クソッタレ!
どうしておれの身には、こんなことばかりが起こる。心に募るのは、理不尽な運命への罵倒ばかり。それが情けないことだってのは分かる。でも、それだってしょうがないだろう。あんなことが起これば、誰だっておれと同じ道を辿るはずだ。例えその先にろくでもない何かが待っているかを知っていたとしてもだ。
聞こえてきたのは足音二つ。そしてその数を否定するように呼吸音が一つだけ。おれはその現象がどうやって成されるかを、誰によって成されるかを、嫌というほど知り尽くしていた。だからおれはそれを耳にすると、素早くその音から遠ざかるように足の向きを変えた。だけど、おれのそのちっぽけな反抗は悲しいぐらい無意味に終わってしまった。
音が離れないのだ。確かに深い霧が立ち込め、視界はろくに確保できない。道に迷うこともあるだろう。しかし、それでも音の発生源を認識しているのだから、それから距離を取るのは容易なはず。そのはずなのだが、霧を間を歩いていると、何故かいつのまに音源に向かって歩いているのだ。そのことに再びあのイカレ野郎の顔を思い浮かべてしまったおれには、最早投げた匙を拾うだけの力は持てなかった。
その邂逅に、おれはほんの少し安堵を覚えた。対面したのが、あの悪魔でなかったからだ。だけど、おれがまた絶望に陥るのには、そう時間がかからなかった。結局の所、目の前にいたのも、悪魔の一人だったからだ。
しがわれた肌に腰の曲がった老婆と十にも満たない少女など、恐れるに足らない。銃を構えれば、一秒と経たずに殺せる自信はある。だけど、肝心なその動作に移ることができない。汗は滝のように流れ、手は厳寒の夜に打ち捨てられた子犬のように震える。恐い。怖いのだ。
大きく見開いた老婆の目は、どうしても戦慄を覚えてしまう。他者をその瞳に映さず、かといってそこには光がないわけではない。ギラリ、と妄執とも言える濁った輝きを爛々と放つその目は、間違いなく
レガート・ブルーサマーズと同じものだ。そしてその目を持った者が行き着く先を、おれは既に身をもって経験している。
ああ……もしかしたら、おれは勝てるかもしれない。その可能性は決してゼロじゃないだろう。だが、失敗したらどうなる? そもそも奴は銃で死ぬのか? 銃弾如きで、あの禍々しい目の光を消せるのか? そう何度も奇跡が起きると思えるほど、おれはめでたい奴じゃない。
しくじれば、この身に降りかかるのは、間違いなく死だ。そう、人生の終焉だ。
あまりに濃厚に迫るそれらを前にして、おれは情けなくも指一本動かすことすらできなかった。おれは目の前の今にも死にそうなババア一人にすら、勝利するイメージできなかった。だけど、このままで救われるというものではない。どの道を選んでも、結局の所、死が待っているだけなのだ。それならば、最後は少しぐらいババアを驚かしたっていいだろう。
そしておれは諦観の境地のまま、幾つもの殺人を重ねてきた愛用のサックスに息を吹き込んだ。サックスからは秒速340mの音が、衝撃波となって敵に襲い掛かる。それは実質、防御不可能な攻撃。威力も、ビルを容易に破壊するほどのものだ。相手は、ただの人間なら死ぬことに間違いはない。だけど案の定、やっぱりババアは生きていた。
それはババアが人間じゃないからか? それに対する答えは、残念ながらおれには分からない。でも、ババアが何故生きていたという質問には答えられる。おれの攻撃は、僅か一瞬にも満たぬ内に終わってしまったからだ。
ああ、クソッタレ! どうせ死ぬなら、ちゃんとそこで攻撃を完成させておけば良かった。
それなら、今ほど後悔はしなかっただろう。だけど、それが分かっていたとしても、おれはあの時、攻撃を続けられていただろうか? 分かっている。答えなど、分かりきっている。できっこない。できるはずがない。全てを破壊する嫌な音。前にあるものを全て押し潰しながらも、僅かに減速することなく突き進む暴虐の破壊音。あの瞬間、おれの真後ろを膨大な光と音が、駆け抜けていったのだ。
音が消え去り、自分が無事に生きていたことに、ホッと安堵の息を漏らす。でも、そのひと時は、夢のように儚く消え去った。さっきまでそこにあった森と霧と大地が、綺麗さっぱり無くなっているのだ。視界を覆っていた鬱蒼とした木々と濃霧の代わりに、今は遠くの砂浜が見通せるほど見晴らしが広がっている。一瞬にして行われる景観の消失など、誰が信じられようか。それが例え目の前に否定できぬ事実として転がっていたとしても、そう受け入れられるものではない。
だけど悲しいかな、おれは受け入れてしまった。受け入れることができたのだ。その人間を遥かに超越した現象を引き起こせる存在を知っていたのだから。そして同時におれの心は暗い絶望によって塗り固められた。
こんな奴を相手にどうすればいいのだ。そしてそいつをいとも容易く箱庭に閉じ込めた奴相手に何をすればいいのだ。答えなんか見つかるはずもない。おれは人間なのだ。銃弾が当たれば死んでしまうか弱い人間なのだ。そんなおれがあんな化物共の相手など、一瞬たりともつとめられるはずもない。もうおれの人生はここで終わってしまったのだ。そんな真理に辿り着いて、おれの身体は穴が開いた風船のように力を失っていった。
ふと、左足に痛みを感じた。見てみれば、ババアの隣にいた少女がいつの間にかハサミをおれの脚に突き立てている。もうどでもいい。そう思っていたが、やはり痛みを覚えると、死を忌避してしまうものだ。我が身可愛さ故の気持ちの移ろいに苦笑しながら、おれはガキを殴り飛ばした。
だけど残念なことに、おれの生きるための足掻きはそこで終わってしまった。怪我をした左足から煙が生じ、再び立ち込めた霧と一体化しているのだ。一体、何が起こっている。次いで出る疑問。そしてそれに答えるかのように、おれの左足が勝手に動き、おれの顔に膝蹴りを加えてきやがった。
「……恐るべきスタンドパワー。これは危険じゃ。もし
DIO様にこの力が及ぶとしたら…………万が一ということもありえる。早急にこのエンヤ婆が排除せねばならんじゃろう」
唇と鼻から血を垂れ流すおれを横に、ババアは破壊の跡を眺めながら、そんなことを言いやがった。ひょっとしておれは見逃してもらえるのか。遠くにいる破壊の下手人相手に呟く姿を見て、おれは希望の芽が僅かに出てきたのを感じた。だけど次の瞬間、ババアはおれの方を向いて嫌らしく笑いやがった。
「じゃが、その前に正義(ジャスティス)が、おまえとダンスを踊りたいとさ」
クソッタレ!
【一日目 黎明】
【現在地 D-7】
【
ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク@トライガン・マキシマム】
【状態】右手小指、薬指骨折、左足刺傷、唇裂傷、鼻血ダラダラ、ナイブズへの恐怖、
エンヤへの恐怖、生への絶望
【装備】ミッドバレイのサックス@トライガン・マキシマム
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 この地獄から逃げのびたい
1. ナイブズとレガートと距離を取る
2. ヴァッシュを苦しめる
【エンヤ@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】健康、憎しみと怒りで心が一杯
【装備】木の棒(現地調達)
【道具】なし
【思考】
基本 DIO様に組するもの以外は皆殺し
1. 大地を消し飛ばした相手を殺す
2. ポルナレフは絶対に殺す
3. ジョースターの家系も根絶やしにする
【備考】
※正義(ジャスティス)でフェイトの死体を操っています
【
フェイト・T・ハラオウン(死体)@魔法少女リリカルなのは A's】
【状態】死体、穴だらけ
【装備】ハサミ@ジョジョの奇妙な冒険
【道具】ランダム支給品×2、支給品一式×2
【支給品説明】
ッドバレイ・ホーンスリークの武器である楽器。凄まじい音量、音域を持つ。音楽を奏でると、ビルの外壁やコンクリートなど物体を破壊するほどの衝撃波を放つことができる。また機関銃を内蔵している。
最終更新:2012年05月12日 00:18