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スパーン!
と、浦飯の軽い頭が軽快な音を鳴らした。
拡声器でDIOの言伝を叫んでいると、それを聞きつけた幻海がやってきて、
浦飯の頭を怒声と共に叩いたのである。


「何をやっているんだい!! このバカタレが!!」

「ってーな!! このクソババア!! いきなり何すんだよ!?」

「あんたの声につられて戸愚呂がやって来たら、どうするつもりだったって訊いてんだよ!!
そんなチッポケな霊力で勝てると思ってたのかい!? このマヌケがッ!!」

「ああ!? あんだけのことをして、まだ足りねえってのかよ!?」

「そうだよ。今のままのだったら、お前は100%戸愚呂に負ける。だから、その汚いツラ貸しな」

「一体何すんだよ、ババア?」

「これよりお前に最後の試練を与える」

「…………はあ?」


浦飯の疑問の声を無視して、幻海は両の手の平を胸に掲げ、そこに自らの霊気の固まりを練り上げた。


「霊気を極限までに凝縮した霊光玉。正直言って、お前にこれを渡すのは十年早いと思っている。
例え類稀な才能があったとしてもだ。この太陽のようなエネルギーを受け入れるだけの器がお前になければ、
その肉体は崩壊し、最悪の場合には死に至る。お前にこれを受け入れるだけの、覚悟はあるかい?」


眩しいくらいの霊波動の輝きを作り出し、僅かな弛緩さえ許さない荘厳さを作り出す幻海。
しかしそんな彼女に向かって、浦飯は心底バカにしたような台詞を事も無げに言い放った。


「……おいおい、勘弁してくれよ、ばあさん。とうとうボケちまったか?」

「…………確かに誰かの掌の上であるこの下らないゲームでするようなことじゃないかもしれないが……」

「いやいや、そうじゃねえよ、クソババア!! もう受け取っただろうが、それ!!
幾ら俺でも、あの死ぬような痛みを忘れるもんじゃねえぞ!!」

「…………はあ?」


今度は幻海が疑問を口から吐き出す番だった。
とはいえ、その答えを安直に目の前の馬鹿に求めるほど、彼女は愚かではない。
幻海は浦飯の言が正しいかどうかを確かめるため、彼の潜在エネルギーの量を探った。


「これはッ……!!!」


驚愕が声となって漏れ出る。
幻海が知っている浦飯を遥かに超えた霊気を、その浦飯が持っていたのだ。
有り得ない事だ。これをほどの成長は、十年にも及ぶ修行を積んで尚、届けるかどうかというもの。
それほどの高みに浦飯はいる。だけど幸か不幸か、幻海は短期間でそこに到達できる方法を知っていた。
即ち、自らの手元にある霊光玉である。


一つの疑問は解消できた。だが、同時にもう一つの疑問が生まれ出る。
一体、誰から、いつ、霊光玉を受け取ったかということだ。
確かに浦飯の言葉、霊力からして霊光玉を受け取ったことは間違いないだろう。
しかし、それを渡すはずだった幻海にそんな記憶など無いし、彼女の霊力にも霊光玉継承による翳りが僅かにも見られない。
両者におけるこの妙な差異は、何から生じるものだろうか。


「ゴホン、ゴホン」


幻海が頭を悩ませていると、彼女の同行者であったジョセフが、わざとらしく咳払いをして、二人の間に入ってきた。


「え~、そこの浦飯君じゃったかな? 話が込み入っている所、悪いんじゃが、ちょっといいかな?
DIOがD-3の市街地で人を呼んでいるっていうのは、本当かのう?」

「ああ、本当だぜ、ジイさん!」

「ふ~む」


ジョセフも顎に手をやり、頭を悩ませ始めた。
ハーミットパープルの念写を妨害し、自らの居場所を隠し続けてきたDIOが、
この段になって場所を指定して、人を集めているという。
その目的は何だろうか。そこに善意を期待するのは、どう考えても無理なことであろう。
であるならば、人が集まる前に、悪意によって害が広まる前に、早期にDIOを倒しておきたいところだ。


「おい、ジイさん」


ジョセフの思考を邪魔するように、浦飯が声をかけてきた。


「何かな、浦飯君?」

「ジイさんの名前は何つーんだ? 確かDIO様がジョースターのジジイは邪魔だから、始末しとけって言われてたんだよ」

「ほう……そういうおまえさんはDIOの何なんじゃ?」

「部下の一人さ」

「そうか。じゃあ、安心しとけ。ワシの名前はアーカードじゃ」


ジョセフは何の気兼ねもなく、偽名を名乗り上げた。


「そっか。安心したつーか、何つーか……DIO様のためとはいえ、ジジイを殴るつーのは、どうにも気乗りしなかったからな」

「そいつは良かったのう」

「ああ! それとさっき出会ったババアから聞いとけっていわれたんだけど、今の西暦と出身地を教えてくんねえか」

「それは別に構わんが……何か意味があるのか?」

「さあ? よく分かんねーけど、あるんじゃねえか?」

「何じゃ、そりゃ」


愚痴を零しつつ、ジョセフは律儀に答える。
しかし、それを否定するように続いて聞こえてきた幻海の答え。
両者がそれぞれの年代の違いに首を傾け、顔を見合わせていると、浦飯はサンキューと言い残して、スタコラサッサと去っていった。


「どうやら私達の間には時間のズレがあるようだね」 


おもむろに幻海は呟いた。
ジョセフとの年代の違い、そして霊光玉の継承について起きた浦飯の如実な差異。
そういったことは、幻海に時間のズレという非常識な事実を実にあっさりと認識させた。


「そうみたいじゃが、そんな簡単に納得できるもんか? 単なる勘違いとかじゃろう?」


常識にはかり、ジョセフは否定の句を告げてみる。


「あの馬鹿は確かに霊光玉を受け取っていた。それを勘違いするほど、わたしは耄碌しちゃいないよ」

「……そうか」


ぶっちゃけ意味不明である。
ジョセフにとって、霊光玉が何を意味するか、さっぱり分からないので、理解できるはずもない。
ただ只者ではない老女が確信をもって言っていることなのだ。
ジョセフもその時間のズレを、そのまま受け入れるまではしないものの、
頭の隅に留めてみることにはした。


「それはそうと」と、ジョセフは思い出したかのように口を開く。「あの坊主は追いかけなくていいのか? 探していたんじゃろう?」

「あの馬鹿にとっちゃ、わたしはもう用済みさ」

「さて、それはどうかのう?」

「どういう意味だい?」

「DIOのことは、もう話したじゃろう?」

「吸血鬼のことかい? わたしは興味ないよ」

「あの坊主、随分とDIOにご執心じゃったろう? 確認しとくが、前からあんな感じじゃったか?」

「いや……そういえば、随分と気味が悪い有様だったね。それがどうかしたかい?」

「ありゃDIOに操られておるぞ。額のところに妙な吹き出物があったじゃろう?
あれは肉の芽と呼ばれるDIOの細胞の一つじゃ。あれが埋め込まれたものは、DIOへの絶対の忠誠を誓うことになる」

「フン…………それに気がついていて、あの馬鹿をわざわざ見逃したっていうのかい? 中々良い性格をしているじゃないか、クソジジイ」

「あれはお前さんの弟子じゃろう? お互い自分のケツは自分で拭くって言わなかったか?
それにじゃ、肉の芽はワシでは取り除くことは出来ん。いや、恐らく誰にも…………たった一人、ワシの孫を除いてな」

「呆れたよ。ここにきて孫自慢かい?」

「そういうわけではなくてな、あの肉の芽は生きているんじゃよ。取り外そうとかかったら、触手を伸ばして襲い掛かってくる。
それだけなら、まあ、バアさんでも対処は可能じゃろうが、肉の芽は厄介なことに、細い針のようなものを脳へ伸ばしおる。
下手な刺激を加えたら、植えつけられた者の脳までも傷をつける厄介な代物。だから、あれを取り除くには、どんな状況にあっても、
冷静に、精確に、素早く異物を嫡出する技術が必要なんじゃよ。だから、ワシにはどうにも出来んかった。すまんな、バアさん」

「別にお前さんが謝ることじゃないさね。そんなものが植えつけられたとしたら、間違いなくあの馬鹿の責任。どうにでもなりな」

「では、あのままにして放っておくのか? それはちと冷たすぎやしないか?」

「……誰にも取り除けないんだろう?」

「まあ、そうじゃが……バアさん、一つ提案あるんじゃが、いいか?」

「言うだけ言ってみな」

「ワシはこのままDIOの所に向かう。それが元々の目的でもあるし、道中にも幸いなことに仲間がおるしのう。
それでワシが危惧するのは、闘いの最中にDIOの部下が邪魔しにくるということじゃ。
そしてその部下というのは、言わずもがなじゃろう?」

「……わたしにあの馬鹿の相手をしてろってわけかい?」

「まあ、そうじゃな。知らん仲というわけでもないし、構わんじゃろう?」

「一つ訊くが、DIOって奴を倒して大丈夫なのかい? 肉の芽ってやつは、そいつの細胞なんだろう?」

「分からん。何分、前例がないことだしのう…………まあ、大丈夫なんじゃないか?」

「フン、まあいいよ……この分じゃ戸愚呂の方も私の知っている戸愚呂か妖しくなってきたしね。
それにあの馬鹿の薄ら笑いは気味が悪いったらありゃしない…………要するにあのマヌケ面を殴っときゃいいんだろう?」

「いや、そこまでは言っとらんが、まあ、そうじゃのう……よろしく頼む」


その言葉を最後に二人は背を向け合う。
目的地が違ってくれば、もうお互いが同じ方向に進む必要はない。
そして二人は何の感傷もなく歩を進め始めた。


「そういえば」と、唐突に幻海は背にいるジョセフに話しかけた。「あんたの名前はアーカードっだったかい?」

「おや、言っとらんかったか? ワシの名前はジョセフ・ジョースターじゃよ」

「本当にいい性格をしているじゃないか、クソジジイ」


ジョセフはニカッと笑顔を浮かべて、口を開く。
しかし、それに割って入るように幻海の言葉が、急遽響き渡った。


「次にお前は、それはお互い様じゃろう、クソババア、と言う」

「それはお互い様じゃろう、クソババア…………ハッ!!!」

「それじゃあな、ジョセフ。精々長生きしなよ」


小さな背を見せ、別れの挨拶とばかりに軽く腕を上げる幻海。
最後の最後のでジョセフの十八番を掠め取り、幻海は彼の駒となる意趣返しを行ったのだ。
全く以って憎たらしいババアではあるが、願わくばそんな彼女と勝利の美酒を共に分かち合いたいものだ。
ジョセフはそんな胸中を抱くと、今度こそその歩をDIOのいる方へ向けていった。




【一日目 朝】
【現在地 D-6】
【幻海@幽遊白書】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 どうするかねえ
 1. DIOを倒すまで浦飯幽助の相手をしてやる
 2. 肉の芽ねえ……
【備考】
※参加者間において時間軸のズレを認識しました


【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】左腕微細骨折
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 DIOとバーンを倒す
 1. DIOのところへ向かう
 2. 道中で仲間を集める
 3. シグナムの動向に気を配る


【浦飯幽助@幽遊白書】
【状態】健康 、肉の芽による洗脳
【装備】拡声器@オリジナル
【道具】武器支給品、支給品一式
【思考】
 基本 バーンをぶっ倒す、DIOに忠誠を示す
 1. 皆をDIOの所へ呼び込む
 2. 仲間と合流
 3. 戸愚呂と対決
【備考】
※名簿は引き千切られて捨てられました
※リヴィオの仲間と敵の情報を得ました
※ジョースター一行とDIOの部下の情報を得ました
※肉の芽はDIOへの忠誠を高めるだけのものです



083:Into the Groove <BACK  NEXT> 085:The Heart Asks Pleasure First
065:The Long and Winding Road ジョセフ・ジョースター :[[]]
065:[The Long and Winding Road[]] 幻海 :[[]]
083:Into the Groove 浦飯幽助 085:The Heart Asks Pleasure First




最終更新:2014年05月03日 00:35