アットウィキロゴ
彼女は死んだ筈だ。その筈だった。だけど、母であるプレシア・テスタロッサは生きていた。その事実は、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを喜ばせるのに十分なものだった。勿論、そこには困惑はあった。生きていたことを含め、またもや犯罪に手を染めているのだ。戸惑いがないわけではない。悲しみがないわけではない。でも、それでもやっぱり喜びが勝ってしまうのだ。


プレシアが虚数空間に落ちていった時、自ら伸ばした手は彼女に届くことがなかった。大切な母が死に行くのを、ただ徒に眺めているしかなかった。だけど、再び自分の手を母であるプレシアに伸ばすことができるチャンスが巡ってきたのだ。


殺人や、その強要は確かに重犯罪だ。死んだ人の遺族や友人たちは、その罪を許すことはないだろう。でも、罪は贖えるものなのだ。フェイトには、それがいつまで掛かるか分からないし、それがどれだけ困難なものかは知らない。それでもお互いに支え合っていけば、きっと大丈夫。


「だって……私たちは親子なんだから」


フェイトは、プレシアとの確かな絆にほんのりと笑みを浮かべ、この殺し合いという事件を迅速に解決するための力強い一歩を踏み出した。



      ――

   ――――

     ――――――――



しく、しく、しく、と涙に濡れた声が聞こえてくるのを、フェイトは耳にした。そこに目を向けてみれば、一人の老女が崩れるように座り込み、泣いている。恐らくはこの事件に巻き込まれた被害者なのだろう。そう当たりをつけたフェイトは、早速彼女を保護すべく、声をかけた。


「時空管理局所属のフェイト・T・ハラオウンです。あの、大丈夫ですか? もし怪我をしているようでしたら、簡単な応急処置ぐらいならできますし、病院までの付き添いもしますが?」

「……お嬢ちゃん、優しいんだね。わたしゃ、大丈夫じゃよ」


どうやら負傷はしていないようだ。その事実にフェイトは安堵する。だけど、それなら一体何故泣いているのだろうか。泣き崩れる老人を放って置くことなどはできないし、フェイトは彼女の涙を拭うためにも、その理由を訊ねてみた。


「そうですか。安心しました。ですけど、それでしたら、どうして泣いているんですか?」

「それはだね、私の尊敬する大事な人が、こんな下らないことに巻き込まれてしまったからじゃよ」

「……そうですか」


チクリ、とフェイトの心は針で刺されたように痛んだ。こんな事件など、あずかり知らぬことだったとはいえ、自分の母が関わっていることに間違いはないのだ。プレシアの凶行をフェイトに止めることができた可能性など、ゼロに等しい。だけど、親子という他人ではない繋がりがある故に、その可能性は決してゼロではない。プレシアを止めるチャンスは、過去の中にきっとあったはずだ。そのことに思いを馳せると、フェイトは人知れず罪悪感を覚えた。


「それだけじゃないんだ。私の愛する息子を殺した仇が、のうのうと生きているんじゃよ」


老女は悲しそうに言葉を続けた。もしかしたら殺された息子というのが、プレシアの魔法の雷撃を受けた青年かもしれない。さすがにそのことを訊く勇気は持てなかったが、代わりにフェイトは老女に深い共感を覚えた。



大切な人の喪失。



老女が息子が失ったように、フェイトも母を失った経験がある。結果的に母であるプレシアの生存は確認できることになったが、あの時に感じた言い様のない悲しみを今でもフェイトは覚えている。それにフェイトも尊敬すべき大事な友人が、この事件に巻き込まれていることだって、目の前の老女と同じとも言える。


絶望の淵に立たされた時、自分はどうやってそこからちゃんとした場所に帰ってくることができたか。フェイトがその答えに真っ先に思いついたのが、友人の存在だった。当初は敵対していた高町なのはだったけれど、彼女はいつでも相手のことを考え、真摯に向き合ってくれてきた。彼女の言葉があったからこそ、彼女がいたからこそ、今の自分は道を迷わずに前を向いて進んでいられる。



だから、老女にも自分と同じようにちゃんと立ってもらおうと、フェイトは一生懸命言葉を探して、声をかけた。



「私にも、その気持ちは分かりま……」

「……分かるわきゃねえだろうがぁぁーー!!! このクサレガキャアア!!!」


その豹変は一瞬だった。泣いていただろう顔は鬼のような形相と成り変わり、挙げ句の果てに振り向き様に手に持っていたハサミを横に薙いだのだ。その変わりようには、さすがのフェイトとはいえ、驚きの余り行動に遅れが生じる。老女の肩に優しく置こうとしたフェイトの手は、物の見事に血に塗れることとなった。


「つぅっ! 何のつもりですか!?」


右手に生じる痛みに顔を歪めながらも、最後まで迎撃の考えを後ろに追いやって、老女に訊ねた。それは本当に相手を思いやっていたという何よりもの証左だろう。だけど、そんなフェイトに返ってきた答えは実に痛烈なものだった。


「キィエェェーーーーーーーー!!!」


妙な叫び声と共に老女は再びハサミを振りかぶってきたのだ。だが二撃目ともなると、フェイトは幾らかの余裕を持つことができた。愛用のデバイス、バルディッシュを起動し、一瞬にしてバリアジャケットを纏い、高速移動魔法を展開。目にも止まらぬ速さで老女の背後に回ったフェイトは、大鎌と化したバルディッシュを目の前の相手の首下に置いた。


「少し落ち着いた方がいいかもしれません。そのためにも、申し訳ありませんが、あなたを拘束させていただきます」


こんな結果になったことを残念に思いながらも、フェイトは拘束魔法のプログラムを構築し、その発動の準備にかかった。こんな非日常的な殺し合いという状況を考慮に入れる必要があるとはいえ、今の老女は周りに対して危険だということには変わりないのだ。そのまま放っておけなどはできない。しかし結局の所、フェイトのそんな気遣いは無駄なものだった。


「それがお前さんの能力かい? 成る程、たいしたもんじゃよ」


それは老女の言葉だった。静かで、重みのある、凛とした声。そこにはつい先ほどの錯乱の様子は見て取れない。ひょっとして平静を取り戻してくれたのだろうか。そう思って、フェイトはバルディッシュをほんの少しだけ、老女から離した。そして、その瞬間だった。


「だけどなああ!! そんなチンケな能力でなぁああ!! この正義(ジャスティス)に勝てるわきゃあねえぇだろうがっ!!!」


老女が再び激高したのだ。しかも変化は彼女だけに訪れたものではない。恐るべきことに、フェイト自身にもそれはやってきたのだ。


「なっ!? これは!?」


フェイトは自分の目を疑った。先ほど手傷を負った右手の部分から煙が生じ、傷が広がってきているのだ。防護服として機能するバリアジャケットの存在すらを無視して、その進行は止まない。そして程なくフェイトの右手には、ぽっかりと向こうを見渡せるほどの大きな穴が出来上がった。


「ほんのちょっぴりじゃよ!! ほんのちょっぴり傷をつけるだけで、いいのさぁーーーー!!」

「こ、これはあなた仕業ですか!!?」


堪らずフェイトは疑問の声を投げつけた。失血死すら危ぶまれる大きな傷なのに、そこには痛みや出血がないのだ。その不可解な現象から来る恐怖は、フェイトの行動を縛って止まない。勿論、それではより危険なことにも繋がりかねない。故にその感情を払拭するためにも、早急に傷の答えが欲しかったのだ。


だけど、老女が与えた答えは、また不可解の皺をフェイトに刻んだ。自分の意志とは無関係にいきなりフェイトの右手が動き出し、手に持っていたバルディッシュを遠くに放り投げてしまったのだ。そしてそれと共に、バルディッシュを起点にして発動していた各種魔法は霧散。バリアジャケットも塵となって消えてしまった。


「え? え? え?」

「ケエエェェェエエエエーーーーー!!!」


フェイトが驚いているところに、すかさず老女はハサミを持って、それをフェイトの腹へ突き立てた。咄嗟に動こうとしたフェイトの身体も、また自分の意志とは離れた右手によって、妨害される。最早フェイトはただ老女の攻撃を、その身で受けるより他なかった。


「このメスブタがぁ!! J.ガイルより可愛い子が他にいるかっ!! DIO様より偉大な方が他にいるかっっ!!! それなのに何故おまえにっっっ!! 私の気持ちが分かるというんじゃあああーーーーーーーッ!!!!!」


狂乱。


その言葉を表すかのように老女は、何度も何度もフェイトの身体にハサミを突き刺した。血は跳ね返り、肉は飛び散り、その場は凄惨の様相をきたす。しかしそれでも老女は満足などせず、フェイトの内臓をかき回し、腸を引きずり出し、フェイトの中にあった全てのものを辺りにぶちまけた。フェイトの悲鳴、抵抗、怒声、哀願、その全てを踏み潰し、老女はフェイトの命を惨たらしく奪っていったのだ。


「ハァー、ハァー……」


大粒の汗を身体中に浮かせ、息も絶え絶えに老女は喘ぐ。そしてその目に無残な姿に変わり果てた死体が映し出される。だけど、そこに歓喜はない、悲哀はない。フェイトを殺したというのに、そこにはいまだ変わらぬ沸き立つ怒りの感情があるだけだった。唯一無二の息子に比肩することすらおこがましい王を、どこかの馬の骨と同列に並べるという愚挙を犯した人間に制裁は行ったが、その二人に直接危害を加えた奴らがまだ生きているのだ。


「DIO様、あなたは偉大な王となられる方じゃ。王は自ら動くことはありません。あなたの前に転がる石などは、全ては部下にまかせればいいのですじゃ。このエンヤ婆が、その全てを払ってやりますゆえ。そしてポルナレフ!! 私の可愛いJ.ガイルを殺したおまえだけはこの私が絶ッッッッッッ対にぶち殺してくれる!!!」


その宣言と同時にフェイトの死体から霧が昇り始め、やがて死んだはずの彼女がするりと立ち上がった。その身体の至るところには、右手と同じような穴が開き、既に彼女の内には命がないことを知らせてくれている。だけど、フェイトは動くはずのない身体を、生があるかのように軽やかに動かしていた。


「さて、そろそろいくかね。DIO様に害を為す者、為そうとする者、そんな者は全て早急に根絶やしにしなくてはならんからのぉ」


ようやく息を落ち着けたエンヤ婆は、腰を持ち上げる。だけど、気に食わないところがあったのだろう。足元に落ちていた木の棒を拾い、それで苛立たしげにフェイトを叩いた。


「さっさと返事をし!!」

「はハ……はハイ!」


死んだ筈のフェイトはエンヤ婆に返事をし、エンヤ婆の後を歩き始める。しかし、それも気に入らなかったのだろう。エンヤ婆は再び棒でフェイトの顔をしたたかに打ち付けた。


「荷物も持つんだよ!! このグズが!!」

「は……ハイ!」


フェイトはすぐさま自分とエンヤ婆のバッグを手に持ち、明朗に返事をした。それにようやく満足したエンヤ婆は、フェイトを連れて暗闇の中を歩き出す。その歩みに迷いはない。いつの間にか辺りに立ち込めていた濃い霧も相まって、視界などおぼつかない。だけど、エンヤ婆はそれに気兼ねすることなく、するりするりと歩を進めていった。そしてそんな彼女らを、空に浮かぶ髑髏のような大きな霧が、笑みと共に見つめていた。



【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは A's 死亡】



【一日目 深夜】
【現在地 D-7 西側】
エンヤ@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】健康、憎しみと怒りで心が一杯
【装備】ハサミ@ジョジョの奇妙な冒険、木の棒(現地調達)
【道具】なし
【思考】
 基本 DIO様に組するもの以外は皆殺し
 1. 殺す
 2. ポルナレフは絶対に殺す
 3. ジョースターの家系も根絶やしにする
【備考】
※正義(ジャスティス)でフェイトの死体を操っています
※フェイトが使った魔法はスタンド能力だと思っています
※バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのは A's はD-7の西側に落ちています


【フェイト・T・ハラオウン(死体)@魔法少女リリカルなのは A's】
【状態】死体、穴だらけ
【装備】なし
【道具】ランダム支給品×2、支給品一式×2
【思考】なし



【支給品説明】
  • ハサミ
原作でエンヤが振り回していた普通のハサミ。

  • バルディッシュ・アサルト
いわゆる魔法の杖。しかしその実態は、鎌、剣、大剣になったりする危険な武器。



00:Highway to Hell <BACK    NEXT> 02:Wonderwall
エンヤ 37:Rolling in the Deep
フェイト・テスタロッサ Game Over


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年04月15日 01:00