「もうやめよう。君は父さんを殺してなんかない。君なんかが父さんを殺せるはずがない」
ダイは剣を鞘に収めて、申し訳なさそうに呟いた。一時は激情に駆られて剣を取ってしまったが、相手の攻撃が全く自分に通じないと分かれば、否応にも心に余裕ができ、精神も落ち着く。そして竜闘気(ドラゴニックオーラ)を貫く手段がないことを考えてみれば、正解に辿り着くことは、そう難しくない。それがつまり、先の発言というわけだ。
「ふざけやがって。邪眼の力を舐めるなよ」
ダイと相対する飛影は、怒りを露にして応えた。確かに竜闘気を前に剣は容易く折れ、得意とする炎も僅かな傷も与えられなかった。だけど、だからといって、それで飛影の実力全てを出し切ったわけでもない。人を見下すには早いというものだ。その証拠にと、飛影は邪眼を解放し、右腕に厳重に巻いてあった包帯をほどいていく。
「もう後戻りはできんぞ。包帯の巻き方を忘れちまったからな」
右腕に現れたのは、黒い炎の龍であった。腕に巻きついている故に大きさこそ、それほどでもないが、迸るほどの熱気と妖気が少しの看過も許さない。空気はうねり、飛影の攻撃全てを遮断していた竜闘気をも押し分けて、ダイにその黒き龍の圧倒的な恐ろしさを届けてくれる。だけど、自らの実力をコケにされた飛影が、後ろに下がったダイの足だけで満足するはずもない。全てを焼き尽くすため、飛影は咆哮と共に右腕の龍を解き放った。
「喰らえ!! 邪王炎殺黒龍波!!」
飛影による頸木を失った龍は瞬時に巨大化し、その大口を開けてダイに襲い掛かった。魔界の黒き炎で形成される龍。それを呼び出すのが、飛影が誇る邪王炎殺拳の最強の奥義だ。黒龍波のあまりの威力により、大地は抉れ、山肌は無残にも削られていく。そしてその凄まじいまでの熱により、木々は瞬時に灰燼と化し、森は黒い炎の海に変貌していった。
ダイは竜闘気を全開にして、強固な鎧を身に纏い、両手で黒龍の口を抑える。一方で黒龍は苛烈なまでの火の牙を突き立て、その鎧を打ち砕かんと、島中を縦横無尽に暴れまわる。その余波で黒い炎が島を容赦なく侵食していく中、黒龍の牙も徐々に竜闘気を侵し、その鱗を剥ぎ取っていった。しかし、そこでダイが見せたのは、諦観や悲観を感じさせるものではなく、逆に瞳に決然とした輝きを持つ、頼もしい顔つきであった。
「これは父さんが使った竜の騎士の最強の呪文だ!!」
黒い龍に対して、ダイも自らの竜の顎門(あぎと)を開かせた。両手を組み、それを雄々しく前に掲げ、竜の姿をかたどらせる。更にそこに全ての竜闘気と魔法力を集中。それは竜の騎士が竜魔人となって初めて使うことのできる超威力の呪文だ。でなければ、呪文の反動に身体は耐えられない。
だけど、ダイが己の中に持つ竜は一匹だけではない。ダイは父親である
バランから受け継いだもう一匹の竜――その証である竜の紋章があるのだ。その二つを両手に持つダイの肉体の強度は、神々が作り上げた最強の騎士の最強の形態に比肩する。島の上で暴れまわる龍に向けて、ダイはその島すらも粉砕せんとする竜を解き放った。
「竜闘気砲呪文(ドルオーラ)!!」
たかだか一匹の龍が、二匹の竜に叶うはずもない。黒龍波は瞬時に消滅し、それでも収まることのないドルオーラは更に空へと到達。そしてそこにある雲の群れにも大きな穴を開け、遥か向こうの空の彼方へ飛んでいくことで、ようやくこの世から姿を消した。
「……どこまでもふざけた野郎だ」
灰となった木々を踏みつけ、黒い炎を背景にした飛影は呆れた口調で呟いた。自分でも似合わないと思う努力をして、やっとのことで身に付けた奥義がこの様だ。最早飛影の心には怒りを通り越して、驚嘆すら訪れる。しかし、それでも飛影は右腕を構え、不敵に笑ってみせた。
「炎殺黒龍波!」
「二発目? こんなに早く!?」
ダイは飛影の様子に目を剥いた。ドルオーラは全ての竜闘気と魔法力を一点に集中して放つという性質上、どうしても溜めの時間がいる。また消費する力の量も多いだけに、二発目を撃つとなると、どうしても回復の時間もいる。これでは先程のように黒龍波を消し飛ばすことは出来ない。一体どうすればいい。だけど、ダイのそういった心配をよそに、飛影は黒龍波を上空に放ち、更に落下してきたそれを不思議と自らの身体で受け止めた。
「な……ぁ…………」
思わずダイから零れ出た声に、飛影はようやく一つの溜飲を下げ、怯む相手に自らの状態の説明をした。
「黒龍波は何も敵を倒すだけの技というわけではない。これは使用者の妖気を爆発的に高める餌でもあるのさ」
そこに現れたのは、島を灰にせんと暴れまわった龍を飲み干し、その莫大な炎の妖気を完全に取り込んだ飛影であった。身体の中に納まりきらないのか、黒い炎は飛影の内から外へと迸り、その熱と存在感でダイを焼き払うかのように威嚇する。先の飛影とはくらぶべくもない桁違いの妖気の量であった。その圧倒的な差異は、とてもではないが、同じ人物とは思えない。そしてそれをダイに示すのに僅かな時間もいらなかった。次の瞬間、飛影はダイにも反応できないスピードで近づくと、ダイの顔を思い切り殴ったのだ。
「……ッつぅぅ!」
「フン、ようやく攻撃が通ったか」
飛影の呟きが示すように、ダイの口からは今までになかった血が流れ出した。そしてそれを確認すると、飛影は有無も言わさずダイを上空に蹴り上げ、さらに上からハンマーナックルで地面に弾丸のような勢いで叩き落とした。更におまけどばかりに加速をつけ、妖気を纏ったニードロップをダイの腹にくらわし、地響きを起こすほどの大きなクレーターを作り上げる。どう見ても過剰な攻撃だが、血溜まりに伏すダイに向かって、飛影はさも当然のように言い放った。
「立て……どうせ大して効いちゃいないんだろう? 次で決着をつけてやる」
それを耳にしたダイは膝を支えに、ようやく起き上がった。その身にはダメージはあるものの、確かに深刻なものとは言えない。戦闘の続行は十分に可能なものだろう。だけどここに至って、ダイは何故闘っているんだろうという疑問が頭にちらついていた。
相手の実力は確かなものだが、それでも竜魔人となったバランを倒せるとは思えない。また仮に勝てたとしても、無傷で何の消耗もなしにというのは天地がひっくり返っても有り得ないことだろう。以上のことから、飛影がバランを殺したというのは、完全に誤解である。であるのならば、この闘いに意味なんか全くない。ダイはこの無益な闘いを止めるべく、謝罪の言葉を口にした。
「君を疑ってかかったこと、剣を向けたことは謝るよ……ごめん。だから、もうやめにしよう。こんなことをしても、バーンが喜ぶだけだよ」
「まさか幽助以上にムカつく奴がいるとはな」
ダイの言葉に、飛影は頭に血を上らせた。父親であるバランとやらの死体を前に挑発をし、喧嘩を売ったは間違いなく自分だ。それなのに相手は自らを過ちとし、頭を下げた。その姿こそ滑稽なものであるが、その内にある感情を読み取れば、事は違ってくる。
消費を顧みず、この勝負に全身全霊をかけた飛影。それを謝って無かったことにするなど、飛影という存在の全否定でしかない。要するにダイはその思惑はどうあれ、飛影を無価値と断じてしまったのだ。当然、飛影からしてみれば、そんな所業許せるはずも無い。
「確か貴様は一番最初に他のガキどもと騒いでいた奴だな。……かかってこい。でなければ、貴様と一緒にいたガキを殺す」
飛影の怒りの口調に疑問の顔を見せたダイに向かって、飛影は更なる怒気を込めて挑発を行った。開幕で見せたダイの姿を思い浮かべれば、彼は飛影にとって反吐が出るほどいけ好かない善人だ。そしてそういう奴に限って言えば、他者の犠牲を嫌う傾向がある。これでダイは自分に向かってこざるを得ないだろう。そして予想通りというか、それとも予想外とも言うべきか、ダイの口からはすんなりと了承の声が発せられてきた。
「……分かった。君との勝負、受けて立つよ」
そう言って、ダイは自らの剣を鞘から取り出して、それを逆手に後ろで構えた。飛影の台詞を聞いて、ダイの脳裏に思い起こされたのは宿敵
ハドラーの姿であった。言葉の内容こそ、確かに清廉とは無縁のふざけた代物である。だけどそれとは裏腹に、飛影の戦闘は正面から真っ直ぐぶつかってくるという卑怯とはほど遠いものであった。
どんな手段を使ってでもと勝利することに執着するのではなく、戦闘とその過程に何かしらの美学を持ち、価値を見出す。ここで何が何でも真正面からぶつかり、闘おうとする飛影の姿勢は、風前の灯火であった命の全てを自分に向けてきたハドラーと同様のものであった。そしてそんな飛影の思いを無視しては、男が廃るような気がする。ダイは残る竜闘気を全開にして、バーンパレスでハドラーと対峙した時のように、自分のありったけを飛影にぶつけることにした。
ダイの剣に闘気が集中していく様を見て取ると、飛影はおもむろに折れた剣を拾い上げた。そしてそれを媒介として、飛影も妖気と魔界の黒い炎を混ぜ合わせた剣を作り上げる。ダイの纏う竜闘気の鎧が堅牢な以上、それを貫き、倒すに至るにはどうしても今と隔絶した力が要る。それ対して飛影が出した答えが、自分の全ての妖気と炎を一点に集中させた邪王炎殺剣であった。
オーラブレード。飛影の剣を見て、ダイは今は亡き友ノヴァの技を思い出した。だがしかし、飛影が作り上げたのは、ノヴァのがチンケと思えるほどの莫大な気の固まりであった。更にそこにはハドラーの超魔爆炎覇のように炎を剣に集約させ、威力を乗算するように増大させている。それを喰らったら、一たまりも無い。二つの竜の紋章――双竜紋を持つダイでさえ、邪王炎殺剣を前に確かな死を感じ取った。
「アバンストラッシュ・A(アロー)!!」
やがて迫る死を振り払うかのように、ダイは闘気が込められた剣を振るった。そこに闘気を残した剣閃は、たちまち矢のように放たれ、飛影に襲い掛かる。だけど、当の飛影はそれを僅かに一瞥するだけで、視線をダイに固定した。
アバンストラッシュと叫ばれた攻撃には、自分を倒せるだけの威力は無い。ならば、これは牽制や誘引を目的としたもの。次の攻撃こそ、本命のものだ。それを確信した飛影はダイの一挙一動を見逃すまいと、アバンストラッシュ・Aを限界ギリギリまで引き付け、細心の注意を注いだ。
「アバンストラッシュ・B(ブレイク)!!」
その掛け声と共に、ダイは飛影の目の前にはいきなり現れた。何の予備動作も無く、何ら移動の軌跡すら残さず、飛影の理解を超えて、ダイは必殺の機を作る。それこそが飛影の身の軽さに全く追いつけないダイが、飛影に勝ることのできるスピードを得られる唯一の方法――瞬間移動呪文(ルーラ)であった。そしてダイはアローの刃にブレイクの刃を交差させるように、剣に全体重を乗せて飛影に振り下ろした。
「アバンストラッシュ・X(クロス)!!!」
完全に虚を衝かれた飛影だが、それでも持ち前の速さで邪王炎殺剣を盾としてダイの剣の前に掲げる。双竜紋の竜闘気を切り裂き、ダイを屠ることすら出来る邪王炎殺剣である。攻撃を受け止めることにも、何ら難はない。しかしダイの技とて、単にお遊びで放ったものではない。
二つの必殺技であるアバンストラッシュの掛け合わせ。その交差点の威力は通常ストラッシュの5倍以上。更にはハドラーの時とは違い、二つの竜の紋章を持った状態である。その常軌を逸した技の前に、邪王炎殺剣は真っ二つにされ、飛影はその胸に血が飛び出るほどの深い十字傷を負わされ、地面に音を立てて倒れた。
そしてキルバーンの心を込めたプレゼントが贈られる。直接参加者に害をなしては、主催者たる大魔王バーンの思惑に反する。故にそれはダイたちを、傷つけるものではない。しかし、真綿が首を絞めるようにゆっくりとダイを苦しめることは確かである。何故なら、そのプレゼントの贈り主はキルバーンなのだから。
突如として、島の空に映写機のようにダイと飛影が映しだされ、二人の鮮血の結末を島の全参加者に知らせた。開幕において、バーンへ毅然と反抗の意を示し、その力強さで皆に希望を持たせたダイ。だがしかし、キルバーンの「好意」により、ダイは危険なマーダーとして、その「事実」を届けられることとなったのだ。
【一日目 早朝】
【現在地 C-7】
【ダイ@DRAGON QUEST-ダイの大冒険】
【状態】疲労(大)、魔法力消費(大)、右瞼に切り傷、胴体に打撲
【装備】ダイの剣@DRAGON QUEST-ダイの大冒険
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 殺し合いの打破
1.
ポップを探す
2. 協力者を探す
【備考】
※人間相手には極力戦闘を行わないつもりです
※キルバーンのトラップには気づいていません
【飛影@幽遊白書】
【状態】疲労(極大)、妖力消費(極大)、胸に十字傷、瀕死
【装備】なし
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 強者と出会ったら戦う
1. ……
2. バーンを殺す
【備考】
※
アミバをトキだと思っています
※C-6、C-7、D-6は魔界の黒い炎で炎上中です
最終更新:2013年02月17日 22:22