宵闇の中で猛禽の如く鋭い双眸が浮かび出された。
その瞳はまさしく獲物を前にして歓喜と殺意をあらわにする禽獣であった。
「その目……貴様はこの馬鹿げたゲームに乗っている口か?」
見られただけで自らの死を意識してしまう。それほどの眼光を身に受けても、
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングは、何ら臆せずに口を開いた。その反応に獣の如き男は不敵な笑みを浮かべる。それに併せて男の白き長髪は風に舞うかのように暗闇をたゆたい、不気味さを醸し出した。それは醜悪とも取れる遠慮のない殺意の露呈。しかし、月の光に当てられたその容貌はまるで女性のように秀麗であった。そしてその男は、インテグラの質問に答えるかのようにこの場での真理を告げた。
「無論だ。この地獄を生き残れるのは善人ではない。悪魔に魂を売った者のみが、この先を生きていけるのだ」
「下種がッ。私は簡単に人間を捨てれる貴様のような輩が、一番大嫌いなのだよ」
「女のくせによく吠える。だが言葉だけでは、この俺は倒せんぞ」
完全に人を見下した発言。そこには嘲弄と侮蔑が多分に含んだ調子があった。それはインテグラの矜持を傷つけるのに十分なものだったが、その言葉に裏打ちされた実力は語られずとも彼女にも分かるものだった。恐らくは勝利の可能性など、露ほども持てないだろう。それは確信に近い形で、インテグラの内に湧き起こった。だけど、彼女の精神は決して屈従など求めない。相手が人を捨てた化け物であれば、それは尚更だ。何故ならそれこそが彼女が誇る人間の在り方なのだから。
「この私を舐めるなよ。来いッ! 闘ってやるッ!」
インテグラは自らのサーベルを覇気と共に抜き放った。
「ほー、どうやら威勢だけは一人前のようだな」
感心とも呆れとも取れる態度を見せ、男はついにその手をインテグラへ向けた。ヒョーーッ、という甲高い奇声と共に繰り出される無数の手刀。それはまさしく死神の鎌とも形容されるべき鋭い斬撃であった。その攻撃に身を当てられては、たちまち命など露と消えてしまう。しかし、そんな死の体現を前にしても、インテグラは微塵も恐怖など感じさせなかった。それどころか彼女は相手を殺さんと獅子の如き勇猛さでサーベルを男へと突き立てた。
「……何のつもりだ?」
夜が告げる静寂を、インテグラは怒りで押し分け、訊ねる。インテグラが放った全力の剣は目の前の男のたった二本の指で止められ、あまつさえインテグラが身に纏っていた服は男の攻撃によって全てが細切れへと変貌していたのだ。男が女を裸にする目的など、一つしかない。そのことをインテグラはおぞましく思ったが、今更その程度のことで戦禍を潜り抜けた彼女の覚悟が揺らぐはずもない。もし粗末なものを自分の目の前にさらけ出したら、すぐさまそれを噛み切り、食い千切ってやろう。インテグラはそう意気込んだが、肝心の男はついぞそんな行動を起こす気配を見せなかった。
「……裸を見られても、身じろぎもしないか」
男はインテグラの質問に答えず、自らの感想を述べる。
「だから、何だというのだ?」
「すまない。試させてもらった」
「何?」
「お前が女だというのなら、どこか目立たない場所に隠れてもらうつもりだったが、どうやらお前は女である前に、一人の戦士のようだ」
ここに至って、インテグラは目の前の男に殺意がないことが分かった。だが相手の心構えを確認するのに、こういった手段を用いるのは、不器用という言葉をぶっちぎりで通り越している。一体どんな経験を人生で積んできたのだろうか。そのことを疑問に思わずにはいられない。この男の強さを考えれば、尚更それはとても危ういものだ。そのことに頭を抱えたインテグラは、一つ男に訊ねてみることにした。
「貴様ほどの強さなら十分に最後の席を狙えるだろう? 何故そうしない?」
「……俺の命数は限られている。生き残ったところで、どのみち長くはない」
「そうか……ならば、この私に付いて来い。貴様の命、無駄にはせん」
初見の女性を丸裸にしても、眉一つ動かさず泰然としていた男だが、流石にその申し出は予想の外だったようだ。男の鋭き眼光は、その言葉によって一瞬ほど驚愕の色に染まった。だが、どうやら彼にとっても、その話は価値があるみたいだった。しばらく黙考した後に、男は自らの答えを述べた。
「よかろう。この命、お前に預けた」
「ふむ。では、名前だ。貴様の名前を寄こせ。私の名はインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング」
「レイだ。南斗水鳥拳のレイ」
「そうか。では、レイ、早速一つの命令を下してやろう」
「何だ?」
レイは興味深げに訊いた。自分の命を有効に使うと豪語した女だ。その内容は、きっと機知に富んだものなのだろう。レイは期待に胸を膨らませた。そしてある意味レイの予想通りに、予想外の返事を貰うことになった。
「さっさと服を持って来い! 馬鹿者がッ!」
「がはっ!」
その答えの初めは拳だった。レイの命数を決めた男の拳を思わせるほどの迫力を持った攻撃が、彼女の言葉となってレイの顔面を襲ったのだった。
【一日目 深夜】
【現在地 C-8】
【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@ヘルシング】
【状態】健康、素っ裸、肌寒い
【装備】インテグラのサーベル@ヘルシング
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 殺し合いの打破
1. 服を着たい
2.
アーカードを探す
【レイ@北斗の拳】
【状態】健康、鼻血がタラリ
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 インテグラの言葉に従う
1. イテッ
2. インテグラに着せる服を探す
【支給品説明】
インテグラが愛用するサーベル。吸血鬼を一刀の元に切り伏せるだけの切れ味があり、またアンデルセンの銃剣を受け止めるだけの頑丈さを持つ。
最終更新:2012年02月27日 01:07