とてつもなく大きな存在感。空気を力で押し分け、アスファルトを踏み潰すかのように闊歩する大男。それが近づいてくるのは、わざわざハーミットパープルで念写することなく分かることであった。
「オーマイゴッド……!」
現れた男――
ラオウにジョセフは驚嘆した。長身のジョセフが見上げるほどの背の高さに、その身に良く収まっているな思うほどの圧倒的な量の筋肉。そして敵を射殺さんとする鋭き眼光に、絶対的な強者としての余裕と貫禄。その人類を超越したかのような存在は、ジョセフの知識と経験において、彼らのことしか思い浮かばない。
「柱の男か……まだ仲間がおったとはのう」
冷や汗を流しながら、ジョセフはゴクリと唾を飲み込んだ。心胆を寒からしめた仇敵との再会、そして柱の男すらも容易く箱庭に閉じ込めたバーンの謎の能力。突きつけられたその二つの事実に、飄々としていたジョセフの態度は、一気に消え失せた。そのジョセフを心配したかは知らないが、隣にいた幻海はやれやれ、と口を開く。
「あの筋肉達磨は、あんたの知り合いかい?」
「まあ一応……そういうことになるかのう」
「そうかい。それじゃあ、あんたに任せたよ」
「う、うむ」
これは優しさなのだろうか。いらない気配りをみせてくれる幻海に溜息を零しつつ、ジョセフは前を見据えた。柱の男であるというのなら、僅かにも安閑とはしていられない。彼らの人間とは隔絶した能力は、容易く人を殺めることが出来るのだ。加えて、人間という種への蔑視もある。彼らに殺人への忌避もないし、また人の言葉も簡単には彼らの耳には届かないのだ。それらのことを考えれば、ジョセフの警戒も頷ける。
ジョセフらが保つ沈黙に、ラオウは構わず声を投げかけた。人間と対話する。そのことに幾らか安堵する一方、ジョセフの頭には疑問がひしめいた。
「ユリア? 何じゃ、女性の名前かのう?」
「そうだ」
「ほう……それでそのユリアという女性を探して、どうするつもりなんじゃ?」
「…………うぬには関係なきことよ」
たっぷりの間を取って、ラオウは答えた。殺す。そう決めたはずの答えだが、口からは何故かその言葉が出てこなかったのだ。しかし、それでは到底ジョセフを納得させられるはずもない。
「それでは教えてやろうにも、教えてやれんなあ。その人の所在を他人に教えるとなれば、ワシにも責任というものが生まれてくるからのう」
「この拳王に三度目の言葉はないと知れ。ユリアを見なかったか?」
絶えず突きつけられるラオウの言葉に、ジョセフは眉をひそめた。自分がした質問など、至って簡単なもの。それを答えられないようでは、どうしても疑いを隠せない。確かに他人に漏らせない男女の仲というものもあるが、それは命を懸けた殺し合いの場の中で一々憚るものでもない。そのことを考えると、必然ラオウの出した「答え」は女性に対して何かしらの害意を含んでいるということになる。柱の男の思惑が何であれ、それは許せるものでない。ジョセフはスタンドを発現させ、ラオウに向かって静かに紫の茨を伸ばした。
「まあ、お前さんらにも事情というものがあるのじゃろう。じゃが、ワシにも同じように事情がある。折角、柱から蘇ったところで悪いが、これで終わりじゃよ」
そう言って、ジョセフは大きく息を吸い込み、体内に太陽のエネルギーを生成。そして息を吐くと同時に、ジョセフはそれを一気にスタンドを通し、ラオウへと送り込んだ。
「波紋疾走(オーバードライブ)ッ!!」
蛇が巻いたかのように身体を迸る山吹色の光に、ラオウは堪らず膝をついた。身体が痺れて、思うように動かないのだ。否定のしようのない不覚と醜態。ラオウはその屈辱に業火の如き憤怒を瞳に映し出し、ジョセフを睨みつけた。
「歳のせいか、ワシの波紋も随分と弱まったのう」
鬼のようなラオウの視線を軽やかに受け流し、ジョセフはそんな言葉を漏らした。波紋で身を焼かれているのに、ラオウの身体は一向に溶けず、その身を保っているのだ。若い頃との明確なギャップに、ジョセフは老いを実感し、消沈した。
しかしその次の瞬間、ジョセフの心からは、そんな些細なものは木っ端微塵となって吹き飛んだ。コォォォ、という独特の呼吸音。それがラオウの口から聞こえてきたのだ。ジョセフは目を見開き、驚きの声と共に耳をラオウの方へ傾ける。
やがてラオウはジョセフに答えるように、膝に付いた砂を払い、ゆっくりと立ち上がった。そこには波紋に苦しむ姿はない。二本の足でしっかり大地に立ち、山のように泰然とジョセフを見下ろしている。しかもラオウは起こした変化はそれだけではない。彼の身を縛っていたハーミットパープルから、眩いばかりの大きな光が連続してジョセフに流れ込んできたのだ。
「オーマイゴッド……! この輝き、この痺れは間違いなく波紋。お前さん……もしかして人間なのかああーー!!??」
柱の男の天敵となる波紋。それを使うことから導き出される結論に、ジョセフは両手を挙げて驚愕した。これでは先に攻撃を仕掛けた自分の方に非があるのではないか。ジョセフの心に俄かに罪悪感が押し寄せる。だけど、王たるラオウにとって、自分に攻撃を仕掛けるなど、許し難き愚挙。謝罪を受け入れる余地など、どこにもない。ラオウはジョセフに制裁を加えるべく、ついに反撃へと行動を移した。
波紋を無効化したとはいえ、スタンドで身体を縛られている故に、自由な行動は出来ない。ならば、とラオウはすかさず上半身を振り子のように振った。これでもか、というくらいに入念にハーミットパープルをラオウに巻きつけていたので、そこに緩みは全くない。結果、ジョセフはラオウの怪力に引っ張られ、ラオウの元へ勢いよく飛んでいった。
「この拳王、蟻の反逆も許さぬ!!」
柱の男ワムウ。その名を彷彿してしまうかのような巨木の如き足が、轟音と共にジョセフの身体にめり込んだ。咄嗟に腕でガードしたが、それに何の意味があるのか。そう思ってしまうほどの強烈な衝撃がジョセフの中を駆け抜け、無様に空を舞わせた。
「ハァ……」
足元に転がってきたジョセフに、幻海は溜息を零した。ラオウの攻撃を受けてから、ジョセフがピクリとも動かないのだ。ひょっとして死んでしまったのだろうか。そんな危惧の念を一切排して、幻海はジョセフの身体を思い切り蹴り上げた。
「ほら、いつまで死んだフリをしているんだい! まさか私にお前の汚いケツを拭かせるつもりかい!?」
「痛ッ! って、何するんじゃ、クソババア! 人が折角隙を作ろうと努力しているというのに!」
「そんなつまらない演技が通用する相手だと思っているのかい? だとしたら、いよいよお前の頭はボケてきちまったようだね」
「うるさいわい! わしだってハナから上手くいくとは思っとらんわ。ただ、ほんのすこ~しばかり信じてくれたら良かったかな~って、ほんのちょっと思っていたくらいじゃよ」
「ハァ……それで次はどうするつもりなんだい?」
「そうじゃのう……」
本当にどうしようか。ジョセフが頭を悩ませているのをよそに、ラオウは足元に転がっていた石を指で拾い上げた。そしてそれを目の前に掲げる。その次の瞬間、石が弾丸のような勢いでジョセフの頬の横を通り抜けていった。
「オーマイゴッド……! 今のは弾く波紋!」
それはジョセフがラオウに蹴られた際に、蹴りの威力を軽減させるために使ったものであった。その効果は名前の通り物体を弾くことになる。勿論、それ自体は波紋法の基本である故に、驚きはない。しかし、その威力が桁違いなのだ。とてもではないが、ジョセフの波紋では、同じ芸当などできやしない。例えそれは全盛期であっても、同じことだろう。ジョセフは目の前を真っ暗にするかのような事実に、とうとう最後の策を使うことにした。
「やれやれ、これだけは使いたくなかったんじゃがのう」
「何だい、何か妙案でもあるのかい?」
「ある!」
気だるげに発せられた幻海の質問に、ジョセフは自信をもって答えた。
「それはだな…………逃げるんじゃよぉぉーーー!!!!」
そう言うなり、ジョセフは踵を返して、幻海を何の遠慮もなしに置き去りにして走っていった。自信満々な態度とは裏腹の情けない行為に、さすがの幻海も口をあんぐりと開ける。だけど、それも一瞬のこと、幻海の眼は途端にナイフのように鋭くなった。平気で仲間を見捨てる奴など、幻海にとって心底気に食わない。それこそ殺してやっても構わないというほどにだ。
「まあ別に仲間ってわけでもないけどさ……でも、あたしゃ好きにはなれないね」
幻海がそんな言葉を吐き捨て、決意に満ちた表情でラオウに目を向けた。目の前の巨漢は、宿敵である戸愚呂を思わせるほどに、圧倒的な力を持っているのだ。相対することとなれば、油断できる余地など微塵もない。幻海は自らの死をも覚悟して、ラオウと向き合った。そしてそんな幻海の気持ちを嘲笑うかのように、ジョセフのハーミットパープルが刹那の時をもって彼女の身体に巻きついた。
「何をしているんじゃ、バーさん! お前さんも逃げるんじゃよーー!!」
あっという間に走り去ったはずのジョセフは再び道の向こうに現れ、その言葉と同時に幻海を引っ張りあげた。物のようなぞんざいな扱いに、幻海の額に青筋が浮かび上がる。だけど、仲間を見捨てなかったというジョセフに、どこか安堵している彼女もいた。といっても、僅かに浮かび上がった彼女の柔和な表情も、いつまでも許されるという状況にはない。その証拠にと、ラオウは怒声と北斗神拳の奥義を二人に送る。
「逃走は許さぬ!! 北斗剛掌波!!」
それは手の平に闘気を圧縮して、遠くいにいる敵に放つという平凡とも呼べる技だ。しかし、ラオウのように桁違いの闘気を持っているものが使えば、その威力は平凡を遥かに凌駕する。北斗剛掌波はアスファルトを削りながら、死の予兆を持って二人に迫っていった。
「ったく、このクソジジイが……これじゃあ、避けられやしないじゃないか」
眼前に闘気の固まりを見た幻海は悪態をついた。ハーミットパープルが身体に巻きつき、挙げ句問答無用で引っ張られている故に、確かな回避行動が取れないのだ。これでは直撃は免れないだろう。それを悟った幻海は意識を集中して、迫る暴虐の集合体に自らの手を差し出すことにした。
「霊光鏡反衝」
幻海がそう呟いた瞬間、北斗剛掌波はビデオを逆再生しかのようにラオウの元へ戻っていった。幻海は北斗剛掌波が自分に達した瞬間、己の気をラオウのと同調させ、操り、見事にそれを反転させたのだ。言葉にすれば、それは容易い。しかし、実行するとなれば、それは困難なものであった。気の波長は人それぞれ違う上に、同調するのが万分の一でも狂えば、失敗するという危険なものなのだ。幻海のように気軽にやってのけれる技ではない。それは拳王たるラオウとて同様のことだろう。つまり自らの技が反転するのことなど、ラオウにとって慮外なのだ。結果、無防備な身体を晒していたラオウに北斗剛掌波は直撃し、ラオウの巨体を後ろへ吹っ飛ばして、壁へとめり込ませた。
「ヌウゥ……敵ながらに、見事なものよ」
幻海の技量の高さを見て取ったラオウは、素直に賞賛の程を示した。二人を逃してはしまったが、その二人はちゃんとそれに値した行動を見せてくれたのだ。それ即ち、波紋法と霊光鏡反衝。水面に写る月のように、その二つをしかと己の内に写し取ったラオウは、再びユリアを求めて歩き出していった。
【一日目 早朝】
【現在地 D-7 市街地】
【幻海@幽遊白書】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本
浦飯幽助に奥義を伝授し、
戸愚呂弟と闘う
1. 浦飯幽助を探す
2. 戸愚呂弟を探す
【
ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】左腕微細骨折
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本
DIOとバーンを倒す
1. ラオウから逃げる
2. 幻海と協力しつつ、仲間を集める
3.
シグナムの動向に気を配る
【ラオウ@北斗の拳】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本
ケンシロウに勝つ
1. ユリアを……
【備考】
※哀しみとは、他者への情にあると思っています
※哀しみを背負うには、情を向けた相手を殺すべきだと思っています
※ユリアを殺すことに、躊躇いを覚えています
※水影心により、波紋法と霊光鏡反衝を覚えました
最終更新:2013年10月28日 00:14