたな。だが、それと私に何の関係がある? 夏目のバカモノでもあるまいし、人と妖モノの問題に一々首など突っ込んでなどおれんわ」
「では、君はジョースターの仲間ではないのか?」
「ええーい、何故この高貴たるこの私が人間の仲間になどにならなくてはいかんのだ!!」
「フフ……それはすまない。どうやら誤解をしていたようだ。そのお詫びといっては何だが、どうだろう、私と友達にならないか?」
「小物の分際で随分な言い草だな」
「フフフ、どうか安心してくれ。先ほどの口振りからして、君は人間を見下しているようだが、私は人間とは違う。私はそんな低俗な種を遥かに超越した存在なのだから……フフ」
「確か吸血鬼と聞いたな。だがDIOとやら、お前はもう一つ誤解をしているぞ」
「フム、それは何かな? 良かったら一つ、私に教えてくれないだろうか?」
「この私が人間風情に味方することもありえないが、それと同様にちっぽけな妖モノにも味方することはないということだ」
ピクッ、と音を立ててDIOの血管が浮かび上がる。そして妖艶とも言える彼の瞳から輝きは失せ、途端に目は据わり始めた。
「……ちっぽけ? それはひょっとしてこのDIOに向かって言った言葉なのか?」
「お前の頭脳はマヌケか? 他に誰がいる?」
冷たさを感じさせるDIOの声を耳に入れても、ニャンコ先生は暢気にそれを受け流して、鷹揚に答えた。その余裕綽々の態度は、自らに何よりも重き価値を置くDIOの逆鱗に触れるには十分なもの。バーンによる問答無用の拉致と禁呪のせいで機嫌の悪かったDIOは、すぐさま激高してニャンコ先生に攻撃を仕掛けた。
「WRYYYYY!! 調子に乗るなよ!! このブタよりも醜いクソ畜生が!!」
「やれやれ……私の偉大さが、しかと伝わるように言葉を用いたが、それすらも通じぬとはな。所詮は低級か」
ニャンコ先生は溜息と共に迫るDIOを冷めた目で見つめた。微動だにせぬその姿勢では、すぐにザ・ワールドの拳によって血を咲かせてしまうことになるだろう。だけど、DIOの攻撃が当たると思った瞬間、ニャンコ先生は煙となって消えてしまった。
「何ィッ!!?」
その不可解な現象に堪らずDIOは驚きと疑問の声を上げた。そしてそれと同時にDIOは見えない何かに押し潰されて、床に深くめり込んだ。
「クッ、スタンド能力か? いや、それならばスタンドのヴィジョンも、あの下劣な汚物も見えるはず!!」
DIOが焦燥と共に必死に身体を動かそうと身を捩じらせた。だけど、そんなDIOを嘲笑うかのように突如拘束は解除。そしてカーテンを閉めた窓のところで、ドロンと煙が上がり、再びニャンコ先生の姿が現れた。
「まさか私の本当の美しい姿を見られないほどの小物とはな。お前を喰ってやろうかと考えたが、口にしたら、あまりの不味さに腹を壊してしまいそうだ」
「何を言っている!!? この糞蝿よりも汚いゴミブタがああぁッ!!?」
「お前の霊格が低いと言っているのだ、木っ端妖怪」
「霊格だとッ!?」
その聞きなれぬ言葉に、ニャンコ先生の所に向かおうとしていたDIOの足は止まった。
「フム……お前はまだそれほど長くは生きてはおらんだろう? 霊格とは強さ。そして強さとは、どれだけ長く生きたかによるもの。それが妖モノというものだ、DIOよ。…………まあ、厳密に言えば、生きた年月だけで強さが決まるものでもないがな」
「では…………どうすれば強くなれる?」
ニャンコ先生に対する怒り、殺意全てを必死になって押さえ込み、DIOは訊ねた。無論、畜生如きに下手に出ることなど、DIOにとって到底許しがたいことである。DIOのプライドの高さを考えれば、それは当然のこと。しかし、そんな心の在り方は、DIOが最も大切としているものではない。
彼が願うのは、たった一つのシンプルなこと。勝利して支配する。ただそれだけなのだ。だから、石仮面やスタンドのように高みへと昇るものに繋がるかもしれないことを、恥辱に塗れるからといって、逃してはならない。DIOは屈辱に奥歯を噛み締めながらも、ニャンコ先生の答えを静かに待った。
「何、実に簡単な事だ。食えばいいのさ……自分よりも格の高い存在をな」
ニャンコ先生は口角を吊り上げ、しれっと答えた。その胸はこれ以上ないくらいに張り上げ、ニャンコ先生の視線は、私こそが格の高い存在だと言わんばかりに上から放たれている。その内容を見て取ったDIOは、溜まりに溜まった激情をここで晴らすかのように吼え、床を勢いよく蹴り上げた。
「いいだろう!! ならば、貴様のへちゃむくれた顔をすり潰し、その肥えた身体を引き裂いて、この帝王たるDIOの糧としてやるッッ!!!」
「だから、お前はマヌケだというのだ」
怒りで顔を歪めるDIOとは反対に、ニャンコ先生は極めて冷静に後ろのカーテンを引いた。途端に窓から、朝を告げる太陽の眩しい光が、差し込んでくる。その命を脅かすほど脅威を目の当たりにしたDIOは、両腕で顔を隠しながらザ・ワールドで床を蹴り、急いでベッドの影に隠れた。先ほどの放たれた言葉を、すぐさま否定するかのような行動。ニャンコ先生の口には思わず嘲笑が生まれた。
「情けない奴だ。夏目のような貧弱な人間でも、もう少しシャキッとしているというのに」
「ヌゥ……ッ!」
「まあ良い。お前の反応を見るに、ここにポルポルも夏目も来ておらぬのだろう? だったら、私がここにいる意味も無い。後は勝手に一人で遊んでいるが良い、DIOよ」
そう言うとニャンコ先生は窓を開け、そこからでっぷりとした身体を外に放り出した。 その場に残されたDIOはギリギリ、と歯を噛み締めた。獣如きに見下され、敵とすらも認識されなかったのだ。その事実から湧き出る思いは、烈風のようにDIOの心の中で吹き荒れ、悔しさを刻んだ。
だけど、それと同時にDIOの赤い唇は妖しく微笑んだ。吸血鬼の身体に最強のスタンド。頂(いただき)とも思えたそこには、まだ先があったのだ。そしてDIOは実感する。自らの吸血鬼としての格を高めた先にこそ、確実な勝利と支配が待っているのだ、と。DIOはニャンコ先生の身体を思い浮かべ、舌なめずりし、再び暗がりのベッドへと戻っていった。
【一日目 早朝】
【現在地 D-3 市街地 デパート 寝具売り場】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 バーンを殺す
1. 禁呪の解呪
2. 斑や他の霊格の高い存在を喰う
3. ジョースター一行を殺す
4. 有能なスタンド使いがいれば、部下にする
【備考】
※ヴァッシュはスタンド使いだと思っています
※禁呪は何かしらのスタンド能力だと思っています
【現在地 D-3 市街地】
【
斑(ニャンコ先生)@夏目友人帳】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】武器支給品、支給品一式
【思考】
基本 夏目を連れてさっさと家に帰る
1. ポルナレフと
夏目貴志を探す
2. 禁呪の解呪
最終更新:2013年03月27日 23:09